異世界イッセー   作:規律式足

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 ヘルキャットあんまり関係ないですね。
 オリジナル設定と考察があります。
 そして、いよいよ皆大好きゲスで女好きなあの人が再び登場(?)します。



第七十八話 冥界合宿のヘルキャット エピローグ

 

 ゲーム終了後、俺を待っていたのは合力異装に感極まって口づけをしてきたリアス部長と、エルフ顔になったグレモリー眷属の皆だった(ラッセー除く)。

 そのため、終わったと気を緩めた俺の心臓は止まり(+恐怖によるストレス)、医療施設送りになってしまった。残心を早く身につけないといけないな。

 結果、勝利したにも関わらずリアス部長の異名というか悪名が冥界に広まってしまった。

 俺達、グレモリー眷属は勝った。

 けど、勝って当然な戦力差があったと明確だったためそれほど評価はされずに終わった。評価が下がらなかったのは、眷属が誰一人として取られなかったからだろう。ラッセーには本当に感謝である。

 最後のソーナ様との一騎打ちも、むしろソーナ様の実力を知らしめた形になった。

 けど、それは両者にとって良い結果だったのだろう。少なくても俺は悪い気分ではないのだから。

 フェニックスの涙をグイと一飲みして、匙の病室に行くことに決めた。アレをやるにはまだ間に合うだろうからと。

 

「これを受け取りなさい」

 

 サーゼクス様の声が匙の病室から聞こえてきた。見ればサーゼクス様は匙に何やら渡しているようであった。

 

「あの、これは?」

 

 緊張して震えている匙。

 

「これはレーティングゲームで優れた戦い、印象的な戦いを演じた者に贈られるものだ」

 

 俺に敗北した匙を評価する。

 階級社会で身分制度があるが、冥界の悪魔はそこら辺がきちんとしていた。

 対価。

 悪魔においてそれは何よりも大切なことなのだろう。

 サーゼクス様と、ソーナ会長の言葉に震える匙。俺は御二方が病室から去るまで、その場を後にした。

 

 

「よお、匙」

 

「兵藤か。なんだ見舞いか」

 

「そんなトコだな」

 

 収納空間から冥界産の謎の果物を取り出す。林檎みたいな形で色は赤、ギョロギョロ動く一つ目玉がチャーミングで、とても食欲をそそらないね。

 

「待ってろ、今剝いてやるから」

 

「自分で食え」

 

 見舞いの品が拒否されたので、自分でシャクシャク齧りながら話かける。

 

『話すか食べるかどちらかにしなさい、はしたない』

 

 シャクシャク、ゴクリ。

 味は良いから困る。グロいものほど美味い、これは鉄則です(○味しんぼ風)。

 

「『食うんかい』」

 

 匙とドライグのツッコミを聞き流してから完食し、本題へと入る。

 

「良いゲームだったな、匙」

 

「負けた相手にそれを言うのかよ」

 

 確かにシトリー眷属は敗北したが、評価は高まった。また本気であることが認められたのは大きいだろう。

 

「なあ、兵藤。お前は、俺達の夢をどう思っているんだ?」

 

 辛そうな表情で匙は訊ねてきた。

 彼らの夢。

 冥界に身分差の無いレーティングゲームの学校を作ること。 

 

「もうはっきり言うけど、君達の理想通りにはいかないと思っているよ。学校自体はできて、需要はあるだろうけど、どこかで妥協はするね」

 

 なぜ上層部に笑われたのか、いくつか理由は思い当たるが、とりあえず分け隔てのない学び舎は不可能だ。

 

「な、なんでそう思う!?」

 

 キレたりしないのは思う所があるからかな?

 

「だってその学校ができても、上級悪魔の子供達は通わないし」

 

「!?」

 

 その時点で、ある意味破綻している。

 分け隔てのない学び舎、それは上級・中級・下級、全ての子供達が通うということ。

 だが、ソーナ様の夢の学び舎ができたとしても、学校を選択する自由があるなら、上級悪魔は伝統ある今までの学校を選ぶだろう。

 それでは分け隔てのない学び舎ではなく、中級・下級悪魔の学び舎だ。むしろそう言えば、あそこまで笑われずにすんだのかもしれない。

 

「ま、色々な利点があれば通うかもだけど。そもそも貴族である上級悪魔には、求められる専門的な技術や学ぶべきことが多い。学校ができても、結局は上級悪魔コースとか貴族科は必須だろうね」

 

 レーティングゲームだけを教える学校。

 それでは教育機関として成り立たない。そんなことだけに時間を割けるものは余裕があるものだけ。

 専門学校のように、通常科目・基本科目+特殊科目となるだろう。

 だが、そうなると彼らの理想通りではない。

 

「上級悪魔は、マナー一つとっても学ぶことが多いからね」

 

 グレモリー家でやったからこそわかる。

 マナー、教養、ダンスと下級悪魔には必要ないことだらけ。

 しかし教育機関に、必要になるか分からない技能を教える余裕はないだろう。

 

「分け隔てがない、ということが無理なのか」

 

 逆もまたしかり、上級悪魔の跡取りが、従者教育されても仕方ないだろう。

 項垂れる匙だが、新しく物を始めるのはそういうことだ。やるべきこと全てを知り尽くして、夢を見る者などいないだろう。

 

「けど、需要ってのは、どういうことだ?」

 

「和平は三大勢力に留まらない。他神話とも友好関係を結ぶみたいでね。今後の眷属探しが困難になると予想できるんだよ」

 

 今まで悪魔達が種族問わず好き放題に眷属を確保できていたのは、全ての勢力と敵対してきたからだ。

 だが、和平ともなればそうはいかない。

 今まで問題だった、追放問題や差別問題も解決に乗り出すだろうから、神器持ちとて眷属化できるか微妙だろう。

 

「教育と訓練を施された、人工神器を与えられた、意欲ある悪魔達は、眷属として不足ないだろうからね」

 

 堕天使にその存在を知らされた人工神器。これが供給できるなら育成機関としての利点は充分だろう。

 最も、特別な眷属を欲しがる貴族が、そんな誰でも持っている存在を欲しがるかはまた別だろうが。

 それも、教育機関として長時間一緒に過ごせれば解決するかもしれない。

 

「不可能、ではないんだな」

 

「あくまで素人考えの思いつき、専門家に意見を求めるべきだけどね」

 

 こんな考え程度は誰だって思いつく。重要なのはそれを本人達がどう受け取るかだ。

 

「もうすこし、視野を広げなよ。そもそも紀元前から革命やら身分・権利・自由とかで揉める人類をリアルタイム視聴、場合によっては介入してきた上層部の皆さんに、分け隔てない学び舎とか真剣に捉えるわけないから」

 

 ま、ソーナ様が本気だとは認識されたみたいだけどね。

 

「だな。俺達はまだ足りないんだな」

 

「それがわかってもらえた所で、本題。

 お前らさ、生命力を気軽に使い過ぎだ」

 

 俺は今回のゲーム最大の問題箇所について追求する。

 

「そうしないと、勝てねえじゃねえか」

 

「その発想が広まること自体が危険なんだボケ。あのさあその使い方だけどさ」

 

 捕えた敵対勢力の非戦闘民の生命力でもできるんだぞ。と、冷たく威圧を込めて告げる。

 その言葉に顔を青褪める匙。

 自身の寿命を使えば、そら美談だろう。

 だが普通はそんなことはしない。

 生命力や寿命を使うなら、使って問題ない連中のモノを使う。

 事実、グランバハマルでは、古代魔導具にそのような大砲や結界装置が存在した。

 お手軽で損失も軽微で威力は絶大。

 ならば権力者はやる。やることが彼らの義務だ。

 

「教える子供達を、鉄砲玉というか消耗品の爆弾にされかねない発想だったと自覚しろ馬鹿共」

 

 それは匙だけではない。

 他の眷属も寿命に負担ある反転なる、アザゼル先生が使用禁止を進言する技術まで使用した。

 今回は美談で終わり、かつ今後のために情報操作はされるそうだが、当人達に自覚が無さ過ぎるんだよ。

 それに、何よりも。

 

「お前達が死んだら悲しいだろうが」

 

 勝つ為に命を賭けられる。

 友人にそんなことされて、嬉しいなんて俺は思えない。グランバハマルはほら、確実に治るから別だったけど。あんな桁違いな治癒魔法なんてこっちにはないのだから。というか町の教会ですら当たり前に死者蘇生できるからねグランバハマル、ゲームかっての。

 

「すまねえ」

 

 俺の言葉と想いは届き、匙は自身の行動を理解したようだ。

 

「だから今回だけだぞ」

 

 理解してくれたら、もう大丈夫だろう。

 

「形貌変躯」

 

 だから治そう。

 

「二十三歳の姿だ!!これ即ち、俺が最もエネルギー操作に長けていた時代ィィィ!!」 

 

「え?」

 

 ふぅ、さてやるか。

 変身の魔法で最適な姿になり、悪魔の状態ではできないことをやる。

 

「ブーステッドギアギフト、エナジー(生命力)ブースト」

 

 赤龍帝の籠手を匙に当てて、ギフトを使用する。こればかりはこの姿じゃないとできないからな。

 光に包まれた匙は、消費した分の寿命が補充されていた。ま、これも限界はあるから多用はできないけどな。

 

「兵藤、お前」

 

「たく、本当は戦争時じゃないと使いたくないんだぞコレは」

 

 寿命を賭けて戦うことは想定していた。だがゲームでやられるとは思ってなかったがな。

 

「すまない、すまなかった。ありがとう」

 

 涙を流して謝罪と礼を言う匙を残して、俺は病室を後にした。

 

 その後、自分の病室に戻った俺はリアス部長に抱きしめられ再び死にそうになったりした。

 そして、北欧の主神たるオーディン様が訪ねて来られたのだが。

 

「辛かっただろう。よく帰還できたのう」

 

 と、優しく労るように抱きしめてくださった。

 それだけされて去っていかれたので、俺達とお付きのヴァルキリーさんは頭に?マークを浮かべることになった。

 というか、グランバハマルを知っていたのかな?オーディン様。

 もしやこれから主神格に会う度に同じことをされるのでは、と俺は予感したのだった。

 

 

 八月後半。

 これにて、冥界で過ごす夏休みは終わり。

 実は両親が冥界中にとんでもないことをやらかしていたのだがそれはまた後日。

 グレモリー本邸前で式典のような別れをして、俺達は帰りの列車を駅で待っていた。

 思い返せば楽しいことばかり、よい夏休みだった。今から松田と元浜に色々ぼかして話すのが楽しみだ。

 ワイワイと皆で時間を潰していると、

 

「アーシア・アルジェント。やっと会「赤龍帝・兵藤一誠ーーーー!!」」

 

 アーシアの名を呼ぶ声に反応して振り返れば、なんか言った当人が勢いよく突っ込んできた男性に轢かれて吹き飛ばされていた。

 

「会談の日、レーティングゲームでも、アンタの強さに痺れた。だから、

 是非、是非とも!!

 俺、ゼファードル・グラシャラボラスとその眷属一同をアンタの舎弟にしてくだせえ!!」

 

「「「「「「お願いします!!」」」」」」

 

 リアス部長達と同格である若手悪魔からの突然の申し出と土下座。

 衝撃的な出来事である。

 が、俺達はそれ以上に。

 

 勢いよく轢かれて線路に飛び、ちょうどタイミングよく到着した列車にぶち当たり吹き飛ばされ、前方に展開された転移魔法陣に呑み込まれてしまった、誰かの方が気になっていた。

 

 というか、アレ。ディオドラ・アスタロト様じゃね?

 

 土下座を続ける、ゼファードル様一同。

 どこかに転移してしまった主にオロオロするディオドラ様の眷属達。

 宇宙猫になるグレモリーファミリー。

 列車から飛び出して安否確認をする運転手と、冥界最後の日は混沌に包まれたのであった。

 





 補足・説明。
 
 イッセーはゲーム終了後 また死にました。リアスの異名は広まります。
 
 冥界産果物。
 目玉がチャーミングで美味しい。

 ソーナの学校。
 できても上級悪魔は通うのかな?というのが疑問ですので。あと卒業生に需要あるかどうかが問題かと。

 匙のやらかし。
 自分や味方より、敵や立場の低い存在を使うのが普通。生贄砲はありふれた最終兵器。幸い、その考えに到った者たちは黙っています。
 似たようなモノをイッセーはちらほら見てます。

 変身
 元ネタはソウルイーターの吸血鬼。作者の大好きなキャラです、ノアは許さん。
 ちなみに最強状態でギフトをやると強すぎるので、やられた側が弾けます。強者以外にできるのは二十三歳時のみ。

 オーディン
 グランバハマルを知るからこそ心底同情。

 行き遅れヴァルキリー
 セクハラしない上司にビックリ。

 ディオドラ
 轢かれて冥界の辺境へ転移、帰還までしばらくかかる模様。
 列車の転移魔法陣は、列車が潜るタイミングで行き場所が確定される。
 幼少時から書いてる、絶対許さないヤツノートにゼファードルの名前を書くと決意。

 ゼファードル
 舎弟になるため走ってきた男。 
 個人的な伝手がないため、このタイミングしかなくて焦っていた。ディオドラには気づいてない。

 ゼファードル眷属
 兄貴、兄貴、兄貴、兄貴!!

 ディオドラ眷属
 ザマァ、超ザマァ。
 
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