異世界イッセー   作:規律式足

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 読者の皆様。
 スローペースな進みですが、これからもお願いします。



第六十二話 会食

 

 玄関ホールから数時間後、俺達はダイニングルームにいた。テーブルの上の豪華な食事。そこにも懐かしさを感じてしまうが、グランバハマルとは違う点が明確にある。

 席に座るリアス・グレモリー眷属達と、グレモリー一家の皆さんの空気だ。

 食事自体が交渉や陰謀の場である貴族だが、ここでは穏やかな家族の時間である。

 兵藤家の普段の食卓ほどに寛げるわけではない、がそれでもあの死と隣り合わせの空間とは大違いだ。

 

「遠慮なく楽しんでくれたまえ」

 

 当主様の一言で会食は始まった。

 巨大な横長テーブル、天井には豪華なシャンデリア。座っている椅子も装飾細かな高級品だ。泊まる部屋もまた、凄かった。そこらの高級ホテルなんて目じゃない豪華さ、この一部屋で充分じゃないかといいたくなる設備。まあ、寝るだけだしと割り切って意識を切り替えてたところで、アーシアとゼノヴィアが助けを求めるような、縋り付くような表情で訪ねてきた。

 

「はぅぅぅぅ、ひ、一人じゃ、あんな広い部屋は無理ですぅぅ!」

 

「落ち着かないんだ。悪いけれど、イッセーの部屋でいいかな?アーシアも来ているだろうと思ったし」

 

 教会で質素な生活をしてきた二人にとって、グレモリー家の客室は受け付けなかったようだ。落ち着かないと言って俺の部屋に荷物を全部持ってきて引っ越してきてしまった。まあ一人で過ごすよりはマシだからな。グレイフィア様に許可を得て、許して貰えたし。

 女子と同室は体質的に不安ではあるが、ベッドの広さは充分だし、ソファも別室もあるからなんとかなるだろう。

 正直、庭に仮置きしてある旧兵藤邸で寝泊まりしたい気分だけどね。

 話は夕餉の席に戻そう。

 食事のマナーや食べ方に関しては、怪我の功名というか、グランバハマル生活で文字通り命懸けで体得したから問題はない。あっちだとしくじり一つが相手を貶めるネタになるから気を抜けなかったしな。あとドライグによるナビゲートが本当に助かった。

 なんだかんだで神器に宿る存在として宿主を渡り歩いた経験から、様々な知識が豊富でいつも手助けしてくれる。

 

『こういった会食の場で謀殺された赤龍帝も過去にはいたからな』

 

 力ある存在を仕留めるえげつない一手だ。

 使い古された手だが有効な手だからな。

 俺は大丈夫だとして他のみんなだが。

 朱乃さんと木場は、優雅に食べている。眷属でも古株の二人だから慣れているだろうな。

 小さなミリキャス様は上手に食べている。彼は普段からこういった食事だろうし、教育が違うのだろう。

 ここでもアーシアとゼノヴィアは苦戦していたが、そこは日本人ではなく、ナイフとフォークの食事形式に慣れているからなんとかはなっているようだ。

 対面のギャスパーは作法は完璧なのに、縮こまって涙目で食べてる。まあ引き篭もりで一人飯が長かったから仕方ないか。

 意外なのは、小猫ちゃんだ。健啖家の彼女らしくなく食事に手を付けてない。いつもならば、誰よりも食べている筈なのだが。冥界に行く、その時から彼女の様子はおかしくなっていた。

 

「うむ。リアスの眷属諸君、ここを我が家と思ってくれるといい。冥界に来たばかりで勝手がわからないだろう。欲しいものがあったら、遠慮なくメイドに言ってくれたまえ。すぐに用意しよう」

 

 権力者のそういった善意からの言葉は、ある種のパワハラなのよ。

 そう言われて素直にお願いできるほど肝の太い一般人はそういませんから。

 

「ところで兵藤一誠君」

 

 当主様から名指し!何を言われるのでしょうか。

 

「はい。なんでしょうか?」

 

 ポーカーフェイスを維持するんだ俺。

 

「ご両親はお変わりないかな?」

 

「はい。二人とも変わらず元気です。こちらに参る日を心から楽しみにしていました」

 

「ハハハ、ならば喜んで頂けるよう全力で饗さなければな!!」

 

 ゴメンネ、パパン、ママン。

 二人とも饗さされ死するかも。

 

「お父様、ほどほどにお願いします。イッセーのご両親は物欲の強い方々ではありませんし。一般庶民の出で、私達の招き方には慣れてませんから」

 

 本当にそうなんです。

 多分ここに来ても、俺と同じで高級ホテルとか結婚式の会場みたい、とか思うタイプですから。

 

「そうか、では。兵藤一誠君」

 

「はい」

 

 お次はなんですか?

 というかグイグイくるなあっ?!

 

「今日から、私のことをお義父さんと呼んでくれてかまわない」

 

 娘の一眷属に何言ってんだこの人?

 いや、当主様の意図はわかる。赤龍帝だし、ライザー師匠と婚約のアレコレあったし、会談で白龍皇も撃退したからな。

 自陣営に俺を囲い込むのが重要なことなのは理解できる。理解できるけど、これを認めたら人生が詰む。

 俺は他所に移る気なんてないのになー。

 

「ハ、ハハハ。オソレオオイノデー」

 

 最初に断るのは無礼に非ず。それを奥ゆかしさと認識できる文化はある筈だ。

 

「あなた、性急ですわ。まずは順序があるでしょう?」

 

 ヴェネラナ様、当主様をたしなめてますけど、俺を逃がす気はないんですね。

 

「う、うむ。しかし、紅と赤なのだ。めでたいではないか」

 

「浮かれるのはまだ、まだ早いですわ」

 

 ヒィッ?!狩人の目でこっち見たぁ!?

 

『やはりドラゴンは狩られる定め』

 

 悟るな赤龍帝。

 

「そうだな。どうも私は急ぎ過ぎるきらいがあるようだ」

 

 冥界来訪初日にやることではないですよね。

 しかし、グレモリー家当主ご夫妻は奥さまが強いと(メモメモ)。ツッコミは入れるが主導権を握っているサーゼクス様達とは違うんだな。グレイフィア様は注意はしても逆らえないタイプだから。

 

「兵藤一誠さん。一誠さんと呼んでもよいかしら?」

 

 目がね、怖いのよ奥さま。逆らう気力が起きないくらいの眼力なのよ。

 

「モチロンデス」

 

 コレ了承しないと、殺られるよね。

 

「しばらくはこちらに滞在されるのでしょう」

 

「はい、夏休みの期間は、修行や顔合わせなどの行事を除けばその予定です」

 

「なら、ちょうどいいわ。貴方にはリアスの婿としての、ではなく紳士的な振る舞いも身につけてもらわないといけませんから。すこしこちらでマナーのお勉強をしてもらいます。まあ、充分身についているので微調整くらいですけどね」

 

 本音漏れましたよ奥さま。

 あと、グランバハマルライフが魂に染み付いてて、役立って嬉しいけど、やっぱり複雑。

 

「お父様、お母様。先程から黙って聞いていれば、私を置いて話を進めるのはどうなんでしょうか」

 

 リアス部長が感情を抑えながら問いかける。本当はテーブル叩いて言いたいのだろうけど、それは悪手ですからね。

 その一言に、奥さまは目を細める。その顔は俺達を迎え入れてくれた優しい表情ではなく、一族を支える女主人としてのものだった。

 

「お黙りさない、リアス。貴女は一度ライザー殿との婚約を解消してるのよ?それを私達が許しただけで破格の待遇だとお思いなさい。あんな良縁はそう無いというのに」

 

 ライザー師匠との婚約が良縁なのは一切否定できないのが困ります。

 

「レーティングゲームは非公式ながら、悪魔として契約の元で行われ問題はありません。ですが、あの時の貴女のやらかしにより、もはや縁談は望めません。ならばどうすべきか、貴女ならわかるでしょう」

 

 もしや部長って純血悪魔との婚姻が不可能になっているのだろうか?

 

『相棒が原因のアレが、リアス・グレモリーのやらかしとして認識されているんだろうな』

 

 異性との口づけで死ぬ赤龍帝より、主が眷属を仕留めた方が信憑性が高いと判断されたのか。

 

『面白がられて語られたのが、尾鰭ついて広まったんだろ。悪魔だしな』

 

 キス=死。

 そんな相手は美少女でも無理なのか、ヘタレ共め。リアス部長とキスするなら命を賭けるのが普通だろうに。

 

『ライザーなら平気なのが皮肉だよな』

 

 やはり、師匠こそ真の漢。

 そんな風にドライグと語り合い(現実逃避)していると、リアス部長はガクリと項垂れていた。

 

「リアスの眷属さんたちにお見苦しいところを見せてしまいましたわね。話は戻しますが、一誠さんには特別な訓練と授業を受けてもらいます」

 

「はい、喜んで」

 

 悪魔として必要だから、ありがたいと思うことにしよう。それに、学ぶことは嫌いじゃないんだ。

 命を脅かされずに学べることの有り難さは、グランバハマルで思い知ったから。

 

「イッセー。喜んでくれるのね」

 

 項垂れていたリアス部長は顔を上げ、俺の言葉に幸せそうに頬を緩めていた。

 

 アレ、やらかした?

 

『婿教育を受け入れたようにも取れるからな』

 

 ハハハ、ハハハ。

 冥界とは、人生の墓場なり。

 部長は嫌いじゃないし、好かれて嬉しいから嫌ではないけど、イヤァァァァァァ!!

 





 補足・説明。
 
 自身がモテないとは思っていますが、実力や功績から女性が寄ってくることは理解しています。
 原作イッセーとは違い、グレモリー夫妻のやり取りを理解してしまうので、食事をしているのに、皿の上に盛られていた気分でした。
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