異世界イッセー   作:規律式足

80 / 98

 ゼファードルは負けたけど、心は折れなかったので舎弟にはなりました。 
 また、眷属のゼファードルを慕う姿に、サイラオーグも感心したとか。



第八十話 二学期開始。

 

 暗闇の中、俺は全力で走っていた。

 走って、走って、先をゆく彼らに追いつこうと、先をゆく彼らを行かせまいと手を伸ばしていた。

 駄目だ、そっちに行ってはいけない。

 だが、伸ばしたその手はあと少しのところで届かずに空振る。

 それに気づいた二人はふと振り返り、大丈夫だよと言わんばかりに儚げに笑う。

 ぼんやりと浮かびあがるシルエット、それは親友の姿をしている。

 彼らの進む先には、恐ろしい形相の(婚期に焦った)人魚のようなナニカがいた。

 駄目だ、いかないでくれ。

 行くな、行っては駄目だ。

 誰かあの二人を、

 俺の友人達を助けてくれー!!

 

「任せるにょ」

 

 そ、その声は?!

 

「ミルたーんっ!!」

 

 親指を立てて笑う彼女は、ヒルマノスガタで紐ビキニだった。

 

 

「って夢を見たんです」

 

「イッセー、貴方疲れているのよ」

 

「ミルたんって誰なんすか兄貴?」

 

 冥界から帰宅して二週間ほど経ち、夏休みも無事終わって二学期へ突入した。

 部長達だけでなく小猫ちゃんも布団に乱入するようになったりと色々変化があったけど、それ以上の出来事と言えば。

 

「あ、ご飯は大盛りですよね」

 

 割烹着を着て、皆に給仕するゼファードル・グラシャラボラスの存在だったりする。

 

 夏休みが終わったら舎弟ができました。

 

 サイラオーグ様とのレーティングゲームで敗北しても彼の心は折れなかった。

 その為こうして、俺の舎弟として兵藤家に住み込んで仕えてくれる。

 まあ、意外と皆も受け入れてくれたから問題はないけど。眷属のロロロは人懐こくて可愛いし。

 新たな日常に秋の訪れを感じていた。

  

 あとなんかディオドラ・アスタロト様が突然アーシアに求婚してきたけど、「兄貴の女に手を出すなコラァ!!」とゼファードルが追い返していた。

 

 

 夏が明け、すでに新学期。二学期だ。

 始業式もとっくに終え、駒王学園は九月のイベント、体育祭の準備へと入っていた。

 この時期になると生徒達に変化が起きる。

 夏休みを境に今までの自分を変え、大胆なイメチェンを果たすのだ。一年の時もあった恒例行事みたいなものだが、それでも今年もいる。

 男なら髪を美容院で仕立て上げ、女子なら今流行りのスタイルへと変える。

 夏前まで、冴えなかった者達がイメージを新たに二学期を迎えようとするわけだ。

 つまり夏休みは爆死したというわけだが、それは目を逸らしてあげよう。気遣いと優しさは超大事。

 夏を境に自分を変えて、二学期こそは彼女をゲット!という彼らの意気込みを感じた。

 

「そして童貞卒業か。夏は男子高校生の壁みたいなんだからな」

 

「ああ、この機会に逃せば、ハロウィンやクリスマスなどのイベントに乗り遅れるしな」

 

「二人共。なんで煤けているのさ」

 

 夏休みを乗り切った我が悪友二人。

 今年は俺不在でのびのび過ごせた筈なのに。なんか疲れ果てて全体的に白く脱色していた。

 

「「海で人助けしたら八百比丘尼とマブダチな人魚姫で童貞喪失しかけて紐ビキニな益荒男が金髪イケメンと助けにきて無双して海を割ってドラゴン波だったんだよ」」

 

「なるほど大体わかった」

 

「「わかるのかよ」」

 

 つまり一夏の大冒険ミルたんを添えて、というわけか。冥界に行った俺より濃い夏休みだな。

 

「えっと、なら部長から友人とか紹介してもらおうか?」

 

 松田と元浜の評判は悪くないし、結構いけると思うけど。

 

「「しばらくは女性はいいよ。だって捕食者だし」」

 

「気持ちはわかる」

 

 リアス部長とか身体を吸ってくるしね、他の娘達もだけど。

 クラス内の同級生男子達の何人かが貞操を捨ててまるで上位者であるかのように振る舞っている中で、俺達三人はどんよりとしていた。

 

「「お前と一緒にされるとなんか殴りたくなるけどな」」

 

「小猫ちゃんのお姉さんにディープキスされて死んだり、部長にキスされて死んだり、舎弟が出来たくらいだよ」

 

「満喫してんじゃねえか夏休み」

 

「死にはしたのかよ夏休み」

 

「「そして舎弟とか何があった?」」

 

 舎弟ってなんなんだろうね(遠い目)。

 

「童貞臭いわねー」

 

 くくくと嘲笑いつつ男にとっての即死呪文を唱えながら登場したのは同じクラスの眼鏡女子・桐生だった。ほら見ろ、通りすがりの山田君と佐藤君が泡を吹いて倒れたじゃん。

 

「救助、救助」

 

「死因は、童貞っと」

 

 そんな流れ弾を食らった彼らを手慣れた手つきで介抱する悪友二人。

 

「桐生!俺達を殺しにきたのかよ」

 

「あのな、イッセーほどじゃないにしても、年頃の男子生徒はゲーム中盤のジェンガくらい脆いんだぞ」

 

 押したら崩れるねソレ。

 

「ふふふ、どうせアンタ達のことだから、意味のない夏を過ごしたんでしょうね」

 

「舐めんな大冒険だったわ」

 

「救助活動協力で感謝状貰ったぞ」

 

 彼女作りは良かったのか悪友達よ。

 

「ところで兵藤。最近、アーシアがたまに遠い目になるんだけど、何か理由を知ってる?」

 

 それが本題か。

 桐生もなんだかんだで友達思いなヤツだからな。

 理由は心当たりがある、ディオドラ様からの求婚だろうな。

 その件で、集中できないのか。教科書を逆さまにしていたり、先生に呼ばれても反応できなかったりとなったりしているからな。

 クラスの女子と談笑しているアーシアを見る。彼女はすっかりクラスの人気者だ。男子すら恋愛やら下心より癒やし目的で話しかけるような存在だ。

 よくわかるよ、アーシアと一緒にいると心が落ち着く気分になるからな。

 俺の視線に気づいたアーシアへ手を振った。笑みを浮かべるアーシアだがどこかぎこちない、やはり気にしてはいるのか。

 

「昔助けた立場が上の人に、恩をきっかけに求婚されているからな」

 

 ゼファードルに追い返されながらも、必死に叫んでいたよなディオドラ様。

 ラブレターやら、映画のチケット、商品券、とかもアーシア宛にしつこく送ってくるし。ゼファードルが眷属と共に分類、返送してくれて助かっているよ。

 というか、舎弟になってそうそう熱心に仕え過ぎだよ彼ら。今度労ってやろう。

 

「アーシアのことだから助けた男なんて山程いるでしょ」

 

「下心なく癒やす姿が想像できるな」

 

「それを自分は特別だと勘違いして、迫るたあ。アーシアちゃんを困らせるだけだろ」

 

 ウンウンと頷く三人。

 理解力半端ないなあ。

 

「だから、さ」

 

「「「ソイツを殺せよお前」」」

 

「物騒な上、アーシア大好きだよね君達」

 

 気持ちはわからんでもないけど、立場上逆らえんのよ俺は。

 同格であるゼファードルが対応してくれて本当に助かっているよ。

 リアス部長も抗議をしてくれてるし。

 そんな風にディオドラ様抹殺を悪友達に要請されていると。

 

「お、おい!大変だ!」

 

 突然、男子の一人が急いで教室に駆け込んできた。あのクラスメイト諸君、一斉に俺を見るの止めてくれません?何かあった=俺、なのか。

 そいつは友人から渡されたミネラルウォーターを一口あおり、気持ちを落ち着かせると、クラス全員に聞こえるように告げる。

 

「このクラスに転校生が来る!女子だ!」

 

 ゼファードルじゃなくて良かった。

 

「「「「「ええええええええっ!!」」」」」

 

 クラス全員の驚きの叫びを聞き流しながら俺はそう思った。

 しかし、このタイミングならオカルト関係ではあるだろうな。

 

 なお、その予想は当たって転校生は教会の悪魔祓いの紫藤イリナだった。

 紫藤イリナ、一応俺の幼馴染。小さい頃に外国へと引っ越し、教会で祝福を受けて、プロテスタント専属の聖剣使いとなる。

 聖剣強奪事件の際にゼノヴィアと共に来日したが、コカビエルに敗北しエクスカリバーを奪われた後に治療のため保護された。

 その際に、ゼノヴィアは神の真実を知り追放されてしまうが、その場に居なかったイリナは元の所属にエクスカリバーの残骸を持って帰ったのだ。

 それ以来、三大勢力会談に出席しなかったため会わずじまいだったが、このような形で再会とは。

 ゼノヴィアと共に訊ねたら放課後にオカルト研究部で話すそうだからそれまで待つか。

 しかし、ゼノヴィアとは喧嘩別れに近かったらしいが、抱きつけるくらい親しいみたいでよかった。ただ、悪魔と触れ合う時は十字架は外すのがマナーだからな。

 

 

 

「紫藤イリナさん。貴女の来校を歓迎するわ」

 

 放課後の部室。オカルト研究部メンバー全員、アザゼル先生、ソーナ会長、ライザー師匠、ゼファードルが集まり、イリナを迎えいれていた。

 悪魔多いな!?というか師匠とゼファードルは関係ないよな!?リアス部長が顔を引き攣らせているじゃん。

 

「はい!皆さんはじめまして!ではない方もいますが、なんか増えてますね!紫藤イリナと申します!教会、いえ天使様の使者として駒王学園に馳せ参じました!」

 

 元気に挨拶をするイリナを全員で拍手する。

 ようするに、天界からの支援メンバーとして派遣されてきたわけだ。三大勢力の和平の地なのに、悪魔と堕天使はいても天使はいないもんな。教会も廃墟のままだし。

 一応は、町全体に天界からのバックアップはあるようなのだが。

 イリナが「主への感謝〜」とか「ミカエル様は偉大で〜」とか始めだしたのを皆で苦笑しながら聞いてあげていた。

 だからゼファードル、カチコミじゃないから身構えるな。

 その信仰心の強さに、神の死を知っているのか不安になる。皆で口裏を合わせた方が良いのかもしれないな。

 

「お前さん、「聖書に記された神」の死は知っているんだろう?」

 

「あの、アザゼル先生」

 

「アホか。ここに来た以上は、そういうのを込みで任務を受けてきた筈だ。ここに関係者が来るということは、ある程度の知識を持って足を踏み入れていることになる」

 

 先生の言葉にイリナも頷く。

 まあ、ライザー師匠とゼファードルも教えられたくらいだしな。二人とも物凄くどうでもよさそうだったけど。

 

「もちろんです。堕天使の総督様。安心して、イッセー君、私は主の消滅をすでに認識しているの」

 

 これから徐々に広めていくのかな?まあ、一般信徒はオカルト存在の実在自体知らないだろうし。

 

「意外だね。信仰心の強いイリナが何のショックも受けずにここに来ているとは」

 

 アーシアとゼノヴィアもこの世の終わりみたいな反応だったからな。イリナもそうなりそうなもんだけど。

 するとその言葉がきっかけでイリナが泣き出し、ゼノヴィアとアーシアの三人でお互いを慰めあいだした。

 こればかりは俺は同調できないからな。木場も気持ちはわかるみたいだけど、彼女達ほどではないみたいだしな。

 

「ミカエルの使いってことでいいんだな?」

 

 三人が落ち着いたところでアザゼル先生が確認する。

 

「はい、アザゼル様。ミカエル様はこの地に天使側の使いがいないことに悩んでおられました、現地にスタッフがいないのは問題だと」

 

 言いたいことはわかるけど、ぶっちゃけ天使のできることって、堕天使もできるしなあ。

 

「あんまり人数はいらねえんだけどなマジで。治安にしても問題ねえし。グレモリー眷属、シトリー眷属だけでも充分機能しているのに、グラシャラボラス眷属まで加わったしよ。俺はいらないと言ったが、それでも駄目だと強引に送ったのがコイツなんだろう」

 

 ため息をつきながら先生は言う。

 治安はミルたんとフリードが守っているからなあ。俺達ははぐれ悪魔討伐なんて殆どしてないくらいだし。

 でも三大勢力融和の地、だから天使がいないのも問題になるか。

 部長も人数が増えたことに複雑そうだったけど「いろいろとタメになりそう」って点と「名誉ある仕事でもあるわ」と任された責任に燃えてるしな。

 イリナは唐突に祈りのポーズをすると、彼女の体が輝きだし、背中から白い翼が生えた。

 見た目だけではなく、存在そのものが天使になっているのか?

 

「紫藤イリナといったか。お前、天使化したのか?」

 

「天使化、そんなことが可能なのですか?」

 

 だったら今までやってそうだが。

 

「いや、今まではなかった。理論的なものは天界と冥界の科学者の間で話し合われていたが」

 

 考え込むように目を細める先生にイリナが頷いた。

 

「はい。ミカエル様の祝福を受けて、私は転生天使となりました。なんでもセラフの方々が悪魔や堕天使の技術を転用して可能にしたと聞きました」

 

 三大勢力融和の効果ってわけか。

 案外天使も悪魔も存在自体は近いのかもな。

 

「四大熾天使、他のセラフメンバーを合わせた十名の方々は、それぞれ、Aからクイーン、トランプに倣った配置で『御使い』と称した配下を十二名作ることにしたのです。キングは主となる天使様です」

 

 天使がトランプでやるなら、そのうち日本神話が将棋の駒で真似しそう。

 

「なるほど。『悪魔の駒』の技術か。あれと堕天使の人工神器を応用しやがったんだな」

 

 アザゼル先生が研究者らしく反応する。おそらく後一歩まで出来ていたものを、技術提供で完成したんだろうな。

 

「それでイリナはどの札なんだ?」

 

 トランプのカードなら強化率とかどうなるのだろうか?強弱くらいはありそうだけど。

 

「私はAよ!ミカエル様のエース天使として光栄な配置を頂いたのよ!もう死んでもいい!主はいないけど、ミカエル様のエースとして生きていけるだけで充分なのよぉぉぉっ」

 

『代償行為』

 

 言ってやるなドライグ。

 立ち上がるにはそれも必要なんだろう。

 目が爛々と輝いて、右手の甲には「A」の文字がある。

 

「さらにミカエル様は悪魔のレーティングゲームの異種戦として『悪魔の駒』と『御使い』のゲームも考えているとおっしゃっていました!」

 

 代理戦争かガス抜き目的かな?

 

『相棒も言ってやるな。悪魔祓いも仕事が縮小されるだろうからな』

 

 それでどこまで発散されるやら。

 

『世代が代わり切るまでは無理だろうよ』

 

 ことは紀元前から続く諍いだからな。

 将来的な変革に期待しつつ、レーティングゲームの学校を創りたいソーナ会長と、教会の戦士との戦いに興味のある木場が楽しげだ。

 

「その辺りの話はここまでにしておいて、今日はイリナさんの歓迎会としましょう」

 

 ソーナ会長は笑顔とそう告げる。

 

「ふ、歓迎会ならば任せておけ」

 

「秘伝の千の宴会芸をお披露目しやすぜ」

 

「まさか貴方達そのためにここにきたんじゃ」

 

 ライザー師匠とゼファードルがノリノリで動きだした姿を見て、リアス部長は愕然としながら呟いた。

 イリナも改めて皆を見渡しながら言った。

 

「悪魔の皆さん!私。今まで敵視してきましたし、滅してもきました!けれどミカエル様が『これからは仲良くですよ?』とおっしゃられたので、私も皆さんと仲良くしていきたいと思います!というか、個人的にも仲良くしたかったのよ!教会代表として頑張りたいです!よろしくお願い致します!」

 

 色々あったが、イリナも駒王学園に仲間入りってことだな。その後、生徒会メンバー、ゼファードル眷属も合流して、イリナ歓迎会が行われたのだった。

 

 ゼファードル眷属の宴会の盛り上げかたが凄く上手かったです。

 地元ではこれが彼らの日常だったとか。 

 





 補足・説明
  
 ゼファードルはディオドラ対策にうってつけでした。このイッセーだとアーシアが抵抗しないと手を出さないので。
 イリナ歓迎についてはとにかく集まりがあるからと参加しました。上級悪魔の増加にイリナは内心ビビってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。