お久しぶりです。
アザゼル先生が特撮イベントで(精神崩壊しながら)ファンサービスに励み、俺達グレモリー眷属がオーディン様の日本観光の護衛(必要か疑問な実力の御方だが)などの仕事をしつつ日々は過ぎる。
合間の時間には本人達の希望から木場とギャスパーにゼファードル達との戦闘訓練も行っている。
赤龍帝の篭手の覇龍状態をリスク無く使える、という時点で俺の実力は各神話の主神と同ランクとされる(精霊魔法抜き)。
だがその評価に驕らず鍛錬は止めない。
純粋な人間だったグランバハマル時代よりも高性能な悪魔の肉体。
ドライグによりもたらされた(アニメを元にした)パワーアップ案。
そんな強くなれる可能性を前に一人の男、戦士として鍛えずにはいられないのだ。
それに強くなるにこしたことはない。
いつミルたん級の厄災が襲いかかってくるか分からない世界でもあるし(本音)。
そんな俺に刺激されてか木場も一緒に鍛錬をする。精霊魔法の光剣を使う俺は純粋な剣士とは言い難いまでもソコソコやれるからだ。
天然理心流に騎士の駒の速度を合わせた木場は、陽介さんとは違う巧みさがあった。
舎弟であるゼファードルは得意の魔力操作以外にも筋力鍛錬に励んでいた。別にサイラオーグ様のようになるまで鍛えたいわけではない、けどレーティングゲームで彼の振るった拳をたった十発しか耐えられなかった事実にゼファードルは屈辱を感じたらしい。
ギャスパーは空中を飛び回るロボット(ドローン?)を神器である魔眼で停める練習を行っている。アザゼル先生が作った魔力充填式の専用の練習アイテムで、静止精度と反射速度を上げる効果があるそうだ。視界の及ぶ範囲全てを停める力は強力だが、活かせる状況が限られすぎているからな。
ディオドラの件の褒美として与えられた訓練用の頑丈な異空間にて俺達は時折戦術や戦略の話をしながら訓練に励んだ。
オーディン様が来日されてから数日経ったある日の夜。オーディン様一行が北欧から連れてきたスレイプニルという八本足の巨大な軍馬がひく、これまた貴族王族が乗るような絢爛豪華な馬車に俺とリアス部長達、アザゼル先生、オーディン様、ロスヴァイセさんが乗っていた。
走っているのは公道ではなく空中。夜空を馬車で駆けるというなんともファンタジーな一時だ。
この人数が乗れるリムジン的な大きな馬車だが全員が乗っているわけではない。走る馬車に並走するように護衛として木場、ゼノヴィア、イリナ、そしてバラキエルさんがそれぞれの翼を広げながら飛んでついてきていた。
「日本のヤマトナデシコはいいのぉ。ゲイシャガール最高じゃ」
どんな接待されたんですかアザゼル先生。饗されたオーディン様は満足しているけど、聖書の勢力による饗しとしてそれで良いのだろうか。
護衛としてついていってはいるものの、遊園地や寿司屋はともかく、キャバクラなどの年齢的に駄目な場所は入口や馬車、待合室で待機だった。
グランバハマル時代の冒険者活動で慣れている俺はともかく、グレモリー眷属の皆は慣れぬ護衛任務に疲れ気味だ。普段の悪魔業務はゼファードル眷属達で回してくれてるから良いものの、アーシアなんて俺の肩に頭を寄せてうつらうつらとお眠になるくらい疲れていた。
まあ、オーディン様の相手自体はそれほど大変ではない。確かに好き放題に観光してワガママも言ってくるけど、グランバハマルの貴族なんてヒマだからと人間狩りさせたりするヤツも居たからな。
ただそれは理不尽に慣れてる俺だからであって、
「オーディン様!もうすぐ日本の神々との会談なのですから、旅行気分はそろそろお収めください。このままでは、帰国したときに他の方々から怒られます」
付き人であるロスヴァイセさんはもう限界らしい。ここ数日はずっとクールに対応していたけど、顔に青筋立ててぶちギレ寸前になっていた。
「まったく、遊び心のわからん戦乙女じゃな。そんなカリカリせんでリラックスしたらどうじゃ?そんなんだから男の一人もできんのじゃよ」
「〜〜〜〜〜!!」
オーディン様にからかわれて怒りとままならぬ現実から戦乙女からナマハゲにジョブチェンジしそうロスヴァイセさん。
そんな反応するから面白がられるのではないのだろうか?
連日繰り返される騒ぎに、グレモリー眷属一同は早く帰らないかなという気分になっていた。
『相棒』
「ヒヒィィィィィィンッ!!」
ドライグの声が聞こえると同時に、スレイプニルの鳴き声が響き渡る。
そして急停止の衝撃が馬車に乗る俺達を襲った。隣に座るアーシアとリアス部長を支えながら外に意識を向ける。
「何事ですか!?まさか、テロ!?」
「わからん!だがこういうときはたいていろくでもないことが起こるもんだ!」
ロスヴァイセさんの焦った声にアザゼル先生が応える。
北欧の主神、堕天使総督と武闘派幹部、上級悪魔眷属集団と転化天使、おまけに赤龍帝がいる一行を襲撃するなんて一体どこの誰だ。
外から感じる気配は天使や悪魔やドラゴンではない。オーディン様に近いみたいだから神の類か?
馬車の窓を開けて前方を見れば、そこには若い男性らしき者が行道を遮るように浮遊していた。
『超常存在の外見なんて年齢判断するアテにはならんがな』
老けた外見とかはなんか気分らしいからね。立場的な威厳を増すためとかって理由もあるとかないとか。
長い銀髪だか白髪の額に宝石をあしらったサークレットをつけた目つきが悪いイケメン?貴公子だ。
服装はローブだが、悪魔貴族や天使堕天使の着る物とは異なるデザインで、オーディン様が着ている物が近い感じだ。
『北欧の神だな、誰かは知らん』
歴代赤龍帝の活動圏とは被らなかったのか北欧の神だとはわかっても面識はないようだ。ドライグの推測が正しいようで、男性を確認したロスヴァイセさんが驚いた表情となり、アザゼル先生は舌打ちしていた。
現れた神はマントをバッと広げ、口の端を吊り上げて高らかに喋りだした。
「はっじめまして、諸君!我こそは北欧の悪神が一柱、ロキであるっ!!」
『ああ、あの本人(神)より強い子供(魔獣)を何匹も拵えたことで有名なヤツか』
赤龍帝からもそんな認識なんだ。
その有名さを本人(神)はどう思ってるのだろうか。凄い血統主とかそんな感じ?
「これはロキ殿、こんなところで奇遇ですな。何か御用で?この馬車には北欧の主神オーディン殿が乗られている、それを承知の上でのことで?」
馬車から出たアザゼル先生が護衛責任者として礼を取りながら問いかける。
今回の護衛は聖書の勢力から誕生したテロリスト集団を警戒してのこと、北欧の一柱となるとそれらと一括りに対応はできない。
問われた悪神は腕を組みながら口を開いた。
「いやなに、我らが主神殿が我らの神話体系を抜け出て我ら以外の神話体系に接触していくのが耐え難くてね。許し難く、我慢できないから邪魔をしにきたのだ」
神話体系の接触ってそんなにタブーなのか?
『知らん』
そのロキ(様をつけなきゃいけないのかわからない)によるこちらの骨折り、段取りを台無しにしにきた宣言に、アザゼル先生は怒気を発しながら言う。
「堂々と言ってくれるじゃねえか、ロキ」
形だけの敬意すらをかなぐり捨てた口調。三大勢力に限らず、他神話との和平協定がアザゼル先生の目指すことだからだろう。
「ふはははは、これは堕天使総督殿。本来、貴殿や悪魔達とは会いたくもなかったのだが、こうして遭遇してしまったならば致し方あるまい。オーディン共々我が粛清を受けるがいい」
「おまえが他の神話体系に接触するのはいいってのか?矛盾しているな」
「他の神話体系を滅ぼすならば良いのだ。和平をするのが納得できないのだよ。我々の領域に土足で踏み込み、そこへ聖書を広けたのがそちらの神話なのだから」
「それを俺に言われてもな。その辺はミカエルか、死んだ聖書の神に言ってくれ」
うん、堕天使って聖書・神の教えにに唾吐く存在ですからね。アザゼル先生はそのリーダーだから言われても困るよなあ。
「どちらにしても主神オーディン自らが極東の神々と和議することが問題だ。これでは我らが迎えるべき『神々の黄昏』が成就できないではないか。ユグドラシルの情報と交換条件で得たいものとは何なのだ」
北欧神話内の和平反対派、他神話へ敵意を持つ神ってわけか。それを確認するかのようにアザゼル先生が指を突きつけて訊く。
「なあロキ、おまえの行動は『禍の団』と繋がっているのか?って律儀に答える悪神様でもないか」
聖書の勢力としては重要なことではある。会談の時にもカテレア様が他神話と繋がりを仄めかしていたからな。
「愚者たるテロリストと我が想いを同一視さるるのは不快極まりないな。我は己が意思でここに参上している。そこにオーフィスの意思はない」
その答えを聞いて、アザゼル先生は肩の力が抜けていた。
「『禍の団』じゃねえのか。爺さんが言う北の問題点はコレかよ」
馬車からロスヴァイセさんを引き連れて現れたオーディン様はアザゼル先生の言葉にウンザリした表情で頷いた。
「ふむ。どうにも頭の固い者がまだいるのが現状じゃ。こういう風に自ら出向く阿呆まで登場するのでな」
主神の、恐らく北欧神話全体の方針にすら牙をむく強硬派か。どこもかしこも大変なんだな。
「ロキ様!これは越権行為です!主神に牙をむくなど許されることではありません!しかるべき場にて異を唱えるべきです!」
付き人であるロスヴァイセさんがスーツ姿から戦乙女衣装となり、北欧の者として物申していた。
しかし所詮は付き人。悪神が同格ですらない者の意見に聞く耳など持つはずもない。
「一介の戦乙女風情が神に物申すな。オーディンに訊いているのだ。このような北欧神話を踏み越えた行いを続けるつもりなのかとね」
返答を求められたオーディン様は平然と答えた。
「そうじゃよ。少なくともお主よりもサーゼクスやアザゼルと話していたほうが万倍も楽しいわい。聖書の和平協定という新しく面白いことをしでかしたんじゃ。ならばこれを機に他神話の術法を知るのもよいじゃろう。異文化交流、実に胸が踊るわい」
その主神たるオーディンの言葉を聞き、ロキは相容れないと理解して苦笑した。
「認識した。なんと愚かなことか。ここで黄昏を行おうでないか」
凄まじい敵意が悪神ロキから溢れ出し、俺の肌をビリビリと刺激してくる。
「それは、開戦の宣言と受け取っていいんだな?」
アザゼル先生が最後の意思確認を行う。ここが何事も無かったことにできる最後の分水嶺だからだ。
「いかようにも」
そして悪神ロキは堕天使総督も自ら主神も取るに足らぬとばかりの余裕をもって不敵に笑う。
「やるぞドライグ」
『神、か。相手どるのはいつぶりか』
神という種族。
交戦するのは初めてだが舐めてかかれはしない相手だろう。
ゼノヴィアが放ったデュランダルによる高出力エネルギー波からこの戦いは開始した。
ちなみにライザー眷属とゼファードル眷属の参戦はありません。フェニックスは保護種であり、ゼファードルは護衛より通常業務の代理の方が向いてるからです。
なお、某貧乳好きな依頼人さんはボールボーイが女子制服を着た姿を見て精神ダメージで寝込みました。