異世界イッセー   作:規律式足

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 原作改変ありで、閲覧注意です。
 


第七十五話 ゲーム開始。

 

 定刻だ。

 店内アナウンスからゲームスタートが告げられ、仲間達からエルフさん顔で見られ続けるという恐怖体験がようやく終わる。

 小猫ちゃんは手を離してくれないし、皆からの圧は強まるしでとても生きた心地ではなかった。

 そして今回の試合だが、制限時間が三時間という短期決戦方式。

 レーティングゲームは開始からルールを告げられ対応を求められることが多いようだ。

 

「さあ、私のかわいい下僕悪魔達!全力で臨んで、そして勝つわよ!!」

 

「「「「「「「はいッ!!」」」」」」」

 

 全員、気合が入っていた。合宿での成果をなんとしても見せないとな。

 

「では、ゼノヴィア、行くよ」

 

「ああ、木場」

 

 木場とゼノヴィアは、立体駐車場に繋がる道から進軍する。警戒していた車だが、これは作り物で使用できなかったらしい。車に乗って特攻とかされたらたとえ悪魔であっても対応に困る手段だからな。

 

「俺達も行こうか」

 

「はい」

 

 俺と小猫ちゃんは店内から本陣を目指す。途中で敵と遭遇したら撃退する予定だ。

 二組による進軍、これなら俺に頼り切りとは周囲に思われない筈だ。どちらの組が適当に本陣に辿り着いても、木場とゼノヴィアなら聖魔剣と聖剣でソーナ様相手だろうと勝機はある。

 ちなみにギャスパーだが、単独行動で監視と報告の予定だったが、アーシアの使い魔であるラッセーと行動することになった。ラッセーはアーシアの使い魔だが、アーシアは部長と朱乃さんと一緒だからラッセーがギャスパーについても問題はない。それにラッセーも小さいながらもドラゴンだから、眷属悪魔相手でも時間稼ぎや逃げることくらいはできるだろう。

 ペット扱いされがちなラッセーだが、ドラゴンだからか頭が良い。皆に配られている通信機器も普通に使用できるくらいだしな。最も何を言っているのか正確に理解できるのは、同族のドライグか契約者であるアーシアぐらいだが。

 

「ラッセーも頑張れよ」

 

「ガー♪」

 

『この頼りない吸血鬼を守ってやろう、と言っているぞ』

 

「誰が頼りない吸血鬼だよ、ラッセー!!」

 

「ププッ」

 

「今笑ったよねえっ?!僕を見て笑ったよねえっ?!」

 

 うん、なんかラッセーとギャスパーってすぐに喧嘩をしだすなあ。

 

『同レベル』

 

 言ってやるなドライグ。

 さて、木場達も行ったからそろそろ出発だな。

 

「イッセー、よろしくね」

 

「イッセーさん!頑張ってください!」

 

「うふふ、カッコいいところを期待してますわ」

 

 リアス部長達の声に後押しされて俺達は本陣から出発した。

 俺と小猫ちゃんは走るわけでもなく、歩くわけでもない、微妙な歩幅で進んでいた。

 これは今回のフィールドが理由だ。店内は走ると音が響き、相手に存在を知られ、距離を測られる可能性がある。長い一直線のショッピングモールだから所在がバレたら先手をとられかねないからな。

 そういえば、ソーナ様の眷属に弓兵や魔法の使い手はいただろうか?この場所で狙われたら洒落にならないだろう。破壊し尽くさなければよいのだから、多少壊しても問題ないからな。

 とはいえ、いくら大きなデパートでも人が居なければ端から端まで歩いても十分とかからない、注意しながら進むとしよう。

 開始から五分程たった。警戒しながらの移動だからようやく三分の一といったところだな。

 すると隣で小猫ちゃんが猫耳を頭に生やしていた。恐ろしく早い猫耳生やし、俺であっても見逃してしまった。

 その猫耳がピコピコと動いている。さらに尻尾も生やすのだから殺人的な可愛さになっている。もしも森沢さんが依頼で見ようとしたら対価で死ぬレベルだな。

 小猫ちゃんは前方を指さして言う。

 

「動いてます。真っ直ぐ向かって来ている者が二人」

 

「わかるのかい?」

 

「はい。現在、仙術の一部を開放してますから、気の流れでそこそこ把握できます。詳細まではわかりませんが」

 

 制限が無ければ精霊魔法で探るんだがな。大まかな位置が分かるだけでやりやすくなる。今後に活かせそうな能力だ。

 

「あとどのくらいでかち合うかな?」

 

 まだ俺にはわからない距離だ。

 

「このままのペースなら、おそらく十分以内です」

 

 となれば向こうは誰が来るか。

 なるべくカウンタータイプがこちらに来れば良いが。木場はともかくとしてゼノヴィアは危ういからな。

 すると小猫ちゃんが俺のことを頬を赤らめながら真剣に見つめていた。

  

「どうした?」

 

「イッセー先輩が、戦士の顔をしていたので少し見惚れていました」

 

 戦士ね。そんな上等な者になったことはないんだがなあ。と、来たか。

 

「上っ!」

 

「なるほど、そうきたか」

 

 天井へ一直線に伸びるロープ、いや匙の神器のラインか。モンキーコングのロープジャングルのように移動していたのか。しかも背中に誰かを乗せながらとは器用な真似をする。

 

「兵藤か!まずは一撃っ!!」

 

 俺は小猫ちゃんを脇に抱えて飛び退く。

 匙による落下の勢いに二人分の体重を乗せた一撃はデパートの床にぶつかり、すさまじい音をたてる。

 

「よー、兵藤」

 

「どーも、匙」

 

 参ったな。匙の神器なら木場達の方が有利だったんだが。アスカロンもゼノヴィアに貸してしまっているわけだし。

 挨拶しながら立ち上がった匙の隣には背中に乗っていた少女が並ぶ。確か一年生で、普段から匙の後ろについて行動していたな(だから匙は一年男子からも睨まれていたわけだが)。

 

「神器の形が変わっている。進化したのか」

 

 以前はデフォルメされたトカゲの頭部がくっついてる籠手のようなものだったが、今は黒い蛇が何匹もとぐろを巻いている形だ。

 

「まあ、俺も修行したってわけさ。おかげでこれだ。で、天井から店内の様子を見ようとラインを天井に引っ付けて上がってみたら、呑気に歩いている二人が見えたんで、チャンスとばかりにターザンごっこで奇襲さ」

 

「奇襲するなら吠えずにやれよ」

 

 陽介さんを見習え。

 あの人は状況とか話の流れとかすべて無視して襲いかかるからな。

 

『気づいた時には地に伏してたな』

 

 うん、何度もね。

 相対し、それぞれ神器を構えあった時、耳につけた通信機器から鳴き声が響いた。

 

「ガガガガーッ?!」

 

 通訳お願いします。

 

『敵本部近くで不審な物音がしたからギャスパーが偵察に向かったら、敵眷属にニンニク塗れにされて気絶し捕獲されそうになったので、雷撃で牽制しながらギャスパーを抱えて本部へ撤退を開始します。だそうだ。』

 

「有能過ぎるぞラッセーっ!?」

 

「ギャー君」

 

『幼生体とはいえ使い魔の森を一匹で生きてきたドラゴンだしな』

 

 でもいくら相手が眷属で転生悪魔とはいえ、ギャスパーを抱えて逃げきっているみたいなんですけど!?

 

「リタイアはさせられなかったが、これで監視役は潰したな」

 

 匙も連絡を受けたのかにやけながら言う。

 

「ギャスパーくんはひっかかったんだ」

 

 勝ち誇った表情で説明する匙。

 いやもう大体わかったんでいいです。

 

「とりあえず今日からギャスパーに毎食ニンニクを食わせようね小猫ちゃん」

 

「ニンニク丸ごと焼きにすりおろしニンニクをタップリかけて食べさせましょう」

 

 ニンニク克服を視野にいれてなかったのはこちらのミスとはいえ、あまりにも情けない。

 とはいえ、念の為ラッセーをつけていた部長の英断だな。

 

「ギャスパーが撃破されなかったのは、不幸中の幸いだな。じゃ、そろそろ始めるか」

 

 赤龍帝の籠手を匙へと向ける。

 それだけでシトリー眷属の二人は、ジリっと後ろに下がる。だが、

 

「く、気圧されてたまるかー!!」

 

 匙が己を奮い立たせ、神器のラインを店内に伸ばしながら突っ込んできた。

 

「まずは、様子見だな」

 

『(いいのか相棒?)』

 

(瞬殺はやろうと思えばできるさ。でも感じが悪いのを承知の上で匙がどこまでやれるか見たい。そうした方がお互いの為になるしね)

 

『(レーティングゲームだから仕方ないか)』

 

 匙の神器『黒い龍脈』はラインを繋げて対象のエネルギーを吸収し弱らせることしかできなかった。だが、

 

「仁村!さっき店で取ってきたグラサンだ!」

 

 その指示で意図がこちらにも伝わるよ。光で目を潰す狙いなのは明白だ。

 ライトにラインを繋げて魔力を送ることで光を弾けさせるか。

 少しだけ目を瞑る俺に、匙が好機とばかりに攻撃するが、それをスルリと躱す。

 

「!?」

 

 戦闘中に視界が悪いのはいつものこと。この程度なら問題ない。

 すると匙はこちらに手を向け、魔力の弾を放とうとする。

 妙だな?

 あれだけの魔力量が匙にあったか?俺達はラインを繋がれてないから仲間から引っ張ってきているのか?

 放たれた魔力の一撃は、床に大きな穴を空けた。生身でくらったら不味いな。

 

「やるね、匙」

 

「余裕ありまくりでよく言うぜ兵藤。

 だけどな、俺は本気だよ。俺は本気で史上最強の赤龍帝と呼ばれるお前を倒す」

 

 匙の瞳は決意に満ちていた。凄まじいほどの本気度が俺には眩しく映る。

 匙はさらにもう一発魔力弾を放つ。

 高出力の魔力の塊。大きさは大したことないのは、建物をできるだけ破壊しないというルールの為か。

 食らえばダメージを負う一撃を躱すと、その魔力弾は店舗の一つを破壊した。

 やはりおかしい。

 匙も神器あれど特別な血統ではないから、魔力が低いのだと本人が言っていた。なのにどうやってこの威力をだしている?

 

『よく見ろ相棒。ラインがどこに繋がっているのかを』

 

「なるほど。自分の命を魔力に変換しているのか」

 

 神器のラインは匙本人の心臓へと伸びていた。

 

「そうだ。魔力の低い俺が高威力の一撃を出すにはこれしかなかった。神器の力で命を魔力に変換する。見ての通り『命がけ』ってやつだ」

 

「この短期間によくここまで応用できるようになったもんだな。でもそれはやり過ぎると死ぬぞ」

 

 匙に感嘆しつつもそう言えば。

 

「ああ、死ぬ気だよ。死ぬ気でお前達を倒すつもりだ。お前に夢を馬鹿にされた俺達の悔しさがわかるか?夢を信じる俺達の必死さがわかるか?この戦いは冥界全土に放送されている。俺達を馬鹿にしてた奴らの前でシトリー眷属の本気さを見せなきゃいけない!」

 

 はあああああ。

 匙のことは友人だと思っているし、ソーナ様もその眷属達も良い人達だと知ってはいるが、こればっかりは受け付けない。

 上層部にも笑うだけの背景やら理由があったんだけどな。そもそもソーナ様が本気だとは欠片も思ってないみたいだし。

 かといってその夢について議論したいわけでも、正論言って打ちのめしたいわけじゃない。

 というか冥界全土に放送って、それでニンニク作戦はどう思われるのやら。

 まあいい。

 俺がやるべきことは勝つことだ。

 

「匙が『命がけ』の本気なら、こちらも見せよう。赤龍帝の籠手の新たな姿を」

 

 空気が震え、周囲の力が突き上げられた左腕、赤龍帝の籠手に集まっているように感じていく。そしてその力が高まりきったその瞬間大きく輝き、それは明らかとなる。

 赤龍帝の籠手に悪魔の駒の効果を反映させた特化形態が一つ。

 

「『赤龍帝の戦鎚』」

 

 天高く突き上げられた赤龍帝の籠手、その拳部分にスイカサイズの大きくて赤い球体がついていた。

   

「「「「「「「「カッコワルッ!!」」」」」」」」

 

 その言葉を兵藤一誠とドライグを除く、その場の全員と観戦していた者たちの大半が叫んだそうだ。

 

「使いやすいんだけどなあ」

 

『やっぱり棘付き鉄球にすべきだったか』





 補足・説明。

 モンキーコング→ドンキーコング
 
 原作とは違いギャスパーは撃破されずに離脱しました。ラッセーのおかげですが。
 逃げられたのはギャスパーがある程度コウモリ化していて軽かったのもあります。ラッセーの優秀さもありますが。

 はっきり言って匙君のやり口に作者は同調できず、反論を二千字くらい書きましたが、作品に合わないので書き直しました。あくまでイッセーはソーナの夢に触れないスタンスでいこうと思います。  
 イッセーが上から目線で嫌なヤツに見えてしまうのが難点ですね。

 赤龍帝の戦鎚 
 ブーステッドギアハンマー。
 殺さないで殴り壊すのに最適な形態です。
 見た目はカッコ悪いですが、かなり使いやすいです。また内部から鎖をだしてフレイルとしても使用可能です。
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