Grand Theft Archive:Kivotos   作:火焔茸

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今回は若干キツめの暴力表現があるので注意です。
やはり可哀想は可愛い…と言いたい所ですがTにしては優しい部類なのが恐ろしいところ。


トーチャリング・スカウト

【T.P.I.総合事務所 地下室】

 

お”ぅやべでぐれ(もうやめてくれ)…!あらしわ、ぁにもしあな”いんら(私は何も知らないんだ)!!

「"んなワケあるか、お前がヘルメット団のリーダーなんだろ?雇い主は誰だ、答えろ。"」

お”ぅやら…!うひにがぇじでぐれぇ”……!

 

初手でタバスコ飲ませたのは失策だったな…何も聞き取れねえ。

 唇を腫らしながら泣き喚く彼女の名は『新井(あらい)ロア』、アビドスを襲撃していたカタカタヘルメット団前線基地を指揮していた赤い制服の奴だ。

彼女の持っていた学生証をアロナに照会してもらったところ、1年前に学業不振を理由に退学処分となり失効していた。

このキヴォトスにおいて、学籍を持たない生徒の扱いはアメリカの不法移民並みに酷い。

まず真っ当な銀行であれば口座が凍結される、そして電子決済端末を兼ねている学生証が停止されるため大抵の店に入れなくなる。

結果、現金や物々交換の通用するブラックマーケットから出られなくなる。そしてロクでもない仕事で使い潰され、運の悪い奴から順番に飢えか過労で死ぬ。

いくらヘイローがあろうと物理攻撃以外には弱いらしく、食あたりや病死なんかもザラだとか何とか。

 さて、そんなロアであるが現在は椅子に縛り付けた状態でヘルメットを外され、素顔を晒している。暗灰色(ダークグレー)のベリーショートは抵抗の末に乱れ、黒い瞳には涙が浮かんでいた。

鹵獲した武器弾薬と一緒にトランクに詰めて拉致してきたのだが、なかなか口が堅い。

 

「"どうすっかな…"」

 

拷問大好きな俺がここまで苦戦しているのには2つ理由がある。

 まず情報を吐かせるために拷問をしたことがほぼ無い。

前世(ロスサントス)ではクズどもを玩具にして遊んだことはあれど、情報のためにやったのはFIBの仕事の1回きりだった。

その時ですら、尋問と揺さぶりはヘインズの野郎に丸投げしていたわけで…

 そして何より、学籍を失っているとはいえ相手が生徒だ。つまり先生として一線を引いた対応が不可欠。

となると、今後の彼女の人生を守るために後遺症を残さず、うまいこと苦痛のみを加える必要があるわけだ。

…で、試しにタバスコを口内にブチ撒けてみた結果がコレである。

 

「"ほら飲め、そんな口じゃ何言っても聞き取れやしねえ。"」

「ごボっ…んぐ、んぅ……」

 

隣の部屋にあった冷蔵庫を漁り、とりあえず辛みを抑えられそうな牛乳を見つけたので口に流し込む。

 

「…ぶはッ!なぁ…アンタ先生なんだろ!?生徒にこんなことしてタダで済むと思ってんのか!?」

「"そりゃ学園が黙ってねえだろうな、お前が所属してる学園があれば…だが。"」

「クソ…っ、何なんだよ大人ってやつはどいつもこいつも…!」

 

来た、やっと尻尾を出したな。

 

「"へぇ…俺以外にもロクデナシの大人を見てきたような言い草じゃねえか?"」

「あっ」

「"誰の事を考えてた?教えてくれよ…"」

「教えたら、用済みだって始末する気だろ…?」

 

………ん?

 

「"もしかして意地でも口割らなかったのって…それが心配だったのか?"」

「他にあるかよ…」

 

コイツは抜かった、そりゃ普通は情報抜いてそのままポイなんてしねえわな。

 

「"安心しろ、お前が雇い主の名前を教えてくれたら解放してやる。"」

「ほ、本当だろうな…?」

「"ああ、先生だからな。約束は守るさ。"」

「…」

 

なんだ、あんま安心した感じじゃなさそうだが…

 

「"もしかして…解放したとして、行く場所も無いのか?"」

「な…っ、なんで分かる!?」

「"うちの部下を拾った時もそんな感じだったからな、キヴォトスってのは学園からドロップアウトした生徒を護る組織がねえ。"」

「そう…だな、捨て駒の傭兵になるか強盗で食い繋ぐか…さもなきゃ飢えてくたばる奴ばっかりだ。」

「"…俺の会社に来るか?うちもマトモな仕事じゃねえが、社員を捨て駒にはしねえ。"」

「本気か?アンタ…ついさっきまで拷問してた相手をスカウトって…」

 

先ほどまでの恐怖に塗れた表情から一転、呆れと困惑の入り混じったような顔でこちらを見るロア。

 

「"ああ本気さ!新しい事業に手を広げるためにも人手が欲しい、競合他社から奪えるならもっと良い。"」

「競合他社って…」

「"お前の雇い主がそうじゃねえかと踏んでんだ。で…スカウトに乗るんなら教えてくれよ、最初の社長命令だ。"」

「…待遇は?」

「"固定給プラス実績手当、傷病休暇OK、危険手当は出ねえが弾薬費補助ありだ。"」

「衣食住と福利厚生は?」

「"社員寮はまだねえが、そのうち適当なビルを買い上げる予定だな。制服は支給、あと銃とか装備も自社商品なら社員割引がきく。"」

「昇進は?」

「"指揮職・管理職には昇給あり、戦闘能力次第では俺の権限でシャーレに編入もあり得るが…"」

「もう一つ、アタシの部下も一緒に入社できるか?」

「"仕事ができるんなら歓迎だな。"」

「なるほどな…確かにブラックマーケットにしちゃマトモそうだ…」

「"だろ?…どうだ、乗るか?"」

 

俺はロアの背後に回ると手を縛っていたロープに手をかけ、返事を待つ。

彼女は一つ息を吐くと、肩越しに俺を見ながら答えた。

 

「前の雇い主はカイザーコーポレーション、アンタと同じブラックマーケット企業だ。」

「"…ようこそ、トレバー・フィリップス工業へ。"」

 

俺はそれだけ言って、彼女の戒めを解いた。




お察しの方もいるかも知れませんが、ロアちゃんの名前はバイク用のヘルメットがモデルになってます。
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