異世界イッセー   作:規律式足

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 今話はかなり短いです。
 


第八十二話 アーシアの悩み。

 

 その日の放課後。

 アーシア、ゼノヴィア、イリナと共に部室に顔を出す。先に来ていた部長を含めたオカ研メンバーは顔を顰めていた。

 

「何かありましたか?」

 

 俺が訊くと、リアス部長が言う。

 

「若手悪魔のレーティングゲーム戦、私達の次の対戦相手が決まったの」

 

 夏休み中に行った、グレモリー対シトリーの一線を皮切りに、若手悪魔の顔合わせで集まった六家でレーティングゲームが行われている。俺達グレモリーもシトリー以外の家とも戦う予定なのだ。

 そしてリアス部長に続いて、なぜかいるゼファードルが答える。

 

「兄貴達の次の対戦相手は、アーシア姉さんにしつこく言い寄ってくる、ディオドラ・アスタロトのヤツですね」

 

 嫌な予感がするな。

 グランバハマルの経験もあってか、俺はそう思った。

 

 

 次の日。

 早朝からアーシアと二人三脚の練習をはじめて、終わった後に、ディオドラ様を助けた時についての話を聞いた。

 対戦相手がディオドラ様だと決定したことで、彼女はさらに思い悩んでいるようだったから。

 今回の件、俺にはどうしようもない。

 ディオドラ・アスタロトが、自分が身を置く悪魔社会で上位の存在であり、同格であるリアス・グレモリーの一眷属に過ぎない俺にはどうにもできないからだ。

 だがそれは俺が気を回して勝手に動いた場合のことで、俺はアーシアが嫌だと言うならいかなる手段を用いても手助けするつもりだ。

 もっとも、自分からそれを言い出せないことが俺の情けないところだが。

 力をひけらかしたくない。

 その思いは以前にも増して強くなっていた。

 ベンチに並んで座り、彼女の思いを聞く。

 

「あの時、彼を救ったこと、後悔してません」

 

 アーシアが魔女になったきっかけ。

 傷ついた悪魔を救い、異端認定を受けてしまい、居場所を失ったという出来事。

 その助けた悪魔こそがディオドラ様だった。彼は、自分がきっかけだからそれに報いたい。助けてくれたアーシアに好意を抱き、幸せにしたいと言ってきている。

 なるほど、運命的で、劇的な物語に、ラブストーリーに見える。

 けど、グランバハマルで貴族連中を見てきた俺には、彼がそんな性根の人物には見えない。むしろ、自分の手勢で襲撃をかけ、路頭に迷った元令嬢に手を差し伸べる形で手に入れた貴族のような感じがするのだ。

 相手の心を手に入れるために、一手間かけることを厭わず、自身が元凶であるにも関わらず平然とする、そんな悪趣味な存在に。

 

(調べてもらうべきか?)

 

 そうだとしたら、アーシアから神器を抜き出そうとしていたレイナーレも無関係ではないかもしれない。アザゼル先生からそちらをあたって貰うことは別にやり過ぎではないだろう。

 上級悪魔に嫁ぐ。ということはアーシアにとってプラスになり幸せかもしれない。

 でも、勝手だけど俺はどうしても彼女の本当の幸せを望んでしまうのだ。

 

「イッセーさんはどう思いますか?私にはまだよくわかりませんけど、リアスお姉様のことや、グレモリーのことを考えたら彼と付き合った方が良いのでしょうか?」

 

 アーシアも悩んでいた。

 それは、自分がディオドラの元へ行くことが恩のあるリアス部長にとって利益になることでないかと、恩返しの機会になるのではないかと思ったのだ。

 

「そんなことは気にしなくて良いよ。確かに眷属と次期当主が結ばれたら家同士の結びつきは強くなるだろう。けど、それはアーシアが無理をして、我慢してまでやるべきことじゃない」

 

 クソ。

 多分ラブレターにそんな内容が書かれていたんだな。魔力や薬品が付着してないかはゼファードルと確認したが、内容まで確認してなかったからな。

 

「でも」

 

「リアス部長が聞いたら怒っちゃうよ」

 

 情愛深い彼女が、アーシアが自分を押し殺すことを望むわけがない。

 

「居てもいいんですよね?」

 

「ああ」

 

「迷惑じゃないんですよね」

 

「勿論だ」

 

「大好きなこの場所に、ずっといても、大好きな皆さんとずっと一緒にいても良いんですよね」

 

 俯いて涙を零すアーシアの優しく頭を撫でる。

 こちらが思っていたよりよっぽど、アーシアは追い詰められていたようだ。

 当たり前か、聖女生活を送ってきた彼女は上位者の言葉に逆らう発想そのものがない。

 そんな彼女に、立場をかさにきた男が恩返しや、利益が、迷惑が、などと言葉を尽くせばこうもなるだろう。

 

「ゼファードル」

 

「はい、兄貴」

 

「今後はディオドラからの手紙はアーシアに渡さず全て廃棄しろ。部長と内容の確認もしておくんだ」

 

「承知しやした」

 

 控えていた舎弟に指示をだす。

 介入すべきではないという考えは撤回だな。そう、アーシアみたいな娘は、最後の最後まで助けてなんて言い出せないのだから。

 それで取り返しのつかなくなる前に、俺達は動いていくべきなんだ。

 近くで様子を窺っていたゼノヴィアもアーシアを抱きしめて慰めていた。あの聖剣騒動の時から二人は、この僅かな期間で親友とも言える間柄になっているからな。

 

「本当は三人でイッセーと乳繰り合いたかったんだがな」

 

 と、こんなボケも言い出すが。なんでも落ち込んでる時はそうすると元気になると桐生に教えられたらしい。やめろ馬鹿殺す気か。それを聞いたアーシアも顔を真っ赤にして期待したようにこちらを見るが、期待されても出るのは心臓だけだから止めてください。

 何言ってんだコイツ。

 とも思ったがゼノヴィアの言葉で沈んだ空気は確かに軽くなったのだった。

 





 補足・説明

 上位者に迫られるとかかなりストレスですよね。さらにディオドラは、手紙でグレモリーのメリットやら断る際にかかる迷惑についてまで触れてました。
 原作では、イッセーの方が悩んでましたが。当作ではアーシアが悩んでいました。
 助けを求めたら、助けてくれると知ってますからね。
 なお今後全ての手紙はシャットアウトです。
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