異世界イッセー   作:規律式足

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第六十一話 グレモリー邸へ

 

 冥界行き当日。

 最寄り駅から地下に行き、そこから冥界まで特別列車で向かう。

 父さんが仕事があるため、今日はついてこれないが、夏休み期間中にグレモリー本邸に訪れる予定だ。俺達の事情を知っているとはいえ、社員の息子の両親が社長宅に招かれるような状況のため、物凄く恐縮していた。

 実はグレモリー家だけではなく、悪魔上層部まで両親と顔合わせをしたがっていたのだが、それはサーゼクス様が止めてくれた。

 ヴァーリ・ルシファーという最強の白龍皇に到れる存在を一蹴したことで、赤龍帝という存在の評価はさらに上がったようなのだ。

 それでもミルたんの方が強いけど。

 グレモリー家所有の専用列車というとんでもないモノに乗り込む。冥界の貴族、上級悪魔、そのスケールのデカさには圧倒されてしまう。

 リアス部長を幼い頃から知る車掌さんに挨拶したり、特殊な機器で、本人確認及び入国手続きなどを行った。なお悪魔ルートを楽しみだと言っていたアザゼル先生はすぐに眠りこけていた。なんとも自由な人だ。

 列車の窓から見える広大な景色にグランバハマルを思い出して鬱になりながらも、俺は冥界入りを果たしたのだった。

 

『まもなくグレモリー本邸前。まもなくグレモリー本邸前。皆様ご乗車ありがとうございました』

 

 一時間程度の次元移動が終わり、開いたドアから降車していく。けれどアザゼル先生だけは降りる様子は見せなかった。

 

「降りないんですか?」

 

「ああ、俺はこのままグレモリー領を抜けて、魔王領まで行く予定だ。サーゼクス達と会談があるからな。終わったらグレモリー本邸に向かうから先に行って挨拶を済ませて来い」

 

 なるほど、俺達の付き添い以外にも仕事があったのか。本当に有能で多忙な人だ。

 

「では、また」

 

「お兄様によろしくお願いします、アザゼル先生」

 

 俺と部長が頭を下げると、先生は手を振って応えてくれる。

 先生が抜けたオカ研メンバーで駅のホームに降りた瞬間。

 

「「リアスお嬢様、おかえりなさいませっ!!」」

 

 怒号のような声が空気を震わせた。 

 続けてパンパンパンと花火が上がり、空気砲を鳴らす兵隊、一斉に鳴り響く演奏、空には騎乗した兵士達が旗を振っていた。

 グランバハマルで何度か経験した、歓迎の式典のようである。眷属として長い木場達は慣れているようだが、アーシアやゼノヴィア、そしてギャスパーは驚いていた。

 

「ひ、人がいっぱい」

 

 悪魔だけどな。

 背中に隠れるギャスパーについ内心で突っ込む。

 よく見れば執事やメイドが前方に集まっていた。部長がそちらに近づくと一斉に頭を下げて、

 

「「「リアスお嬢様、おかえりなさいませ」」」

 

 迎え入れてくれた。

 

「ありがとう、皆。ただいま。帰ってきたわ」

 

 その言葉と共に周囲から歓声が上がる。

 どうやら部長の帰省とは、グレモリー領においては一大イベントらしい。

 神聖勇者であるアリシアさんの都市での扱いを思い出すよ。ちなみに陽介さんは別の形で歓迎される場合が多かったが。

 そこへ、見知った女性が一歩でてきた。銀髪のメイドにして、サーゼクス様の奥方にして、女王のグレイフィア様だ。

 

「お嬢様、おかえりなさいませ。さあ、眷属の皆様も馬車へお乗りください。本邸までこれで移動しますので」

 

 グレイフィア様に誘導されて、豪華絢爛な馬車のもとへ。馬車を引く馬も魔獣の類なのか、大きさも気配も普通とは違っていた。

 持ってきた荷物は(俺は収納空間だが)メイドさん達が運びだしているので、そのまま馬車へと乗り込んだ。

 

「私は下僕達と行くわ。アーシアは初めてで不安そうだから。イッセーは平気みたいね」

 

「グランバハマル時代に経験がありますので」

 

 あまり思い出したくない、貴族の子飼い冒険者時代だけど。

 

「わかりました。何台かご用意しましたので、ご自由にお乗りください」

 

 二台に分かれて馬車へと乗り、グレモリー本邸へと移動をはじめる。

 外の景色を見れば、舗装された道と剪定された木々。真っ直ぐ伸びた道の先にある、巨大な建造物がグレモリー本邸なんだろう。

 

「あー、なんか懐かしいなあ」

 

 巨大な城らしき建造物。グランバハマルにもあったが、一貴族の邸宅でここまでの規模の物は無かったな。グランバハマルは安全な土地が貴重だし。

 開いた門を馬車ごとくぐり、広大な庭に入れば、美しい花々が咲き誇り、見事な造形の噴水から水が噴き上がり、色彩様々な鳥が飛び回り、端に旧兵藤邸がデンと建っていた。

 うん、此処に仮置きしておくとは聞いていたけど果てしなくミスマッチ。日本によくある離れの別宅じゃないんだから。

 

「着いたようね」

 

 部長がそう呟くと、馬車のドアが開かれた。その後は使用人達に導かれて進む。

 足元に広げられた赤いカーペットにすら懐かしさを覚える俺は、思っていた以上にグランバハマルの感覚が残っていたようだ。

 

「さあ、行くわよ」

 

 部長がカーペットの上を歩き出そうとした時だった。メイドの列から小さな人影が飛び出してきた。

 

「リアスお姉様!おかえりなさい!」

 

 紅髪の可愛らしい少年は、部長に抱きついていた。弟様だろうか?

 

「ミリキャス!ただいま、大きくなったわね」

 

 部長も愛おしそうに抱き返す。

 

「あ、この子はミリキャス・グレモリー。お兄様、サーゼクス・ルシファー様の子供で、私の甥ね」

 

 なるほど、メイドの子供ではなく、跡取りとして育てられている感じか。ますますグレイフィア様の格好がサーゼクス様の趣味だと思ってしまうな。

 

「ほら、ミリキャス。挨拶して。この子達が私の新しい眷属なのよ」

 

「はい。ミリキャス・グレモリーです。初めまして」

 

「これは、ご丁寧なご挨拶を頂きまして。私はリアス様に兵士の駒を賜りました、赤龍帝・兵藤一誠と申します」

 

 うーん、利発そうな方だ。

 クソ貴族の淀んだ目をした子息とは大違いだな。

 ちなみにグレモリーであって、ルシファーでないのは、ルシファーの名が称号とされたからだ。ミリキャス様がルシファーと成るには、サーゼクス様のように上層部にそう望まれなければいけない。

 

「さあ、屋敷へ入りましょう」

 

 部長はミリキャス様と手を繋いで進みだす。俺も不安気なアーシアの手を引き、ギャスパーにひっつかれながら後に続いた。

 いくつもの門を越えて、中へと進む。玄関ホールらしきところも運動会ができるくらい広い。まあ、ここに兵士やら従者が集結したりするのだから必要な広さなんだろうが。

 しかし、後日訪れる予定のウチの親は大丈夫か?初見で驚かせたい気持ちもあるが、記憶再生で一度見せた方が本人達には良いのかな?

 

「お嬢様、さっそく皆様をお部屋にお通ししたいと思いますが」

 

 グレイフィア様が手をあげるとメイドさんが集合した。下手したら眷属一人に複数人のメイドが世話役につくなこりゃ。せめて男性従者にしてもらわないと、死ぬな。

 

「そうね、私もお父様とお母様に帰国の挨拶をしないといけないし」

 

 部長もこの後のことを考えているみたいだ。

 

「旦那様は現在外出中です。夕刻までにおかえりになる予定で、夕餉の席にて皆様と会食されながら、お顔合わせをされたいとおっしゃられておりました」

 

「そう、わかったわ。それでは、一度皆はそれぞれの部屋で休んで貰おうかしら。荷物はすでに運んでいるわね」

 

「はい、お部屋もすぐにお使いになられて問題ありません」

 

 あー、なんか懐かしい気分だな。

 けどグランバハマルと違って、こっちなら寛げそう。向こうだと貴族の用意した部屋なんて、監視が前提かつ罠だらけだったからな。

 特に仕事を終えた後の、報酬を渡される前に泊まらせられる部屋は、どんなに贅を尽くしてあっても油断はできない。九割方デストラップの備え着いた処刑部屋だからだ。

 

「あら、リアス帰ってきたのね」

 

 その時、上から女性の声が聞こえてきた。

 階段から下りてきたのはドレスを着たすっごい美少女。胸は大きいが年齢は俺達と同じくらいに見える。

 髪の色が亜麻色で、部長とそっくりな外見だから姉妹かと思うが、悪魔を知る俺は間違わない。

 

「お母様。ただいま帰りましたわ」

 

 だよね。知ってた。

 

「驚かれないのですね。兵藤様」

 

 俺の反応の無さに気づいたグレイフィア様がそう尋ねられるが、そらね。

 

「悪魔は歳を取れば魔力で見た目を自由にできるのよ。お母様はいつも今の私ぐらいの年齢で過ごされているの」

 

 グレイフィア様のメイド服同様、グレモリー当主様のご趣味でなかろうか?フリーダムな悪魔の皆様を見ていると、そう邪推してしまうのだが。

 

「私のお母様に見惚れちゃ駄目よ」

 

 そうリアス部長が呟く。

 だからこんなとこが可愛い人だよね。

 

「あら、リアス。その方が兵藤一誠君ね?」

 

「ご存知、ですよね?」

 

 婚約を賭けたライザー師匠とのレーティングゲームは観戦されてただろうしなあ。

 俺の問いに部長のお母様は頷く。

 

「素晴らしい戦いと、面白いオチでしたもの。忘れられませんわ」

 

 ハハハ。

 笑い話にされたのは幸いかな?

 ライザー師匠との婚約を推進されてた方だったから不味かったかも。

 

「初めまして、私はリアスの母、ヴェネラナ・グレモリーですわ。よろしくね、兵藤一誠君」

 

 こんな高貴そうな方と語り合うだろう、我が母よ、頑張ってくれ。

 

 いや、グレイフィア様と普通に旦那話で盛り上がれるくらい肝の太いおっかさんだから平気かも?

 

 こうして、俺達はグレモリー邸へと招きいれられたのだった。





 補足・説明。

 グランバハマルで貴族に慣れているので、グレモリー領は懐かしく感じます。
 けど、異世界おじさんと出会う以前の一番辛い時期なのでブラックなネタばかりです。
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