術式?呪力?最終的に物言うのはフィジカルですが? 作:ありがとうはなまる
とある廃村近くの森
「……すごいですね」
「…まぁここに来る前に薄々こうなるんじゃないかとは思っていましたが…」
田舎にある既に廃村となった村近くの森林、その中に灰原雄と七海建人が棒立ちをしていた
「弱いなぁ。歯ごたえなさ過ぎやでこいつ」
地面に転がる千切れた手を蹴飛ばす禪院直哉
「推定等級一級の
この地を守護していた産土神は灰原達に付き添って付いてきた特別1級術師の向日葵達によって祓われ、塵となり朽ち果てていた
呪術廻戦で本来灰原を殺し、五条悟に祓われるはずだった産土神は、本来いるはずの無い2人によって祓われた
同時刻
福島県 高◯沼グリーンランド
「はぁああ!!」
「ギィィィァァァ」
バゴン!!
丸みを帯びた体格の女性が呪霊をタックルで壁に激突させ、呪霊を圧殺して祓った
「ふー 討伐完了です」
呪霊を圧殺した彼女の名は如月春奈。京都校2年生花の女子高生である
「良く1人でやれたな」
「あぁパワー、スピード、呪力の操作共に準一級以上の実力はある」
刀が何本も入った筒を背負った青髪のツインテ少女大道育子、高身長の男三代為右衛門が如月春奈の戦いぶりについて賞賛の声を上げる
何故学年の違う春奈たちが一緒に行動し、呪霊を祓っているのかは、禪院仁が大道育子と如月春奈を一級術師に推薦し、最近1級術師になった為右衛門が2人に同行して適正チェックをしていたからである
「ありがとうございます為右衛門先輩、育子先輩」
「どうだ 準1級になる前に俺といっちょ相撲を取らないか?」
「花の女子高生相手になんちゅう誘いしてんだよバカ」
為右衛門のスネを蹴り上げる育子
「あははは…あっ そうだみなさんお腹は空いていませんか?依頼も終わったことですしみんなでご飯でもどうです」
春奈は懐からチョコやケーキ、フランクフルトやハンバーガーなど、次々に取り出し食べていく*1
如月春奈の天与呪縛は自身に蓄えられた脂肪や接種した食品のエネルギーなどを呪力として燃焼、変換することで呪力を扱うことが出来る
脂肪が多ければ多いほど呪力量、呪力出力などが上がりその実力は1級以上
デメリットとしては戦闘時に大量のカロリーを消費するため、すぐにお腹が減ることと、脂肪を燃焼させなければ呪力が使えず、呪霊が見えない非術師になってしまう点
「体質だからってよくそんな量食えんな。見てるだけで胸焼けしてきそうだぜ」
「確かに。如月、戦うためだからといって無理に食べては先に体を壊してしまう。あまり無理に食べるんじゃないぞ」
「はい!でも私は大丈夫です。元々食べることは好きだったので」
目当ての呪霊を祓い、警戒心が薄れ各々が談笑をしている中、一つの人影が向日葵たち、春奈たちを影から見つめていた
?「ボス*2を余裕で祓うなんてちょっと意外だったな。まぁ一面のボス*3なんて弱くて当然か。なら私からのささやかなプレゼントを送ろう」
『!!』
為右衛門達の前に突如として飛来してきた、白い顔面に紺色のてが張り付いたような見た目のふんどしを着た人形の呪霊が、
直哉達の前には右手にナタを持った白色の肌に段ボールの覆面を被った男が空から落ちてきた
「ニヒー」ニヤ
「コ…コンヤ…ハ…ウ…ウナギカナ」
夜はまだ明けない
2年ズ+春奈side
突然出てきた呪霊ではあったが3人はすぐに戦闘態勢を取り人型呪霊を警戒する
春奈「ぐぅ゙!」
育子・為右衛門「「!!」」
虫呪霊は育子と為右衛門を無視し、後ろにいた春奈を攻撃。春奈は呪力で強化した腕をクロスにして虫呪霊の攻撃を防ぐが、虫呪霊の放つ拳を防ぎきれず後ろに吹き飛ばれた
春奈「きゃあぁぁ!!」
育子「てめぇー!!」
育子は背負っている筒から刀を取り出し、脇構えの動作で虫呪霊まで近づき腹目掛け刀を振り抜く
バキンッ!!
育子「なっ!!…ぐっ!!」
育子の振るった一太刀は虫呪霊の強靭な体を傷つけること無く砕けちり、虫呪霊の裏拳を頬に喰らい空中で回転しながら吹き飛ばされた
為右衛門「どすこい!」
為右衛門は虫呪霊に組みかかり呪霊を投げようと仕掛ける
為右衛門「っ!」(う、動かん)
為右衛門が全力で投げようと力を入れても虫呪霊は動くこと無く余裕の笑みを浮かべ、逆に為右衛門の服を掴み上げられ地面に叩きつけられた
為右衛門「がはっ!!」
?「この呪霊には両面宿儺の指を"3本"取り込ませている。さぁこのボスをどう攻略する?呪術師諸君」
春奈「ぐっ……痛い」
春奈は虫呪霊に殴られ赤く腫れた両腕を抑えていた
そこへ虫呪霊はわざとゆっくりと春奈の前まで歩いていく
「…! はぁっはぁっはぁはぁ!」(怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い、死ぬ?死ぬ!死ぬ!!嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダ)
「嫌!!」
春奈は初めて感じる強烈な『死』の感覚により戦意が折れ、心は恐怖で埋め尽くされていた。体は恐怖で震え上がり、目からは涙が零れ落ちていた
育子「うちの後輩泣かせてんじゃねぇーよクソ呪霊!!」
為右衛門「後輩には指一本触れさせん!!」
虫「!」
為右衛門が虫呪霊に突進を仕掛け、育子が刀を振るい虫呪霊から春奈を守るため攻撃を仕掛ける
育子「硬ってーな!!いいな!切りごたえ満々かよ!!」ニカッ
為右衛門「なんというフィジカルの持ち主!!良いぞ!取りごたえ満々だ!!」ニカッ
小さな体を生かし虫呪霊の攻撃を避け、懐まで潜り込み刀を振るい笑う育子。虫呪霊に何度も取っ組み合いを仕掛け、何度も地面に叩きつけられ、土やホコリでボロボロになりながらも笑う為右衛門
そんな2人を見ている春奈は、2人に対し疑問が湧き上がっていた
「……」(なんであんな化け物に笑顔で向かっていけるの?怖くないの?なんで…なんであんなに楽しそうにしているの?)
春奈は虫呪霊に笑顔で戦いを挑むイカれた2人に死の恐怖とは別の恐怖が湧き上がる
そこでふと入学して早々先生から言われた言葉を思い出す
『呪術師は常に死と隣り合わせ。自分の死だけでない。呪いに殺された人を横目に一呪いの肉を切り裂かねばならんこともある。不快な仕事だ。ある程度の
笑いながら死地に立つ先輩達を見ながら私は先生に言われた言葉の意味を理解する
呪術師はイカれてなきゃいけない
先輩達のようにイカれてなければ命を懸けて戦うなんてできない。いざ死が目の前に現れただけで取り乱して泣きじゃくるような私は戦う前に死んでしまう
先輩達こそがあるべき呪術師としての形。本物の呪術師なんだ
私には先輩たちのようなイカレ具合はないし、高いモチベーションもない。呪術師として
なら紛い物なら紛い物らしく、
震える手足でなんとか立ち上がり呼吸を整える
怖い
手足が、いや全身が震える。今すぐこの場から逃げ出したい
でも、ここで逃げたら私は一生後悔する
弱虫な私には先輩達のような力も勇気もない。でも…
私が如月春奈でいられるように 私が先輩達の後輩でいるために
私は、呪術師としての資格も命も覚悟も全部この瞬間に賭ける
呪術師として終わってもいい
今私にできる全てを
ありったけを
為右衛門は虫呪霊に真正面から挑み、相撲技のツッパリや蹴りや殴るといった格闘技を仕掛ける
育子は虫呪霊の周りを走り回り、隙を伺いながら虫呪霊の体に全力で刀を振るっていく
二人の攻撃を受けている虫呪霊の顔には先程までの笑みは消え、イライラとした顔になっており、育子が付けたであろう薄い切り傷が僅かだかついていた
育子が振るっている刀の等級は2級から3級程度と低く、本来特級呪霊である虫呪霊に傷一つ付けることなどできないが、育子の並外れた身体能力と剣術による神業によって、特級である虫呪霊に切り傷とはいえダメージを与えることができていた
育子「チッ また刀が死んじまった」
育子がボロボロになった刀を捨て、新しい刀を背中の筒から取り出そうとしていた瞬間、虫呪霊が眼の前の為右衛門を無視し、育子に向かい急接近してきた
育子「しまっ…ぐっ!」
刀を取り出そうとした一瞬をつかれた育子は、虫呪霊の手を避けきれず首根っこを掴まれ捕まってしまう
為右衛門「育子!!」
突然のことで反応が遅れた為右衛門は、捕まった育子を助けようと走り出すが、それよりも早く虫呪霊は笑顔で育子の心臓を貫こうと手刀を放つ
ダン!!
「ギジャアア!!」
更に早く飛び出した春奈の蹴りが虫呪霊の脇腹に食い込み、メキメキと音を鳴らしながら蹴り飛ばした
その拍子に捕まえていた育子を手放し、育子は地面へと投げ捨てられた
育子「ゴホッゴホッ…助かったぜ春…っ!!……春奈、だ、よな…」
春奈「はい先輩。間に合って良かったです」
育子の方へは顔を向けず、育子の返答に返す春奈。そんな春奈の姿は変化しており、蓄えられていた脂肪はどこにもなく、スラッとした体格にダボダボの学生服を着た春奈が立っていた
春奈「こいつは私が祓います」
京都東京1年ズside
突然現れた覆面の男にいち早く反応したのは悟、直毘人に次ぐ最速の呪術師 禪院向日葵であった
向日葵は投射呪法を使い、覆面男の背後まで移動し背中に触れる。背後に回られた覆面男が振り返ろうとした瞬間、フィルムのような板に振り返った姿勢のまま
向日葵はフリーズした覆面男の顔面、溝うちに拳を放ち、トドメに足を振り上げ金的を蹴り上げた
顔面、溝うち、金的と3つの急所に攻撃を食らった覆面男はうめき声すら上げることなく地面に伏した
直哉「さすが姉貴、容赦ないな」
向日葵「敵と感じたら速戦即決よ、直哉」
直哉「ひゅ~カッコいいねぇ姉貴」
灰原「拘束具ないですけどこの男どうしますか!!」
倒れた覆面男を見下ろしながら問いかける灰原
七海「なら私と、向日葵さんがこいつを見張り、直哉さんと灰原が補助監督のところまで戻り拘束具を持ってきてもらいましょう」
直哉「七海君も偉くなったもんやなぁ俺を顎でこき使おうなんてな。…まぁ七海君が土下座でお願いするんやったら行ってやらんでもないで」
ニヤニヤと笑みを浮かべ七海の発言をおちょくる直哉
七海「いえ、嫌なら向日葵さんに変わってもらってもいいですけど…」
灰原「大丈夫だよ七海!!これは直哉君のツンデレってやつだよ!!」
直哉「そんなわけないやろ灰原君」
向日葵「はぁ~ ……直哉、つべこべ言ってないでさっさと行ってきなさい」
直哉「はいはい 分かったって姉貴。ほな行こか灰原君」
灰原「はい!!七海、向日葵さん行ってきま…ドスッ……えっ…」
『!!』
突然、灰原の横腹*4に小刀が突き刺さったことに驚く一同。灰原の後ろを見ると、そこには先程向日葵が倒した覆面男と全く同じ被り物を被った男が灰原に刺さしたであろう小刀を握って立っていた
七海「は、灰原ぁ!!」
直哉(一体、いつの間に…)
灰原の後ろにいる覆面男を見て直哉はすぐさま倒れている覆面男に目を向けるが、そこには未だのびている覆面男の姿があり一層疑問が頭を駆け巡った
全員がいきなり現れたもう一人の覆面男に驚愕している中、灰原から小刀を抜いた覆面男は、急所を刺され倒れた灰原の首に刃を突き立てようとしていた
七海「!灰原ァァァ!!」
向日葵「っ!待て!七海!!迂闊に近づくな!」
七海は向日葵の静止の声を聞かず、覆面男に向かい走り出す
七海「っ…!?」
しかし、頭上から現れたもう一人、斧を持った覆面男が頭上から現れ七海を攻撃してきた
七海「ぐっ…!!」
力と呪力量共に覆面男に負ける七海は、斧を持った覆面男の攻撃を防ぐことしかできず、その隙に近づいた小刀を持った覆面男が七海の腹と足を切り裂き、斧を持った覆面男が刺されたことで隙が生まれた七海の頭目掛け斧を振るう
刺され動揺した七海だったがひよっこでも呪術師は呪術師、頭に振るわれた斧を自身の武器を盾にすることで直撃を回避し、横に吹き飛ばされるだけに留まった
しかし、威力が強すぎたため七海は木に激突、その拍子で手に持っていた呪具を手放してしまい、七海はそのまま地面へと座り込み気絶した。
向日葵(灰原と七海も共に急所を刺されているけど、まだかろうじて生きている、いや生かされているのかな。なるほど、敢えて瀕死で置いて人質にしているのね)
向日葵が現れた覆面男の行動を冷静に分析していると突然小刀を持った覆面男が口を開く
覆面「オ、オ、オレノ、ジュ、ジュツシキ、ハ、ブンシン、ド、ドウジニゴ、ゴタイマデダ、セル」
向日葵(!…術式の開示)
覆面「ダシタブンシ、ント、イレカワルコトガ、デキル。ブンシンガ、タオサレテ、モサ、サイドダスコト、デキル」
直哉「開示ご苦労 さん!」
覆面男が術式の開示をしている間に、投射呪法を使い一気に距離を縮めた直哉が覆面男の顔面に拳を振るう
直哉「!」
だが、直哉が放った拳は草陰から現れた大盾を持った覆面男によって防がれた
直哉「何!?…っ!」
突然出てきた大盾に攻撃を防がれ驚く直哉の真横から弾丸が飛び出し直哉の頬にクリーヒットした
呪力を纏っていたお陰で怪我はしなかったものの弾丸の威力は殺しきれず少しよろけ、その隙に、大盾の後ろから小刀と斧を持った覆面男が左右から飛び出し直哉に襲いかかる
向日葵「直哉!…ッ!」
2人の覆面男に襲われる直哉を助けようと走り出そうとした向日葵の後ろから、先程まで地面に倒れていた鉈を持った覆面男が襲いかかってきた
向日葵は後ろからの奇襲を気づき、その場から飛び出し奇襲を回避し、後ろから奇襲してきた覆面男を睨む
向日葵「もう復帰したのね、ならまた地面にキスでもしてなさい!」
向日葵は先程同様に投射呪法を発動して覆面男に接近する、つもりだったが…
向日葵「っ!?」
投射呪法を発動した瞬間、向日葵の横腹に弾丸が命中。直哉同様、呪力を纏っている向日葵には呪力が込められていない弾丸に当たった所で痛くも痒くもないが、弾丸の衝撃で僅かではあるが体が傾き、投射呪法であらかじめ作った動きとズレてしまった
投射呪法は1秒を24分割することで自分の視界を画角とし、あらかじめ画角内で作った動きをトレースする事で、速度を積むことができる術式。あらかじめ作った動きと違う動きをしてしまうと動きがガタつき1秒間フリーズしてしまう
作った動きと違う動きをしてしまった向日葵はフィルムの板のようなものに包まれフリーズしてしまう
覆面「フン!!」
覆面男はフリーズした向日葵目掛け鉈を振りかぶる
向日葵「ガハッ…!」
フリーズしている向日葵は振り上げられた鉈を無防備の体制で食らってしまい血を吐きながら吹き飛ばされる
両断こそされなかったが鉈が当たった所は青黒く腫れ、内臓を少なからず痛めていた
?「彼はね、分身の術式を持ってた呪詛師を捕まえてからある呪霊にお願いして呪霊に改造してもらった後、宿儺の指を食わせた特級改造呪詛師だよ。アタッカー2体に、ディフェンダー1体、アサシン1体、狙撃手1体と近中遠バランスの取れたチームに加えて、どれが本体かわからない、分身を倒してもすぐにHP満タンで復活してしまう超鬼畜ボスだよ。さぁどうやって攻略するのかな?」
直哉「姉貴、一旦逃げんで」
盾、斧、小刀の3人の包囲網を逃れてきた直哉が私の横まで来る
向日葵「ぐっ…ぺっ……まだ七海と灰原がいる」
直哉「あんな雑魚ども、ほおっておけばええ!今は自分の命優先や」
向日葵「………なら、あなたは七海と灰原を連れて補助監督の元まで逃げなさい。ここは、私が片付ける!」
直哉「アホか!!姉貴がコイツラのために命を賭ける必要なんてないんやで!」
向日葵「ある!」
直哉「っ…!」ビクッ
向日葵「私は、お兄様の妹だから」
向日葵「それに……この程度の敵を超えられないようじゃあ、いつまで立ってもお兄ちゃんの側には行けない」ボソッ
直哉「? 姉貴…」
向日葵「さっさと行け!!直哉!」
直哉「っ……はー 分かった。姉貴の頼みや、美味しいところは譲ったるわ。せやけど、帰ったらなんか奢ってもらうで」
そう言って直哉は投射呪法で七海と灰原を小脇に抱え回収し、補助監督のいる方角へ走り出した
だが、相手も安々と逃がしてはくれないようで七海たちを背負った直哉を斧と鉈が襲う
私は手を銃のように構え*5、直哉達を追おうとした覆面男に標準を合わせ呪力を撃ち出ち、直哉達の背が見えなくなるまで覆面男の動き妨害し続けた
向日葵「フッ…まったく手のかかる弟ね。お兄ちゃんも私のこと、こう思ってたのかな……さて、これで心置きなく動ける」
私は陣形*6を組んでいる覆面男たちを見ながら思い出す。沖縄で戦った2人の呪術師とそれに1人で戦っていた1人の呪術師を
あの白髪女も、スーツ姿の女も、加茂家のあいつもお兄ちゃんと同じアッチ側の人間だった
沖縄での戦い、私は何もできなかった
手も足も出せなかった
悔しかった。そして同時に恐れた
あの2人、いや3人はお兄ちゃんに惚れている
今のままじゃぁ確実にお兄ちゃんはアイツラに取られる
それだけは絶対に阻止しなくちゃならない
だから何が何でも強くなる。あの3人を殺して、お兄ちゃんを護れるぐらい強くなる
私もアッチ側に立つ
立って、お兄ちゃんの横を堂々と歩けるようになって見せる
だから、お前は お前らは!
向日葵「私の踏み台になりなさい」
私の言葉を合図に陣形の先頭にいる大盾を持った覆面男が突撃してきた
私は投射呪法を使うリスクを考え、呪力を全て身体能力向上に回し、大盾覆面男のタックルを横に動くことで回避した
大盾の攻撃を回避した後、頭上から降ろされた斧をステップで躱す。続いて来た鉈の攻撃を冷静に見極め、鉈の面部分に手を滑らせ攻撃を逸らし、ついでに鉈に投射呪法をかけフリーズさせる。フリーズさせた鉈に攻撃を仕掛けたいが、小刀が横から攻撃を仕掛けてきていた。小刀の攻撃には対処できないと悟り、左手を犠牲にすることで体に刺さることには回避した
左手を犠牲に小刀の攻撃を止めた私に追撃として斧が攻撃を仕掛けてくるが、攻撃が届くよりも先に小刀を持った覆面男に蹴りを入れ飛躍、その勢いで小刀を抜きながら覆面男達の間合いから抜け出す
向日葵「ガッ…!」
だが、大盾を持った覆面男は飛躍して空中にいる私目掛け突進を仕掛け、私は顔面からモロに大盾の突進を食らってしまった
向日葵「ぐっ…」
鼻に手を置き痛みを我慢する無防備な私を見ても襲って来ること無く陣形を整え、私を見据えてくる
先程の土地神と同等の呪力量に連携の取れた戦闘、言語を解する呪霊。間違いなく特級、それか特級に限りなく近い1級だろう
向日葵「すぅー…ふぅー……燃えてきたわね」ニィ
越えがいのある山だわ
自身より強い敵を前に笑みを浮かべるその姿は禪院向日葵が憧れる兄に酷似していた
春奈side
「ヴアアアア!!」
呪霊が奇声を発しながら私に突撃してきた。私は恐怖心を押し殺し拳を握り対抗する
呪霊の拳を屈んで躱し、足をバネのように生かし呪霊の胸部に向かい殴りつける
呪霊は青紫色の血を吐きながら吹き飛んでいくが、足を踏ん張り拳の勢いを殺し静止した。呪霊の殴られた箇所は普通の人間なら絶命しているほど凹んでいたが、虫呪霊が大きく息を吸い込み胸部に力を入れるとボンッと凹んでいた部分を戻し、私に笑みを向ける
(この程度の攻撃じゃあすぐに回復する。けど、ダメージは与えられる。なら、もっと速く連続して攻撃を与えていく!)
春奈が宿儺の指3本分の力と呪力を持つ虫呪霊と戦う前に課した縛りは2つ
①現在自身に蓄えられている脂肪全てを呪力に変換させること
②今後一生脂肪(呪力)を蓄えることができなくなる
と、実質的に呪術師として死んでしまう縛りを己に課すことで、特級呪霊と互角に渡り合うほどの呪力量と出力を一時的ではあるが扱うことができる
虫呪霊は笑みを絶やさないが春奈を楽しく遊べる
互いに一歩も動かず、相手の出方を伺う。廃墟の遊園地内に静かな風が拭き上げる。その刹那、静寂を破ったのは春奈だった
呪霊との距離を一気に詰めた私は、加速を乗せた回し蹴りを呪霊目掛け放つが、呪霊は私の回し蹴りを右腕を盾にして防ぎ、私が足を引っ込めるよりも先に呪霊は私の足を掴み、風が巻き起こるほどの速度で振り回し、近くのメリーランドに吹き飛ばされた
振り回されている間に呪力で肉体を守っていたおかげで無傷ですんだ私は、すぐさまメリーランドから抜け出しメリーランドの土台に手を伸ばし、錆びつきボロボロになっているメリーランドを持ち上げる。重っ!!?
「ぬぅううおおおおぁ!!」
私は持ち上げたメリーゴーランドを振り回し、呪霊目掛け投げ飛ばす
流石の呪霊も驚いた表情を見せるが、投げられたメリーランドを危なげなくキャッチしてみせた
私はその隙に、呪霊が持っているメリーランドでできた死角を利用して呪霊に気づかれることなく距離を詰め、お返しと言わんばかりにメリーランドを投げ飛ばした呪霊の隙をつき、腹目掛け全力の拳をめり込ませる。呪霊は流石に効いたのか紫色の血を大量に吐き出した
私は続け様に左ブローを呪霊の頬に叩きつけるが、少し仰け反った程度に留まり、呪霊は左手を前に出し私の顔を掴みかかりると、地面が割れるほどの勢いで何度も地面に叩きつけてくる
「ぐっ…ん゙!」
「イ゙イ゙ッ!!……がっ!」
私は掴まれていた呪霊の指に噛みつき、呪霊が痛がっている隙に腹を蹴りつけ呪霊との距離を取ることに成功する
「はぁ はぁ」タラー
頭から血が垂れてきているが、特に気にすることなく呪霊に目をやり、呪霊から漂う呪力量や外傷を確認するが、呪力量は先程より少し減っているぐらいで、先程つけた外傷ももうすでに完治していた
(早く、終わらないと!)
私は呪霊に肉薄し、拳を叩き込む。呪霊も負けじと私に拳を突き出してくるが、致命傷になり得る場所以外の攻撃は全て無視して攻撃を続ける。お互いの拳がぶつかる、互いの拳を躱し、相殺、躱しきれなかった拳が体に当たり、鈍い
ここで折れたらきっと私はもう戦えない負ける!!
折れるな!!
ここで足を一歩でも引いたら私はきっと恐怖で戦えなくなる
足を出せ!!
今、手を止めれば私は
このまま押し勝つ!!
絶対に祓う!!
絶対に!!!!
「うぉああああ!!」
《「キガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
実力が拮抗している虫呪霊と春奈は、数十と交わる拳と拳の応酬を繰り広げる。互いに相手の命を狩り取ろうと一心不乱の攻撃を続けていくが、勝負の勝敗が決死ようとしていた
呪力で回復できる虫呪霊と、反転術式を取得していない春奈で徐々に体力に差が出始めてきている。加えて、常に全力の状態で動きスタミナが削れ、技のキレが無くなってきている春奈と、スタミナという概念が存在せず常にフルパワーで戦える虫呪霊では春奈の勝ち目は薄い
このまま戦い続ければ確実に春奈が負ける
春奈だけならば……
春奈と虫呪霊の戦いをただ傍観していた育子と為右衛門は、春奈の強さと覚悟に感化され、闘志を燃やしていた
育子(後輩が命賭けてんだ!!あたしも本気出さねぇとな!!)
為右衛門(後輩、ましては女性に守られては先輩として横綱を目指す者として示しがつかん!!)
育子は背負っている筒から一際豪華な装飾が施された刀を取り出し構える
為右衛門は握り拳を地面につけ両脚に呪力全てを集中させ立ち会いの態勢を取る
育子・為右衛門「出し惜しみはしない(しねぇ)!」
育子「一刀─」
為右衛門「鉄砲─」
育子「雷切」
為右衛門「八咫烏」
育子が刀を鞘から抜いた直後、キンッと鞘と刀の柄が当たる音と共に虫呪霊の背後に居合の構えのまま座り込む育子。直後、春奈と攻防を繰り広げていた虫呪霊の左肩に切れ目が現れ、大量の紫色の血が噴出してきた
突然肩が切れたことに混乱する虫呪霊の前に、為右衛門は急激に詰め寄り、右足の踏み込みと共に足に集中させていた全呪力を右手に集約させ渾身の鉄砲を放つ
虫呪霊の体へと放たれた鉄砲を咄嗟の判断で右腕を間に入れることで直撃を回避した虫呪霊だったが、放たれた絶壊の一撃は間に入れた虫呪霊の右腕を容赦なくぐちゃぐちゃに潰し、そのまま虫呪霊の腹にクリーンヒットした。虫呪霊は鉄砲が当たった腹に走る鈍い痛みに、勢いよく吐血しながら後方へ吹き飛ばされた
春奈(先輩たちの繋いだこの
託された希望に応えるように全身全霊全ての力を拳に集約する
向日葵side
薄暗い森の中、向日葵と覆面男が戦い始めて数分が経過していた。向日葵と覆面男の戦いは、数的有利に連携による攻守両立が出来る覆面男が圧倒的有利に進められていた
覆面男の洗練された連携は術式での高速移動を封じられた今の向日葵では破ることができず、戦いが長引けば長引くにつれ、向日葵の体は傷付きパフォーマンスが落ちていった
向日葵は
向日葵は激突した木にも手を置き倒れることを防いだが、息は荒れ、体から血が滴り落ち、体力も気力も既に限界に近く、地面に倒れるのも時間の問題だった
そんな瀕死の向日葵に追撃することなく一定の距離を離しながら取り囲み、向日葵の体力が尽きるのを待つ覆面男
(大体わかった…)
血を多く流し意識が朦朧とする中、向日葵は絶望するでも、恐怖するでもなく、冷静に自身が勝つための算段を立てていた
(こいつらの連携は凄い。だが、攻撃自体は防げないほどではない。耐久面も最初の攻撃の感触からそこまで硬いわけではないことも分かった。問題の狙撃手も私が投射呪法を使えば必ず妨害しようと発泡してくる。あとは撃たれた弾丸の軌道、発砲音、当たった弾丸の威力から、狙撃手の射程距離もだいたい分かった)
これまでの攻防から覆面男についての情報を整理した向日葵は、もたれかかっていた木から一歩離れ、手を合わせ
覆面男は領域展開を阻止するため、掌印を結んだ向日葵を全員で襲いかかる
昔の領域展開は今と比べれば比較的スタンダードな技術で、現在の『必中必殺』を持つ領域とは違い、『必中』のみに効果を縛って領域の難易度を下げて使用したとお兄ちゃんが言っていた
このまま領域を展開しようとしてもできる確率は極僅か、失敗して殺される可能性のほうが圧倒的に上。なら、その極僅かを必殺効果除去に縛りよって領域の安定化及び展開の難易度を下げる
①領域に付与する術式の必中効果を一度だけに限定
②領域展開をしてから6秒経過後領域は終了する
③領域終了後術式及び呪力の使用を1日禁止する
「領域展開」
【
黒い空間が覆面男を包み込み、縛りにより拡大化した領域は狙撃していた覆面男を領域内へ捕らえることに成功した
薄暗い領域内、中央から木造の簡素でボロボロな家と、その前に一台の三脚がついたカメラが出現した
パシャ
カメラのフラッシュがたかれる音と共に、眩い光が放たれ、覆面男は突然のフラッシュに目をつむり、腕を目の位置まで持っていき光を遮った瞬間、覆面男たちの体がフリーズした
投射呪法を使い、フリーズしている銃を持った覆面男の背後を取り、投射途中の動作で他の覆面男のいる方へ蹴り飛ばす
速度を落とすことなく投射呪法を重ねて使い、フリーズが解除された覆面男に近づき、投射途中の動作で全員の体に触れ再びフリーズさせ、通り過ぎる
通り過ぎた向日葵の鼻から血が流れる落ちる
向日葵は領域展開によるステータスの底上げにより、通常の倍の1/48の動き作り出せるようなった。だが、1/48の動きを瞬時に考え作っているため、向日葵の脳に膨大な負担がかかり、脳が悲鳴を上げていた
速度を落とさず投射呪法を重ねて使い、領域内に意図的に入れた七海が落としていた呪具を拾い上げ、Uターンでフリーズしている覆面男へと近づく
走り続ける向日葵の体からミチミチと嫌な音が聞こえ、目と耳から血が流れる
通常の倍の速度で動き、加えて長時間の戦闘に覆面男に付けられた傷によって向日葵の体が限界に近づいてきていた
投射呪法を重ねて使い、フリーズが解除された覆面男に肉薄。投射途中の動作で無防備な銃持ち覆面男の脇腹に呪具を振り上げ、上半身と下半身を切り離し、横にいた斧を持った覆面男の首目掛け呪具を振り上げる
斧持ち覆面男は向日葵の攻撃に気づき、迫りくる呪具もろとも向日葵を打ち砕こうと斧を振り下げる。互いの武器が衝突し激しい火花を上げるが、領域のステータス上昇に速度を積んだ最速最強の一撃の前に、覆面男は持っていた斧を砕かれ、首を両断された
振り抜く直後、向日葵の体からブチブチと筋肉繊維が切れる音が聞こえ、体中から血が流れでる
投射呪法を重ねて使用し、鉈を横に両断、後ろに回り込み盾を縦に両断していく。最後に残る本体の小刀を持つ覆面男に肉薄し斬りかかるが、突如として向日葵の体がピタリと静止した
「……っ゙!」
投射呪法の発動が終わり、無理やり術式で動かしていた体が動かなくなっていた
向日葵は体を動かそうと力を入れるが、逆にどんどん体の力が抜けていき手に持っていた呪具を手放してしまった
体の自由が効かず意識が朦朧としてきた向日葵は、動けない自分から距離を取ろうとしている覆面男を視認した
逃がさない
向日葵は投射呪法のトレースを1/12に変更し、変わりにトレースにかかる時間を0.5秒に設定。動かない体を術式で無理やり動かし逃げようとする覆面男に接近する
「…っ゙……ゥ゙オ゙ォオオアアア!!!!」ブチブチブチ(体の痛みも疲れも全て忘れろ!!拳を握れ!!祓えずここで死ぬなら 今ここで限界を超えて死ね!!!)
体中から血を流し満身創痍になりながらも、目の前の敵を祓わんと最後の力を振り絞る
呪力を拳に集中させながら、向日葵は敬愛する兄の、春奈は尊敬する先輩のアドバイスを思い出し、最後の一撃を放つ
「「呪力は一点に集中したほうが強く、硬いぃ!!」」
右腕を為右衛門に潰された虫呪霊は向かってくる春奈の拳に残った左腕を振りかぶり、覆面男は距離を取ることを諦め迫りくる向日葵の拳に小刀を振りかぶり、迫りくる拳を迎え撃つ
春奈の拳と虫呪霊の拳、向日葵の拳と覆面男の小刀が衝突する瞬間
2人の覚悟に応えるように黒い火花が祝福した
春奈「イケェェェエエエエエエエ!!!」
向日葵「ハアァアアアアアア!!!」
春奈の全呪力を乗せた【黒閃】は虫呪霊の放った拳ごと上半身を地形もろとも消し飛ばし、後ろにあった遊園地の遊具全てを吹き飛ばすほどの風圧を起こした
向日葵の放った【黒閃】は覆面男の振るった小刀を粉砕し、覆面男の顔面に拳を叩きこみ、領域を突き破った。領域から抜けた覆面男は木々に叩きつけられながら遠くへ吹き飛んでいった
春奈「……か……勝っ…た……」フラッ
文字通り全てを出し尽くした春奈は、塵となって消えつつある虫呪霊の下半身を見て、自身が勝ったことに安堵し安らかな笑みを浮かべ地面へと倒れ込んだ
向日葵「ハァ ハァ………少しは…近づけたかな…お兄ちゃん……」
6秒が経過したことで領域が崩れていき、向日葵は夜空を見上げながら地面へと倒れる
「あぁ 立派だったぞ。流石俺の妹だ」
向日葵が倒れる直前、直哉達のSOSを受け駆けつけた仁が向日葵の背中に手をかけ向日葵の転倒を防いだ。仁が来たからか、それとも仁の言葉を聞いて嬉しかったのか、気絶した向日葵は安らかな笑みを浮かべていた
「ハァ ハァ ハァ」
向日葵の【黒閃】を顔面に受け、吹き飛ばされた覆面男は満身創痍になりながらも生き残り、呼吸を荒げながら木を支えとして逃走していた
「どこに行くんだ?お前の相手はそっちにはいねぇぞ」
声が聞こえ振り返るとそこには学生服を着た禪院仁が立っていた
「俺の大事な妹を痛めつけておいて、おめおめと逃がすとでも?」
大事な妹を傷つけられたことから、とてつもない殺意を呪霊に飛ばす仁に背筋を凍らせ冷や汗を流す覆面男
覆面男は木から手を離し、目の前の
「お前を
仁の言葉を合図に4人の覆面男が仁に向かい走り出し、全員の上半身が消し飛んだ
「?」
何が起きたのか全くわからず呆然とする本体の覆面男の眼の前に音もなく近づき佇む仁*7
それに気づいた覆面男は驚愕しながらも体を動かし、仁目掛け拳を放つ
が、覆面男の拳が当たること無く仁のアッパーによって頭が粉々に吹き飛び覆面男の体は地面に膝から崩れ落ち、灰となって消えていった
太った人が痩せて強くなる展開が目茶苦茶好きなのでこの話を作りました