異世界イッセー   作:規律式足

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第七話 新たなる道へ

 

 木場に促され再度入室したオカルト研究部部室。

 そこには完全には乾いていない艷やかな紅の髪をした美女(美少女?)であるリアス・グレモリーがソファに腰掛けていた。

 やはり生まれが良いのだろう、座る姿一つにすらどこか気品を漂わせていた。

 さらにはその後ろに控える女性、いつもニコニコスマイルの黒髪ポニーテールの大和撫子と評判の姫島朱乃先輩だ。

 

「あらあらはじめまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞ、以後お見知りおきを」

 

「これはどうも、兵藤一誠です。こちらこそよろしくおねがいします」

 

 丁寧な挨拶。けどこれは笑顔を浮かべているだけで警戒してるな。誰にも分け隔てのない人と聞いてはいたがそう装っているタイプか。

 アリシアさんも意外とそんなタイプだったな。関わる人全てに笑顔で接してはいたけど、素の表情だったのは幼馴染の二人と陽介さんくらいだった。

 するとこちらの挨拶を確認したリアス先輩が話を切り出した。

 

「これで全員揃ったわね。兵藤一誠君。いえイッセー」

 

「は、はい」

 

「私たち、オカルト研究部はあなたを歓迎するわ。悪魔としてね」

 

 リアス先輩のウインクしながらの言葉に、俺は綺麗な人だなとごく普通の感想を抱いた。

 

 

 

「粗茶です」

 

「ありがとうございます」

 

 悪魔なのに日本茶。

 いや紅茶をイメージするのも安直か。

 受け取ったお茶を一口飲めば、心に染みる良いお味。些細な違和感もお茶の美味しさの前に消えはてる。

 

「美味しいです」

 

「あらあら。ありがとうございます」

 

 嬉しそうに笑う姫島先輩に、これは本心からだなと感じた。

 

「朱乃、あなたもこちらに座ってちょうだい」

 

 姫島先輩もリアス先輩の隣に腰を下ろす。

 これで全員座った形だ。

 

「それじゃあ貴方の話を先ず聞いても良いかしら?こちらの事情はソーナから聞いているのよね?」

 

「ええ聞いております。それでは人間に変装した堕天使に俺が告白された日のことからですね」

 

 そこからはざっくりと天野夕麻こと堕天使レイナーレと関わった時のことを話した。

 なるべく感情を込めずに淡々と語る。聞いている彼女達からは同情や怒りを感じた。

 やはりこの人達も良い人なのだろう。

 二度目のジェネレーションギャップにふらつきそうになるも気合で耐えて、全てを語る。

 

「そう、貴方には辛い思いをさせたわね。この地を任された者として謝罪するわ」

 

 辛そうに目を伏せてからリアス先輩は言う。

 ここで謝罪を断るのは失礼だよね。

 

「その謝罪をお受けいたします」

 

 彼女達が悪いとは俺は思わない。

 というかこの人数で都市の管理とか無理があるから彼女達に責任があるとは思えないよ。  

 それに、

 

「(この二天龍を発見しだい抹殺という理屈には正直納得しているしね。殺されたくないから抵抗はするけど)」

 

『納得できる?なんでだ相棒』

 

「(自分の胸に手を当てて考えてみ)」

 

『ドラゴンが暴威を振るうのは生態以上に義務みたいなもんだぞ』

 

「(神器の暴走は?)」

 

『クレームなら聖書の神に言え、創ったのはヤツだ』

 

 それは一理あるけど。

 

「それでねイッセー、貴方が捕えてくれた堕天使はこちらで取り調べをしてから堕天使に引き渡すことになったわ。その、何か報復とかはしなくて良いの?」

 

 俺が望むならば報復は許されるとリアス先輩は言う。けどその返事は決まっている。

 

「良いんですよ。たとえ嘘だとしても告白されて嬉しかったのは事実ですから」

 

「兵藤君」

 

「兵藤先輩」

 

「兵藤くん」

 

 俺の言葉に眷属の三人がこちらを見る。

 馬鹿な男だと笑われても構わない。

 でも告白してくれた女の人を殺した後味の悪さより、強がって騙されたことを笑い話にした方がマシなんだ。

 

「優しいのねイッセーは。

 私だったら躊躇わず消し飛ばすわ。【情愛】を司る悪魔であるグレモリーとしては偽りの告白で相手を騙すなんて許せないものっ!!」

 

 怒髪天をつく勢いで感情と共に彼女の魔力が高まる。情愛を司るだけあって激情家みたいだ。

 

「ウフフ、リアスは【紅髪の滅殺姫】と呼ばれる若手悪魔で天才だけど結構短気なのよ」

 

「朱乃っ!!」

 

 そのやり取りにこの二人は主従というより親友同士なのかなと思った。距離感が他の二人よりも近い感じだ。

 ただ少ししんみりした空気が明るくなった気がした。

 しかし異名か、悪魔社会とかはそんなのをつけるんだな。

 

『悪魔社会に限らず神話関連全体でだな。二天龍以外にも五大竜王など神話に関わらず付けられるぞ』

 

 なるほど。

 

「えっと、それから今度は貴方の神器について尋ねて良いかしら?ソーナからは伝えられてないの。嫌なら無理にとは言わないけれど」

 

「俺も話すつもりでしたが、その話をする以前に同情されて終わってしまったんです」

 

「ソーナァ、あの娘真面目なのにそういうトコがあるのよね」

 

 友人のやらかしに頭を抱えるリアス先輩。

 堅物生徒会長の意外な欠点のようだ。

 

「じゃあお見せしますね。出ろ!!」

 

 もはや呼吸のように当たり前に出せるけど敢えて力を込めてみた。力を込め過ぎたら禁手が出てしまうから力加減に注意だ。

 一瞬光を発した後に俺の左腕に装着された龍の腕のような赤き籠手を見てリアス先輩一同は驚愕する。

 

「まさか、それは」

 

 当然のことだろう。コレはそれほどのシロモノなのだから。

 

「神器の中でも特に強大な力を持つ、神を滅ぼせる可能性を秘めた【神滅具】が一つ、かつて世界中で暴れ狂った二天龍の魂を宿す、所有者の力を倍加し続ける限界なき増幅器【赤龍帝の籠手】です」

 

『相棒が最後に使ったのはいつだったか』

 

「(エルフさんと陽介さんを相手に十秒ずつも時間を稼ぐとか不可能だろうが!!こっちだと使う相手なんていなかったし)」

  

 グランバハマル生活では【赤龍帝の籠手】の状態でも随分と頼りにしたけど、あの二人と知り合ってからは殆ど使用していない。せめて禁手か覇龍かその先の状態で倍加速度を上昇させないと倍加が間に合わないのだ。

 

「なるほど、だから堕天使を返り討ちにできたのね」

 

 神器保有者は多く存在する。

 だが全ての神器が戦闘に向いている訳でないし、保有しているからと現代人が長き時を生きる存在に勝てる道理はない。【神滅具】だからこそ撃退が可能だったのだとリアス先輩は納得したみたいだ。

 

「それだけじゃないですよ、なあ【ドライグ】」

 

『はじめまして、グレモリーの小娘。我が名は赤龍帝ドライグ。兵藤一誠の相棒をしているぞ』

 

 俺の左腕の籠手から響く声にリアス先輩達は今度は絶句したのであった。

 

 

 

「ふう、謝罪以外に勧誘も目的だったけど。こんな逸材を眷属化できるかしら」

 

 お茶と茶菓子でとりあえず一息。

 持ってきた小判最中は中々好評だった。

 

「兵藤先輩、この最中は餡が栗餡で中まで黄金色です」

 

 特に塔城小猫ちゃんが気に入ったようだ。わざわざ半分に割って断面を見せてきた。

 いやさっきまで羊羹を食べてたよね君。

 

『甘いものは別腹なんだろ』

 

 最中も甘いものだから同じ腹だろ。

 

「やっぱり勧誘も目的でしたか」

 

「大戦以後、力ある純血悪魔の減り続ける悪魔は、強い同朋を求めている。それこそ他種族を勧誘し悪魔化するほどに」

 

 リアス先輩は語る。

 

「四大魔王が一角、アジュカ・ベルゼブブ様が創り出した【悪魔の駒】。爵位持ちの悪魔に下賜されるそれを使い眷属とするの」

 

 テーブルの上に並べられるチェスを模した駒。ただその色は白でも黒でも無く、持ち主の髪の色と同じ血のような紅だった。

 魔力に反応し色が変わるのかな?駒から発する魔力は紛れもなくリアス・グレモリーと同じものだ。

 

「貴方の話をソーナから聞いた時、是非勧誘したいと思っていたけど。まさか当代の赤龍帝なんて」

 

『厄災呼ぶ悪名高い赤龍帝だ、覚悟も無く引き入れれば火傷ではすまんぞ』

 

 なんで煽るんだよドライグ。

 でもいくら強い眷属が欲しくても赤龍帝となると話は別になるか。良い人だからいささか残念だな。

 

「リアス・グレモリーを舐めないで赤龍帝。イッセーを勧誘したい気持ちに変わりはないわ。私は神器を抜きにしてイッセーのことは気に入ったもの。ただ所有者の実力で眷属化が可能か決まるから、私の実力ではできないかもと思ったのよ」

 

『相棒は史上最強の赤龍帝だからな、天才程度では足りんかも知れんなあ』

 

 この短い時間で気に入られたのは嬉しい。

 しかし実力かあ、一応鍛えてはいるけど身体能力は精霊魔法頼り。グランバハマルで十年間過ごした肉体には遠く及ばないんだよな。

 

「でも、決めたわ。

 兵藤一誠君。私、リアスグレモリーには七十二柱が一つグレモリーの次期当主として生き、レーティングゲームの各大会で優勝したいという夢があります」 

 

 レーティングゲーム。  

 悪魔の駒がチェスを模していることから生まれた、爵位持ち悪魔達による力比べ、だったな。

 娯楽少ない悪魔にとってもっとも熱狂する催しだとか、ソーナ会長も熱く語っていたやつか。

 

「そのために強い眷属がいる。

 けれど、私は強いだけの駒が欲しいわけではない、何よりも心許せる仲間が欲しい。共に歩み、共に笑い、共に戦い、共に悲しみ、共に泣く、お互いの思いを共有し乗り越えられる、そんな存在が」

 

 リアス・グレモリーによる勧誘。

 赤龍帝の籠手の保有者だからではなく、兵藤一誠という存在を求める彼女の言葉。

 これはかなり、胸に、魂に響く。

 彼女についていきたいとそう思えた。

 

「貴方の望む対価は用意します。

 だから私の、リアス・グレモリーの眷属になってください」

 

 この人なら良い。

 差しだされた彼女のその手を取って、俺はそう思ったんだ。

 

 

 

 こうして俺、兵藤一誠はリアス・グレモリーの眷属悪魔へと成った。

 望んだ対価は両親の安全。

 いつも心配をかけるあの二人には幸せに生きて欲しいからだ。

 眷属化に使用された駒は兵士。

 だけどその数は8つ。

 そうでなければ眷属化できないとはいえ、戦略として先兵要員が一人になるのは不味くないかとつい尋ねてしまった。命の保障されるゲームなら捨て駒となる要員の有用性は計り知れないものがある。

 だが彼女は笑って、最強の兵士なんて素敵じゃないと言った。

 ならその言葉に応えるしかない。

 全く、やる気を引き出すのが上手い主だよ。

 

 幾度もあった人生の転機。

 今回もまた新たな世界を見せてくれそうだ。  

 溢れる期待に胸がワクワクした。

 





 補足、説明
 
リアス・グレモリーが勧誘するとしたらこんな感じかなと思って書いて見ました。
スカウトする時のシーンて成り行きばかりであんまりないので。
イッセーの眷属化了承には力を持て余していたからもあります。
ぶっちゃけ所有している金銀財宝で子孫十代くらいは遊んで暮らせるので。
生きる目的が欲しかった。力を振るう場所を与えてくれる人を彼は求めているのです。
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