暗黒期の残骸   作:花のお皿

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美味なる勝利

 勝利の後、祝杯を挙げた後にすべき事は次なる標的を明瞭にし、更には戦いがまだ終わっていないという事を各自に自覚させることが最優先となる。

 

 如何に闇派閥の精鋭といえど、勝利に酔い、合理的な判断を見失う可能性は大いにある。人間なのだから、当たり前の事ではある。されど、その当たり前を許せるほど今の闇派閥の状況は芳しくない。

 【ロキ・ファミリア】から売られた喧嘩を明確に買い、その上で向こう側の面子を容赦なく踏み潰したのだ。彼等彼女等が躍起になって闇派閥討伐に躍り出ても、そこに疑問を呈する事は無いだろう。

 

 【ロキ・ファミリア】程度ならば、今の闇派閥だけでも何とかなる。それは昨夜の一戦で皆が認知した事だろう。

 だが、もしも他派閥の介入があったとすれば、その優位性は瞬く間にゴミへと朽ちる。【ガネーシャ・ファミリア】の介入はもはや避けられないだろう。闇派閥が【ロキ・ファミリア】を大きく上回る戦力を有しているのだと知らせたようなものだ。是が非でも参戦してくる筈。

 

 となれば、

 

(やはり、こちらも戦力増強を図るべきだろうな)

 

 現在、闇派閥と近しい組織は酷く絞られている。ギルド及び【ロキ・ファミリア】の強制捜査から逃れられた組織は【イシュタル・ファミリア】程度のものだ。

 それ以外の、これまで闇派閥が築いてきた他勢力とのパイプは先の一件で漏れなく破壊されたと言っていい。

 

 都市外と手を組むのは論外。加えて、都市内で最も可能性のある派閥は信用のできない【イシュタル・ファミリア】ときた。

 もし神イシュタルと協定を結んだのであれば、恐らくだが、最悪の場合女神の暴走によって最も恐ろしいかの『美の女神』に闇派閥名義で喧嘩を売ってしまうかもしれない。そのような事態は断じて阻止すべき愚行である。

 

(イシュタルは駄目だ。となると、いよいよ以て例の“都市の破壊者(エニュオ)”とやらの話を受けなければならないかもしれん)

 

 イシュタル以上に信用のならない人物だが、油断ならない危険は身内で確保すべきでもある。近くにおいておく事で、むしろエニュオに関する何らかの情報を抜き取れるかもしれない。

 これはイシュタルにも言える事ではあるが、ああいう輩は身内に引き込むと無駄な混乱を引き起こしかねない代物だ。特に、先に挙げたフレイヤと同じく美の神である事からも、少々扱い辛い。

 

 よって、今真っ先にすべきことは早急にエニュオとのパイプを作成する事なのだが。

 

(先の戦いで信用を大きく損失した俺が言っても、奴らは何も聞かないだろう。何か、今一度大きな戦果を挙げる必要があるな)

 

 自分の尻は自分で拭く。失態は、さらなる成功によって取り返せるのだ。

 

 故に、またしても反英雄は一歩先へと躍り出る。

 

「さて、今最も熱い狩場は――」

 

 ◇

 

――カジノ襲撃事件。

 

 後にそう呼ばれる大規模なテロ行為は、オラリオの経済状況に大きな打撃を与えたという。

 否、経済だけではない。それ以上の、オラリオが有する最高戦力が最早戦闘不能の状態にまで追い込まれた異常事態となっていた。

 

「残りの行方不明者は!?」

「【ロキ・ファミリア】が若干。市民に至っては30を超えております!」

「クソ、どう考えても拉致されている。もう捜索はよい。サッサと怪我人の治療に急げ!」

 

 幾ら探しても姿形の見当たらない者が多数存在していた。その多くはカジノに通い詰めていた上流階級の者が大半を占めていたという。裏社会にも広く顔の利く、権力者達だ。

 

「噂の『粛清』とやらか。チッ、結構な事だ」

 

 お陰でまた始末書が増える。と、愚痴を吐くのはギルド側の役人の意見。

 

 一般市民の多くは、またしても邪悪なる権力者が正義の執行者によって罰されたのだ、と沸き上がる事だろう。

 無論の事、此度の襲撃事件の全容は厳重な情報統制が行われる予定ではあるが、果たして何処まで抑えられるかは分からない。プロパガンダにおいてはギルドの十八番ではあるが、得てして事実は隠せないものだ。闇派閥と未だ手を結んでいる商業組織などがあったとすれば、そこから漏れる情報はギルドからでは抑制は難しい。

 

 今回の一手で闇派閥の勢力を一気に叩き潰すつもりが、まさかの返り討ちだ。再び闇派閥に寝返る勢力も出てくるだろう。

 

「……いや、それについては我々も同じか」

 

 そう呟いたのはシャクティ・ヴァルマだった。

 

 【ガネーシャ・ファミリア】の団長たる彼女が引き連れてきた軍勢は、あろうことかたった一人が放った呪詛によって壊滅的被害を受けたのだ。ほぼ初見殺しだったとはいっても、そんなものは言い訳とも見える。

 実際、シャクティだけはその呪詛を回避できたのだ。その後、彼女一人では起きた『狂乱』を抑えきれなかった事が反英雄と略奪者を逃した要因であったのは、否定し難い事実である。

 

 受け入れなければならない。

 

 今の闇派閥は強大だ。ともすれば、彼等彼女等のみで【フレイヤ・ファミリア】ともやり合えてしまうかもしれない程に。

 

「……フィンの容態は、どうだ?」

 

 一方、【ロキ・ファミリア】の本陣では通夜のような重い空気が漂っていた。

 

 重傷者多数。カジノ『エルドラド・リゾート』にて交戦していた者達に死者は出ていなかったが、それ以外の三方に散らばった団員達への被害は甚大であった。

 だが、言葉にするのは憚れるものの、それだけであったならばここまでの士気低下はしていない。【ロキ・ファミリア】とて冒険者なのだ、仲間の死を受け入れる覚悟はできている。無論、一時の無気力状態に陥ることは避けられないだろうが、それでも数日後には回復できる強靭な精神を誰もが有している。

 

 では、なぜ今【ロキ・ファミリア】は瓦解寸前にも見える程の狼狽と動揺、そして意気消沈を見せているのかといえば、

 

「――意識を取り戻す気配はありません。このままでは、死亡もあり得るかと」

 

 治癒師による断言が、今しがた行われたが故である。

 

「殆どの負傷が呪道具(カース・ウェポン)によるものが原因です。治療にはかなり時間を要するかと」

 

 淡々とした報告は、さながら機械のようだった。否、動揺を覆い隠しているのだろう。夥しい程の冷や汗が【ガネーシャ・ファミリア】の治癒師の頬を伝っている。

 

 呪い(カース)による負傷を回復できる者はオラリオとてそう多くは無い。二大治癒師を筆頭に、後は数える程しか存在しないだろう。それほどに、呪い(カース)による傷は厄介なのだ。

 これほどの呪道具を一体どこから仕入れているのか。

 

(違う。闇派閥に、酷く有能な呪術師(ヘイサー)が存在しているのか!)

 

 またしても、見知らぬ実力者がリヴェリアの頭に浮かび上がる。

 

 影も形も分からない不気味な人物が、ケタケタと嘲笑を口元に浮かべている様が容易に想像できてしまった。

 

「この状態では、まともな治療法では回復できません。どうにか治療可能な状態にまで持ち込めなければ、その」

 

 

――本当に、死んでしまう。【勇者】が死んでしまう。

 

 

「――ッ! 何とかしろ!! 出来ねえなんて言わせねえぞ!!」

「そ、そんな……団長が、団長がっ!」

 

 軽い発狂状態に陥るのも無理はない。【ロキ・ファミリア】の精神的支柱であり、その頭脳と他に類を見ない危機感知能力によって【ファミリア】の先を示す主導者が今まさに潰えようとしているのだ。危機感を持たない方がどうかしている。

 

 だが、その危機感とやらに振り回されていては滑稽に過ぎる。差し当たっては、最悪の場合を考えてフィンに万が一があった際の対処法を考えておかねばならない。ならないのだが――、

 

「……アミッドの、到着は」

 

 それすらできない程、今の【ロキ・ファミリア】はガタガタだった。リヴェリアですら、事の次第を受け止めきれずにフィンの寝顔を悲痛な面持ちで眺めたまま動けない。ガレスもまた、同様だった。

 

 三首領の内、残された二人は機能停止。そうでなくとも、この二人とて肉体に残された負傷は絶大である。ガレスもリヴェリアも、共に呪いによる傷を身体に刻まれた事には違いない。

 むしろ、今意識を保ち、それどころか立ち上がる余力すらある二人の方が異常である。

 

「【ディアンケヒト・ファミリア】には協力を要請してある。あと少しで来てくれる筈だ」

 

 応答したのはシャクティだった。彼女が必要となるあらかたの作業を終えたのだろう、他の【ガネーシャ・ファミリア】の団員は倒壊した建物の処理に勤しんでいた。

 

 事前に呼びかけていた訳でも無いのに、よく来てくれたと思う。彼等彼女等が居なければ、今頃フィンは死体となって発見されていただろう。そうなっていたなら、本当に【ロキ・ファミリア】は再起不能に陥るところだった。

 

「そうか……苦労を掛けたな、済まない。礼を言わせてもらおう」

「何を言う。お前達から受けた大恩の一部を返しただけだ。それに……結局、間に合わなかったようだからな」

 

 詫びるようにそう言って、シャクティは辺りを見回した。

 

 重傷を受け、意識を取り戻さない者はフィンだけではない。呪道具(カース・ウェポン)による負傷を受け、出血を止められずにそのまま死に絶えた者も居れば、単純に遺体として発見された者も居る。

 悲しみが充満し、死の匂いが床と大気にこびりついて、地獄がその場に出来上がっていた。【ロキ・ファミリア】の死体が等間隔で並べられ、彼等の戦友の泣き叫ぶ声が木霊していた。

 

「……慰めにもならないかもしれんが、重傷者の数は多くとも死者数は20に及ばない数だ。【勇者】さえ起きれば、お前達であればすぐにでも立て直せるだろう」

「……フィンが、目を覚ましてくれさえすれば、の話だがな」

 

 リヴェリアの顔色は酷く悪く、シャクティからすれば寝込んでいるフィンよりも彼女の方が余程死人に見えていた。否、彼女だけではない。

 

 普段の整った容貌は幽鬼のように不気味なものへと変化し、目を血走らしているティオネ・ヒリュテ。

 常に浮かべていた笑みは鳴りを潜め、普段の快活さが嘘のように引っ込んでいるティオナ・ヒリュテ。

 人の死体に慣れていないのか、それとも何か心傷(トラウマ)でも刺激されたのか。嘔吐する程に心身が不安定に陥っているアイズ・ヴァレンシュタイン。

 

 だが、特に酷いのは――、

 

「アキッ! アキッッ!!」

 

 所謂“二軍”と呼ばれる者達だった。

 

 彼等彼女等の精神的支柱であり、実質的な総括者でもあったアナキティ・オータム。

 報告では、【勇者】の指示による闇派閥の一部隊の追跡中、殿を務める闇派閥の精鋭と衝突。結果として言うならば、返り討ちにあったらしい。

 

 この報告内容に【ロキ・ファミリア】及び【ガネーシャ・ファミリア】には騒然とした空気が流れた。

 

 両派閥とも、アナキティ・オータムの実力とその聡明さはよく理解していた。“二軍”などと揶揄されてはいるが、彼女に第一級冒険者の資質がある事も明言されてはいないが広く認知されていた。

 だが、そんな彼女ですら敗れた。それも、何処の誰とも知らない不明者(アンノウン)にだ。

 

 つまり、Lv4の中でも最上位に君臨するアナキティを、一方的に蹂躙できるほどの実力者が闇派閥に揃っている事が明らかとなってしまったのだ。青天の霹靂、などと情報を整理するには暫くの時間を要したという。

 

「どういう事だ。そんな連中が一体どこから現れたというんだ」

 

 長く闇派閥を警戒し続け、連中の情報収集を積極的に行っていた【ガネーシャ・ファミリア】でさえそのような精鋭部隊の存在は知らなかった。闇派閥構成員の練度の高さは知っていても、ここまで圧倒的な力を誇る者がまさか幹部以外に存在するなど、夢にも思わなかったのだ。

 

 どんな悪夢だと頭を抱えたくなってくる。

 

「……奴等と交戦中にアキが引き出した情報によれば、彼奴等は元サポーターだったらしい。それも、酷く環境に恵まれなかった者達だと」

「何だと? それはつまり――」

 

 オラリオの最底辺に位置していた者達が、あろうことか【ロキ・ファミリア】の冒険者達を殲滅して見せたという事か。

 

 その続きであった言葉をシャクティは口にできなかった。驚愕の余りに絶句したのだ。

 

 サポーターの待遇の悪さはシャクティとて理解している。その対策をギルドが練っている事も、そして長年その状況に改善が見られなかった事も知っている。

 サポーターとは、冒険者にとって共にダンジョンにて戦う戦友であり、自らを支援してくれる協力者である。だが、そんな建前とは裏腹に、一般の冒険者と比べて大きく実力の劣る彼等彼女等を奴隷のように扱う者が居る事も、シャクティは知っている。

 

 正直、彼女としても吐き気のする事実であり、彼女自身街でそのような行為を見かければ全力を以て阻止する心持ではあるが、しかしサポーター関連の問題については如何に『都市の憲兵』であろうとも直接的な解決には導くことはできなかった。

 冒険者と同じく、サポーターの活動区域はダンジョン内だ。そこに『()()の憲兵』である【ガネーシャ・ファミリア】が割り込める筈が無く、最早ダンジョンは無法地帯と成り果て、サポーターへの虐待、拷問等の待遇悪化は留まることを知らず、そんな現状を解決する為の対抗策の模索すら、ギルド内では既に暗黙の了解として諦観の意が示されていた。

 

 

――それを解決したのが、他ならないセルシャ・ストリクスである。

 

 

 ダンジョン内で横行していたサポーターへの虐待・拷問・etc。それらを行った実行犯を彼自身の私刑によって悉く殺害。それどころか、ギルド本部及び実行犯の所属する【ファミリア】の本拠地(ホーム)前に彼等の肉体より切り離した生首を並べ、サポーターの待遇改善を訴えた。

 

 それを鑑みて、というよりも、そのような凶行を行う厳格な執行者が現れたからだろう。その圧政とも言うべき恐怖を用いたテロリズム的行為によって、セルシャ・ストリクスを恐れた冒険者達は総じてサポーターへの悪行を自制した。

 だが、同時にサポーターを退職した者も多く居たと、当時の報告では上がっている。元サポーターとなった彼等彼女等が今何処に居るのか、今の今まで情報は入手できていなかったが、今日に至ってようやくその情報がギルドの下に入ってきた。

 

 敵勢力として、という最悪の形で。

 

「……【戦場の聖女(デア・セイント)】が到着するまで、今しばらく時間がかかる。その間に、今後の方針について軽く審議したい」

 

 強張った表情のまま全力で平静を装い、シャクティはリヴェリアの眼を睨むように射抜く。

 

 リヴェリアの表情は依然として荒涼たる絶望の色で染まっていたが、それでも事態の深刻さを理解しているからだろう。途切れ途切れではあったが、彼女なりの私見を述べてくれた。

 

「……期待に沿えないようだが、これ以上の戦いは我々だけでは手に余る。これについては、フィンも同じように考える筈だ」

 

 その言葉には素直な納得を示す他なかった。

 

 シャクティとて、既に【ガネーシャ・ファミリア】が静観の姿勢を貫いている場合ではないことくらいは理解した。これからフィンを旗頭としていたギルド直属の対闇派閥討伐隊にも本格的に参入するつもりでいる。

 その上での意見を聞いておきたかったのだ。

 

「して、その先は」

「……各派閥には負担をかけるが、中堅派閥も含めた大規模な戦闘団を組むしかないだろうな」

 

 つまり、本格的な抗争を前提とした戦いをせねばならない。

 

 と、リヴェリアはそう言っている。

 幸いにも、現在のオラリオには過去の『大抗争』を経験した冒険者も多数残っている。ギルドにも、当然ながらその経験者は所属しているのだ。抗争への準備、その心得は知恵として既に習得済みの代物だ。

 

「今であれば、闇派閥も大勝利の味に酔っている筈だ。それに、仮にも戦闘後の組織だ。少々希望的観測ではあるが、奴等の動きも多少は鈍っているに違いない」

「では――」

「ああ、ギルドに通達してくれ。それと、オラリオに存在する全ファミリアにも。第二次抗争の訪れと――戦闘団の編成。その開始を」

 

 こうして、開戦の火蓋は切って落とされた。

 

 ◇

 

 人工迷宮(クノッソス)では、今尚【ロキ・ファミリア】との決戦に際しての大勝利を祝う宴が会議室にまで鳴り響いていた。

 どこぞの軍人か冒険者らしく、騒ぎ、飲み、食い、踊る。そこには紛れもない勝利への喜びと、一時の達成感に酔いしれる成功者のみが許される娯楽が満ちていた。

 

 そして、彼等にはその空気に酔う権利がある。成功を喜び、生き残った事を祝う資格がある。

 何故ならば彼等彼女等は、此度の戦場に関して最善を尽くした勇者たちなのだから。

 

――では、自分は?

 

 そんな勇者たちの指揮者であり、先導者でもある己は今回最善を尽くせただろうか。答えは簡単――否である。

 

 あの時、【ロキ・ファミリア】に闇派閥の策が露呈――とまでは言わないまでも、明らかに動きを予測されている行動が見られた際、セルシャは当時の現状を打破するべく単身突撃を実行した。

 戦場においては停滞こそが『悪』である、という持論に従ったまでの事だ。実際、あのまま【ロキ・ファミリア】に対して何もせず、ただ静観するだけだったならば今回の成功は無かったかもしれない。

 

 だが、それは結果論に過ぎない。本当にあの行動が最善だったのか、セルシャは今でも疑問に思う。

 自らの突発的行動によって闇派閥の情報を悪戯に漏洩させてしまったような気がして、仲間達に対しての罪悪感が今のセルシャの胸中を満たしていた。

 

 『面倒』な事が起きる前に事を済ませてしまおうとした己の動きがあの場においては間違いだった、とは言わない。だが、今後それでは成果を見込めない場面も出てくるだろう。

 

――成長しなければならない。

 

 戦士としてではなく、主導者としても。

 

 だが、今己がすべきことはそれではない。今回の作戦にて失ってしまった仲間達からの信頼を取り戻す事こそが、セルシャにとっての何よりの急務であった。しかし、

 

(うん、無い。良さ気な狩場がまるでない)

 

 【ロキ・ファミリア】は今頃【ガネーシャ・ファミリア】と合流し、堅固な連携を取り結んでいるところだろう。両派閥の本拠地(ホーム)を強襲したところで()()()()()()一人では些か出来る事にも限度がある。大きな打撃を与えるには及ばないだろう。【フレイヤ・ファミリア】についても同様だった。

 というより、仮にセルシャが万全の状態だったとしても【フレイヤ・ファミリア】への攻撃はしようともしないだろう。セルシャに虎の尾を踏む趣味など無いのだ。

 

 よって、闇派閥が優先的に叩くべき障壁が今のオラリオには存在していないと、セルシャは結論付けた。

 

(となると、もう質より量を目指すしかないな)

 

 最早大敵は存在せず、けれど無数に散らばる反勢力は蛆のように蠢いて、オラリオに安寧を築いている。

 ひとまずは、それを崩す事で闇派閥()には溜飲を下してもらいたい。

 

「俺一人でどこまでできるかは分からないが――」

 

 まずは、()()()()から狩っていこう。

 

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