Legend inherit~ネコの師匠と人間の弟子の物語~ 作:麗紫 水晶
ベルナ村で、ハンターの登録をしたアメリア。色々と準備する中で、カリスタ教官に基礎を教えてもらい………最終試験として、モンスター討伐の指示を受けたのだった。
「闘技場にて”ドスマッカオ”を討伐してもらう。」
「それを倒さニャいと、先には進めないニャ。」
それを聞いたアメリアは決心し闘志を漲らせるのだった………。
「臨むところ!!」
………………………………………………………………………。
「ニャースの兄貴、まだ来ないニャすかね?」
「さあ、分かりませんけど村に着いているのは聞いてるんですけど……それよりも、いい加減に降ろしてください~~!」
ムーファに襟の後ろを噛まれて持ち上げられてバタバタしている可愛いお嬢さんがいた。そのムーファの背中に乗せている大きな篭にはニャースの様なオトモアイルー達が乗っていた。そう……ここはオトモ広場……そのお嬢さんは“ネコ嬢”と呼ばれていた。
そこでは、ネコ嬢のオトモ斡旋があり、オトモ達の道場があり、アイテムの交易窓口や採取や採掘・素材を委託で集めてくれるモンニャン隊が居た。
丁度ベルナ村と隣に位置しており、それなりの広さが確保されている。
オトモにも、得意系があって攻撃系・回復系・集める系・マルチ系と居てレベルアップもする。どのタイプを雇うかはハンター次第だが、クエストをクリアして経験を積めば強くなって行く事は間違いない。
「それにしては……遅いですね~何時もなら直ぐに顔をだしてくれるのですが……。」
確かにニャースは訪れると直ぐに顔をだしていた。村に来ている情報はあるのに、顔を出してはいない。
ネコ嬢も気になってはいた。だが、弟子が一緒に……と言う情報が入っておらず、把握していない。それこそ今まさに闘技場でカリスタ教官の試験が行われようとしていた……。
闘技場はほぼ円形状にコンクリートの分厚い高さのある壁に囲われている。東西に巨大な鉄の扉があり、片やハンターが…片やモンスターが出入りする事が出来る。中心から横一直線に地面から競り出す鉄の柵があり、壁際に大きなボタンが設置されていた。そのボタンもツルハシで叩かないと押ささらない程の重さだ。2ヶ所アイテムが拾える所もあるが、役に立つかどうかは別の話し……。
地面は砂漠に近い感じで、隆起している所もある。
ハンターも、その地形を上手く使う事が出来るかによっても状況が変わっていく…立ち回れるかどうか…と言う事になるのだが……。
闘技場の入り口手前にチェストがあり、回復薬等が入っている。アメリアはそれもしっかりと持ち、腕に盾を腰に剣を確認して深呼吸をした。
(実戦なんて初めてで、武器の扱い方だってド素人なのにモンスター討伐って言われてもなぁ……先に進めないって言うから勢いで返事しちゃったけど……でも……。)
アメリアもハンターになりたいと覚悟を決めた手前、やるしかないとも思ってもいた。後は気合いだけ……。
「よしっ!」
声を発して自身に気合いを掛け、戦いの場へと歩きだした。外に出ると、高い円形の壁に囲われていて地面は強い日差しが場内を明るく照らしていた。
(へぇ、広いけど逃げ場は無いんだね。)
アメリアは周りを確認しながら剣を構えた。すると遠目にも分かるほどの体躯がリズミカルなステップを踏む様な動きでこちらに向かって来る生物がいた……二足歩行で翼はないが、強靭な後ろ脚と先端が太くなっている尻尾。両前足の爪は鋭く、鶏冠があり尖った顔つきは獲物を食いちぎりそうな程、牙を剝き出しにしていた。全体に緑色の体躯をしている……”ドスマッカオ”である。
普通のマッカオ達とは身体の大きさが違い、群れのリーダー的存在……普通のマッカオですらなかなかのパワーがあるというのにその数倍の体格である。パワーも勿論その数倍、下手をすれば吹き飛ばされてもおかしくはない……。
アメリアは気合は十分あったがそれに比例して極度に緊張していた。初めての大型モンスターとの対峙、剣を持つ手が震える……恐怖からか、はたまた武者震いからか……本人にも分かりえない震えだった。しかし時間は待ってはくれない、5mほど前でドスマッカオが立ち止まり威嚇をする為に、もしくは戦闘開始の合図の様に咆哮を上げたのである………。
(く、来るっ!!)
いきなりだった……尻尾の先端を地面に着けて土台の様にし、尻尾全体はバネの役割で全身を尻尾に乗せて後ろ脚を前に突き出し、尻尾の反動を利用して突進して来たのである!
彼女はその突拍子もない動きに驚いて怯みそうになった…が、回避が間に合わないと悟り盾を構えて腰を低く構えて耐える姿勢をとった!それと同時にマッカオの後ろ脚の爪が勢いよくぶつかって来たのだ!
「ぐっ!」
マッカオはアメリアの盾を弾きながら通過して後ろ脚で立ち上がる。アメリアは1、2歩後方へ圧されるもその攻撃を何とか耐える事が出来た。
(なんて力!?……腕が痺れる……でも、剣は振れる!)
彼女は再び剣を構えて走り出す、剣を素早く振り回しマッカオの体に刃を突き立てていく!
少しずつではあるが、ダメージが入っていた。だが、マッカオも体力がある……身体を屈めて背中で体当たりして来た!咄嗟で盾も間に合わず、後方へ吹き飛ばされる!
「がっっ!」
3m程飛ばされ地面に転がる……仰向けになって倒れていた。アメリアは空を見上げていた……。
(いたた……あの時小さいランポスに押さえつけられただけでも、凄い力だったのに……防具を着てなかったら肋骨が折れてたよね……でも今は体力を削られた気はするけど戦えない訳じゃない……。)
彼女は再び起き上がる。すると、もう目の前にドスマッカオが尻尾を軸にして後ろ脚を突き出して攻撃してきたのだ!咄嗟に横に飛ぶ……ダイビングの形になったが攻撃からは身を躱す事が出来た。
マッカオも攻撃を躱されたので、身を翻しアメリアを追い掛け始める。彼女もスタミナが続く限りに砂に足を取られながらも走りマッカオから距離を取ろうと必死なっている。かといってこの闘技場の中、それ以上は限界がある……唯一地面に段差があるところに逃げ込むとマッカオも追い掛けるがよじ登ろうとする分、若干の時間差が生じた。それを利用して何とか回復薬を飲み干す!マッカオがよじ登った所で咆哮を上げた。それも彼女が回復薬を飲み干すきっかけとなった、間に合ったのだ。
アメリアは再度武器を構えなおすと、マッカオに向かっていく!剣を右に左に上に下に……マッカオにダメージを入れる為必死に振るう!マッカオも体当たりや後ろ脚のキック攻撃、時には尻尾を振り回してアメリアをダウンさせようとしてくる!お互いに命懸けの攻防どちらかが動けなくなればそれで終わりだ。
ニャースはカリスタ教官と共に闘技場の上の方から様子を見ていた。
「参戦したいようだな……身体が震えてるぞ。」
ニャースの隣にいたカリスタ教官がソワソワしているニャースに声を掛けていた。
「ニャ!?そ、そうニャか?お、おいらは別にニャにも……。」
明らかに動揺を見せるニャース、カリスタ教官も笑みをこぼした。
「心配するのは分かるが、これは試験だからな。本人がクリアしないと意味が無い、でないとこの先ハンター業は到底無理だからな。」
「わ、分かってるニャ!分かってるニャが……。」
ニャースも頭では理解はしていた。ここで助けに入って無事にマッカオを倒したとしても、彼女の実力とはならない。ましてソロで戦わなくてはならなくなった時、対処出来なくて倒されるのが落ちである。勿論力の差があって倒れてしまう事もあるだろう、しかし何時でもピンチの時に誰かが助けてくれる……と思う事は避けたいと思ってもいた。その辺はシビアにならないと後々本人の為にはならない。
(アメリア………頑張るニャ!!)
ニャースは心の中で声援を送るのだった……。
当のアメリアはニャースの事を気にする余裕もなく、防戦一方になっていた。マッカオが攻撃の手を緩める事が無く執拗に追ってくる。アメリアも時々離れては回復薬を飲むが、追いつかれて攻撃されているばかりだ。少しづつ攻撃に転じてはいるが、大きなダメージにはなっていない。
(このままだとスタミナが……。)
彼女も気づいてはいた、どちらかが先にスタミナが切れれば終わり……回復薬も砥石もその他のアイテムも残り少ない。かといって節約できるほどの技術も持ち合わせていない。徐々に削られていく体力とスタミナ……。
一旦彼女がマッカオから離れた時、マッカオがアメリアを追い掛けずに立ち止まっていた……息切れし、涎を垂らしている……。意外に細かな攻撃も効いていたようでマッカオもスタミナが切れかかっていた。
(!?……チャンス!)
彼女は再びマッカオに向かって行く!反撃される前に少しでもダメージを与えておかなくてはならない。必至に剣を振るってダメージを与えていく……。
(もう少し……。)
そう思いつつ、剣を振るい続けていたがマッカオが動き出す!ダメージを回避して両脚蹴りを仕掛けて来た!咄嗟で避けられず、後方に仰け反る……更に体当たりで吹き飛ばされる!
「がはっ!」
後方へ3m程飛ばされ、またも転がる……。しかし今度はスタミナ体力共に限界に来ていた。
(お…起き上がれない……あと少しなのに……勝てないのかなぁ……。)
身体を動かそうとするが麻痺した訳でもないのに、ピクリともしない。
(なんか……悔しい……。)
彼女の目から自然と滴が1つ頬を伝って落ちていた……。
「アメリア立つニャァ!!ニャんの為においらの弟子になったニャァッ!!」
その闘技場内を轟かせるほどの大きな声が響き渡った……。声で誰かはすぐに分かった……厳しいようだが檄を飛ばしてくれていた。何のためにハンターになろうとしてるのか……思い出させてくれる言葉であった……。
そしてドスマッカオが、彼女に迫っていた……3m程まで来ると一気にジャンプして彼女に圧し掛かろうと飛び掛かってきた!
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!!」
彼女は渾身の力を振り絞り叫びながら横に転がって起き上がる!マッカオがそのまま着地し、獲物が逃げたと地団駄を踏むようなそぶりを見せた……彼女はそのマッカオの懐に飛び込み盾を上に向けて両手で押さえながら空へ向かってジャンプする!!
「ギャヒィッ!!」
マッカオの下顎をアメリアの盾がアッパーを食らわせ、マッカオが回転して宙を舞い5m程吹き飛んで地面に落下したのだった……。そのまま横たわったまま、起き上がることはなかった……。
「……やった……倒せた……師匠……。」
彼女もその場で崩れ落ち、気を失ってしまった……。
「アメリアニャ!!」
ニャースも猛ダッシュで駆け寄ってくる。抱き起すと息はしているのが分かった、ため息をついて一安心するニャースであった……。
「合格だ、よく頑張ったものだな。」
カリスタ教官も傍に来てアメリアの顔を覗き込んでいた。
「当然ニャ、おいらの弟子ニャからな。」
ニヤリと笑って、彼女をお姫様抱っこする。それには教官も驚いた。
「だ、大丈夫なのか?」
「任せるニャ。」
ニャースは彼女を抱えたまま、闘技場を後にした………家まで抱っこされて寝かされた事を後で知って、驚きと恥ずかしさで彼女が大騒ぎした事は言うまでもなく…………………………。
もひとつ続きます! では。