異世界イッセー   作:規律式足

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 日常回です。 
 飛ばすか悩みましたが、必要かなと。



第八十一話 二学期日常

 

 イリナが転校してから数日が経過した。

 

「はいはい!私、借り物レースに出まーす!」

 

 手を挙げる元気いっぱいのイリナ。

 転校してから僅かな期間だというのに、持ち前の明るさから彼女はすっかりクラスに融け込んでいた。只今クラスはホームルーム中、体育祭で誰がどの競技にするかを決めていた。

 なお、体育祭についてだが俺に関してはクラスの皆により慎重に考えられていた。

 なにせ、去年の体育祭で例のごとく気絶して過ごした男だ。その取り扱いには細心の注意が必要なのだ。

 ふぅ。

 そんな中で俺はため息をついていた。

 豪邸と化した兵藤家にまたイリナという同居人が増えたからだ。

 オカルト研究部のメンバーの殆どが移り住む、ライザー師匠が度々泊まりに来て、ゼファードルが住み込み、イリナまで住み始めた。

 空き部屋はまだあるから、一人二人増えても変わりない。またゼファードルが来てくれて、かつゼファードルの眷属も母さんの護衛を兼ねて駐在してくれるから、そこまで肩身が狭くはない。うん、ゼファードルを舎弟にしなかったらしんどかったかも。

 ただ、イリナもなぜか距離感が近くて、転生天使だというのに俺の側にやたらと居たがるのだ。ただでさえ最近は小猫ちゃんが懐いた猫レベルで纏わりついてくるというのに彼女まで触れ合うとなると心臓が持たないぞ。

 

「あー、次なんだが二人三脚についてだ」

 

 司会役の言葉に黒板を見る。

 

「皆。正直に言ってくれ、アーシアちゃんと密着して下心を感じずに走り切る自信はあるか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 沈黙が雄弁に真実を語る。

 如何に癒やし系と認識して、普段はその気がなくとも二人三脚ほどの距離で美少女であるアーシアとくっついて果たして大丈夫なのだろうか。

 男としては、その約得は是非とも堪能したい。だがそれをアーシア相手にするには、汚してはならないものを汚すような罪悪感に苛まされる。

 

「だよな。俺もそうだ。だからアーシアちゃんの相方は兵藤にやってもらう」

 

「俺も皆と一緒なんだけどっ!?」

 

 だというのに、俺がその役になることが満場一致で決まった。

 

「すまない兵藤。たとえお前が死ぬことになろうと、これがアーシアちゃんの為なんだ」

 

 司会役は涙を流しながら頼んでくる。いやそこまでされなくてもいいんですが。

 

「えへへ、イッセーさんのパートナーです」

 

 ほら、アーシアも嬉しそうだし、ね?

 

『相棒が女子と密着したら死ぬとすっかり定着しているなあ』

 

 俺の体質に関してはクラスメイトの皆が一番苦労したからなあ。

 

 次の日から学園全体で体育祭の練習が始まっていた。俺のクラスも体操着に着替えて男女合同でグラウンドにて、それぞれの競技の練習をしている。

 

「勝負よ、ゼノヴィア!」

 

「望むところだ、イリナ!」

 

 イリナとゼノヴィアも短距離走で勝負していた。悪魔祓い同士で転生悪魔と転生天使、果たしてどちらが上なのか。クラスメイトがやんややんやと二人を応援しているが中々興味深い。  

 とはいえ、あまり異種族の身体能力は発揮しないで欲しいものだが。張り合える存在なんて、それこそ同じ悪魔の生徒会メンバーくらいになってしまう。

 

「薄着の体操着で運動されると、オッパイが揺れて眼福だな」

 

「高速で動かれ過ぎると把握しにくいがな」

 

「やっぱ、運動の時の揺れは適度な速さが一番だ」

 

 最近になってようやく調子を取り戻してきた悪友二人は女子の走る姿を見てそんな話をしていた。

 俺も混じりたいのだが、直視しすぎると身体が持たないのだ。  

 土気色な顔色でグラウンドに居る俺に、話しかける者がいた。

 

「おっ、兵藤」  

 

「あ、匙か」

 

 シトリー眷属の兵士にして、生徒会メンバーの匙元士郎だ。何やら、メジャーなどの計測するものを持っていた。

 

「何をしてんだお前?体質的にしんどいだろ」

 

「ふっ、これも訓練だ」

 

 実際去年よりはマシだからね。

 

「グラウンドで走る女子達を見ることが訓練になるのはお前くらいだよ」

 

 呆れたように嘆息する匙。 だがそんな彼に気になる点があった。

 

「その包帯はどうしたんだ?」

 

 右腕に巻いた包帯。治す方法はいくらでもあるから怪我が残るとかあんまりないのだが。アーシアを呼ぶべきか。

 

「ん?ああ、これな」

 

 匙が少しだけ包帯を外すと、そこには黒い蛇みたいな痣が幾重にも現われていた。

 

「呪詛の類か?切ろうか?」

 

 スチャリと闇剣を発動させ構える。

 神聖魔法の精神操作、闇の契約魔法も切れるこの魔法ならなんとかなるだろう。

 

「いくら注目されてないからといって魔法を発動するなよ。アザゼル先生によると、この前のゲームが原因だとさ。とんでもない実力の赤龍帝とラインを繋いだことと血を吸ったことが影響しているみたいだ」

 

「マジか。吸血鬼のギャスパー以外にも効果あるのかよ」

 

 やはり売り出しを検討すべきだな。

 

「悪影響じゃないのが幸いだけどな。ただちょっと身体に出ているだけだってさ。宝玉まで出来たけど」

 

 匙が指差した箇所には、ドラゴン系神器に見られる宝玉がついていた。

 

「ドライグの話だと、肉体と引き換えに短期間の力を得ることができるみたいだし。ドラゴン系神器は影響が出やすいのかもな」

 

「意識がある神器はそんなこともできんのかよ。呪いみたいで気にしてんだよこっちも。ヴリトラってあんまり良い伝説とかないしな」

 

 龍王だけどほぼ邪龍らしいからな。

 

「それで、兵藤は何の競技だ?また勝負しようぜ」

 

「アーシアと二人三脚だな」

 

「羨ましいけど心配だな。俺はパン食い競走だよ」

 

 そっちも楽しそうだな。練習だとパン無しだけど。そんな雑談する俺達のもとへ眼鏡美少女二人が登場。

 

「サジ、何をしているのです。テント設置箇所のチェックをするのですから、早く来なさい」

 

「我が生徒会はただでさえ男手が足りないのですから、働いてくださいな」

 

 ソーナ会長と、真羅副会長だ。二人は眼鏡をキラリと輝かせて匙を呼んでいた。

 

「は、はい、会長!副会長!」

 

 匙は慌てて二人の元へ戻っていた。 

 生徒会の仕事は大変だ。校内のイベントをほぼ全部取り仕切ってるもんな。

 

『ヴリトラか』

 

 何か気になるのかドライグ?

 

『アイツは生命力が強い邪龍寄りのドラゴンだから、これがきっかけで復活するかもと思ってな』

 

 そんな効果まであるのか俺の血。迂闊に出血もできねえじゃん。

 

『ま、複数の神器に分割されているから簡単ではないだろうがな』

 

 それでもきっかけにはなりうるか。今度戦闘中に血を流したら一滴も残さず回収か焼却処分しないとな。

 

「アーシア!夏休み中、オッパイ成長したぁ?」

 

「キャッ!桐生さん!も、揉まないでくださいぃ」

 

 エロ眼鏡娘がアーシアにセクハラしている。目を離すとすぐに同性にセクハラするもんなアイツ(異性には即死呪文)。アーシアがエロくなったらどうしてくれるんだ。ただでさえ、リアス部長と朱乃さん、さらにはライザー師匠の眷属の皆さんに影響受けてそちらに興味を持ってしまっているんだから。

 

 と、そろそろ俺も練習するか。

 まずは感受性を殺してから、

 

「アーシア!練習しよう!」

 

「「「出たよ悟りイッセー」」」

 

 アーシアに声をかけて二人三脚の練習をはじめた。ちなみに最初から転ばずに走り抜けることができた。二人並んで全力ダッシュは陽介さんとの冒険者ライフで慣れていたからな。色んなモノから逃げる時に息ぴったりだったから俺達。

 

『そんな朗らかに笑って思い出すような記憶じゃないだろ』

 

 こうして、授業時間が終わるまで俺達は練習に励んだ。

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