機動戦士ガンダムSEED DESTINY~自由の福音~   作:那珂之川

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どう展開を書こうか悩んだ結果、投稿が遅めになりました。


緩やかな説教

 アスランが[セイバー]でカーペンタリア基地に到着する前、オーブから離れた海底に佇む純白の戦艦が存在した。先の大戦では地球連合の最新鋭艦として建造されたものの、味方からの裏切りを受けて離脱し、独自の戦力として戦争終結に導いた“不沈艦”―――[アークエンジェル]であった。

 

「全く、カガリがあんな無茶をするなんて肝が冷えたんだけど?」

「それに関しては済まなかった。だが、ああする他に手段が無かったんだ……キラたちが襲われたのは全くの想定外だったが」

 

 国家元首に苦言を呈したのはキラ・ヤマト―――連合の[ストライク]、伝説の[フリーダム]のパイロットを務め、カガリとは双子という縁を持つ彼の言葉に、カガリはバツが悪そうにしながら謝罪の言葉を口にした。

 

「最近のカガリからして不安は感じられなかったんだけど、でもどうしてセイランさんとの結婚を推し進めようとしたの?」

「……周りの連中は過去のことを忘れてしまっている。叔父上が代表を務めていた時の事すらも、アイツらは水に流そうとした。民に屈辱を与えたことを許容するなど、私は決して許せなかった」

 

 カガリは周囲の状況を鑑みた時、政治的な味方が余りにも少ないことを悔やんだ。あの時、父を強引にでも生かしておいて奴らの増長を許さないようにするべきだったと後悔したが、既にいない人物のことを羨んでも仕方がない、と諦めた。

 とはいえ、一度始めた以上は投げ出すことも出来ない。カガリが悩んだ末に出した答えは、表舞台にいないキラの力を借りることだった。前大戦で大破した[フリーダム]はオーブで修復されており、算段は十分にあった。

 

「だが、今の私には政治的な味方が少ない。だから、私が不在となることで起きうる状況を敢えて起こす為、マーナにあの手紙を託したんだ」

「代表……」

「止めてください。今の私は只の小娘同然ですよ、レノアさん」

 

 普段のカガリからはあまり出てこない丁寧な口調に、カガリの周囲にいた人たちは思わず笑みを漏らした。すると、操舵席に座っていたパトリックが声を掛けた。

 

「ところで、アスハ代表。うちの愚息は一緒で無かったのですか? レノアは何か知らないか?」

「いえ、私は何も……代表?」

「……あのバカ! 私にだけ話してプラントに行ったのか!?」

「えっ、アスランがプラントに!?」

 

 パトリックとレノアのやり取りで、カガリはアスランが自分以外に一切相談することなくプラントへ向かったことに叫ぶような口調で言い放った。これにはキラもアスランの動向を聞いて驚く素振りを見せていた。

 すると、キラの隣にいたラクスが声を掛けた。

 

「キラも知らなかったのですか?」

「うん。ユニウステン落下のことで悩んでいたのは聞いたけど……メールも寄越さなかったところを見るに、相当悩んでいたと思う」

「……あの馬鹿息子が。元は私が撒いたも同然のことで思い悩むな、と言い含めておいたというのに」

 

 親友ですら知らされなかったアスランのプラント行き。これにはパトリックが溜息混じりに呟いた。すると、それを聞いていたアンドリュー・バルトフェルドが口を開いた。

 

「そのことも考えなければならないが、一先ずどこへ向かうべきかな?」

「でしたら、スカンジナビア王国へ。父が話を付けてくれたようで、匿っていただけると」

「そこならオーブとも深い関わりがあるから、当分は大丈夫だな……まずは今置かれている情勢が知りたいし、キラたちのこともちゃんと聞きたい」

 

 オーブを飛び出した純白の天使は、暫し身を潜めることとなった。この世界の行く末を見つめ、守りたいもののの為に戦う意思の灯を消さないために。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 アスランと[セイバー]の着任、そしてナイルに与えられた最新鋭機[リバティ]の受領。[ミネルバ]は任務の為にカーペンタリア基地を出港した。ボズゴロフ級潜水空母を護衛に就けてくれるという大盤振る舞いだが、これから[ミネルバ]に待ち受ける道のりは決して平坦ではない。

 ナイルがパイロットスーツに着替えてパイロットアラートに移動すると、先客という形でアスランとシンがいた。この二人が仲良く出来るビジョンは期待していなかったわけだが、そんな思考を掻き消すかのようにコンディション・レッド発令のアナウンスが入る。

 この状況で待ち受けているのは確実に連合軍だろうが、あれほどの損害を受けてもなお狙おうとするあたり、先日のオーブ沖海戦の雪辱戦とでもいうつもりなのだろうか。シンたちが先に格納庫へ向かう中、ナイルはアスランの様子を見ていた。彼はブリッジと通信を取り、指揮系統に関する相談をした結果―――アスランがモビルスーツ部隊の指揮を執ることとなった。

 通信を終えたところで、アスランは様子を見ていたナイルに気付いた。

 

「ナイル。先程まで見ていたのだろうが、俺がモビルスーツ部隊の指揮を執ることとなった。先日言っていた通り、お前には副隊長を担ってもらう。後で艦長にはそう話しておく」

「……まあ、いいさ。機体の特性上、俺が艦の護衛に入っておくが、いいか?」

「そうだな……ああ、[ミネルバ]の守りは任せた」

 

 デュートリオンビーム送電システムの都合を考えた場合、ハイパーデュートリオンエンジンを搭載した[リバティ]が前衛を張るということも考えた。機体の特性を鑑みた場合、砲撃をこなせる[リバティ]が[ミネルバ]の護衛をするのが一番やりやすい部分もある。

 幸いにしてインターフェース類は[ジャスティス]や[フリーダム]のものを踏襲しているため、使い勝手については一番熟知しているのもありがたい。

 

『[インパルス]、[セイバー]、[リバティ]、発進願います。[ザク]は別命あるまで待機』

 

 メイリンの声が告げる。大気圏内の飛行能力がない[ザク]は空中戦に参加できない。

 ナイルは機体を立ち上げ、モニター類に光が灯る。[フリーダム]を思い返しながら準備を整えていると、モニターにウィンクをしているメイリンの姿があった。

 

「……これから戦闘なのだから悠長なことは言わんが、出来る限りのことはする」

『うん、無事を祈ってるよ。X55S[リバティ]、ナイル機。発進スタンバイ。全システムの機動を確認しました。気密シャッターを閉鎖します』

 

 シンの乗る[コアスプレンダー]、アスランの[セイバー]と並行してナイルの[リバティ]がカタパルトへ運ばれていく。複雑な発進シークエンスのオペレーションを余裕にこなしてしまうあたりは流石メイリンと褒めるべきなのだろうが、ここで褒めたところで調子に乗るのは目に見えている為、当たり障りのない程度で返した後、ナイルはモニターに映るカタパルトへ意識を向けた。

 

『右舷カタパルトハッチ開放。[リバティ]、発進どうぞ!』

「ナイル・ドーキンス。[リバティ]、いくぞ!」

 

 左舷ハッチから[リバティ]が発進して、ヴァリアブルフェイズシフト装甲が展開する。右舷から[セイバー]が、中央カタパルトから飛び出した[コアスプレンダー]が次々と発進した各パーツと合体して[インパルス]となり、二機が先行して[リバティ]が艦の直上を守る形で配置につく。

 最新型の動力炉を使用している為か、パワーのレスポンスは[エールザクファントム]より遥かに上。下手をすれば[フリーダム]以上の機動力を有している。とはいえ、ほぼぶっつけ本番の状態で無茶をするわけにもいかないと考えた結果、[ミネルバ]の護衛という形を取った。

 

 二機の先行で抑えきれなかった連合量産機の[ウィンダム]が襲い掛かってくるが、ナイルは一息吐いてペダルを踏みこむ。[リバティ]は空力翼を展開し、サーベルを抜いて一気に切迫する。[ウィンダム]はその姿に[フリーダム]を想起させたのか、一瞬だけ動きが鈍る。

 

「―――戦場に出た以上、躊躇いは命を落とすだけだ」

 

 [リバティ]はすれ違いざまに敵機の推進装置や武器を破壊した後、ビームライフルやプラズマビーム砲、レールガンを一斉に展開して同時砲撃を敢行。十数機の[ウィンダム]を瞬く間に戦闘不能へと陥らせる。

 その[リバティ]の存在は敵すらも驚きを見せていた。

 

「もう一機新型だって? やれやれ、作戦を早めたのはミスだったかな?」

 

 そうぼやいたのは紫のパーソナルカラーを纏った[ウィンダム]を操縦する男性―――宇宙では[エグザス]を駆っていたネオ・ロアノーク大佐その人だった。忽ち戦力を削られる有様に冷や汗を流す中、[カオス]を駆るスティングがアスランの[セイバー]を無視して[リバティ]に突撃した。

 

「おもしれえ、その力を見せてみろよ!」

 

 カオスがミサイルを放つが、[リバティ]は海面に向かってレールガンを放ち、巨大な水しぶきを上げた。その水壁によって遮られる形でミサイルが誘爆し、爆風で姿を見失う。だが、アラートが鳴り響いた瞬間にスティングが海面へ叩き落された。

 レールガンは[アビス]のスラスターを壊すことで撤退を余儀なくさせると同時に[カオス]の攻撃を凌ぐためのものだった。最悪シールドで防ぐことは出来たので、水壁の防御はせめてもの保健みたいなところもあった。

 その上で、[リバティ]は[カオス]をビームサーベルで武装類を破壊し、戦闘不能に陥らせて撤退させる方法を敢行した。いくらエース機でも二機が欠けてはジリ貧もいいところだ。これにはネオが悪態をつくように呟いた。

 

「ちっ……あの[フリーダム]みたいな機体は想定外にも程があるだろうに。ジョーンズ、撤退するぞ! ステラ、撤退だ!」

 

 すでに撤退している[カオス]と[アビス]、ここで[ガイア]まで被害を受けては堪らない。ネオは直ぐに撤退の判断を下した。

 撤退していく連合軍だが、[インパルス]と[セイバー]が先行したまま戻らない。すると[ミネルバ]から通信が入る。モニターにはタリアの姿が映し出されていた。

 

『ご苦労様と言いたいけれど、二機が先行したまま戻らないの。様子を見に行ってくれるかしら?』

「何かあったとみるのが自然ですか……了解しました」

 

 ナイルは[リバティ]を駆って二機の向かった方向へ飛んでいく。[インパルス]と[セイバー]の反応は直ぐに見つかったが、上空を旋回している[セイバー]に対し、[インパルス]は攻撃を加えていた。その対象は建設途中と見られる連合の基地だった。

 

「カーペンタリアの目と鼻の先に……でも、納得は出来るな」

 

 空母もなしにバッテリー機であるはずの[ウィンダム]をあれだけ戦力として揃えるには無理がある。大方、強奪機体を使っている連中が強力な権限を与えられているのだろう。

 それはさておいて、シンの駆る[インパルス]が攻撃を止めない理由を探ったところ、その原因は基地建設で動員されている“人”だった。フェンス越しに逃げ出そうとした現地住民が射殺で亡くなったと思われる現場。それをシンは目の当たりにしたのだろう。

 アスランは必死に止めようとしているが、今のシンは納得のいくまで止まらないだろう。自分と同じ目に遭ってほしくないという衝動的な理由で動いている以上、止まる理由などない。

 そう思いながら、ナイルはアスランに通信を入れた。

 

「……アスラン。言いたいことは分かるが、シンを殴ってでも言い聞かせるような真似は止めとけよ? そんなことをしたら、俺がお前を本気で殴るからな?」

『ナイル……しかし』

「別にシンのやっていることを全面的に肯定するつもりはない。だからと言って、犠牲を看過するやり方は許容できない。軍人である以上の線引きという意味での“鞭”ならばいいがな。お前は面倒なことを端折る癖があるのだから、きちんと言葉にしろ」

『……善処する』

 

 アスランを知り、シンを知る立場だからこそ、ナイルは双方がきちんと折り合いを付けられるように言い含め、アスランもこれには痛い所を突かれた形で納得せざるを得なかった。

 最終的に[インパルス]がフェンスゲートを引き抜き、そこで止まったのを見てからナイルは通信を入れた。

 

「シン。お前なりに納得はしたか?」

『ナイル……うん、まあ』

「ザラ隊長には俺から言い含めておいた。思うところはあるだろうが、俺たちに出来ることはここまでだ。後のことはカーペンタリアの人たちに任せて、[ミネルバ]へ撤退するぞ」

『あ、ああ……』

 

 結局、アスランからシンへ説教はあったものの、物理的に相手を殴るようなパワハラ的要素は排除されたため、シンもアスランに対する感情をそこまで悪化させることは無かった。その反動を食らったのは言うまでもなくナイルであり、アスランから信頼を置かれると共にモビルスーツ部隊の副隊長となり、形式上はシンやルナマリア、レイといった同期を部下に置くという奇妙なことになってしまった。

 

「いやー、大変だったね。ナイルも」

「バスタオル一枚で出てくるとか恥を知れ。服を着ろ」

「もー、何で靡いたりしないのよー」

(やっていることがうちの母並みに酷いってことは言わないでおこう……)

 

 別に劣情を抱かないわけではない。好きだからと言っても、一定の線引きをして欲しい。それがナイルの望みだというのに、目の前にいる女性はそれを嘲笑うかのようにラインを飛び越えてきている。まあ、倫理上のラインが辛うじて死守されているのはありがたいことだが。

 言われた側となるメイリンは渋々制服を着ていた。

 

「それにしても、ナイルって大分苦労人だよね」

「言わないでくれ。正直に言って、こんな人事なんて普通は許容されないんだからな」

 

 軍人という立場から見ても、いきなり外部から入って来た人間が部隊の指揮を執るなんて普通は無理な話だ。いくら能力があろうとも、結局は人間同士なので意思疎通が大事となる。とはいえ、コミュニケーション能力が乏しい隊長の補佐など、正直に言っても『やりたくない』のが本音だ。

 

「つーか、ここまでやってもルナは気付いていないのか?」

「そうみたい。前に私が情報処理の課題で相談したことがあったでしょ? その延長だと思ってるみたいで」

「……あまり人のことを貶したくはないが、ルナが些か鈍いようにも思えるんだが」

 

 元々彼氏がいたこともあって、男性に対する機敏は鋭いものかと思っていた。ただ、自身に向けられる好意に関して鈍い素振りも見られる。以前、レイにこの辺の話題を降ってみたところ、彼は深い溜息を吐いていた。曰く『あんなのを幾度と見せられると、嫌でも勘付いてしまう』とのこと。

 

「あれ、ひょっとして私に脈ありですか?」

「調子に乗るな」

「あうちっ!!」

 

 調子に乗るメイリンに対し、ナイルはチョップを食らわせたのだった。




マイフリ組みつつ展開を整理していました。
私は悪くn(ディスラプターで蒸発)
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