異世界イッセー   作:規律式足

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 これからも投稿は不定期となります。



第九十三話 デート(だけではすまない)

 

 朱乃さんとデート当日。

 いつもの街がなんだか輝いて見えるように俺は感じた。それはゼファードル達がこの街をキレイキレイしてくれたからだけではなく、親しい女性と二人きりで出かけるからだろう(ドライグはノーカン)。

 ニホンバハマルでのデートは人生で三回目。最初は罠疑惑のあるレイナーレで、二回目は偶々遭遇したアーシアと成り行きで。

 だからきちんと待ち合わせする本当のデートは人生で初めてなんだろう。

 なんだろう、リアス部長が知ったらブチギレそうな気がする。けどそんな嫉妬してくれる姿が彼女の魅力の一つだと思う。意図的に嫉妬させるのは男としてあまりにも下種いので気をつけないとな。 

 待ち合わせの場所は駅近くのコンビニ。

 同居してるのだから一緒に家をでるほうが合理的だが、待ち合わせという行為そのものに意味がある。

 彼女が来るまでのドキドキする時間もまた楽しみの一つなのだ。

 身だしなみはライザー師匠にチェックしてもらったから大丈夫。奇抜な格好などせずに清潔感ある服装を意識した。

 待ち合わせ時間である午前十時になろうとした時、フリル付きのかわいらしいワンピースを着た朱乃さんが現れた。

 

「朱乃さん」

 

「ごめんなさい、待たせちゃったかしら?」

 

「いえ」

 

 普段の彼女と違う姿に胸が高鳴る。

 髪を下ろし、年相応の女の子らしい格好をした朱乃さん。

 その姿に俺は同学年か年下にすら見えてしまった。学園にて御姉様と呼ばれる彼女。本人も年上であるように落ち着いた態度でいるために一歳しか違わないと思わせない。

 そんな彼女の見たことの無い姿と仕草に、俺にだけその姿を見せてくれた事実に顔が熱くなってきた。

 キレイでなくかわいい、今日の朱乃さんはそんな感じだ。

 

「そんなに見られると恥ずかしいわ。今日の私、変?」

 

 いつもなら、あらあらうふふと微笑む彼女による不安そうな上目使い。あかん、これだけでノックアウトレベルだ、すまんドライグあとは頼んだ。

 

『早くね?少しは頑張れ』

 

「すっごいかわいいです。見惚れてしまいましたよ」

 

 ドライグの応援でなんとか持ち直す。そうだ、デートはまだ待ち合わせ段階なんだ。

 

「今日イッセー君は一日私の彼氏ですわ。イッセー、って呼んでもいい?」

 

 恥ずかしそうに訊いてくる朱乃さん。仕草一つ一つが反則レベルだ(なんのだ)。

 しかし、呼び捨てって兵器だったんですね。魂がぶち抜かれるぜ。

 

「ど、どうぞ」

 

 ドキドキしてそんな風に言葉少なく答えるしかできなかった。落ち着け、俺は実年齢二十六だろ。

 

「やったぁ。ありがとう、イッセー!」

 

 この自然な反応は意図的なものではないと感じた。むしろこちらこそが素の朱乃さんで、普段の彼女が作られたイメージなんだろう。

 喜びに満ちる彼女を見て、素の朱乃さんでいられる相手と思われていることが嬉しくなった。

 

「行きましょうか朱乃さん」

 

 だからこそここは漢を見せる時。

 俺は魂を振り絞って彼女に手を差し出した。

 今日はリードしてみせる、その決意を込めて。

 

「はい!」

 

 朱乃さんは差し出した俺の手を宝物のように優しく大事そうに両手で包む。

 こうして、俺と朱乃さんは町へと繰り出したのだった。

 

 なおその光景を目撃した松田と元浜が、甲子園までたどり着いた教え子達を見る監督のような目をしていたそうな。

 

 

 デートを始めてからしばらくたった。

 メインは水族館の予定だったが、町中の水族館であるため丸一日かかる規模ではない。

 だから到着するまでの道なりで目についたお店に入ったりと色々なことをした。

 その間ずっと手は繋いでいる。握り方からも「俺を頼っている」って感じが伝わってくることが、俺の胸をキュンとさせた。

 

『お前が乙女になるんかーい』

 

 なんでリードする側が堕とされかけてるのだろうか?天使が堕天するのも納得だよ。

 高貴な和風美人のような学園と眷属悪魔の姿ではない、素の彼女の破壊力はかなりのもの。

 あの姿が男避けのための近づけさせないようにしていることがよく分かる。こんな笑顔で笑いかけられたら誰だって勘違いしてしまうだろうからな。

 今の彼女の仕草と一番近いのは、四大魔王のセラフォルー様(世紀超え年齢未婚)だろうか?

 明るく、甘えてくる男が放っておけなくなる感じだ。それが素なのだからもうたまらないな。

 

「今日はとことん楽しみましょう!」

 

 そんな彼女を喜ばせたくてついこんなことを言ってしまう。

 俺の勢いにキョトンとした朱乃さんだったが、最高に可愛い笑顔で応じてくれた。

 

「うん」

 

 ダメだ。

 まさか「うん」という言葉すら兵器だったとは。今日は精神兵器の見本市だったんだ。

 ただ一言が脳みそを撃沈させる。ああ、可愛いよ今日の朱乃さん。

 

『(メイベルっぽい、あどけなさがあるからな。とは言えんな。言ったら確実に相棒が死ぬか)』

 

 さあ、寄り道したがメインの水族館だ!!

 

 

 

「深海魚って変な顔の子が多いわね」

 

 水族館から出たばかりの朱乃さんは楽しそうに言った。町中の水族館だけど図鑑や動画で見るような生き物を生きた状態で見れるのだから普通に面白かった。

 館内もカップルか真剣に生き物を見る人ばかりで静かで落ち着いた良い雰囲気だった。

 お店やゲーセンでの盛り上がりとは異なる、ゆっくりとした時間もまた良いものだ。

 一息ついた、そんな空気になっていたところでそろそろ良い時間。もうそろそろ帰宅かな?

 この時間が終わるのは惜しいと感じてはいるけど、区切りがあるからこそ、思い出の一時は輝くものだ。

 すると朱乃さんは、何かを思いついたのかこちらに笑顔を向けてから手を引いて走り出した!

 

「え?どうしたんです、朱乃さん」

 

「ちょっとねー」

 

 別に尾行されているわけでもないのに駆け出す朱乃さん。彼女は何かイタズラを企んでいるような顔をしていた。

 右に曲がったり、左に曲がったりと、目的地もなく適当に走る。周囲から何をしているんだ?と見られている気がするけど朱乃さんは凄く楽しそうだ。

 しばらく走ったあと朱乃さんが足を止める。俺も周囲を見ればそこには「休憩○円」「宿泊○円」と書かれた看板がアチラコチラにぃぃぃっ!?

 ここらは学校で来てはならないと指導される地域なのでは?いかがわしいお店ばっかりだよ。

 

「あ、朱乃さん。さすがにこんなとこに来たとリアス部長に知られたらヤバいですよ」

 

 学校もヤバいわ。

 というか、俺の心臓も爆弾のタイマーみたくピコンピコンと鳴り出しているのですが。

 色んな意味で危険なため、不味いと足早にその場を去ろうとした時だった。

 俺の服の端を掴む朱乃さんがいた。

 

「アケノサン?」

 

 振り返るとお顔を最大に真っ赤にした朱乃さんがもじもじしながら、つぶやく。

 

「・・・・・・いいよ」

 

 あ、俺死んだ。

 意を決したような彼女の表情に俺は自らの死を確信した。

 据え膳食わねば男の恥、という言葉がありますがワタクシの場合は命に関わるのです。この場合はどうしたら良いのでしょう、神様仏様ドライグ様。

 

『知らね』

 

 酷いよドライグ。

 というか朱乃さんが引っ張ってきたのだから彼女がこれを狙っていたのは明白なんですがどうしたら良いんだマジで。男として応えて上げたいのは山山だけど心臓のアラートがそろそろ危険地帯に。

 そんな決断迫られる俺に話しかける者がいた。

 ヤバい、余裕なくて周囲を警戒してなかった。というか知り合いが今は一番アカンって。

 

「まったく、まだ夕方じゃぞ女を抱くには早すぎではないかのう、赤龍帝の小僧」

 

 そ、その声は。

 

『オーディンか』

 

 北欧神話の主神様じゃないですか!?

 冥界の時とは違いラフな格好をしているけど、確かに御本神だよ。さらにはガタイの良い男性とパンツスーツを着込んだマジメそうな女の人を連れていた。

 付き人もおられるとか、オワタ\(^o^)/。

 人間、ではないよな?銀色の髪はロングストレートで見ただけでサラサラしてるってわかる。

 しかし、なぜこんなところに?

 観光にしても、いくらミルたんが居るからとはいえテロリスト(禍の団)の現れる危険地帯なんだけど。

 

「オーディン様!こ、このような場所をウロウロとされては困ります!か、神様なのですから、きちんとなさってください!」

 

 付き人のマジメそうなお姉さんが怒り出す。俺からしたらむしろ神様だからこそきちんとしてるイメージがないのだが。今までが今までだし。

 

「良いではないか、ロスヴァイセ。お主も勇者を饗すヴァルキリーなんじゃから、こういう風景もよく覚えるんじゃな」

 

 戦乙女業界にも時代の波が。現代テイストされているんですね。

 

「どうせ、私は色気の無いヴァルキリーですよ。あなた達もこんなところにいちゃダメよ。ハイスクールの生徒でしょ?お家に戻って勉強なさい勉強」

 

 このヴァルキリーさんの学生時代が透けて見える発言ですね。

 と、横を見れば朱乃さんが付き添いらしいガタイの良い男性に詰め寄られていた。

 

「あ、あなたは」

 

 朱乃さんは目を見開いて驚いていた。

 

『雷光の堕天使バラキエルだな』

 

 まさかの実父っ!?

 

「朱乃、これはどういうことだ?」

 

 叱るようなバラキエルの言葉。

 まあ家出中とは言え実の娘がこんなトコにいたらなあ。ウチの両親だって叱るよ。

 

「お父様もどうしてこんな所に?」

 

 あ、朱乃さんも怒ってる。

 奥さん亡くしているとはいえ実の父がこんなところ来ていた事実は、年頃の娘さんには許せないよね。

 

「う、それは仕事でだな。オーディン様の要望なのだ。場所を訊いてアザゼルに任せようとしたが、ヤツは閃光と暗黒の龍絶剣の件のショックで使い物にならなくてだな」

 

 必死に弁明するバラキエル。主神の付き人をできる実力者なんて限られている。趣味人ばかりの堕天使幹部は性格的な向き不向きもあるだろうし。

 しかし、ディオドラ・アスタロトによる傷跡は深いなあ。

 

「そうですか」

 

 朱乃さんも納得はしたか、娘としては複雑だろうけど。

 

「そういうお前こそ、ここはまだ早いだろう!赤龍帝兵藤一誠が信頼に足る男だとしても、彼には体質の問題もあるんだぞ!」

 

 どうやら認められてはいるみたいだな。

 

『欠点らしい欠点が相棒にはないだろうからな』

 

 これでこんなヤツとか言われなくて良かったよ。

 

「そ、それは」

 

 気まずそうに顔を俯かせた朱乃さんはソっとこちらを向き。

 

「そういった行為目的ではなく、慌てふためくイッセーの姿が見たかったの」

 

 強引に連れてきたのは朱乃さんのS心が刺激されたからかーい!!

 

『そういえば照れながらも口元は嗤っていたな』

 

 ドSだ、ドSだよこの娘。

 

「なら仕方ない!!

 俺と朱璃の娘だしなっ!!」

 

 納得して、許すんかいっ!!

 

『アザゼルの兄弟分だしなあ』

 

 そんなドライグの説得力ありありな言葉で、今回のデートは幕を閉じるであった。

 

 楽しかったデートのグダグダな終わり。

 だが、

 北欧神話の主神オーディンの訪日という出来事から、俺は再び騒動がおこることを確信したのであった。

 

 

「それでね、イッセーに迫るとこんな反応をしてくれて、それがとてもそそられてね」

 

「ハッハッハ、そうか朱乃は昔の朱璃そっくりだ。しかし兵藤一誠もまだまだMとしては未熟だな。きちんとMの作法を伝授してやらねばな」

 

 あの、あなた達は親子間で揉めてませんでしたか?和解してるのは良い事だけど、親子間のSM談義はやめてください。

 

 

 





 補足・説明。

 リアス達の尾行がないのもあり、デートはがっつり夕方まで楽しみました。
 朱乃の色街への誘導は、行為をする気はなかったけどイッセーの様子が見たかった感じです。
 照れてくれる反応やオドオドしだす態度に満たされたそうです。
 バラキエルさんは赤龍帝登場からのイッセーの情報収集に励んでいましたが悪く言う点がありませんでした。体質的に助平なやらかしもできないこともあり、娘を安心して預けられる存在扱いです。
 この後にMの作法を伝授する気です。
 
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