異世界イッセー   作:規律式足

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 今回、とあるキャラへのアンチがあります。閲覧注意です。



第八十三話 スタンス違い。

 

 その日の放課後、部活の時間。  

 

「乳繰り合いには私も混ぜてください」

 

 君にはそもそも胸がないでしょ、と小猫ちゃんにツッコミを入れたくなったが命が惜しいので我慢した。というかなんであの時の会話を知っているんだこの猫娘。

 

『ストーカー(ボソリ)』 

 

 ドライグが答えをいった気がするが気にしないでおこう。

 

「皆、集まってくれたわね」

 

 部員全員集まったことを確認すると、部長がソフトらしきものを取り出した。

 

「若手悪魔の試合を記録したものよ。私達とシトリー眷属のものもあるわ」

 

 戦いの記録。そう、今日は皆で試合観戦をすることになっている。部室には普段はない巨大なモニターが用意されていた。

 アザゼル先生がそのモニターの前に立って言う。

 

「お前ら以外にも若手達はゲームをした。大王バアルと魔王アスモデウスのグラシャラボラス家、大公アガレスと魔王ベルゼブブのアスタロト家、それぞれがお前らの対戦後に試合をした。それを記憶した映像だ。ライバルの試合だから、よーく見ておくようにな」

 

「「「「「はい」」」」」

 

 先生の言葉に皆が真剣に頷いた。 

 ゼファードルの試合も、結果は聞いたが観戦はしていない。ただ、負けたとはいえ善戦はしたそうだ。

 モニターに全員で視線を向ける。俺の膝の上にいる小猫ちゃんも、その横で頭にたんこぶを作り恨めしげに小猫ちゃんを見ていたギャスパーとラッセーも集中しだす。

 

「まずはサイラオーグ、バアル家とグラシャラボラス家の試合よ」

 

「チッ」

 

 その時のことを思い出してかゼファードルが舌打ちをしていた。彼にとっては負け試合だからな。

 記憶映像が開始され、数時間が経過する。自分達以外の試合を見られるワクワク感は、視聴してすぐに取り払われた。

 部員全員の顔つきは真剣そのものになり、視線は険しくなっている。

 サイラオーグ・バアルという圧倒的な『個』の強さがその原因だ。

 試合自体はほぼほぼ互角だった。両者の眷属は対等な戦いだった。特に目を引いたのはグラシャラボラス眷属のコンビネーションの巧みさ。個人では勝てないであろう眷属達は連携により互角にわたり合っていたのだ。

 バアル眷属が、没落や断絶したとはいえ七十ニ柱の血を引く名門のであり、固有能力があることに対して、中級下級悪魔ばかりのグラシャラボラス眷属が一方的にやられなかったのは見事としか言えない。

 

「実戦経験の差か」

 

 ゼファードルと共に地元で戦ってきた日々と仲間たちの絆がグラシャラボラス眷属の持ち味なのだろう。

 最終的には、サイラオーグ様とゼファードルの一騎打ちとなり、決着はついた。

 

「鍛え抜かれた肉体」

 

 サイラオーグ様のこちらの世界で見たことのないほどに極まった身体能力。それがゼファードルの魔力弾を全て叩き落とし、防御術式を打ち砕いたのだ。

 

「魔力が大したことがないからと舐めていたのは事実だが、強すぎだろあの野郎」

 

 それが実際に戦ったゼファードルの感想。確かにサイラオーグ様ならば、個人でグラシャラボラス眷属を叩き潰すことも可能だと思われる。

 

「つっても、ゼファードルが弱いわけじゃねえ。イッセーを除いたグレモリー眷属じゃ苦戦するだろうし、他の連中とも良い試合をするだろうよ」

 

 凶児、代理としての参加、という立場から低く見られていたグラシャラボラス家だが、この試合を見る限り誤りだとわかる。

 タイマンバトル形式だと眷属個人の実力からして厳しいが、集団戦ならば随一かもしれない。

 

「若手同士の対決前にゲーム運営委員会が出したランキングでは、一位がグレモリー、二位がバアル、三位がアガレス、四位がアスタロト、五位がシトリー、六位がグラシャラボラスでしたわ。『王』と眷属を含み平均で比べた強さランクです。それぞれ、一度手合わせして、一部結果が覆ってしまいましたけど」

 

 朱乃さんが若手悪魔達の世間での評価を教えてくれた。この試合を見る限りではグラシャラボラスが三位に食い込みそうではあるが。

 戦略を練れる状況ならともかく、真正面からの集団戦ではいくら匙に根性があっても、シトリー眷属ではグラシャラボラス眷属には勝てないだろう。

 

「ま、レーティングゲームでの結果なんざどうでも良いがな。次期当主の座も冥界の学校に通う親戚に譲ると正式に決まったしよ」

 

「かー、こんな良い試合してんのに惜しい野郎だよテメェは」

 

 ゼファードルの次期当主からおりるという発言に、グレモリー眷属の皆は目を見開いて驚き、アザゼル先生は惜しむ。

 

「世間の評価なんぞ窮屈なだけでどうでもいい。あとあのサイラオーグとこれからも関わり続けることが嫌なんだよ」

 

 ゼファードルはウザったそうに吐き捨てる。

 

「サイラオーグが何か嫌なことをしたの?」

 

 そんなことをする性格ではないのだけど、と思いながら親戚であるリアス部長が尋ねる。またゼファードルが試合で圧倒的に打ちのめされたからサイラオーグ様を嫌悪しているようには見えないからだ。サイラオーグ様自身も試合での健闘からゼファードル達を認めてくれてるように見えたが。

 

「試合後に語られたヤツの夢がどうにも合わなくてな。実力が正しく評価されて出世できる冥界にしたいとか、俺には心底どうでもいいんだよ」

 

 あー、それは分かるかな。

 サイラオーグ様自身の不遇な境遇からの夢なんだろうけど、俺やゼファードルのように立身出世に興味の無い存在には受け入れられない夢だ。

 むしろ評価されて出世させられる方が迷惑だったりするしな。立場上がると責任が増えて面倒なのに。

 

「挙げ句に、親戚に次期当主の座を譲ると言ったら怒鳴りやがるんだぜ。「その立場を得るために全てを賭けるものだっているんだぞ!」ってな。バアル当主の座を捨てて魔王になりたいテメェが言うなっての」

 

 そして、そんな夢を持つ者は実力があってやる気の無い者に反発するんだよね。勿体ないとか、その実力があるならやるべきだ、とか。

 これは確かに合わないわ。

 

「そ、それは申し訳無いわね」

 

 俺の日頃の言動と、舎弟になってから知り合ったゼファードルを知るリアス部長がそう謝る。

 リアス部長もどちらかと言えばサイラオーグ様寄りの考えではあるが、それらの理想は本人の意思を無視するものであってはならないと知っているからな。

 

「ま、ゼファードルの進退についてはとりあえず置いとくぞ。次期当主からおりても、イッセーの下で己を高めたいのは変わらないからな」

 

 アザゼル先生がすっかりズレた話を元に戻す。そうだレーティングゲームについてだった。

 

「とにかく、若手悪魔ではこのサイラオーグとイッセーが桁違いに強い。それを認識しておけ」

 

 そこからは、実力のパラメータを示した立体的なグラフを表示しながら、なぜサイラオーグ様がそこまで強いのかを説明された。

 パワー特化の若手悪魔最強。

 バアル家の純血悪魔でありながら滅びの力を得られなかった存在。 

 不遇な境遇を、凄まじい鍛錬で得た肉体で覆した男。

 華やかな上級悪魔、純血種の中で、泥臭く血塗れの世界を彼は歩んできた。

 

(合わないなあ)

 

 泥臭く血塗れの世界を歩んできたのは同じだが、俺とサイラオーグ様は決定的に違う。

 確かにこと才能においては歴代でも最低水準だけど、それでも俺には『赤龍帝の籠手』があるからな。

 むしろ、陽介さんの方がサイラオーグ様と話が合うかもしれない。

 駄目だな。絶対あの人、自分のゲームでの苦労の日々と、サイラオーグ様の修行の日々を同じモノ扱いしてブチギレさせる。

 そんな考えをしている内に映像は終わった。

 サイラオーグ様や匙の持つ覚悟と執念か、眩しくもあるが今の俺には無いものだよ。

 映像が終わり、シンと静まりかえる室内で先生は言う。

 

「先に告げておくがお前ら、ディオドラと戦ったら、その次はサイラオーグだぞ」

 

「そうなんですか?」

 

 俺が訊けばアザゼル先生は頷いた。リアス部長も怪訝そうに訊ねる。

 

「少しはやいと思いますけど?ゼファードルと先にやるものだと思っていたけど」

 

「俺はレーティングゲームをやめた」

 

 そう、ゼファードルは宣言した。

 

「「「なっ!?」」」

 

「無理やり参加させられた挙げ句に、試合後にメディア連中に『あの眷属』で『あんな程度の連中を率いて』よく健闘できたと、讃えてる形で仲間達を扱き下ろされたんだ。さらには『もっときちんとした眷属を集めていたら勝てた』だぞ。もう、やってられるかよ」

 

 忌々しそうにゼファードルは吐き捨てる。

 試合後のインタビュー、特に焦点を当てられたのはゼファードルの眷属の素性だった。

 七十二柱などの名門の出身ではない、一般悪魔出である彼らの健闘ぶりは、メディアとしては魅力的なネタに見えたのだろう。

 それを評価されたと喜ぶ者も、認められたと思う者もいるだろうが、ゼファードルからしたら大切な仲間達を面白おかしくネタにされたとしか思えなかったのだ。

 

「次期当主でもなくなるんだ。レーティングゲームをやる理由なんざねえよ」

   

 有事の際に最前線に立つ気概はあれど、見世物にはなりたくはない。

 そんな気質であることもまた個人の自由であるのだから。

 ちなみに大戦時を知る古き悪魔にも同じ考えの者は少なからず居る。

 アジュカ様が悪魔の駒を開発したという理由もあるが、レーティングゲームのトッププレイヤー達が、サーゼクス様達と同世代かそれより後の世代な点からもそれは察っせられる。

 

「そう、残念ね」

 

 引き止めたい気持ちを堪えてリアス部長は言う。レーティングゲームに勝つために眷属を揃えたタイプではなく、共に歩みたい者を眷属にしたゼファードルの考えを彼女は理解したからだ。

 

「まずは目先の試合ね。今度戦うアスタロトの映像も研究のためにこの後見るわよ。対戦相手の大公家次期当主シーグヴァイラ・アガレスを倒したって話だもの」

 

 気を取り直してリアス部長が言う。

 その結果もまた意外なものだ。ゲーム委員会が出したランキングは再度覆されたようだ。

 

「私達と戦ったソーナも評価はされたわ。けどランキングを覆したアスタロトは大金星という結果ね。所詮ランキングはデータから算出した予想ということかしら。いざ、ゲームがはじまれば何が起きるか分からないということね」

 

 あるいはデータにはない切り札の存在があったから、とかかな?匙の戦法もそんな感じだったしなあ。

 

「けれどアガレスが負けるなんてね」

 

 言いながらリアス部長が記憶映像を再生させようとした時だった。

 部室の片隅で人一人分の転移魔法陣が展開しだし、

 

「アポのねえ客はお断りだ」

 

 ゼファードルがそれを叩き壊した。

 

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

 浮かびあがったアスタロトの紋章は広がりきるまえに霧散したのだった。

 

「優秀かよこの舎弟」

 

 転移魔法陣って展開途中で破壊されて大丈夫なんだろうか。

 グレモリー眷属達の沈黙の中、俺はそう思うのであった。

 なお、この後すぐにリアス部長に電話で連絡があり、ディオドラ・アスタロト様が来られるそうです。

 





 補足・説明。

 サイラオーグとイッセー及びゼファードルは微妙に合いません。
 彼の理想が、二人からしたら余計なお世話だからです。というかイッセーに関しては現時点で不要なので。
 また試合後に、実力を認めたサイラオーグがゼファードルに会いに行った際に盛大に揉めてます。
 サイラオーグからしたら、家を飛び出したのに仲間達と己を高めたゼファードルを同類認識したのですが、実際は気の合った仲間達と好き放題つるんでいただけなので。
 「嫌な環境なら逃げればいいだろ」、というゼファードルの言葉にサイラオーグがキレて、「それだけの実力を誰かのために振るわないお前はふざけている」とサイラオーグの言葉にゼファードルはキレました。
 今後この二人がどうなるかは未定です。
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