ついさっき完成した人造人間の存在を、今日出会ったばかりの他校生に知られてしまった。
知られてしまったからにはもう…。
「手伝ってもらうしか無いね。」
「はい?」
「彼女の…[フラム]の教育に協力してもらうしか無いんだよねぇ!」
「フラム?何ですかそれ?」
『私だよ!』
「うわぁ声デッカ!」
「話さねばなるまい、彼女が何者なのかを!」
H.M.F.L.M…私が
生物の部分が存在しない完全機械型の人造人間だが、見た目は当然として肌や髪に触れた時の感触までも人間のソレを完璧に再現している。
瞳の色は私の好みで真っ黒にして、髪型は動きやすいショートヘアの黒髪だ。
そして、彼女には二つの大きな特徴がある。
一つは私が全力を尽くして開発した高性能AIを搭載しているという点だ。
天童アリスに匹敵するとは言い切れないが、彼女の得意能力の一つは何と言っても会話能力だろう。
会話機能を搭載してからとにかく会話を続けた結果、人間と変わらない会話能力を手に入れている。
そしてもう一つ、彼女の最大の特徴がある。
それは、私が偶然開発に成功した[無限エネルギーコア]によって、基本的に休憩の必要が無いという点がフラムの最大の強さだろう。
「無限エネルギーコア?何ですかそれ?」
「この地下開発室を増築している途中で妙な物質を見つけてね、それをあーしてこーしてガッチャンコして作ったのが無限エネルギーコアだよ。」
「はぁ…なるほど…?」
「まぁついさっき完成したばかりだから私も具体的な性能は把握していないけどね。どうだい?今から動作確認するけど、君も見てみるかい?」
「まあ、せっかくのお誘いなので見ますけど……安全なんですよね?」
「大丈夫、死にはしないさ。多分。」
「た、多分って…。」
そういう事なので、とりあえず兵器の動作確認用の射撃場へ移動した。
私自身は銃に興味は無いので、護身用のハンドガンしか持ち歩いていないが、戦闘用ロボットを作った際の性能確認のために広めの射撃場を用意しておいたのだ。
「地下施設とは思えない広さですね。どれぐらい広いんですか?この演習場。」
「詳しい大きさは私にも分からないが、まぁ合同火力演習の会場として使える程度には広いかな。」
「広ぉ…。」
「さあフラム、君の戦闘能力の高さを私に見せてくれたまえ。君のターゲットはあのアバンギャルド君モドキだ。護衛に着いているオートタレットは破壊しても無視しても構わないよ。」
『私戦い方知らないよ?どうすればいいの?』
「君にはラーニングシステムというのを搭載してある。君の記憶データに私が録画した戦闘映像があるはずだ。そこから動きを学ぶと良いよ。」
『……なるほど、多分理解したよ!やってみるよ!』
フラムは走り出した。
「え、ちょっと待ってください!彼女は武器を持ってませんよ!?どうやって戦うつもりなんですか!?ま、まさか素手!?」
「素手でも戦えないことは無いだろうけど、ラーニングシステムは見た物からしか学べないからね。でも大丈夫、彼女の体には既に武器が仕込まれているんだ。」
フラムは遮蔽物の無い演習場で、四体のオートタレットから放たれる弾丸の雨をいとも簡単に回避し、あっという間に間合いを詰めた。
『パルスショット!』
わざわざ声に出して打つ必要は無いんだが…まあパルスショットは上手く扱えているようだね。
機械相手なら効果は絶大、対人でも痺れで動きを鈍らせるには十分な威力になる想定だ。
私自身の体で試したから間違いない。
『レイミ!あのアヴァンなんとかっていうのは壊しても良いのかな?』
「好きにしなさい。私は君の現時点での強さを知りたい。」
『わかった!』
両手を前に突き出した……まさかあの構えはアレを撃つつもりか!?
「ま、待て!流石にそれは過剰火力だ!」
『ビッグバン・キャノン!!』
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あまりにも強い衝撃で私達は気を失っていたようだ。
やれやれ、あの武装は使用制限を設けるべきかもしれないな。
『どうかなレイミ?私強いかな?』
「まぁ強いだろうけど、今君が相手していたアバンギャルド君は私が作った劣化コピー品だからね。実物に勝てるかどうかは分からない。」
「あ、あのロボット他人の作った物のコピーだったんですね。いやぁ、中々に独創的なデザインだなと…。」
「見た目はともかく性能はかなり高いから。そういえば、パルスショットは対象を麻痺させる武装だがオートタレットは破壊されているようだね。私達が気絶している間に片付けてしまったのかな?」
『そうだよ!』
「なるほど。」
「それにしても、銃弾を避けるなんて一体誰の戦闘データをラーニングさせたんですか?」
「ああ、学習元は美甘ネルと飛鳥馬トキという私の通っている学校の実力者二人だ。特にネル先輩はキヴォトス全体でも稀に見る強者だろうと考えている。」
「キヴォトス全体でも強い方……正義実現委員会のツルギ委員長みたいな人なのかしら。」
「おや?やはりトリニティにも規格外の実力者は居るのか?どんな人だい?非常に気になる。」
「いや、私は絵を描く以外に変わった事しないので関わりないですよ!まぁ噂では電車に跳ねられても大丈夫だとか、素手で建物の壁を壊したとか聞きましたけど、どこまで本当でどこからデマなのか分かりませんから…。」
「なるほど!これは本格的に他校からもデータを収集する必要性が増してきたな!ゲヘナは勿論として、百鬼夜行やアビドスやレッドウィンターも調べよう!そうだ、いっその事シャーレの先生も小型ドローンで監視してみよう!きっと良いデータが取れるぞ!」
「……あの、用事済んだので帰って良いですか?」
「おっと失礼!帰るなら帰るで構わないんだが、ここで会ったのも何かの縁、モモトークやらないかい?」
「え、まぁ良いですけど…」
「ありがとう!是非ともトリニティの強い人について色々聞かせておくれ!」
「あはは…まぁ気が向いたら話しますね。気が向いたら。」
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奈々地レイミさん…本当に変わった人だった。
ミレニアムにはあんな感じの人がいっぱいいるのだろうか?
あれほど強さを求める人も珍しい…というかあんな事して他の派閥から目をつけられないのだろうか?
いや、冷静に考えたら派閥争いでギスギスしているうちの学校がおかしいのか?
まぁ良いか。
私みたいなどこにでもいる一般生徒には関係ない話だし。
それにしても、強い人のデータが欲しいって、自警団とか正義自分から実現委員会に頼めば良い事をわざわざ…ん?
何か向こうが騒がしい気がするけど何だろう。
「うわ〜!撤退〜!総員撤退〜!」
「正義実現委員会も下っ端相手なら怖くないな!ガハハ!」
ああ、正実の子が不良に絡まれてるのか。
どうしよう、助けた方が良いかな?
いや本来は私が助けられる側のはずなんだけど。
まぁほっといても増援とか来るでしょうから今回は見なかった事に……いや、レイミさんに戦闘データが欲しいと頼まれていたし、ここで正実に恩を売れば協力を得られるかも。
「焼却砲の試し撃ちもしたかったし、まぁちょうど良かったかな。」
人相手に使うのは久々だな。
直撃は大怪我するから爆風を当てる感覚で、角度はこんなもんかな?
ここのレバーを引いて…発射!
ドカーンッ!!
「……あっちゃ〜。」
この武器前まではこんなに高火力じゃなかったよね?
充電しただけって聞いてたけど、もしかして私が拾った時は充電切れかけで威力が落ちた状態だったのかな?
これは恩を売るつもりが危険人物として目をつけられるのではなかろうか?
そうなる前にさっさと帰った方が……
「あ、あの!」
「はい!!すみませんでした!!」
「あ、いえ!あ、じゃなくて!えっと、そ、その武器は一体どこで、買った物なんですか?」
あら?
てっきり連行されるのかと思ったけどそうでもない?
いや、入手経路を探った上で押収する流れかも。
「え〜と、この武器は偶然拾ったものっていうか、その〜…」
嘘はついてない。
「あの!その武器譲ってもらえませんか!?」
「譲る…ですか?押収てばなく?」
「はい、私そういう権限ないので。」
「あぁ。」
「それで、その武器を譲ってもらえないでしょうか?」
「それは絶対に無理です。」
「そ、即答!?」
「最近物騒なので私もこれぐらい持ち歩かないと不安なんですよ。いつ犯罪に巻き込まれるかも分かったもんじゃないですからね。」
「ええっと、それに関しては我々正義実現委員会一同不甲斐ない限りです、はい。」
「あ、いやそういうつもりで言った訳では…。」
結局その後も話は続いた。
彼女の名前は大旗マキア、正義実現委員会の一年生らしい。
彼女曰く、委員会で支給された武器や自費で買ったマグナム銃の反動と本体重量が軽すぎて上手く扱えないのだそう。
それで私の焼却砲が欲しかったようだ。
「要するに、自分に合った武器が欲しいんですよね?」
「えっと、はい!その通りです!」
「分かりました。そういう事なら私から適任を紹介します。ミレニアム自治区の別荘地に住んでいる奈々地レイミさんという方を訪ねてみてください。吉月メロの紹介で来たと言うのを忘れないでくださいね。」
「はい!ご協力ありがとうございました!」
ふふ、なんだかんだ人助けというのは気分が良い物だ。
まあ、後日しっかり正実に連行されて注意されたのは言うまでもない話だけど。
キャラ設定ちょこっと解説
奈々地レイミは一応ハンドガンを携行しているが、射撃の腕前はごく普通であり、運動能力も皆無なため本人の戦闘能力はミレニアムでも底辺クラス。
彼女とて完璧超人では無いのです。
タイトルの割にフラムの出番が少なかったですね。