異世界イッセー   作:規律式足

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 ちなみに、冒険者生活であまりにも情報が手に入らなかったので貴族に取り入るようにドライグが提案した。
 それは、何気に常識人気質の二人(一人と一匹)は、異世界おじさんのように片っぱしからダンジョンに突貫しようとは、発想すらしなかったし、冒険者ギルドのランク制限をきちんと守っていたのも原因。
 また、一誠が冒険者になった頃には異世界おじさんによる遺跡・ダンジョンの攻略・破壊の被害がとんでもないことになっていたので、瓦礫の山か廃墟(下手したら山ごと消滅してた)を調べようとは考えなかった。
 異世界おじさん登場から、トレジャーハンター系の冒険者は減る一方だったりする。


第七十三話 レーティングゲーム前夜。

 

 引き裂かれた猫姉妹の絆を取り戻せた俺は、その報酬として、スタイル抜群の黒髪猫耳美女のディープキスを賜り、死んだ。

 頬を焼けた餅みたいに膨らませたアーシアの神器による治療と、ライザー師匠からこんなこともあろうかと渡されていたフェニックスの涙により無事蘇生できた。

 なお、蘇生するたびにドライグがカウントをつけていた。そのうちギネス登録をしようと考えているらしい。既に死亡数、蘇生数は歴代ダントツトップとのことだ。いや普通一度死んだら終わりだし、蘇生は不可能な奇跡の筈なんだが。

 そして治療後に、黒歌さんのキスを上書きしようとリアス部長達が迫ってきたのだが、フェニックスの涙の無駄だとグレイフィア様が一喝してくださった。確かに無駄だし、短期間で何度も蘇生することは身体に良くないからな。

 

『もはや死亡が状態異常の一つになっているぞ、相棒』

 

 瀕死であって死亡ではない筈なのだが、もはや大差ないのだろう。

 そして、黒歌さんの扱いについてだが、サーゼクス様が各方面に手を回されるそうだ。本人が拒否したが、何らかの功績があれば彼女の指名手配は解除されることだろう。

 

 そしてシトリー眷属とのゲーム決戦前夜を迎えた。

 俺達はアザゼル先生の部屋に集まり、最後のミーティングをしていた。

 潜入しようとしていた禍の団メンバーをリアス・グレモリーが眷属と共に退けた、と表向きはなっているので、部長はまた評価を得ることになった。リアス部長本人は自分は何もしていないと不満気だが、あの場に向かったこと自体が評価されるべきことだろう。

 さて、ミーティングだ。

 

「とりあえずイッセーが単騎で突っ込めば勝ちだな」

 

 と、アザゼル先生が初っ端から身も蓋もないことを言い出した。

 その通りではあるんですが。

 

「そうね。けど、それでは意味がないわ」

 

「だがな、下手な拘りで勝ちを逃す。それもまた愚か者と認定されるぞ」

 

 アザゼル先生のその真理ともいえる言葉。

 そう、リアス部長はレーティングゲームにおいて常に厳しい目で見られている。

 神滅具所有者が眷属にいる。

 その赤龍帝は当代白龍皇より遥かに強い。

 他の眷属も、禁手に至った者、聖剣使い、雷光使いと悪魔に有利な者たちばかり。

 今まで多くの戦果を上げている。

 あのライザー・フェニックスに勝利している。

 という前提が部長はあるからだ。

 サイラオーグ・バアル以外には勝利して当たり前と見られていて、その上で眷属に頼り切らず、主としての腕前を見せるのは並大抵のことではない。

 最善手を選べずに、不様を晒さずに勝つ。

 それが部長が強いられている立場なのだ。

 最も、サイラオーグ様のように後援している者達に気を使わないですむ分だけマシかもしれない。

 才無き身でバアル家次期当主の座を勝ち取った彼は、その座すら盤石ではない。

 若手悪魔の中で彼こそがレーティングゲームの勝敗に今後を左右される存在なのだろう。

 皮肉な話ではあるが、禍の団と相対するという功績を上げる機会に彼は恵まれていないのだから。あの騒動との遭遇を運が良いとは口が裂けても言えないことだが。

 

「ま、理解しているならいいさ」

 

 アザゼル先生は手を振りながら言う。

 理不尽な評価もあらかじめ理解しておけば、前提として踏まえて行動できるからだ。

 

「リアス、ソーナ・シトリーはグレモリー眷属のことをある程度知っているんだろう?」

 

 先生の問いに部長は頷く。

 

「ええ、おおまかなところは把握されているわね。例えば、イッセーや佑斗、朱乃、アーシア、ゼノヴィアの主力武器は認識しているわ。まあイッセーに関してはまだ色々ありそうだけど」

 

 古代魔導具やら鎧型魔獣とかありますよ。 

 ライザー師匠とのレーティングゲームも録画されて一部に公開されているそうだ。

 

「つまり、リアス・グレモリーの死の口づけは当然警戒されているわけか」

 

「イッセー以外に唇を許す気はないし。イッセーは誰に口づけされても死んじゃうでしょ」

 

 儚くてすいません。

 異性とのマウストゥマウスで心臓止まるのは理不尽過ぎると思います。緊急時にどうする気だ。

 

『人工呼吸はあんまり効果ないってデータでているからな。やるなら心臓マッサージだ』

 

 さらにギャスパーの能力と神器、小猫ちゃんの素性もバレているらしい。まあ隠蔽してないから上級悪魔なら調べればわかることらしいけど。

 

「ほぼ知られているわけか。で、お前のほうはどれくらいあちらを把握している?」 

 

「ソーナのこと、副会長である『女王』のこと、他数名は知っているわ。一年生の娘とか一部判明していない者もいるけど」

 

「不利な面もあると。もしかしたら向こうがゲーム対策で隠してたのかもな。戦闘中に神器が進化、変化する例もある。そこに細心の注意をはらえばいい。相手の数は八名か」

 

 戦闘中に神器の進化。

 確かに俺も、禁手と覇龍はそうやって会得したからな。

 

『戦った相手が同一人物かつ、結局負けたけどな』

 

 陽介さんは理不尽の権化だから。

 

「『王』、『女王』、『戦車』『騎士』がそれぞれ一名で、『僧侶』、『兵士』が二名ずつで八名ね。まだ全部の駒を使い切ってなくて、数ではこちらと同じ」

 

 同じ人数。

 タイムアップで勝つには必ず打倒しないといけないわけだな。

 残数で勝利する逃げ切りタイプ戦略をとるプレイヤーもいるみたいだし。

 

「レーティングゲームは、プレイヤーに細かなタイプをつけて分けている。パワー、テクニック、ウィザード、サポート。この中ならリアスはウィザードタイプ。いわゆる魔力全般に秀でたタイプだ。朱乃も同様。木場はテクニックタイプ、スピードや技で戦う者。ゼノヴィアはスピード方面に秀でたパワータイプ、一撃必殺を狙うプレイヤーだ。アーシアとギャスパーはサポートタイプで、アーシアはウィザード寄りでギャスパーはテクニック寄り。小猫はパワータイプ。んでイッセーは万能型だ」

 

 俺だけ区分から外れてますがな。

 俺以外からもそんな視線を受けてアザゼル先生はガリガリと頭を掻く。

 

「仕方ねえだろ。パワータイプでも通じる身体能力に、ヴァーリの動きを見切れるテクニックタイプであり、大概の魔法より強力な精霊魔法を操るウィザードタイプを兼ねて、赤龍帝の籠手のギフトや精霊魔法によるサポートもできる。むしろ何が出来ないんだお前」

 

 神聖魔法が使えないから治療は無理かな?でも回復の呪符は百枚単位で持っていて、複製も無理すればできるけどね。

 

『まさか倍加にあんな使い方があるなんて』

 

 神器が適当に創られたのは本当だよね。

 陽介さんの思いつきを試してやってみたけど、なんかできたし。というか倍加じゃなくて複製じゃん。

 

『できて消耗品ぐらいだけどな。ま、バグの一つだろ。大地やら水の倍加の延長かもな』

 

 篭手やら鎧やら発動だけで無から精製してるから、その機構を用いているかもね。

 そのうち、サーゼクス様達に報告しないと。

 

『また貯金が増えそうだな』

 

 呪符を売り出したら巨額の富になるよね。

 金銀財宝なんか能力で複製しなくても増えるから困る。

 アザゼル先生がホワイトボードに十字グラフを書きながら説明している間に、俺とドライグはバレたらやばい情報を言い合っていた。

 しかし、仲間がタイプ分類される中で一人だけハブかれるのは寂しいもんだ。

 アザゼル先生はパワータイプのゼノヴィアと小猫ちゃんを丸で囲いながら言う。

 

「パワータイプで一番気をつけなくてはいけないのは、カウンターだ。テクニックタイプで一番厄介な部類。四大魔王ならファルビウムだな。カウンター系能力やら魔法、神器でもかなりの種類がある。これが使える相手と戦う場合、小猫やゼノヴィアのようなパワータイプはカウンター一発で形勢逆転されることもある。カウンターってのはこちらの力に相手の力が加わって、自分に返ってくるからな。自分が強ければ強いだけダメージも尋常じゃなくなる。

 ちなみにイッセーは使えるか?」

 

「使えますよ。反障魔法」

  

 佩剣修道会の隊長が使っていた厄介な魔法。貴族の子飼い時代に争って殺されてかけたな。多分あの人も魔王に匹敵するくらい強いと思う。

 何せ当時の俺が最大に倍加した魔力弾も無傷で反射してきたし。

 

「なんでもありかお前」

 

 便利だから頑張って覚えました。陽介さんには通じなかったけど。

 

「バグは置いといて。タイプごとの相性ってのはかなり戦いに影響する。戦う相手の見極めはレーティングゲームでは特に重要だ」

 

 その言葉に全員が考えこむ。ライザー師匠とのゲームみたいな遭遇戦だとすれば、なるべくタイプの違う相手と組んだ方が良いわけだ。

 

「とまあ、色々説明したが。お前達が今回のゲームで必ず勝つと言われている。俺もお前達が勝つと思っているが、望んだ形で勝てるとは断言できない」

 

 望んだ形の勝利か。

 俺が出張り過ぎるとそれだけで終わりだよな。

 

「俺は長く生きてきた。その中、多種多様、様々な戦いを見てきた。だからこそ、言えるんだよ。勝てる見込みが一厘以下でも勝利してきた者もいるとな。可能性を甘く見るな、絶対に勝てると思うな。だが、絶対に勝ちたいとは思え。それが合宿で俺がお前達に伝える最後のアドバイスだ」

 

 そう言ってアザゼル先生は部屋から出ていった。その後、グレモリー眷属みんなで戦術を話し合ったのだ。

 

 見極めるべきは、ソーナ・シトリー様の狙い。勝利条件か。

 彼女の夢を考えれば、明白だが。果たしてどうやってそれを為してくるのか。

 カギとなるのはこの合宿期間。どんな日々を過ごしてきたかだな。 

 制限はかけられている。

 けど、絶対に勝とう。

 そう俺は誓ったのだ。

 





 補足・説明。

 イッセーが貴族の子飼いになった理由に異世界おじさんが微妙に絡んでました。またドライグの経験からの助言からです。
 
 グレイフィアの一喝
 フェニックスの涙について言いましたが、イッセーの身も案じています。

 サイラオーグの立場
 彼は一番勝ち続けないと危うい立場です。武勲を上げようにも禍の団と絡めませんし。

 リアスの死の口づけ
 いつの間にか冥界で広まっているリアスの必殺技。彼女との接近は死を意味する。原作のオッパイビームとどっちがマシかな?

 呪符の複製
 異世界おじさんに言われて倍加をやってたらなんか出来た。
 あまりにもヤバいのでまだ秘匿してます。
 ハンターハンターのギャラリーフェイクみたいな感じ。

 佩剣修道会隊長 フレア・ギルガレア
 彼の反障魔法は、タンニーンの息吹も反射します。剣の腕も英雄クラスでこっちの世界だと人類最強レベル。
 イッセーも相性が悪いため、タイマンバトルは避けれるなら避けます。
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