私はほろ酔い1杯でダウンです。
本当に酔うには一杯で充分。
問題はその決定的な一杯が十三杯目か十四杯目かわからないことだ。
私が支配する根城は約14坪の喫茶店。
ギリギリ黒字になる程度の経営で生徒は月に数人来る程度で大体は大人である。
やはりバイトは雇うべきだろうか……。客寄せが良い子が来てくれないものか。
「まぁ、そんな都合がいい話があるわけないか。さて秘蔵のドリンクを飲もうかな。」
私がカウンターの床下倉庫の扉を開こうとしたとき、タイミングが悪くドアベルが鳴る。
お客のようだ。しかしかなりガラが悪いようだ。扉の近くには花瓶が置かれてるミニテーブルも置いているんだから少しゆっくり入ってくれないか
「いらっしゃいませお客様。お好きな席にお座りください。」
入ってきたのは団体様。頭にはヘルメットを被り、一人だけ顔を隠していない子がいる。
どうやらゆっくりとお店を見物なさるようだ。
「ご注文をお伺いします。本日のおすすめは昨日入荷したブルーマウンテンでございます。」
「へー?他には何かあるの?」
「ここの名物と言えばアールグレイですね。店内のBGMと合わせるとリラックス効果が高まるでしょう。しかし長くは居座らないように見えますからキャンディなどはどうでしょうか。シンプルな味で素直なさっぱりとした味ですぐに飲み干せるでしょう。」
「いい観察眼してるね。ちょっと頼まれた物があって急いでるんだよ。話は変わるんだけどこのお店で一番高価な商品って何かな?」
「そうですね。しいて言えばシルバーニードルズというダージリン紅茶の茶葉ですね。これはトリニティのティーパーティが仕入れているものと同じなんですよ。お値段は100g当たり20000クレジット、一杯4900クレジットしますが、如何でしょうか?」
「へぇー。あくまでも白を切るつもりなんだな?」
リーダー格であろう赤髪の不良は席から立ち、私に近づいて目の間に立つ。
先程までのおちゃらけた態度ではなく睨みを利かせて威圧してくる。
「この店に秘蔵のドリンクがあるんだってな?カイザーのお偉いさんが喉から手が出るほど美味いドリンクが。」
「……失礼を承知で言いますが、貴女のようなお子様が味わえる物ではないんですよ。もう少し成長してからのほうがよろしいかと。」
「舐めた態度取ってくれるじゃんか。もしかして立場が分かってないのか?」
そう言うと席に座っていたほかのメンバーが立ち、手にはそれぞれがグリップを握り、銃口を私に向ける。目の前の子もショットガンを私の腹にあてがっている。
話はこれまで。言うことを聞かなければ撃つと言っているものだ。
私は喫茶店の入り口に近づく。指示に従い始めたと思ったのか、ラブは銃口をあてがうのを止めた。
「お客様。一つ忠告をさせて頂きます。」
扉のロックを一つ掛ける。
「ここにはルールがあります。」
また一つロックを掛ける。
「それは『私を困らせてはいけない』というルールです。」
3つ目のロックを掛ける。
「もしルールを破れば────」
左手に握った花瓶を振り向き様に投げる。
「うわっ!?ぺっぺっ!」
「厄介者として排除させて頂く。」
徐々に彼女らの距離を短くしていく。
急な出来事で混乱しているのか、メンバーは動き出さない。
「呆けて一日立っているつもりか?それとも戦うか?」
赤ヘルメットが一人を押しのけ銃を撃つ。
銃身に手を添えただけで私は射線からズレる。
その射線の先には味方がいる。
少しうめき声をあげ倒れる。
机にぶつかり床に倒れる。
姿勢を低くし右足で足を払う3人は体勢を崩し地面に転がる。その間にカウンターへと飛び込む。
「クソッ!あんたたち冷静になりなさい!カウンターは木製なんだから数撃てば当たるわよ!」
様々な種類の銃の発砲音が部屋の中に響く。硝煙の臭いも段々と強くなる。
カウンターをボロボロにされるのは困るな。
「さ、流石にこれだけ撃てば気絶してるでしょ。」
カウンターは銃弾による煙でよく見えていない。それは彼女たちだけであるが。
「ぎゃっ!?」
ワンキル。
「ま、まさかやり切れてなかったのっ!?」
トゥーキル。
「う、うわーっ!!っあ!?」
スリーキル。
「こうなりゃグレネードで!」
「それは困るな。」
投げられたグレネードに一発当てる。迷惑なお届け物は送り主に返すに限る。
「ぎゃー!?」
「ぎゃあ!?」
「ぐわー!?」
残るは……あと一人。
「さて。今なら若気の至りということで見逃してあげます。ヴァルキューレも呼びません。」
私は目の前に立つリーダーに銃を向ける。形勢逆転だ。
「そういう訳にもいかないよ。これでも私はこいつらの隊長だからな!」
……良い目をしている。
彼女は酔っていない。
「そうか。なら。」
なら。
目覚めたときは幸せなほうがいいだろう。
「────ん、っあ?」
ここは、どこだ?
「あ!隊長!目が覚めたんですね!よかった~。」
「いつまで寝てるんですか!早くクライアントの所に行きましょうよ!」
……任務が失敗したのにどの面下げて行けばいいのか。
「クライアントが欲しがっていたものが手に入ったんですから!早く渡しに行きましょ!」
「……なんて?」
目的の物を手に入れた?でも確かにあの時私は……。
「えっと……端的に話すと、店主さんが隊長のことを気に入ったから目的の物を渡してやるということなんです。」
「私に対してなんか言ってたか?」
どうやらメモを預かっていたそうでそれを受け取る。
人は一杯で酔わせることができる。それが十三杯目なのか、十四杯目なのか思い出せないだけだ。
……どういう意味なのか分からないが何かしらの激励か。はたまた忠告なのか。
「なんて書かれてたんです?」
「人は一杯で酔わせることができる。それが十三杯目なのか、十四杯目なのか思い出せないだけだ。って書かれてる。」
「……それならあたしたちは隊長に酔ってることになりますね!あたしたちは何度だって隊長に着いて行きますから!」
「~っ!良いこと言ってるじゃんか!それじゃああんたら、報酬が出たら焼肉でも行こうじゃないの!」
「おや?あなたがいつも飲んでいるカクテルは飲まないのですか?」
「この状態から察せるでしょうが、強盗にあいまして。私お気に入りのジンボトルが盗まれたんですよ。」
「クックックッ。盗まれた、ですか。キヴォトスでも上澄みの存在である貴女から盗みを働けるとは。さぞ強い方だったんでしょう。」
「どうせ見ていたんだろう。全く趣味の悪い。」
私は目の前に座る大人、契約者がアンジェロを飲む。机や椅子、壁、床がボロボロになっているが常連は普段通り来ている。
「キヴォトスではアルコールを売る店は少ないですから。このようなお店のように静かに飲める場所は更にですがね。」
「……それで、『Billionaire Vodka』は買えそうか?」
「厳しいですね。富裕層なら10億払っても買いたい者はいますから。」
「まぁいいさ。ダイヤモンドのお酒というのは興味が引かれる。」
「クックックッ。それは同感ですね。」
何やら気分が良さそうだな。実験とやらが上手くいっているのだろうか。興味はないが。
「あなたが言っていた通り、先生がキヴォトスにやってきましたよ。」
「……そうか。ならようやく地下の出番という訳か。」
「その通りです。私はこのバーは通い続けたいですから手伝いましょう。」
「気持ち悪いな。」
「酷いですね。」
バタフライエフェクトはごめんだからな。
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