キヴォトスに迷い込んだ怪獣王(記憶喪失) 作:ゲヘナ箱推し
彼奴の光線を食らうと、全身を巡る激痛と痺れに加えて被弾方向とは無関係に吹き飛ばされる。私は相当な重みが有る筈なのだが、そんなモノお構い無しだ。
引き寄せるも押し退けるも奴の思うがまま。浮き上がらせ、上下を入れ替えて地面に叩き付けもして来る。街中の古書店で見付けた教本の中に有った重力だか何だかを操る光線、そんな類の物だろう。
高層建築物の倒壊に巻き込まれようとも無傷で居られる私が損傷を負う。光線を食らえば痺れと激痛に苛まれ、地面に叩き付けられれば呻き声を漏らす。
やはり奴は、ギドラは私と同類の存在だ。不意に口を突いて出た名前だが妙にしっくり来るし、今後奴はギドラと呼称する。
同類の行動なら原理こそ不明だが、私に対しても有効打へ昇華されるらしい。
「アハハハハハ! 死ねよッ! 死ねよなぁ!」
「殺してやるから死ねよぉ!」
「キハハハハハ!」
頭に変化した左右の手も含め、三つの口から喧しく喚き散らしながら稲妻をばら撒いて来る。両腕が龍の様な風貌に変化し相手を威圧・困惑させるだけでは無く確りと『頭』として機能して居るらしい。
光線と私の間に別の物を挟めば其れがある程度肩代わりしてくれるのではと地面を軽く抉り取り盾にしてみたりもしたが、其れも効果は無し。
重力を操るだけでも相当に厄介だが、貫通能力や破壊能力もかなり優秀と見える。私の表皮に外傷を負わせたのも奴が操る光線の威力の甚大さを物語って居る。
「チッ、面倒だな」
そんな代物を三つの頭から絶え間無くばら撒く物だから攻めにくい。直撃すれば激痛を伴う、腕や足に長時間浴びせられれば千切れるかも知れんな。
挙げ句、風まで操るのか常に暴風の膜で肉体を覆い私の熱線を掻き消してしまう。完璧には掻き消せ無いのか被弾はして居るが、致命打足り得る完璧な直撃は未だ出来て居ない。
尾を振り抜いて放つ電磁刃なら切り裂けるだろうがあれには身構えるのが必要不可欠で、ギドラが其れを許す手緩い相手では無い以上使い物に成らん。
中央の頭が放つ光線は熱線で相殺。左の頭の光線は尾を持ち上げて先端から熱線を放ち掻き消す。
そして左の頭からの光線は、拳で殴り砕く。
「見ない間に随分、面倒臭い能力を手に入れたなぁ」
ギドラが不愉快そうに呟くが当然だ、此奴との殺し合いの最中で思い付いたのだから。
体内放射の応用だ。口から放つ熱線を幾らか体内に逆流させて衝撃波を周囲に放つ体内放射、其れを拳に一点集中させる。
これなら拳を衝撃波で保護しつつ光線に叩き付け、粉砕する事が出来る。
ぶつかり合う光線と熱線は押して押されてを繰り返し、数秒間の拮抗の後に熱線が競り勝つ。
光線の威力が弱まり突き破った熱線はギドラを直撃、風の鎧に掻き消されながらも一応の直撃をする。
「いったいなぁ……殺すよ?」
子供みたいな話し方をするギドラだが、本当に効いたのか怪しいくらいケロッとして居る。風の鎧云々の前に素の防御力も相当に高い。
勝ち誇る様な笑顔も気に食わん。余程自尊心が高いと見える。
分かっては居たがかなりの強敵だ。言葉を交わして交戦を避けるなんて到底叶う訳が無い不倶戴天の敵。宿敵。
負ければ死ぬと感覚的に理解した。目の前に居る宿敵は私が動く余裕すら失ったと成れば、即座に殺しに掛かって来る。
首を絞めるか、心臓を止めるか、食い殺すか、ありとあらゆる殺害方法によって人生を終える私の姿が目に浮かぶ。
「殺す殺すと言いながら殺せて居ないなぁギドラ。貴様、本調子じゃ無いんだろう?」
殺される光景は想像出来るが、此奴に負ける姿は想像出来ない。
先に聞かされた殺し合ったどうのこうのの記憶はまだ戻って居ないが、ギドラが本調子では無い事は何と無く感じ取った。
熱線との競り合いも数秒しか続かず、その後は決まって私が競り勝つ。風の鎧に全幅の信頼を置くのか回避行動をせず受け止めて見せるが、競り合いにおいては負け続け。
そんな有り様で私に勝つつもりで居る。実に馬鹿馬鹿しく、愚かしく、滑稽でつい煽ってしまった。
ギドラの眉間にシワが現れ、血管が浮き出る。
「何を根拠にそんな事を。僕がいつ本調子じゃないなんて」
「ならば本調子の状態で本調子で無い私の熱線を抑え切れ無かったのか? 無様も此処に極まれりだな。強い言葉で私を威圧したいのかも知れんが、餓鬼が格好付けて背伸びするのと何も大差無いな」
自分が本調子では無いと指摘され機嫌を悪くする辺り、自尊心はやはり高いと見て良い。ならばそこを利用する。
餓鬼と同系列に並べられて大人しく、私が意図的に煽り立てて居ると気付ける冷静さが果たして此奴に有るのか見物だ。
「相変わらず強がりだなぁ君は。僕に有効打を浴びせたかな? お得意の熱線だってろくに効いてない。肉弾戦はビビって仕掛けてこない。僕の引力光線は着実にキミを傷付ける……力の差は歴然だよ?」
自慢するようにギドラは引力光線と呼んだ稲妻を周囲に放射する。風に乗ってバタバタと暴れる黄衣の縁からも稲妻を放ち、自分はこんな事も出来るのだと自慢して来る。
その姿があまりにも酷くて、私はついにやけてしまった。
「確かに力は有る。だが其れだけだ。使い道を誤り、其れに気付かず自慢げな笑みすら見せる。宝の持ち腐れだな」
実力差を見せ付ける、そんな意味合いも今の行為には含まれて居たのかも知れない。私が怯む、そう思ったのだろう。
宝の持ち腐れとまで言われてギドラが纏う不機嫌な気配がより強まって行く。やはり自尊心が高いな、扱い易くて助かるよ。
「力は誇示してなんぼだよ? 相手を脅して、倒して、屈服させる為のモノ。それが力だ。見せびらかすことの何がおかしいのかな? 僕、使い道を間違えているかな?」
「ああ、大間違いだ。誇示する暇が有るのなら先の一瞬で私に光線を浴びせて殺すべきだった。私の言葉等知らぬと攻め立てるべきだった。それなのに貴様は力と自尊心に溺れ、己を貶す言葉を吐く私を黙らせ無かった。話し終えてから殺す、そんな事を考えたのだろう?」
自分の力を否定し自尊心を傷付けた相手を、そう簡単に殺しては気分が晴れないだろう。語るだけ語らせた上で力を用いて踏み躙り、そして殺す。
奴はそうしなければ満足出来ない。高い自尊心を傷付けた相手を殺してはい終わり、で自分を満足させられ無い。
欲に対する抑えが効かん餓鬼と同類だ。己を律する事が出来ずに居ながら其れを正しいとすら思う様は其の気が無いとは言え、救いようが無い見事な哀れっぷりだ。
「情け無い、無様、今時風な言い方をすればダサい、そうは思わんか。刃物を振り翳す強盗と変わら無い」
「…………君、人の姿になって随分と舌が回るようになったね」
何やら気になる物言い。人の姿に成った、つまり以前の私は人では無かったと云う事か。
言われて思い返せば、何となくそんな気はする。人と呼ぶには余計な部位が私にはチラホラと見受けられるしな。
セリカやシロコにも人と呼ぶには余計な部位が有る。この土地に住まう人は皆そうなのか、とも思えなくも無い違和感の無さでは有るがホシノやノノミには其の手の部位は無い。
彼女達はもしや人では無いのか、とも考えもした。頭上に浮かぶ個々で異なる形質の光臨、ヘイローも人間らしさを感じさせ無い存在感が有る。
「馬鹿を言え。貴様の物言いが私の思考と噛み合わんからこうして指摘されるんだ」
人間なのか否か、気になりはするが今はどうでも良い事だ。余計な疑問に思考を割いてそこに突け入れられ殺された、では散り方としても情け無いが過ぎる。
其れに今は、目の前で力を持って天狗に成った馬鹿の鼻っ柱をへし折ってやらんと私の気が済みそうに無い。
「人の考え、生き方に兎や角言うつもりは基本無いが貴様相手では話が別だ。力を誇示して威張り散らす様は同じく力を持つ者として、同類として恥すら感じるぞ」
「ふん。なら恥を感じながら死ねば良いさ。この僕、キングギドラが更に高次元な生命体に至る為の糧としてね!」
本調子では無いだの情け無いだの餓鬼と大差無いだの散々煽られて、黙って聞いて居られ無く成ったらしい。私に喋りたいだけ喋らせて殺す、という考えも何処かへと消し飛んだと見える。
己をキングギドラと、王と呼称して光線を吐いて来る。威力は変わらず私を殺し得る優秀な代物だが、怒りに任せて放つせいで軌道が滅茶苦茶だ。
感情の起伏に自身の能力も引っ張られるらしく、身に纏う暴風が強まったせいで砂を巻き上げ砂嵐に変容して居る。
そのせいで視界も確保出来ず、高い自尊心が『視界不良で私を捉えられ無い』という事実を認めさせず無意味に光線を吐かせる。
「本当に貴様が王なのだとしたら相当な馬鹿殿だな」
話を聞くつもりが無いのならば、別に構わん。此方も語るのを止めて仕留めに掛かる迄。
体内放射を背鰭へと集中、衝撃を活かして体を前方へと押し出す。接地する足裏と地面の間で火花が散り、命中精度の低下した光線を潜り抜ける。
砂嵐のせいで音もろくに聞き取れんのだろう。砂嵐を突き破って私が現れたのを視認したギドラの目は、明らかに驚愕によって見開かされて居た。
「なっ!?」
「フンッ!!」
両腕も硬直して居る。頭は三つ有っても思考に関しては中央の頭が統一して行って居るのか、或いは別々に思考を行うも三つの頭全てが驚愕で固まったか。
何方でも良い。右拳に体内放射を集中させ、中央の首の根元を殴り付ける。
黄衣を押し込み、固さの有る肉体を殴った。戦車の装甲よりも遥かに固いが、私の殴打を相殺出来るだけの固さは無い。
「このッ、下劣な獣風情が!」
「至近距離なら!」
左右の頭が此処で漸く冷静さを取り戻し、至近距離に位置取る私を光線で的確に殺しに来る。中央の頭より些か利口だな。
馬鹿に変わりは無いが。
「そうか、なら早く行動に移すべきだったな」
左の頭を掴み、放たれる光線の射線を強引に変更。
光線は喧しいスパーク音を伴いながら飛翔し、右の頭に直撃した。
「○×△☆♯♭●□▲★※!?!?」
「うわっ!? ご、ごめブッ!?」
自分の光線を食らうのはさぞかし痛かろう。
声に成らん悲鳴を喚き散らす右の頭に向けて謝罪する左の頭を、私の膝に叩き付ける。
「ごぼっ、ゲボォッ!! よ、よくもぉ!」
「くっ…」
中央の頭が痛みを堪え、血を吐き掠れた声で怒鳴りながら噛み付いて来た。項部分に牙が突き刺さる感覚と痛みに呻きが漏れる。
何かを吸われるのを感じた。血液やその他の体液では無い、私が持つ力を吸い取って居る。
成程。糧と云うのは経験値的な意味合いでは無く文字通りギドラの力として死ねと、そんな意味合いで発した言葉か。
「ふんっ!」
「うげぇ!!」
御自慢の風の鎧すら破られ、怒りで忘れたのだろう。熱線すら通さ無い頑強な肉体も、肉弾戦でなら容易に損傷を与えられると。
胸ぐらに手を突き入れ、肉体を鷲掴む。生身を鷲掴みにされる痛みに口を離したギドラの肉体を持ち上げ、地面へ叩き付けた。
此奴に地面に叩き付けられて私が痛みを感じる仕掛けが同類だからだとすれば、逆もまた然りだ。
痛みを感じるのに慣れて居ないのか起き上がる気配の無いギドラの横っ腹を蹴り飛ばして仰向けに寝転がらせ、光線での迎撃を狙って来た右の頭を踏み付ける。
私の体内放射の様に光線を逆流させ衝撃波を放つ、みたいな芸当は出来ない様だ。行き場を失った光線が喉を突き破り、頭と首が分断される。
「あ、頭が!?」
「こっちでも、また首を奪ったな!? 許さない! 絶対に許うげぇ」
左の頭が何やら騒ぐが、しならせた尾を振り下ろして叩き潰し黙らせる。
騒がしいのが減って少し心が晴れた。なら、次は中央の親玉を殺すとしよう。
そう思った私が意識を向けるより先に、ギドラは冷静さを取り戻したらしい。
「どけぇっ!」
暴風の塊を叩き付け、私を吹き飛ばした。
鎧として纏うだけでは無く距離を作る手段として使うくらいの器用さも取り戻したか。
吹き飛ばされるのは想定の範囲内、慌てる事は無く着地も問題無く行えた。
暴風の塊に紛れ込み傷付けられた衣類に引っ掛かった砂を払い落とし、荒い息を吐き出しながら立ち上がるギドラを見た。
血走った眼で私を睨み、潰された左の頭を食い千切る
左右の頭を失ったが、闘志の衰えは無い。其れもそうだろうな、再生が始まっているのだから。
断面から透明な膜の様な物が溢れ出し、内より舌を思わせる細長い物が飛び出してビチビチと暴れ回る。
再生の軸としての役割を持つのだろう。舌状の部位を取り囲む様にして骨やら皮膚やらが再生し、破壊した二つの頭は元通り。
「ハァ…ハァ……さらに、腕を上げたね。それでこそ僕の、キングギドラの宿敵だよ」
闘志は一丁前だが息の上がり様が酷い。
自己再生に相当な体力を消費したらしいな。
普通の生物なら、此処で逃げを選択する。間違い無くな。互いに命を奪い合える力関係で片や息も絶え絶え、片や未だ余力有りとも成れば敗北は濃厚。
「だから…だからこそ、君を此処で殺す。宿敵として、王として、逃げられない!」
だが、此奴は筋金入りの自尊心肥大野郎だ。
私への殺意を抑えられず、自分が王だと不遜にも公言し、立ち向かう姿勢を示す。
人間としては立派……なのかも知れん。命を繋ぐ事よりも誇りを優先して進んで散ろうとする姿は、後世に伝われば美談として語り継がれ得る。
しかし、此奴は私の同類。人間では無く獣に近い存在だ。
力を持つ者としても生命体としても、何もかもが間違っており笑えてしまう。
「王だ王だと名乗って居るが、其れを証明する奴は何処に居る? 貴様を王と慕う者が何処に居る? 力を誇示する事にお熱な馬鹿殿に付き従う者が何処に居る?」
王を名乗るにはあまりに未熟でお粗末。
全てを捩じ伏せ従える程に強大な力も無く、王として相応しい立ち居振る舞いも出来ず、これの何処がキングだ。馬鹿馬鹿しい。
「王とは寡黙で悠然で有るべきだ。己の縄張りを守り、縄張り内に芽吹く営みを守り、己の矜恃を曲げず、己の在り方を誇り、其れ等を害する物を滅する。力は誇る玩具では無い、守る道具であり矜持と在り方を貫く鉾だ。貴様には其れ等が欠片程度しか無い」
私も王では無い。私はただ在るだけで、何かを統治する支配者では無い。
それでも分かる。王とはどう在るべきなのか、酷く朧気で曖昧ながらも記憶の中に刻まれて居る。
私の古い記憶か誰かの姿を見て憧憬の念を抱いた記憶か、其れすらも不鮮明。
でも、これが正しい『王』としての在り方だと私の心が訴えているのだ。
ギドラには理解出来ず、納得も出来ない様だがな。
「黙れ黙れ! 王とは奪う者! 力を持つ者! 支配する者だ! 歯向かう奴は皆ぶちのめす! ひれ伏したヤツを操る! 僕がそう! 僕はキングギドラ! ギドラ族の王! 地上の王たる君を殺す存在だ!」
三つの頭をハチャメチャに振り回して騒ぎ散らす。無様を通り越し、可哀想にすら思えて来た。
可哀想でも容赦はしないがな。
「当初の余裕は影も形も、だな。我が身を振り返れよ、そんなに錯乱した奴が王に見えるか? 親の言う事に一々反論して癇癪を起こす餓鬼じみた王が貴様の目指す王か? 貴様よりも、己を殺せる力を持つ貴様を前にして余裕を保つ私の方が余っ程
宿敵に自分の掲げる王の在り方を否定され、宿敵が己の方が王らしいと宣言される。傲岸不遜にも王を自称するギドラとにとって、私の発言は我慢の限界を軽く超過させたのだろう。
双眸に宿す敵意と殺意を一段と濃厚なモノに変化させ、唇を捲り上がらせて営利な牙を覗かせる。怒り心頭、怒髪天を衝くとは今のギドラに相応しい言葉だな。
「殺してやるッ! 絶対に殺してやるぞッ!! 僕を前にして王を名乗ったその罪! 殺された程度で許されると思うなよォッ!」
三つの頭を前に突き出し、極度の前傾姿勢で突っ込んで来る。
光線を一点集中して放つのか、一つの部位に三つの口で噛み付くのか、或いは絞め落としに掛かるつもりか。
何れにせよ、奴の頭の中から『余裕』は再び消え失せた。
今なら
「
背後に集結していた弱き者達が私の声に応え、得物の引き金を引いた。
けたたましい炸裂音が轟き、私の顔の真横を無数の弾丸が通り抜けてギドラに迫る。
「な、クソッ! このっ!」
私と同類のギドラにも銃の類は通用し無い。
擦り傷を負わせられた程度で奇跡と呼べるくらいだ。
相棒として愛用する彼女達には悪いが豆鉄砲としか呼べ無い脆弱な代物だが、其れを何百何千と顔面に浴びれば流石に煩わしい。
痛みは無く、無数の豆がぶつかる不快感にギドラは突進を停止。
まさか擦り傷すら負わせられ無い脆弱な存在が歯向かうとは思わなかったのだろう。足が止まって居た。
「ほらほらぁ! どんどん行くよぉ!」
ホシノの散弾銃が中央の顔に満遍無く弾丸を浴びせる。
「ミキさんを傷付けたこと、絶対に許さないんだからぁ!」
「ん、悪いトカゲにはお仕置が必要ッ!」
セリカとシロコが銃を乱射しながら突進、左右の頭に的確に弾丸を浴びせ続けて三つの頭を一人一人が相手取る。
其れによりら背後に控えるノノミの姿を隠していた。
「私も怒ってます! 泣いたって許してあげませんから!」
ガラ空きとなった胴体に携行機関銃が秒間何百発もの弾丸を浴びせ付ける。
「姐さんはやらせはせん! やらせはせんぞぉ!」
「私が! 私達が! 姐さんの臣下だぁ!」
元カタメット団の皆も勢揃いだ。各々が得物を手に砂の海の水面を駆け、ギドラに立ち向かう。
最初は驚いて居たギドラだったが、次第に驚愕を煩わしさから来る怒りが上回った。
私を助ける為に出現した援軍を不愉快そうに睨む。
其れを、私は許さ無い。私の縄張りを構成する彼女達にそんな鋭利な視線を向ける事も、敵意を向ける事も、私は断じて認可しない。
『グゴアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ンッ!!!!!!』
その罪への怒りを込めた咆哮を放ち、私の方から突進する。
僅かに怯んだ隙に懐へ飛び込み、左右の首の中腹を両脇に抱え、力任せにギドラの肉体を持ち上げる。
頭上まで持ち上げ、振り下ろす。その際に片膝立ちの姿勢を取り、中央の首の根元を膝に叩き付けた。
骨をへし折ってやった感覚は有ったが、まだ止まる気配は無い。嵐の塊を私に押し付け、距離を作らされる。
"ごめんね!遅くなった!"
駆け付けてくれた援軍の中での最年長者、先生が私の隣に立つ。ギドラを前にして恐ろしいだろうに、震える足を叩いて気丈に振る舞って見せる。
「寧ろ遅くて正解だ。今の奴で無ければ援軍に来たとて、無駄足無駄死にで終わって居ただろうからな」
"そう言われるとなんか申し訳ない、かな…"
今度は申し訳無さそうにも照れ臭そうにも見える笑みを見せて頬を掻く。コロコロと表情が変わる奴だ。
どの様な状態かの説明をしておきたいがギドラは未だに健在、油断は許され無い。
「奴は嵐と稲妻を自在に操る。嵐は身に纏い鎧として、稲妻は強烈無比な光線として用いられる。稲妻は私ですら痛みと傷を負う代物だ、ホシノ達でも直撃すれば即死は免れん」
"分かっているよ。あの人はミキちゃんが攻略するから、私達はそれ以外の場面で補佐する"
戦闘中は頭の回転が良くなるのか、私がして欲しい事を先生は的確に見抜いた。普段のぽやんとしたと言うか何処か頼り無さを感じさせる雰囲気とは異なる。
まあ、それもそうか。生徒達の配置や前進後退といった戦況に合わせての戦術展開を行うのが先生、シャーレに所属する人物なだけは有る。
「悪いが周りを気に掛ける程の余裕は無い。いいか、少しでもしくじれば死ぬと思え」
"ミキちゃんこそ、傷だらけなんだから無理をしないでよ?"
自分達の方が余程危険だと云うのに私の身を案じるとは、やはり此奴は底抜けの阿呆だ。
こんなのが協力者なのかと思うと少し頼り無くて、それ以上に気が楽に成った。
「雑兵共をゾロゾロとぉ! 王を名乗っておきながら恥ずかしくないのかッ!」
「慕う者に手を貸して貰える事の何を恥じる。第一、恥だ何だを気にする余裕が貴様に有るのか。死にたく無いのならば構えろ……ギドラァァァァァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ッ!!!!」