嶋㟢陽介こと異世界おじさんサイドです。
基本的に兵藤一誠の話ですが、思いついたらこちらも書きます。
グランバハマル帰りの赤龍帝・兵藤一誠が眷属悪魔化という新たなる人生の転機を迎えたちょうどその時、グランバハマル帰りのアラサー動画投稿者の嶋㟢陽介こと異世界おじさん(一家離散済)は住居・生活基盤・その他諸々を用意してくれた現在バイトとか色々している甥っ子・高岳敬文(両親離婚済)と彼に絶賛片思い中の現役女子大生の眼鏡美人・藤宮澄夏(中学生で超進化済)と記憶再生の魔法を楽しんでいた。
悲劇・喜劇・惨劇・笑劇・なんでもありありの異世界おじさんの記憶。
それは大変ではあるが時に単調にも感じてしまう現代人生活の日々において程よい刺激(トラウマ級な話もチラホラ混じっているが)となっていた。普通に見てて面白いし。
そんな日々の中、再生された映像によく登場するある人物に藤宮澄夏さんが興味を持った。
「おじさん、このよく出る仮面の人って誰なんですか?なんかやたらとおじさんと親しいですけど」
画面に映る一人の男性。
目元だけ空いている顔の全面を覆う赤い仮面をつけ、冒険者らしからぬ貴族のような服装の人物である。
「確かにおじさんにしては心開いている感じがするよね。仮面の冒険者ってキャラが立ってて良い感じだけど」
だがそんな格好の謎の人物ではあるが、焚き火を異世界おじさんと談笑しながら囲っていたり、赤い龍の腕のような籠手を装着してゴブリンの大軍を異世界おじさんと共に撃退したり、風呂を一緒に覗こうと異世界おじさんの手を引いたりしていた。
「彼か」
すると異世界おじさんは両掌を合わせ、神妙な表情となる。そして異世界で出会った生涯初めての人間の友達(エイリアンソルジャーのボスキャラが異世界おじさんの友達)について語り出した。
「彼の名は兵藤一誠」
「え?」
「まさか」
「俺と同じ転移者にして親友と呼べる存在、そしてなんかよくわからないけど赤龍帝らしい」
赤龍帝という単語は覚えていたがよくはわかっていないらしい。実は何度か赤龍帝ドライグ本人(竜?)が自身についての説明をしていたのだが、異世界おじさん・嶋㟢陽介はロールプレイングゲームが苦手でそういった説明を覚えられない人物だった。
「「おじさんの親友ーー?!」」
「え、そっち?」
どうやら甥っ子達には転移者であることや赤龍帝であることよりも異世界おじさんに親友が居た事実の方が驚くことらしい。まあ幼少時からSEGA漬けな日々を送ってきた彼の過去と常日頃の言動からそう思われて当然であるのだが(現在通話ができないガラケーを所有して何ら問題ないくらい連絡相手がいない人物である)。
また彼はグランバハマル生活十六年の付き合いがあるエルフを嫌なヤツと認識していたことや、初対面の相手には偽名を名乗ることを含め、他者に対する警戒心が尋常ではない。
そんな異世界おじさんが親友などと呼べば驚いて当然だろう。
「兵藤君は中学三年生の頃に道路に落ちていたエロ本を拾おうと飛び出して、トラックに轢かれグランバハマルに転移してしまったんだ」
(きっかけソレ?!)
(原因が酷すぎる!!)
「グランバハマルに転移してからは相棒であるドライグ君に色々助言してもらいながら苦労して都市部で冒険者をこなし、元の世界への帰還方法を探していたらしい。俺とはある日遺跡(後に崩壊)で偶々出会ってね。色々あった後で同じ異世界人だからと協力し合うようになったんだよ」
その時のことを思い出して朗らかに笑うおじさんだが、その初邂逅時に兵藤一誠と激戦を繰り広げ、遺跡と赤龍帝ドライグの心を粉砕し兵藤一誠を禁手へと至らせたことを追記しておく。異世界おじさんには良い思い出の一つだが、赤龍帝ドライグにとっては只の人間に完膚無きまで敗北したグランバハマル二度目のトラウマである(一度目は魔封鳥に殺されかけたこと)。
「彼とは色んな冒険をしたなあ。
手を取り合い共に苦難を乗り越えたもんだよ」
なお記憶の精霊が気を利かせておじさんの後ろでその時の映像を出してくれていた。
雑多な農具を持つ人々から必死に逃げ惑うおじさんと一誠。
武器を持つ人々から周囲を囲まれ叩かれまくるおじさんと一誠。
怪しい格好をした人々に磔にされ火炙りにされるおじさんと一誠。まさに惨憺たる光景だった(一誠は冒険者として名を馳せていたがおじさんと一緒に居たためオークの仲間扱いされた)。
(乗り越えてねえー!!)
(被害者増えてるだけー!!)
そんな異世界おじさんにはよくある、あんまりすぎる過去の映像を二人は引き攣った表情で観賞する。
「あ、この人が仮面を着けてるのは異世界人だからですか?おじさんみたく迫害されないためにとか」
「いや格好良いから着けてるのかも知れない。俺も異世界転移したら仮面を着けるし」
藤宮さんの疑問と異世界ファンタジースキーな敬文君の解釈。
「藤宮さんの意見で当たりだよ、彼は俺みたくオーク扱いとかはされなかったみたいだけど日本人顔だからか、異国人として差別はされたんだって」
喋るオークとして見世物小屋に銅貨3枚で売られその後色々あった異世界おじさんよりはマシな状況とはいえ、意外と普通な感性を持つ兵藤一誠にとって周囲から差別される日々がどれほど辛かったかは筆舌に尽くしがたい。その点あっさりと割り切れたように見える異世界おじさんのメンタルの強さは英雄級なのかもしれない。
(容姿は良いのか)
(迫害に差別ってやっぱりエグいなあ)
「彼と過ごす時間は楽しかったよ。人付き合いが苦手な俺にしては話が弾んだんだ、エロ話はついていけなかったけどかわいい娘の話はできたからね。あと故郷を懐かしんでは叫んだもんだよ「ゲームしたーい」とか「コーラ飲みたーい」とか「カップ麺食べたーい」とかね。そんな些細なことが本当に楽しくてさ」
「見てる限りご飯は美味しそうだけど、コーラとカップ麺は流石に無いですからね」
「そういえば異世界の知り合いではあそこまで話が盛り上がったりはしてないよね」
「今思うと同じ価値観を共有できる存在、それが何よりも救いだったんだな」
外の景色へと視線を向ける異世界おじさん。
親しい友人を思い出す彼の姿はどこか懐かしむようでいて寂しそうに見えた。
「あ、でもこの人も帰還したんならこっちで会えるんじゃないですか?」
「そうそう、探すの大変でもさ同じ日本なんだからきっとまた会えるよ」
彼から伝わる寂しさを察した二人が元気つけるように声をかける。彼らからしても世界を越えた再会はとても素敵な事だと思えたのだ。
しかしそれは決して叶わぬことである。
「それはできない、できないんだ」
首を振るおじさん。
あの日の決断に後悔はない。
再び会えないだろうと理解してなお自らのお互いの目的のため帰還を選んだのだから。
「兵藤君は、なんと此処とは違う別の日本、平行世界の人間だったんだ」
「「ええーっ!!」」
おじさんが告げる新たな衝撃の事実に二人は再度叫び声を上げるのであった。
なお赤龍帝に関してはスルーされていた。
異世界おじさん、遠き世界で友を想う②へ続く。
補足、説明
冒険者時の兵藤一誠の格好。
赤い仮面に貴族のような服、全身を包めるマントを羽織っていて腰には剣を装備していた。怪人みたいな派手な格好だがドライグの趣味と人を寄せ付けないため。
なお兵藤一誠はこの格好で覗きを実行する。
続編は。一巻の終わりくらいを予定。
この作品だと異世界おじさんサイドのネタが少ないので。