説明回のようなものです。
また原作イベントをいくつか飛ばします。
ディオドラ・アスタロト様に宣戦布告を受けてから数日が経った。
彼が去った後に、アスタロト家と大公家によるレーティングゲームを観戦した。
アスタロト家の大金星とされる一戦。
どんな試合かと少しばかり期待はしていたのだが、そういった意味では肩透かしだった。
試合内容は、ディオドラ様による無双。眷属達は彼のサポートに徹し、『王』による孤軍奮闘、一騎当千という形だった。
サイラオーグ様とて同じことが出来はするだろう。身体能力特化にして格闘技術に秀でた彼ならば、戦国時代の武将ばりに無双乱舞できる。
だが、魔力の類に秀でたウィザードタイプでそれをやるならば、よほどの魔力がなければ不可能だ。
魔力弾は高威力であればあるほど消耗が激しいのだから。
途中までアガレス側が追い詰めている中で、行われた盛大な逆転劇。急にパワーアップしたとしか思えない、魔力の増幅からの無双。
普段は枷のような術式などで自らを縛っていて、それを開放したからこうなった。という理屈でも一応説明はつく。だがそんな泥臭い手法を選ぶ性格には見えないのだが。
そもそも違和感があったのだ、先程あった時と若手悪魔会談時ではディオドラ様のエネルギーに差があり過ぎると。
そして、俺はこのパワーアップに覚えがあった、そう三大勢力会談時にアザゼル先生がカテレア様と戦っていた時のことだ。
観戦時にアザゼル先生に確認するように目線を向けたら、今は黙っていろと態度で示されたのだ。
そして今、その件についてアザゼル先生と話し合いをすることになった。
「オーフィスの蛇だな」
「やはり、そうですか。となるとディオドラ様は禍の団と手を組んでいるわけですね」
「理解が早いな。だが間違いなくそうだろうよ」
「しかし迂闊ですね。レーティングゲームで使用したらバレるのは当然でしょうに」
「馬鹿なのさ。本人はバレてると考えてもいねえよ。だからあっさりと力に飛びつく」
「愚かな話だ」
ため息を一つ吐いて、頭を搔く。
これからレーティングゲームをする相手が、テロ組織の内通者か協力者。
となれば各勢力のお偉方が集まるイベントで何かをやらかさないわけがない。
「今からディオドラ様を捕縛して、記憶再生で探りますか?」
それならば事は起こらずに事態は収束するだろう。許可さえ降りれば実行できる。
「駄目だ。その疑惑だけで強権振るえるほどサーゼクス達の立場は強くねえ。上層部にしても疑わしい真似をしたら調べられるという前例ができることを認めねえよ」
それもそうか。
冥界政府は貴族の寄り集まり、彼らの意思を無視して強権を振るうことができないのだから。
「レーティングゲームの中止も、無理なんですね」
「無理だな。テロリストに屈する政府なんて認められなくなる。ましてやまだ疑惑に過ぎねえしな」
各勢力との兼ね合いもある。まさに八方塞がりというわけか。
予定通りにすすめて、事が起こったら対処という最悪の手段しかとれない。
「あとよ、ディオドラに関してはそれだけじゃねえ」
ガリガリと頭を掻きながらアザゼル先生は不快そうに告げる。
「レイナーレ、駒王町に潜入してお前を狙い、アーシアから神器を取り出そうとした連中から聴取した結果なんだが」
そう、最初から違和感のあった堕天使達による悪魔の領土への不法侵入。如何に学生生活をおくり多忙であったとはいえ部長達がそれに気づかなかった理由。
「ディオドラが手引していたことが判明した」
「彼が、ですか」
なんの為にそんなことを?
というのが俺の本音だ。他家の管理する土地に当時は敵対していた存在を招き入れる理由が想像できない。
「ああ、俺も理解できなくてさらに調べたんだが、それで気分が悪いことが判明してな」
そこから語られた内容。
それは俺だけが知るべき情報ではなかった。
あまりにも気分の悪い、悪魔らしい所業。女性をモノとしか思っていない、胸糞悪いマッチポンプ。
「リアス部長にも話すべきですね」
ディオドラのアーシアへの執着も納得だ。
トンビに油揚げをさらわれるような、手に入る寸前だったものを横取りされたのなら、なんとしても取り戻そうとするだろう。
「全くよ。悪魔らしいし、悪魔政府にとっちゃ罪でもなんでもねえ所業だよ。
本当に、俺の大嫌いな悪魔そのものだ」
アザゼル先生はそう吐き捨てる。
三大勢力融和の立役者は間違いなく堕天使総督アザゼルだ。しかし彼が和平に踏み出したのは、当代四大魔王が好ましい存在であったからだろう。
旧世代の悪魔とは手を取り合えない、それは紀元前からの恨みつらみよりも、アザゼル先生と旧世代悪魔達の趣味が合わないからだ。
まあ、堕天使って人間大好きだからな。
神話ではアザゼルという存在は、少女の色香によって人類に武器を与えてしまったと伝えられてるし。
人間を糧としか見ない悪魔と合わなくて当たり前なんだよなあ。
まあそれも堕天使初期メンバーの話で世代が代わったことで人類を見下すようになったみたいだけど、それこそレイナーレみたく。
「アーシアには伝えるべきでしょうか」
レーティングゲームまでもう間近。冥界のテレビでインタビュー収録までしてしまったからもう時間がない。
なんかプロデューサーから変身ヒーローみたいな番組を作らないかと誘われたりもしたな、断ったけど。
血塗られたこの身では、上層部に従うことは納得できても、子供達を導くことに抵抗があるからな。
「時間がねえんだよなあ」
アザゼル先生もうんざりしたように言う。
果たして真実を知ったアーシアは耐えられるのか。立ち直るまでの時間が取れない以上は、全て終わってから伝えるべきでないかと悩んでしまう。
なにせ、アーシアは余りにも多くの者に裏切られたのだから。
「その判断はリアスに任せるしかねえか」
「主だからこそですよね」
リアス部長はディオドラによるマッチポンプを知らずに奪った形となる。
彼女もまた知らぬ間にそのようなことをしたと苦しむだろう。
かといって全てを秘匿して終わらせることなどできはしない。ならば伝えるしかないのだ。
「ま、大丈夫だろうよ。リアスもアーシアも強い女だからな」
「ええ」
そう、それだけは断言できる。
彼女達は俺なんかよりよっぽど強いのだと。
「そう言えば、ディオドラはやたらと自信ありげでしたが何か切り札でもあるかもしれませんね」
「悪魔のボンボンらしい、見下しと傲慢じゃねえか?まあ盤外戦略としてイッセーの身内に手を出す可能性もあるが、安全面では大丈夫だろ」
人間である俺の両親の安全に関しては、冥界から護衛がついているから安心、というだけではない。
「まさかあんな風になるとは」
両親の冥界でのやらかし。
先日のシトリー眷属とのレーティングゲームで冥界を訪れたあの二人は、赤龍帝である俺と結びつきをもとうとして接触してきた悪魔貴族の皆さんに気に入られてしまったのだ。
父がサラリーマンで接待慣れしていたからかも知れない、母がただの主婦なのに豪胆なところがあるからかも知れない、悪魔貴族の皆さんが気安く付き合える友人に飢えていたからかも知れない。
とにかく気に入られた両親は、平日休日問わず悪魔貴族の皆さんに構われているのだ。
護衛としてついてられるサーゼクス様の騎士である沖田総司さんにはお疲れ様としか言えません。
なので、休日となれば父は悪魔のお偉方とゴルフやら麻雀。母はお茶会やらショッピングに参加しているのだ。本当に迷惑をかけてるとしかいえない。
ちなみに誘われてキャバクラに行ってしまった父は、誘った方と共に簀巻きにされて屋上から吊るされていた。それを見たゼファードルすら顔を引き攣らせたからな。なおその時にアザゼル先生は奥方に叱られるお偉方を見て爆笑していた。
「あの二人にはもう手出しできんだろ」
本当にコミュニケーション力が高過ぎだよね、ウチの両親。赤龍帝の親以上の価値をあの二人はもう得ているのだから。
「とにかく、リアスに伝えてからだな」
「そうですね」
できれば伝えたくはないが、そうもいってられない。これは共有すべき事柄なのだから。
明後日に迫る、ディオドラ・アスタロトとのレーティングゲーム。
禍の団によるテロが起きると踏まえて臨む必要があるだろう。
だが、俺はこの時点で舐めていたんだ。
容易く倒せる存在だと見下していた。
史上最強の赤龍帝。
だがそれは強いだけ。
全てを見通す眼も、全てを知る知恵もない。
想定していなければ反応できず。
知っていなければ対処できない。
そんな当たり前のことを忘れていた俺は、平和なこの世界で日和っていた俺は、だからこそ最悪の事態を招き、再び絶望の味を噛みしめることになる。
補足・説明。
悪魔契約でチャリ移動してないので、ヴァーリと接触せず、さらにテレビ収録もオッパイドラゴンネタがないので流しました。
原作でのヒロイン達のイチャつきも似たようなことはしていますがスルーしました。
イッセーの両親は、上層部のお気に入りになりました。彼らも権謀術数の絡まない相手に飢えているのです。
ディオドラのマッチポンプ。
悪魔業界では合法なため罪にはなりません。むしろ敵勢力を削ったので表彰もんです。まあ胸糞悪いと感じる方も一定数いますが。ただ今後の友好関係ではかなり邪魔な存在のため、テロらないとこっそり処された可能性があります。ディオドラ本人ではなく、眷属達が居なかったことにされたでしょう。