異世界イッセー   作:規律式足

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 オリジナル設定があります。
 長かった五巻もそろそろ終わりです。



第七十七話 ソーナ・シトリーはグランバハマルに敗れる。

 

「イッセー先輩、ラインに繋がったままで大丈夫なんですか?」

 

 ソーナ・シトリー様とのレーティングゲーム。同性で同い年で同じ駒だったからと親しかった匙元士郎を撃退した俺達は、匙に付けられたライン、神器による管を辿っていた。

 

「大丈夫だよ、血が吸われているだけ。献血しながら運動している感じかな」

 

 こんな使い方もするとは驚きの発想だ。これならバレなければジャイアントキリングも可能じゃないかな?

 

「駄目じゃないですか。すぐに抜いてください」

 

 小猫ちゃんがラインを抜こうとひっつこうとするが、俺はそれを軽やかなステップで躱す。

 

「ギャスパーが退いて偵察役がいないんだから、手がかりを無くすわけにはいかないでしょ」

 

「ですが」

 

「慣れてるから平気平気」

 

 それにこれは多分ソーナ様の切り札だろう。ならば打ち破るのは向こうが勝ちを確信したタイミングだ。あの手の戦略家タイプは策が上手くいっていると認識しているタイミングがつけいる隙となる。

 ゲームももう終盤。

 木場達とゼノヴィアも、遭遇した敵眷属三人を撃退したみたいだしな。

 

「凄いですね、木場先輩達」

 

「木場は実戦最強の天然理心流だからな。それと念の為、フェニックスの涙を木場に渡しておいて正解だったよ」

 

 こちらの知るシトリー眷属、「女王」の森羅椿姫先輩はカウンタータイプの神器持ち。グレモリー眷属で一番カウンタータイプに弱いのはゼノヴィアだから、万が一に備えて渡してあったのだ。

 本陣にはアーシアが居るし、俺には必要ないと判断されたからだ。

 木場は、夏休み中にテンションの高い師匠によりズンバラリされ続け実戦のカンを磨き、悪魔特攻の聖魔剣を振るうのだ、まず負けることはないだろう。戦闘力なら木場はグレモリー眷属の二番手になる程だからな。

 

「部長達も相手本陣に向けて進軍すると言ってたから、最後まで気を抜かずにいこう」

 

 俺がそう言うと、小猫ちゃんは気を抜かずにでも、ラインは抜いていいような、と言いたげな表情をしていた。

 けど、策を破って別の策をだされるよりマシな状況なんだよね。ソーナ様にしてみたら赤龍帝である俺を倒せれば戦果としては充分なんだし。

 

 

 ショッピングモールの中心に中央広場のような場所がある。円形のベンチに囲われた大時計があるそこは、待ち合わせの場所にもよく利用される。

 そこに、ソーナ会長と眷属の最後の一人である「僧侶」がいた。

 

「ごきげんよう、兵藤一誠君、塔城小猫さん。その姿、匙は禁手を引き出すことが出来なかったんですね」

 

 冷静な眼差しでこちらを見た後、残念そうに目を伏せた。いやまあゲーム開始から禁手の維持をし続けること自体はできたんだけど、それをやると本当に蹂躙になってしまうからなあ。

 結界すら張られていない状況で、俺の胸から伸びるラインが「僧侶」の方へ伸びていた。

 すると、俺と小猫ちゃんが来た方向とは逆側から、木場とゼノヴィアが現れた。

 

「ソーナ、大胆ね。中央に来るなんて」

 

 ここで部長達も合流。朱乃さん、アーシアに続いてギャスパーとラッセーもついてきていた。

 グレモリー眷属は全員残っており、シトリー眷属は後二人のみ。勝敗は明らかだ。

 

「そういう貴女も「王」自ら移動しているでありませんか、リアス」

 

「ええ、どちらにしてももう終盤でしょうから」

 

 部長の策は読まれてはいたが、自力の差と用意により乗り越えることができた。

 ギャスパーが危うかったが、リアス部長の評価が下がることはないだろう。

 

「完敗。なんでしょうね。

 私達は、策で覆せぬほど自力で貴女達に及ばなかった。それだけ兵藤一誠君加入からの貴女達の成長はむちゃくちゃ過ぎる。周囲の評価と勝敗の予測は正しかったと言わざるを得ないですね」

 

 まるで降伏するかのようなソーナ様の言葉。けれどその言葉とは裏腹に目は何かを狙っているかのようにギラついている。

 

「それでも、貴女のプライドと評価は崩させて貰います」

 

 すると僧侶の人が見せつけるようにラインの繋がった輸血パックを取り出す。

 

「これがわかりますか?サジは神器を用いて兵藤君の血液を吸い取っているのです。本人が倒され、意識を失おうとも神器の効果は消えていません。それだけサジは本気だったのです」

 

 これは匙が普通に凄いよな。

 神器は本人の精神状態によっては発動すらできなくなる代物だ。機械のようにスイッチを押せば電力がなくなるまで動き続けるような使い勝手の良い物では断じて無いのだ。

 ましてや空間隔てて、自身が倒れていても発動し続けているのだから。

 

「如何なる強者も、油断と慢心の前に打倒されるもの。禁手すら使わない傲慢。それが貴方を打ち負かすのです!!」

 

 レーティングゲームのルール上、戦闘不能状態になったら強制的に医療ルームへ転送。

 だったらそろそろってとこか。

 

「イッセー?!」

 

「イッセー君?!」

 

「ホイッと」

 

 ブチリとラインを引き抜く。

 体調に問題はない。

 失血でよろめくことを予想していたソーナ様達は驚愕していた。輸血パックを見るにかなりの血液を吸われているのに平然としているからだ。

 

「なぜ、なぜ、平気なんですかっ?!」

 

 最後の切り札も破られてソーナ様は叫ぶ。だがその理由は明白過ぎる。

 

「俺がグランバハマルで、どれだけ手足を切り飛ばされたと思う。どれだけ傷ついて血を流したと思っている」

 

 経験差。

 陽介さんとの決闘の日々により、俺はどれだけ血を流せば意識を失うかを、正確に理解している。

 

「人生で転んで膝を擦りむいた回数より、手足を切り飛ばされた回数の方が遥かに多いんだよ」

 

 だからまあ、失血で動けなくなるとかないんだよね。慣れてるし。

 

「侮っていたようですね、貴方を」

 

 そんな失血死寸前を繰り返して生き抜いてこれたのは神聖魔法で治療してくれたアリシアさんのおかげだけどね。アーシアの神器やフェニックスの涙じゃ失血は治らないけど、神聖魔法は物によっては治療というよりは人体創造みたいなもんだから。

 とはいえ、キツイか。

 胸に手を当てて神器を発動させる。

 

「ブーステッドギアギフト・ブラッドブースト」

 

 赤龍帝の籠手の力で体内の血液を倍加。これは痛みやら生命力と違って、今の状態でも使えるくらい熟練している(それだけ使う回数が多かったわけだが)。

 

「そんな、事まで」

 

 最後の一手も破られてソーナ様は息を呑む。

 

「伊達や酔狂で史上最強を名乗ってはいませんよ」

 

 匙元士郎が、龍王に至る器であることは間違いない。けれどそんなに容易く負けてしまったら、グランバハマルでの十年が何だったんだ、という気持ちになるだろう。

 俺を超えるならグランバハマルで十年過ごしてからにして欲しい(本音)。

 

「もはや打つ手無し、ね」

 

 ソーナ様はそう言って息を吐いた。

 レーティングゲームはゲームに過ぎない。だから勝ち目が無くなったらすぐに投了することが普通だ。如何に致命的なダメージを受けたら転移するシステムであっても本人に傷が残る事に変わりはないのだから。

 

「敗因は、情報収集不足。そして普段の姿を知るゆえに兵藤一誠君を軽んじてたこと、制限をかけられたことで反発してしまったのもありますね」

 

 そういえば俺が戦うタイミングとかあんまり居なかったからな。

 まあ、陽介さんもそうだけど分かりにくい強さってやっぱりあるし。

 特に怪我らしい怪我とかしないと、戦った相手に理由を求めてしまうよな。

 

「けれど、何もせずに投了する気はありません。

 私の水芸、とくと披露しましょうか」

 

 ソーナ様は大量の水を変化させ、宙を飛ぶ鷹、地を這う大蛇、勇ましい獅子、群れをなす狼、そして巨大なドラゴンを幾重にも創り出した。

 見事な操作だ。

 その美しき水芸に見惚れそうになるが、こちらも部長が魔力を練っているようだ。

 最後は「王」対決。

 それも悪くはないが、

 

「リアス様」

 

 その彼女の手を赤龍帝の籠手を発現した手で握る。

 

「イッセー?」

 

「夢が為、全霊を賭けるソーナ・シトリー様の覚悟に応えるため、こちらも奥の手を使いたいと思います」

 

『つっても、出来たばかりの奥の手だけどな』

 

(お披露目するには悪くないだろ?)

 

『まあな』

 

 俺の目をしばし見つめたリアス様は、フッと笑いその嘆願を受け入れてくれた。

 

「わかったわ。存分に使いなさい。

 そして冥界に、世界に魅せつけてあげて、

 リアス・グレモリーに、史上最強の赤龍帝ありと」

 

「承知いたしました。我が愛しき主」

 

 主に礼をして、ソーナ様と主をサポートしようとする僧侶に向き合う。

 

「お見せしよう。神器の新たな可能性を」

 

「『禁手化』」

 

 それはただの禁手化ではない。

 

「合力」『異装』

 

 悪魔の駒に宿る己の主の魔力を合わせて為す、未だかつてない形態。

 

「『滅魔赤龍帝鎧』」

 

 まるで赤龍帝を全身鎧としたような、通常の禁手とは違う姿。

 デザインと各所の宝玉はそのままに、全体を細身として、兜から魔力で形どられた主のような赤髪が背へと広がり、自身の周囲に圧縮された滅びの魔力の球体を恒星のように展開している。

 赤龍帝の戦鎚などが、悪魔の駒の増加率や特性を赤龍帝の籠手に反映させた形態なら、この滅魔赤龍帝鎧は悪魔の駒の主との接続を反映した形態。

 本来無色透明な悪魔の駒は、下賜されることによって所持者の魔力へと染まる。

 眷属の中には主の魔力属性を扱えるようになる者もいることから明白だ。

 リアス・グレモリーの眷属だから至れる形態。そして神器と悪魔の駒の可能性を俺は世に示したのだ。

 なお、悪魔の駒の開発者と、神器研究者が、狂喜乱舞しながら俺を調べたいと叫んでいたと、後日知ることになります。

 

「恐ろしいですね、史上最強の赤龍帝」

 

 俺の姿に嬉しそうに笑うリアス様と、冷や汗を垂らしながらも新たな可能性に目を輝かせるソーナ様。

 ちなみに仲間のグレモリー眷属の皆さんからは、エルフさん的な圧力を感じます。

 そちらは見たくないよー。

 

『エルフ並木だな、怖っ!?』

 

 見たくないから。

 

「では」

 

「尋常に」

 

「「勝負!!」」

 

 シトリーが才女。大望抱く水舞の戦略家ソーナ・シトリーと、リアス・グレモリー眷属・史上最強の赤龍帝兵藤一誠は同時に攻撃を向けたのだった。

 

 

【投了を確認。リアス・グレモリー様の勝利です】

 

 





 補足・説明。
 
 滅魔赤龍帝鎧
 悪魔の駒の主との繋がりを利用した禁手形態。
 ぶっちゃけ劣化サーゼクスだが、滅びの魔力の使い手は全員劣化サーゼクスだから問題ない。
 発動時に肉体の滅びの魔力化も可能。
 赤龍帝の能力と滅びの魔力の完全併用が可能な為、普通に強い。けどやっぱり劣化サーゼクス。

 木場とゼノヴィア。
 木場の三段突き体得により、師匠である沖田総司が歓喜して合宿中はズンバラリされまくった。極まった天然理心流と聖魔剣、さらに保険であるフェニックスの涙によりソーナ眷属三人を返り討ちにした。

 失血状態。
 兵藤一誠には慣れた状態。
 けれど他の悪魔にも有効な一手。
 
 エルフ並木。
 自分の力もあの形態に活用して欲しいと全員が思っていたとか。ちなみに観戦していたライザーも叫んでいた(レイヴェルはエルフ顔)。

 五巻もあと一、二話で終わりそうです。
 感想、評価お待ちしています。
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