術式?呪力?最終的に物言うのはフィジカルですが? 作:ありがとうはなまる
五条悟と出会って9年、俺は14歳になった
あれから悟とは頻繁に遊ぶ仲になり、この間なんて大乱闘でブラザーズなゲームや桃鉄なんかで遊んだり、一緒に組手をしていた
「死ねやー!」
俺の正面から飛んできた拳を体をひねって避ける
避けた先を見るが、そこには拳を突き出してきた人物─禪院直哉は見当たらず、代わりに俺の周りで地面を力強く蹴る音が鳴り響いている
俺は今、禪院家の庭で直哉と模擬戦を行っている
ことの発端は、五条家から帰ってきてから数日、何故か直哉が暗殺まがいな事をしてきたのが原因だ
俺がそれを幾度も返り討ちにしているうちに、どうせなら稽古をつけてやって強くしてやろうと、俺から直哉に提案して今に至る
直哉は自身の術式、投射呪法を使った高速移動で俺の周りをぐるぐると動きながら速度を上げている
投射呪法は1秒を24分割することで自分の視界を画角とし、あらかじめ画角内で作った動きをトレースする事で、速度を積むことができ、より速度を上げることができる
「ドブカスが―!」
先程よりも速い拳が俺の前に突き出されてきたのを呪力で強化した目で捉え、突き出してきた拳を受け止めようと正面に手をかざす
しかし、俺の手に直哉の拳が当たることはなく、直哉はそのまま俺の横を通過していた
「!(トレースの途中か!)」
俺は直哉の拳を突き出してきた動作がトレース途中の動作であることに気づき、後ろにいるであろう直哉の方へ体を向ける
その時には直哉の手のひらは俺の脇腹に触れていた
投射呪法は触れた相手に自身と同じ1秒を24分割した動きを作るよう強制し、触れられた相手は1/24秒で動きが作らなければ、1秒間フリーズしてしまう
つまり、俺は今動けば一秒間フリーズし、隙だらけになってしまう
直哉は好機と捉えたのか、今度こそ俺に拳を突き出してきた
…こんな簡単なブラフに乗せられるとはまだまだだな
俺は体に『領域展延』を展開
直哉の腕を掴み、あと数ミリのところで拳を停止させた
俺が動いていることに直哉は目を丸にして驚いているが、それを無視し、俺は拳を直哉の腹に叩きつけた
「がふッ!?」
直哉は口から唾液を吐き出しながら地に伏せた
むせこんでいる直哉の背中に手をやり、反転術式をかけてやる
俺がやったことは、直哉の強制フリーズを領域展延で中和、無効化して虚を突いた一撃を叩き出すというシンプルな戦法だ
一通り落ち着いた直哉にポカリを渡して、今回の反省点、改善点を言っていく
「体術と術式を組み合わせた戦闘は大分様になってきているが、まだまだ甘いな。最高速度になるまでに少し時間がかかりすぎている。今回は棒立ちで待ってやったが、呪霊や呪詛師はそんなに優しく待ってはくれない。そこをどう改善するか考えておけ」
「だが、さっきのフェイントは良かったぞ。俺もうっかり騙された。もっと経験を積んでいけばそのうち俺みたいに強くなれるぞ」ニッ
「当たり前や。俺は天才なんやで、お前なんかすぐに追い抜いてボコボコにしたるわ」
「お、その生きだ頑張れ、頑張れ」ニヤニヤ
これぐらい生意気な方が鍛えがいがある
「お兄様」
「ん?」
声がした方を向くと、綺麗な金色の髪を方まで伸ばした向日葵が立っていた
10年も経っているため、体は女らしく出るところが出て、可愛らしい顔が美人で綺麗な顔立ちに成長している
このまま行けば男にモテモテになること間違い無しでお兄ちゃんはとても嬉しい(*´ω`*)
「どうしたんだ向日葵?」
「はい、本日お兄様に「お兄ちゃん!」
突然、屋敷の方からテテテテと走ってきた子供が俺の足に抱きついてきた
う~ん既視感
この子は確か…2年ぐらい前に扇の爺さんとこで産まれた双子の妹、名前は確か…真依だったかな
「真依、そんなに急ぐとこけちまうぞ」
真依の頭を撫でていると、屋敷方面から真依と同じ背丈の子供、確か姉の真希がこっちに向かってきていた
「仁の兄ちゃん、よ!」
「よ!元気そうだな真希」
「ああ、ただあのクソハゲ親父とクソババアに周りのクソ共のせいで、毎日息が詰まりそうだけどな」
3歳とは思えないぐらい口が悪いな。向日葵といい子供っぽくないんだよな。今時の子供はこんなもんなのか?*1
真希たちと初めて出会ったのは半年前ぐらい前かな
鍛錬している最中、唐突に扇の爺さんとこに双子の子が生まれたことを思い出した俺は、暇つぶしと、遅めの出産祝いの品を渡しに向かった
扇の爺さんの部屋には真依たちの母親しかおらず、母親に出産祝いを渡した後に双子がどこにいるかを聞き、そこへ向かった
向かった先では、双子と同年代の子たちが部屋の中で遊んでいた
仲良く子供たちが遊んでいる光景を部屋の隅っこで見ていると*2、その近くで数人の使用人たちが何やらヒソヒソと話をしていた
俺は興味本位で聴力を呪力で強化して、使用人たちの話を盗み聞きした
話の内容はどれも双子に対しての陰湿な悪口のオンパレードで、流石の俺も渋い顔をした
しかも、双子たちにガッツリと聞こえるぐらいの声量で悪口は発されていたため、尚更たちが悪かった
何故、悪口をヒソヒソと双子たちに聞こえるように話しているのか気になったので、近くで陰口を叩いているやつらを穏便(物理)に部屋から連れ出して、理由を聞いた
この禪院家では、双子は忌み子として扱われ、存在自体が忌避の対象らしい
更には、姉の方は呪力が無く呪霊も見えない役立たず
妹の方はハズレ扱いされる術式『構築術式』と中途半端な呪力しか持ち合わせていない事がより拍車をかけて、あの双子の立ち位置はあのような陰口、暴行、何でもありの状態になっていた
双子の現状を聞いた俺は、話していた男を気絶させ、特大ため息を付きながら、禪院家が腐りに腐っていることを再認識した
取り敢えず双子の現状にムカついた俺は扇の爺さんと、その一派を全員気絶させて、庭に無理やり集めた
父親である扇の爺さんと、忌み子だと言ってイジメに加担してたやつらには、仕置として庭に首から下までを地面に埋めて、全員の頭をたわしで入念に磨いてやった
磨く途中に出来る傷を反転術式で治してやりながら、頭がツルツルピカピカになるまで入念に洗ってやり、そのまま放置した*3
母親も本当はたわしコースにしようと思ったが、一応お腹を痛めてまで産んだのだから母性なんかがあるんじゃないかと思い、一応説教だけに止めておいた
まぁ、もしまた同じようなことをするのであれば容赦なくたわしコースにするが…
それからちょくちょく双子と遊んでやっていたら自然と懐かれた
「どうしたんだ真依?お兄ちゃんに何かようか?」
「ん〜と、お兄ちゃんがいたからあいにきたの!いっしょにあそぼ!」ニカ
そう言いながら雲一つない笑みを俺に向けてきた
止めろ真依、その笑顔は俺に効く
突然俺の頭に出てきた仮面を被ったやつと、中年のおっさんを端のほうへ追いやり、気持ちを切り替え、腰を落として真依と向かい合う
「すまんな真依。これからちょっと用事があるから、それが終わったらまた遊ぼうな」アタマナデナデ
「うん!わかったじゃあお姉ちゃんとあそんでくる」
「おう、真希もすまんな用事が終わり次第すぐに行くよ」
「分かったよじゃあまぁ……なるべく早く来いよな」
そう言い残して、真衣と真希は屋敷の中に戻っていった
「悪かったな中断させて…で、何用で?」
「はい、本日お兄様に謁見したいと加茂家の次期当主が屋敷に来ておられます」
「加茂家が?」
加茂家の人達を客間に待たせているとのことなので、俺は向日葵と一緒に客間へと向かった
ちなみに直哉は残って筋トレしておくよう言っておいた
「腕立てとスクワット1万回を10セット呪力なしで今日中にね」
「は!?」
加茂家の人達がいる部屋に入ると、高そうな着物を着ている三人が横一列にテーブル前に鎮座していた
特に目についたのは真ん中に座っている女性
黒髪ロングの黒目で、顔立ちは向日葵と遜色ないほどの美形
体格はどこがとは言わないが、向日葵よりも成長している美人であり、黒バラの柄が付いた群青色の着物を身に着けていた
だが、そこよりも目を奪われたのは彼女の呪力
抑えて入るのだろうが僅かに漏れ出る呪力で、平安の猛者とも引けを取らないほどの実力者だと、瞬時に感じ取れた
いつもの俺なら一戦交えたいと思うほどの強者だというのに、何故か目の前にいる女にはその気になれない
その呪力に
まるで何度も相まみえた相手、それこそ平安時代にいた共に横を歩いていた友人たちのような………ん?
加茂家の人間、女性、懐かしい呪力
…………まさか
俺の考えが正しければ、俺はこの女を知っている
この人と幾度も合ったことがある
「むぐッ!?」
俺が目の前の女性の正体について頭を働かせている間、真ん中にいた彼女は急に立ち上がり、俺に近づくなり抱き着かれた
体格差はあちらのほうが背が高いため、柔らかいものがちょうど俺の顔に押し当てられる体制になった
「久しぶりね、仁…いや私の弟よ」
俺を弟と呼ぶ人物は、前世と現世合わせて一人しかいない
俺は抱き着かれたまま、顔だけを出し目の前の人物に言葉をかける
「ふっ…あぁ久しぶり。
俺は顔を上げ、本来もう二度と合う事が叶わないはずの知人の顔を覗き込んだ
「やっぱり仁だったのね」
「確証もなく抱き着いてきたのか?」
「フフン…私が可愛い弟を間違うはずないじゃない。貴方の呪力、癖、歩き方、頭の先からつま先まで完璧に把握しているもの」
「ふっ…相変わらずだな亜生衣姉は」
「当たり前よ、なんたって私は完璧で無敵な貴方のお姉ちゃんなんだから」
フフフフンとドヤ顔をこちらに向けてくる亜生衣姉とは、たまたま町で出会い、呪術のノウハウもない俺に知識と武術を教えてくれた師匠でもあり恩師だ
ちなみに血縁ではないから本当の姉弟と言うわけではない
合ってそうそう、「どうやら私達は姉弟だったようね」とか涙流しながらおかしな宣言をしてきて、勝手に弟認定されただけである
初めはおかしなやつに絡まれたと思い、適当に追っ払おうと戦闘になったが、当時の俺はそこまで強いわけではなく*4、あっけなく亜生衣姉にボコボコにされた
それから負けた俺は加茂家に連れられ、呪術や武術について色々教えてもらってるうちに、俺も敬意と尊敬から姉さんと呼ぶようになった
初めて呼んだ時には、涙と鼻水を大量に出しながら抱きついてきたっけな。懐かしい。その時は目茶苦茶嫌だったが、今思えばいい思い出だな
「亜生衣殿」
「ん?」
俺が亜生衣姉との思い出を思い出していると、向日葵がこちらに近づき亜生衣姉に話しかけた
「そろそろお兄様から離れていただけませんか。これでは話し合いもしにくいでしょう」
それもそうだな、亜生衣姉が来たのは俺との謁見。この体制は些か居心地が悪いし、さっさと離れてほしい
「まず座ってゆっくり「ん〜ヤダ」え?」
「ん?」
「久方ぶりの弟をたっぷり堪能したいからヤダ」
「…あのですね、加茂家の次期当主が禪院家の男子に抱き着くなど、最悪この事を理由に他の両家に揺さぶりをかけられ、加茂家の印象を悪くする行為ですよ。立場を弁えてくださいトイウカワタシノオニイサマニナニダキツイテンダヨコロスゾ(小声)」
向日葵の目がどんどん鋭く暗くなってる。この目をしている時に刺激すればろくなことが起きない。*5ここは刺激せず素直に言う事を聞くのが吉
亜生衣姉の一挙手一投足で俺の生死が決定するよだ!
頼んだぞ!亜生衣姉!
どうか、どうか変なことをしないでくれ!
「お気遣いありがとうね。でも私は構わないわ」
「「ッ!?」」
抱きつく力を強くして俺に胸を押し付けてくる
あ……終わったわ
「私はこの子のお姉ちゃん。周りの連中に何を言われようと、こうやって弟を抱きしめてあげることこそ、お姉ちゃんとしてやらなければいけないこと。こんなことができなくてはこの子のお姉ちゃんを名乗れないわ」
「貴方とお兄様は別に姉弟でもなんでもないでしょう」
「フッ血が通っていなくても私達は立派な姉弟(ブラザー)よ。それに姉弟(ブラザー)と最初に言ってくれたのは弟の方よ」
言った記憶はございません
「戯言を」
「大きくなったらお姉ちゃんと結婚すると約束してくれたわ。あの時は涙が出るくらい嬉しかったわ」
そんな約束記憶にございません*6
「お兄様がそんな事を言うはずがありません」
「お風呂も一緒に入ったわ」
してないです
「なっ///!?私のときは一緒に入ってくれなかったのに。そ、そんな羨ま はっ! ゲフンゲフン…妄想もここまで行くと逆に感心しますね」
分かりやすく動揺したな、どうした
「これで分かったかしら。私と仁には切っても切れない鉄よりも硬い絆があることを」
さっきの発言で絆を測っているなら、なんとも一方通行で曇りまくってる絆だな
「くっ!」
何で悔しそうな声出してるんだ向日葵、ほぼ亜生衣姉の妄想話だぞ
「二人共熱くなりすぎだ、少し落ち着け」
俺は亜生衣姉の抱き着きから離脱して二人を宥める
「あっ……」
離れる際、亜生衣姉から声が聴こえた気がするが気にしない
向日葵は何か下を向いてブツブツと何かを言っている
「大丈夫か向日葵?」
「私は、私はお兄ちゃんの妹、あんなクソババアには負けない!(小声)」
向日葵が何を言っているのかを聞こうと近づくと、急にバッと向日葵顔を上げて亜生衣姉の方へ顔を向ける
「私はあなたを認めない!お兄ちゃんの兄妹は私だけいればいいのよ!あなたは邪魔!私達兄妹の中にあなたは必要ない!」
「いいや違うわ、邪魔なのは貴方の方よ。私達、姉弟に貴方の席はないわ」
「だいたい貴方はお兄ちゃんに会ったのは今日が初めてでしょう。なのに姉を名乗るとかあなた頭大丈夫ですか?病院に行ったほうがいいんじゃないですか?」
「だから何度も言ってるでしょう私達は心が通じ合っていると、そこには年月も時間も関係ないわ」
「ふっ全部あなたの妄想でしょう、それに突き合わされているお兄ちゃんの身にもなってください、気持ち悪いです」
「妄想なんかじゃない!」
「動揺してますよ。図星だったから声を張り上げたのではないですか?それに、先程までの発言が真実なら今この場でそれを証明してくださいよ お・ね・え・さ・ま♪」
「くッ!」
「その点、私はお兄ちゃんと血の繋がりがあり、生まれてからずっと一緒に暮らしている誰もが認める紛うことなき兄妹。あなたの関係とでは月とスッポン、たわしとスポンジです」フフン
「……血の繋がりと暮らしてきた時間でしかマウントが取れないとは、そんな目に見えた情報だけで姉弟を名乗るとは浅はかな」
「…何が言いたいのですか?」
「私の心を揺さぶり、動揺を誘おうとしても無駄よ。姉弟とは心、どれだけ貴方が根拠を述べようと、私が信じている限り、私達姉弟の絆は無くならない!何故なら私はお姉ちゃんだから!!」
「…何を言ってもあなたには通じなさそうですね。いいでしょう。私とお兄ちゃんがどれだけ愛し合っていたのか、貴方のクソカスな脳みそに刻んであげます!」
「上等よこの小娘、私と仁のラブラブ姉弟物語を聞いてわからせてあげる!」
俺は向日葵と亜生衣姉の口論が長くなることを悟り、加茂家から来た他の二人にこの場を任せ、気配を消して部屋を後にした
加茂家の人の心情(逃げるな卑怯者!逃げるなー!)
その後は、真希たちのところへ向かい、二人と一緒に夕暮れになるまで遊んでやった
後日、向日葵が俺の部屋まで来て「あの女との決着はつけることができませんでしたが、必ずやあの妄想女をボコボコにしてお兄様を開放してみせます。それまでもう少し辛抱してください」と言い残し、そのまま部屋を出ていってしまった
残された俺の頭は?でいっぱいだった
「喜びなさい憲紀、お兄ちゃんができたわよ」
「…は?」
《夕暮れ》
カアー……カアー…(カラスの鳴き声)
「ハァハァ…いつか…ハァハァ…絶対…ハァハァ…殺して…ハァハァ…やる…ハァハァ……あのアホ…」バタン
今回の一番の被害者は理不尽な筋トレをさせられた直哉君だと思います