術式?呪力?最終的に物言うのはフィジカルですが?   作:ありがとうはなまる

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これで、最後だぁぁぁ!!よいお年をぉぉ!!


11 過ぎ去る脅威と未知の脅威

 

 

 

 『領域展開─自閉円頓裹(じへいえんどんか)

 

 

 無数の人の手が絡み合うように合わさったオブジェクトと、腕同士が掴まり網目のように結界を覆う空間内で、真人と七海は対面する

 

 

 「今はただ、君に感謝を」

 

 

 領域展開。術師の生得領域を「結界」という形で体外に具現化し敵を閉じ込め、結界に術者の術式を付与する事で術式に基づく攻撃を必中必殺とする。呪術の最終到達点であり奥義である呪術の極致

 

 領域展開が成功したことで、呪霊として1つ上のステージへと上った真人の心境は、ここまで自分を追い込んだ七海たち呪術師への感謝だった

 

 パン

 

 『彌虚葛籠』

 

 「!」

 

 

 だが、七海もタダでやられる訳では無い。両手を合わせた七海が呪力を練ると、七海の周囲を囲むように葛籠模様の円状の結界が現れた

 七海の行動の一部始終を見ていた真人であったが、領域に入った時点で自身の勝利が確定していたこともあり、特に気にすることなくせめてもの礼に、苦しくないよう殺してあげようと笑みを浮かべ、七海に対して術式を発動する

 しかし─

 

 

 「!」(必中(あた)らない!?)

 

 

 必中であるはずの術式が七海に届くことはなく、真人の中に動揺が走る

 

 

 (学生の頃、仁さんに領域対策を教えてもらっていたことで救われました)

 

 

 七海が彌虚葛籠を使える理由、それはまだ七海が学生の頃、所属している学校が違うながらもよく東京校に来ていた先輩、仁によって同級生である灰原と共に半ば無理やり教え込まれていたからに他ならない

 

 彌虚葛籠を展開したことで、真人の展開した領域の必中効果は打ち消され領域の脅威は去ったものの、それは一時凌ぎに過ぎず、未だ絶体絶命のピンチを脱したわけではない

 

 

 「なるほど、アイツが言ってた「簡易領域」ってやつかな?でも、それってどこまで持つのかな?さっきっから領域がブレブレだけど。それに⋯君、両手を合わせてないとその領域維持できないんじゃい?」

 

 「⋯ッ!!」

 

 

 真人の観察眼は正しく、七海は結界術の才能は乏しく学生時代唯一習得出来たのは「彌虚葛籠」のみ。それも、掌印を結び続けようやく実用段階に持っていける程度の出力しか出せない

 

 脱サラ期間が長かったことで結界術の基礎が覚束(おぼつか)ず、更には試運転なしで数年ぶりに発動したことで彌虚葛籠の出力は弱く不安定

 初めて領域を展開した真人だからギリギリ中和出来たものの、他の領域使いなら領域勝負に持ち込むことすらできず敗北していただろう

 

 そのことに気づいた真人は、ゆっくりと七海に近づいていく。彌虚葛籠によって領域に付与された術式を防いでいようと、領域内によって底上げされた術式を直接触れて発動すれば、下水道での戦いのように防がれることなくワンタッチで殺せる。そう真人は判断した

 

 真人の脳内では、すでに虎杖たちからどう逃走するかなど、領域解除後の展開を思考しており、七海の死は前提で事を考えていた

 

 

 「クソッ⋯!」

 

 

 いつ崩れてもおかしくない、不慣れな領域を維持するため奮闘する七海だったが、生存の目処が乏しい絶望的な状況に半ば己の死を覚悟し、友人、先輩、知人たちに謝罪の言葉を残そうとした

 

 その時だった

 

 

 バリンッ!

 

 

 硬いガラスが割れたような音が領域内に響き渡り、真人と七海は音の発生源である領域の天井を見上げる

 領域の天井、そこから突き出される1つの拳と、そこから漏れる光が見える

 

 バリンッ!!

 

 そして、今度はより大きな音と共に領域の外殻を砕いた張本人である虎杖悠仁が飛び出した

 

 

 (どうして入れる!?)

 

 (虎杖君⋯!?)

 

 

 突如領域の上から現れた虎杖に、真人と七海は驚くも、真人よりも結界術に精通している七海だけはすぐさま虎杖が何故領域に入れたかを理解した

 それと同時に理解した。何故虎杖"だけ"が領域内に入ってきたのかを

 

 

 (!)ドクン!!

 

 

 七海の不安定な彌虚葛籠では、展開された領域自体の必中効果を中和することはできない。精々結界内にいる自分自身か、自身に触れている者だけ

 故に領域に入ってきた虎杖は真人の術式をモロに受けてしまった。そして、真人は触れてしまった。虎杖の(うち)に在る、触れてはいけない(モノ)

 

 

 「俺の魂に触れるか」

 

 

 虎杖が領域に入った瞬間、虎杖、七海、真人の目の前には、髑髏の山に乗る、虎杖に似た顔に独特な模様が彫られた4つの目を持つ呪いの王が鎮座し、心底不愉快そうな顰めっ面で呪霊(真人)を見下ろしていた

 

 

 「たかが呪霊が許可なく俺の魂に触れるな⋯不愉快だ」

 

 「分を弁えろ。痴れ者が」ビッ

 

 ズパッ

 

 「「!!」」

 

 

 宿儺が2本の指を振る。その軽い動作で真人の肩から胸にかけて2本の切り裂き傷が作られた

 原作とは違い、初めて宿儺の魂に触れた真人は自身に何が起きたか数秒理解することができなかった

 

 呪いの王との刹那の邂逅、突如鮮血が舞う光景に、七海と虎杖はただ事が進むのを見つめることしか出来なかった

 

 

 (これが両面宿儺、天上天下唯我独尊。己の快・不快のみが生きる指針⋯)

 

 (お前(七海)が死のうと、お前(真人)が死のうと⋯)

 

 (どうでもいい)

 

 (唯一の好奇(ヤツ)以外、心底どうでもいい⋯)

 

 

 パリン

 

 

 宿儺の攻撃を受けた真人は、血が流れる傷に手を置くと膝から崩れ落ち、それに続くように真人の領域は消え、先ほど戦っていた学校のグラウンドへと戻ってくる

 

 

 (「領域展開」⋯なんて呪力消費だ。正に切り札、最終奥義。それを宿儺め⋯!!)

 

 (領域を展開したことで呪力は枯渇寸前、術師は1人も殺せてない⋯ここが瀬戸際生きるか死ぬか!!絞り出せ!!最後の⋯「詰め(チェックメイト)だ」⋯!」

 

 

 宿儺によって付けられた深い傷跡から絶え間なく血が流れ、「領域展開」をしたことで呪力も枯渇寸前まで追い詰められた真人が、最後の力を振り絞ろうと呪力を練った瞬間、真人の後ろを取るよう首に刀を添え現れた猿飛が、真人を静止させる

 

 

 「おっちゃん!?」

 

 「虎杖、七海、コイツを祓うのは少し待て。コイツには聞かなきゃならんことが山程ある」

 

 

 そう言うと猿飛は懐から2枚の写真を取り出し、真人の両手を最大限警戒しながら真人の目の前に突き出す。

 

 

 「こいつらに、見覚えがあるな」

 

 「⋯⋯無いね」

 

 

 突き出された写真、それには先日五条悟を襲った火山頭の単眼呪霊と、それを助ける目穴から木の角が生えた隻腕呪霊の姿が写っていた

 

 

 「しらばっくれるのは勝手だ。だから、ここからは俺の推察と妄想込みで話す」

 

 「⋯」

 

 「まず、お前と写真のコイツラが繋がってる前提で話すが、お前らの目的はざっくり言えば邪魔な呪術師を消して呪霊だけの世界を作るってところか?」

 

 「それには呪術師最強の五条悟が邪魔、そう考え先日の夜襲を決行。が、それが失敗に終わったので計画を変更、虎杖悠仁に宿る両面宿儺を復活させ、仲間に引き入れ五条悟と他呪術師と全面戦争、これが俺の立てた憶測だが当たってるかな」

 

 「成る程⋯確かに筋も通ってるし悪くない考えだと思うよ⋯俺がそいつらとグルって根拠がどこにも無いお前の独りよがりな妄想ってところを除けばね。他人、いや他呪霊のことを聞かされるコッチの身にもなってほしいよ」(コイツ⋯案外頭が切れるな)

 

 「あぁ、知ってる。これは全部俺の妄想で、憶測だ。だからお前に聞く。素直に話せば楽に祓ってやる」

 

 「他の仲間の呪霊がいる場所はどこだ」

 

 「⋯⋯」

 

 「呪力の回復を測っているなら無駄だ。5秒以内に話さないなら、頸を落とす」

 

 「⋯⋯クックック!!」

 

 「⋯何がおかしい」カチャッ

 

 「いや、ゴメンね。ただ⋯迎えが来たみたいだ」

 

 バチッ

 

 「「「!!」」」

 

 

 油断。瀕死の敵が目の前で無力化され、拘束されていたことで出来た気の緩みにつけ入るように現れた轟音と雷光が3人に直撃した

 

 

 「ずいぶん来るのが遅かったんじゃない?それでも雷獣?」

 

 「助けに来ただけありがたいと思え死に損ない」

 

 

 突如現れた呪霊の姿は、2足で立つ虎柄の毛皮をした猿のような外見をしており、臀部(でんぶ)からは蛇のような尾が生え、彼がただの動物ではないと言うことが伺える

 

 

 「⋯⋯!!」(体が麻痺して、動けねぇ!!)

 

 「モミアゲ白目剥いてんじゃんウケる」

 

 「特級ともあろう者が、たかが人の子3匹にこの体たらくとは⋯さっさと行くぞ」

 

 「え~せっかくコイツラ気絶してるんだし殺していこうぜ」

 

 「阿呆、あの程度の電圧なら数秒もしん内に覚醒する。長居は無用だ」

 

 

 呪霊は尻尾の蛇で真人を巻き取ると、そのまま真人を持ち上げ倒れ伏す七海たちを無視して去ろうとするが、そこに待ったをかける者がいた

 

 

 「⋯待⋯て⋯!!」

 

 

 電撃を食らい、筋肉が収縮して体が動かせない中、唯一意識が残っていた虎杖は、帯電してろくに動くことができない体にムチを打ち、精神力でなんとか口だけを動かす

 

 

 「ほぉ⋯俺の雷撃を受けて気絶せんとは、中々頑丈な奴だ。流石宿儺の器」

 

 「この勝負はお前たちの勝ちだ、誇ることだな。が、こいつは回収させてもらう。敗北者とは言えまだまだコイツには働いてもらわねばならんのでな」

 

 「ひっどい言われようだねw。まぁ事実だから、あんまし言い返せないのがムカつくね」

 

 「バイバイ、楽しかったよ。虎杖悠仁」

 

 

 真人が虎杖に別れの言葉を残した瞬間、現れたときと同様に轟音が鳴り響き、真人たちの姿は掻き消えた

 

 

 「〜〜!!」

 

 

 死者は0名、何も失うことなく戦いに勝利した、正しく完全勝利と言える状況だった。だが、虎杖の内には「敗北」の2文字が離れず、言葉では言い表せないしこりのみが残った

 

 

 

 

──

───

 

 

 

 とある下水道の中、2対の呪霊が身を隠しながら歩いていた

 

 

 「どうだった宿儺は」

 

 「凄かったよ。現時点では漏瑚よりも呪力の総量は劣っていたけど⋯魂の格が違った」

 

 「仮に、俺たちが全滅しても宿儺さえ復活すれば呪いの時代が来る」

 

 「そうか⋯宿儺の器の方はどうだった」

 

 「虎杖悠仁ィ?⋯う~ん、呪術師としてはまだまだ発展途上のガキってところかな」

 

 「そうか⋯⋯」

 

 「⋯⋯」

 

 

 呪霊の言葉を皮切りに、両者は一言も発することなく下水道内を歩いていく

 

 

 (宿儺は計画に必須の存在、必然的に宿儺の器である虎杖悠仁には死んでもらっては困るんだけど⋯参ったな)

 

 (俺は今、どうしようとなく虎杖悠仁を殺したい。甘い理想論を掲げて戦うアイツの尊厳も理想も魂も肉体(からだ)も、グチャグチャにして壊して殺したい)

 

 (もどかしいね⋯でも、肉体(からだ)と違って魂は何度でも殺せる)

 

 (今回は失敗したけど、次は必ず殺すよ⋯虎杖悠仁)

 

 

 呪霊は嗤う。正規(原作)のルートから外れ、完膚なきまでに敗れたことで内に宿すドス黒い感情はより成長し、膨張する

 

 正規(原作)ルートから外れ、1つの悲劇を回避した先が果たしてどのような未来になるのか、どのような混沌を巻き起こすのか。それは誰にも分からない

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 作者も分かってない。(無計画)

 

 まぁこれにて真人戦は終了、次回から交流戦が始まります。(いつ出来るかは誰にも分からない)

 

 気長に更新をお待ちください。それでは

 

 

 




今年も楽しく読んでください。
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