東方現想郷 〜True or Phantasmagoria of Another Dream… 作:しゃきしゃきれたす。
だが考えててもしょうがない、か。
まずはこの山から抜けるのが先決かな。
「さ、行きましょうかね」
「どこに行くっていうのよ」
…?
はい?
後ろから声がする。
俺はここで一人で休んでたはずだが。
振り返りながら急いで距離をとる。
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ、さっきも助けてあげたじゃない」
「えっ…」
そこにいたのは先ほどの巫女だった。
女の子と戦っていたはずだが。 無事だったようだ。
「あ、あぁ。その節はありがとう。おかしな幼女に食われるところだったよ」
食われる(物理)である。意味深だったらどれほどよかったことか。
あ、いやロリコンではない、うん。
「そうね、でもこんなところをフラフラしてたらまた襲われるわよ」
「えっ、あんなのが他にもいるってことか? だけど俺は家に帰りたいんだよ。
どういう訳か起きたら山ん中でさ、ここがどこかわかる、?」
「えぇ。ここは裏山…ってことじゃなくて、多分アンタが聞きたいのは_____
この世界は幻想郷。アンタがいた世界から見ると異世界、ってことになるわね。
だから歩いてても元の世界には帰れないわよ」
…は? 異世界?
いやいやいや、どういうことだってばよ、俺は昨日普通に寝ただけだぞ?
異世界転生というのはよく聞く。漫画やアニメでのことだが、百歩譲ってそれが現実に起きたとしよう。
相場は交通事故とか神様の手違いとかじゃないか? 俺は死んでない。
飛び出した子供を助けるためにトラックの犠牲になったわけでも、通り魔に刺されたわけでも、
神々しいおじいちゃんに会ったわけでもない。
何にもないのに急に異世界…? だがここが俺の世界でないんだとしたら、これまでの怪奇にある程度説明がつくわけだが。
「すぐには信じられないと思うわ、でも見たでしょ?さっきアンタを襲ったのは妖怪よ。
この世界では普遍的な存在なの。妖怪は人間を襲う。弱い人間を助けるのが私の仕事だから」
待て待て、情報が多いな。混乱してよくわからない。
「正直異世界転生とかはあんまり信じないで生きてきたが…さっきのを見るとな。
かっ、帰る手段はないのか、?」
「あるわ、でもここで話すのもなんだから神社まで来なさい、付いてきて」
「? わかった」
神社。そういえばさっきの子も最初に言ってたっけ。その後が衝撃的すぎて忘れてしまっていた。
なるほどな。そこの巫女さんという訳か。
帰る手段を知ってるっぽいし、ついて行くとしますかね
変に思考を巡らせるのをやめ、素直に従うことにした。
その場所からかなり歩いた。俺も巫女さんもその間は無言で、やや気まずかったが致し方ない。
コミュ障なのだから。
道中は他の人間に会うことはなかった。美しい自然が広がっているだけで、人工物も見られない。
本当に異世界なんだろうか。
体感20分。走って疲れていた足にはちょっときつかった。が、前を歩く巫女さんは全然疲れる様子もないため、
なんとかついていった。
ついに社の一部が見えた。そう大きくはないが、立派な赤い鳥居もある。
ここが目的地に違いないようだ。
境内に入っていくと墓標や拝殿、手を洗うやつがあった。なんだっけ正式名称。
その中で一番大きい建物の扉を開け、巫女さんは言った。
「着いたわよ、ここが博麗神社。とりあえず上がりなさい、」
「お、お邪魔しまスー…」
これは“女の子の家”に該当するのだろうか。そう考えるとちょっと緊張するな…
玄関で靴を脱ぎ、一つの部屋に案内された。
中は整頓されていて掃除も行き届いている綺麗な和室だった。
障子や縁側がある。今の日本ではあまり見なくなってきている造りだ。
巫女さんはお茶を持ってくると言って奥に行ってしまったので、俺は座って待つことにした。
こういうちゃぶ台ももうあんまりないよなぁ。
縁側から見える景色もよく、鳥のさえずりと蝉の声がきこえる。
時計がないので時間はわからないが、日の角度から見てもう昼ごろだろうか。
夏の初め。もちろんエアコンはないが、吹き抜ける風が心地良い。
すると、遠くの方からゴゴゴという音が近づいてくるような気がした。自然が生み出す音にしては不自然だ。
いや待て、どんどん近づいてるぞ…?
何がなんだかわからなかったが、縁側から顔を出して確かめようとした。
音はどうやら上空からしているらしい。
ん、上空?
俺が上を見上げた瞬間。
ズドーーーーン
爆音と地響きが遠くの山々に反響した。