異世界イッセー   作:規律式足

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 久しぶりの異世界おじさんサイドです。



第五十七話 甥っ子は遠き世界で異世界バトルを楽しむ

 

 こんにちは、高丘敬文です。

 異世界から帰還して、現在は動画投稿で生計をたてている叔父と暮らしはじめて、けっこうな月日が流れました。

 そうして現在、僕は、

 

 

『まだ、だあ!!』

 

 赤龍帝の籠手を装着した左腕を切り飛ばされても、怯むことなく突っ込む兵藤一誠さん。

 無事な右腕に握った光剣で貫こうとするも、おじさんは回転しながら前進することで回避する。

 そして、その勢いのまま、ガラ空きの胴体へと光剣を突き刺した。

 

『畜生っ』

 

『今回も、俺の勝ちだな』

  

 潰された右目、そこから流れる血がまるで涙のようだった。

 

 

 おじさんと兵藤一誠さんのガチバトルを、藤宮と一緒に記憶再生の魔法で見ています。

 兵藤一誠さんがメイベルさんに告白するために、おじさんに挑み続けて三十戦目、今回もおじさんの完全勝利です。

 

「それでね、兵藤君がね、ここで新しい動きを取り入れててさあ」

 

 そんな戦いをおじさんは喜々として解説しています。兵藤一誠さんがどれくらい前回より強くなったのか、今回はどんな工夫をしているのか、自分の事のように嬉しそうに語ってくれます。

 

「ところで、ここ十回くらい必ず兵藤さんの左腕を切り飛ばしてますよね。なんでですか?」

 

 切り飛ばすとかグロいなあ、と呟きながら藤宮はそう訊ねた。

 バトル後にアリシアさんが神聖魔法で治してくれてるとはいえ、部位欠損はやり過ぎじゃないかな?

 

「え?部位破壊は基本だよね」

 

 その疑問に、おじさんは不思議そうな表情で答えた。どうやらボスキャラと戦うのと同じ感覚だったらしい。

 

「そうだけど、なんかハメ技みたくてさあ」

 

 僕もつい思ったことを言ってしまう。

 兵藤一誠さんの戦闘スタイルは赤龍帝の籠手ありきだ。だから最初にそれを無力化するのは理に適っているのは分かるのだけど。

 

「大丈夫だよ」

  

 そんな僕達の反応におじさんはフッと笑う。

 

「兵藤君もあと二十回くらいで、左腕を守るコツを掴むから、そうしたら切り飛ばせなくなるんだ」

 

 パァァァと輝く笑顔で語るおじさん。

 兵藤一誠さんの上達を心から喜んでいる感じだ。そっか、あと二十回は左腕が宙に舞う様を見ることになるのか。それは、それで見応えあるから良いね!!

 

「しかし、おじさんってどうしてそんなに強いんですか?」

 

 画面越しにも分かる兵藤一誠さんの強さと成長・上達具合。それを容易く返り討ちにする姿に、藤宮がいつだかのエルフさんと同じ質問をした。

 

「ちゃんと何度も頑張って、戦いの練習をしたから。だけど」

 

 おじさんの返答も同じだな、と僕が笑っていたら。

 

「「?!!!」」

 

 僕と藤宮は同時に同じ思考へと至った。

 

「「訓練してたのっ?!」」

 

 気づいてはならない思考へ。

 

「してたけど?」

 

 キョトンとした表情で言うおじさん。

 それは兵藤一誠さんにはあまりにもエゲツない事実である。

 グランバハマルで帰還方法を探す旅路の途中で行われる、兵藤一誠さんによるおじさんへの挑戦。

 いつもアッサリと返り討ちにするから、てっきり隔絶した実力差があるのだと思っていたけど。

 

「兵藤君のメイン武器である赤龍帝の籠手。それからできるコンボを想像して、それに対応できるようにイメージをして、何度も練習する。

 それで実際には初見である、兵藤君の攻撃全てに対応できるようになるんだよ」

 

(超えるべき壁が、時間と共に成長していたー)

 

(攻略対象に攻略されてたんじゃ、そら勝てないわー)

 

 ゲームの攻略の時のように話すおじさんに対して、僕と藤宮は愕然としていた。

 なんで、スペックとしては上回っている筈の兵藤一誠さんが、おじさんに一度も勝てなかったのか?

 それは、おじさんの方も全力で兵藤一誠さんを分析して対処していたからだった。

 彼の赤龍帝の籠手や鍛えた肉体のように、わかりやすくパワーアップしていたなら気づけただろう。

 だけどおじさんの戦闘スタイルはテクニックタイプの極み。全ての攻撃を回避して攻撃してくるだけだから、強くなっているとわかりにくいのだ。

 傍から見たら、おじさんが常に圧勝しているようにしか見えないし。

 

「え、えっと。おじさんがそんなに全力で戦うってことは、もしかしておじさんもメイベルさんを好きだったんですか?だから告白阻止していたとか?

 というかおじさんが、よく兵藤一誠さんの恋愛感情に気づけましたね」

 

 藤宮がそうであってくれと言わんばかりに問いかける。うん、そうだよね。だって兵藤一誠さんの恋路を全力で邪魔してるもん。

 

「? いや全然。メイベルはホラ、知り合い?」

 

((ならなんでそんなに全力))

 

「兵藤君が全力だから親友として全力で応えよう。そう思っただけだよ」

 

 言っていることは正しいけど、方向性を間違えてるよおじさん。

 

「なんで親友って言う時の背景が、エ○リアンソルジャーのボスキャラ集団なんだよ」

 

 彼らが当時のおじさんの友達だから。

 なるほど、だから友達=倒す。なのかもね。

 

「でも、百回以上もおじさんが勝つわけだし、どこかで手加減とか。このままじゃ兵藤一誠さんは、一生勝てませんよね?」

 

「大丈夫。兵藤君は一戦ごとに成長していた。エイ○アンソルジャーだってコツを掴めば必ず一面はクリアできるし、不可能だと思えたスーパーハードも六年頑張れば必ずクリア出来るんだ」

 

 そういう昭和のノリはいいから。エイリ○ンソルジャーは平成のゲームだけど。

 そして兵藤一誠さんは結局勝てずじまいだったよね?

 

「兵藤君の気持ちについてだが。俺は大人の恋愛がわかる。中学の時にエ○ァンゲリオンを全話観ていたからな。」

 

「「それはもういいです」」

 

「知ってた?ア○カって加○さんが好きなんだぜ」

 

(相変わらず、理解浅いなあ)

 

(そんなおじさんから見ても分かる、バレバレな兵藤一誠さんって一体)

 

 エ○ァはSE○Aが番組スポンサーの一社で、その関係からサターンでゲームが出ることになったので、当時のおじさんはエヴ○ンゲリオンをクラスメイトから借りて全話観たのだ。

 なお未だにネタにされる、あの最終回についてだが、貸してくれた宮内君がネタバレしたため特に驚きは無かったそうだ。

 

「あと、兵藤君が毎回「勝ってメイベルに告白するんだぁ!!」て叫んでたし」

 

(猿でもわかるよソレ)

 

(エ○ァ関係ないじゃん)

 

「おっと、そんな話をしている内に、次の戦いだ。

 この戦いで兵藤君はね」

 

 切り替わった場面に反応したおじさんが、興奮しながら解説をしだす。親友である兵藤一誠さんについて、話すことそのものがとても嬉しいみたいだ。

 

「つーかそもそも、おじさんを倒せたら告白ってのが間違えてるよな」

 

「うん、渡した指輪以上の物を渡す方がよっぽど現実的だったよね」

 

 おじさん曰く、兵藤一誠さんは思い込んだらソレ一直線、という性格だったらしい。

 だから止まることができずに爆散したのだろう。

 

「なんか、画面の端にメイベルさんが映ってない?」

 

「あ、居た。確かにこの特徴的な髪はメイベルさんだね」

 

 気づかないとかどこまで一直線なのやら。

 おじさんもおじさんだけど、兵藤一誠さんも兵藤一誠で大概だったようだ。藤宮はそんな二人にすっかり呆れたのであった。

 

 

 異世界生活にもラブコメはあった。

 転移者である兵藤一誠さんは全力で恋に生きて、百を超える死に様を晒した。

 ちなみに、おじさんによる兵藤一誠さん対策はノートに細かく纒められていて、ゲームの攻略本みたくなっていた。結果として百七十四回で終わってしまったけど、そのノートには後三十戦分くらいの対策が用意されていた。

 あまりにひどい結末に思うところはあるのだけど、それでも。

 

 異世界タイマンバトル、最高です!!

 

 





 補足・説明

 異世界おじさん
 イッセーとの戦いは、常勝不敗だけど、実はBLEACHの浦原喜助レベルで準備していた人。多分、イッセー相手ならテニスの王子様のデータテニスも可能。ヒロアカ主人公ばりにノートを纏めていた。

 兵藤一誠
 異世界おじさんの準備に一切気づかなかった。詰将棋みたいな戦い、というのは正しい認識。
 左腕への攻撃にかなり敏感。

 敬文
 自動でラスボスがパワーアップするリアルクソゲーに愕然とした。けどそれはそれとして毎回楽しんで見ている。異世界バトル最高。

 藤宮さん
 イッセーよりもメイベルに同情気味。

 メイベル
 一時期、イッセーとウルフ(異世界おじさん)に取り合われているとクネクネしてた人。百回を超えた辺りで目からハイライトが消えた。歳も三十超えたし。

 アリシア
 完全に巻き添えだが、クロキ(異世界おじさん)と居る理由ができて喜んでいた。

 エ○ァンゲリオンアニメ
 異世界おじさんが視聴したのは最初期版。なんか凄い最終回らしい。

 ア○カと加○さん
 恋愛なのかアレ?という間柄。ただ解釈は人それぞれ。
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