Grand Theft Archive:Kivotos 作:火焔茸
生徒たちが好きで好きで仕方ない人は閲覧にご注意ください。
学園へと還って来た俺はすぐに対策委員会を招集した。
全員が教室に揃ったところで、腑に落ちない表情のセリカが口を開く。
「今度は何なのよ。もう警告はしたし便利屋は来ないんじゃないの?」
「"甘いな、あの程度で諦めるならブラックマーケットで仕事なんざしてねえ。"」
「じゃあさっきまでの襲撃は無駄骨じゃないの!」
「"いや、あれは時間稼ぎだ。"」
「…時間稼ぎ?」
首を傾げるセリカの為に、シッテムの箱から正門近くの路地を映した監視カメラ映像をアヤネのタブレットに転送してやる。
「"アヤネ、そいつを見せてやれ。"」
「は…はい、セリカちゃん。」
「何なのよ回りくどいわ…ね………え!?」
「"これで相手は4人だ。"」
≪来ないね…依頼人≫
≪なにが便利屋だよ、時間も守れねえなんて≫
≪偽の依頼じゃない?便利屋騙った釣りだよコレ…たぶん≫
≪なんだよ、わざわざアビドスまで来たのにー!≫
≪アホくさ、帰ろ帰ろ≫
≪そういえば、この近くに美味しいラーメン屋さんあるらしいよ≫
そこに映っていたのは、集合時間になっても現れない依頼人に愚痴を吐きながら自然消滅的に解散していく作業着姿の生徒達。
特定の企業や学園に籍を置かない―――あるいは置けない―――雇われの暴力屋、いわゆる傭兵だ。
金さえ払えば仕事はするが、逆に金が無ければ働かない…これで対処すべき戦力は一気に削ぐことができたワケだ。
いくらアビドスの生徒が強いとはいえ、数が多いというのはそれだけで面倒になるからな。
ついでに便利屋の信用も落とすことで、新たな依頼を出されても請ける奴が減って一石二鳥。
アイツらの実力を考えれば信用へのダメージもすぐに回復するだろうが、ここの襲撃を諦めるまでの間だけで十分だ。
「これって…」
「傭兵ですね~、こんなにたくさん雇ってたなんて驚きです。」
「そういえば、柴関でニアミスした時もそんな話をしてた。」
「"よく聞いてたなシロコ、まぁ俺もそれ聞いてコイツを思いついたんだが。"」
説明も済んだ所で、俺は注目を促すために軽く柏手を打つ。
「"さて、オマケが失せたとはいえ敵主力は健在。すぐに態勢を立て直してここに来るはずだ。"」
「うへへへ…ならやることは一つだね。」
「はい、迎撃態勢を整えましょう!」
こうして殺る気満々の5人に、俺は持ち込んでいた箱の1つを差し出す。
「"盛り上がって来たじゃねえか、そんな地元愛あふれるお嬢さんたちに俺からプレゼントだ。"」
「地雷と土嚢と…なにこれ、野球バット?」
シロコが首を傾げる。
「"T.P.I.の新商品『ヴォルフスエック合金バット』だ、キヴォトス人のパワーで思いっきり殴っても折れねえ…ちなみにブラックマーケットでも発売前のとっておきだぞ。"」
「近接武器…って事?」
「うへ~…先生ってたまに容赦ないよね…」
「先生…さすがにそれは…」
「これを武器として売る気だったの?嘘でしょ…?」
「ん~、これがブラックマーケットに出回るのは良くないですね。売るのは辞めた方が身のためですよ?」
「"銃は良いのに、バットはダメなのかよ…?"」
本気で意味が分からん、たまにキヴォトスとは倫理観って奴が噛み合わねえな…
仕方ないのでバットは箱に戻して、校内各所のバリケード強化と地雷敷設に向かった。
あとは便利屋がノコノコとキルゾーンに入るのを待つとしよう…楽しみだな。
「こちらアルファ、準備完了だよー。」
「いつでも行けますよ~!」
≪ん、ブラボーチームも準備完了≫
≪見てなさいよ便利屋68…目に物見せてやるんだから!≫
≪こちらオペレーター。便利屋68は現在、正門前通りを時速60kmで進行中。≫
「"
≪キルゾーン到達まで120です。≫
「"よーし…楽しくなってきたな"」
俺とノノミは校舎近くの廃ビルからアビドス正門前を見下ろしていた。
ノノミの手にはいつもの
で、その武器を微妙な目で見ていたホシノが苦言とも疑問ともつかないセリフを漏らす。
「先生ー?本当にそれ撃つの?」
「"当ったり前だろ!そのために持って来たんだからよ"」
「まぁ、バットよりはマシかもだけどね…」
「"どういう基準だ、理解に苦しむ…"」
言いつつ、俺は目の前の新兵器に弾薬を装填する。
小銃の比ではない堅牢さを窺わせる分厚い閉鎖機構、鋼鉄の箱とでも表現すべき無骨な
この前ヘルメット団から鹵獲した巡行戦車の主砲ユニット…そのT.P.I.製コピー品だ。それをビルにアンカーで留めて即席の砲台にしたワケだ。
実は戦車の方を調べてみたところ、ブラックマーケットにしか出回ってない生産停止モデルという事が判明したんで、ホシノに頼んで買い取って分解・解析させてもらった結果実現した代物だ。
まぁ他にも色々とキナ臭い情報が出てきたんだが、それは便利屋にお灸を据えた後だな。
≪こちらブラボー、ターゲットを目視。≫
「"作戦は覚えてるな、リモコンのセフティを外しておけ。"」
≪任せて、タイミングは合わせる。≫
今回の作戦は簡単。
アビドスへ向かって来た所をリモコン式の地雷、要は地中に埋めた対車両爆薬で吹っ飛ばして走行不能にさせた後、車両の残骸へ向けて全火力を集中。降りてくる前にまとめて叩くって算段だ。
もちろん車両から脱出された場合に備えて通常戦闘の用意もしてある。
………まぁアロナが街中の監視カメラから車両に乗り込む便利屋68を見つけてくれなかったら、そして学園に戻ってすぐに動き出したって報告をくれなかったら思いつけなかったし成立しなかった作戦だ。
便利屋の車 を爆破しろ
ほどなくしてエンジン音が近づいてくる。
無線の向こうで、リモコンを持たせた
十字キー右で起爆
現れたのはサビだらけで型落ちのSUV、ホイールも前後でチグハグになってやがる。
ブラックマーケットでよく叩き売られている使い捨ての安物だな、たぶんナンバープレートも
それが設定したキルゾーンに入った刹那、爆音が耳を揺らす。
俺は戦車砲のハンドルを掴み、黒煙を吹きながら正門へと慣性で転がっていく車両に照準を合わせた。
「"パーティーの時間だぜ、クラッカーを喰らいな!"」
鼓膜が殴られたみてえな衝撃と轟音、溢れかえる硝煙の匂いにテンションが上がる。
笑いを隠すことも忘れて、犬歯を剥き出しにしたまま次弾装填にかかった。
「"Foooo!楽しくなってきたな、どんどん行くぞ!"」
俺は次から次に砲弾を装填し、SUVがスクラップになるまでブチ込み続ける。
だから、夢中になりすぎて狭まった視界と轟音に慣れた聴覚では、背後の奇襲に気づけなかった。
「ごめんなさい先生…本当にすみません…!」
「"…は?何が―――ッ!?"」
微かに聞こえた声に振り返るとノノミが吹っ飛んでいた。
そして俺の方にも爆風が迫る、そこへ尋常ではない速度で割って入るホシノの姿。
まるで家族を殺されかけてる娘みたいなひでえ形相で、いつもの盾すら投げ出して、小せえ図体で俺に覆いかぶさった。
「ぐ…っ…!」
「"あ…ッつ"」
ホシノが衝撃に呻く、庇い切れなかった脚の先が熱い。
『ガソリンは好きだろ、T!』
うるせえ、今そんな事思い出してる場合じゃねえんだよクソが。
「"やってくれたな、この悪ガキめ!"」
ホシノを押しのけ紫色の敵影に突っ込み、その移動経路上にあったホシノの盾を拾って殴り飛ばす。
「す、すみませんすみません!社長のために死んでください!!」
「"誰が死ぬかこのb…ッ!"」
危ねえ、勢い余って生徒に
声にならない怒りを込めて返す刀でもう一回、今度はこっちに向いたショットガンの銃口を殴る。
「…寝てろ!」
顎を横殴りにクリーンヒット、そのまま白目を剥いて倒れた。
「"ホシノ!ノノミ!無事か!?"」
「は、はい…何とか…」
「…ッ、先生こそ無事!?」
2人の無事を確認しようと声をかけるが、ホシノが鬼気迫る勢いでこっちに来た。
いつもの寝ぼけたツラはどこへやら、キレたナイフみてえな雰囲気を纏っていた。
…そういや前に先輩絡みで何かあったような反応してた事あったな、心配かけちまったか。
「"ああ、無事だ。だから安心しろホシノ…落ち着け。"」
「…うへ、良かったぁ。おじさん心配しちゃったよ。」
「"よし…いつものホシノに戻ったな。"」
「それで先生、この方はどうしましょう?」
「"あー…そうだな…"」
結局襲って来た生徒―――ハルカの靴紐を解いて、それで手足を拘束しておいた。
おそらくだが車は囮だ、たぶんドライバー以外の3人は普通に行動中…いや下手したら車は無人で、4人ともって可能性すらあるな。
とか何とか考えてるとホシノが何かに反応する。
「…了解、すぐに向かう。」
「"どうした?"」
「あら、先生…インカムが壊れちゃってますね~さっきの爆発でしょうか?」
「"…冗談キツいぜ、意外と高いんだぞコレ"」
耳元に手をやれば、欠けたポリマー外装の尖った感触。
外したインカムを見ると見事に本体から粉砕され、基盤がヒビ割れて丸出しになってやがった。
「"…それでブラボーは何て?"」
「爆破直後に作戦通り射撃ポイントへ移動後、背面から奇襲を受けて同地点で2名と交戦中。
装備はマシンガンとハンドガンだって。」
マシンガンとハンドガン…赤いドレスと黒パーカーの生徒か、調査したデータ通りならムツキとカヨコだな。
爆薬の扱いに長けるへビーガンナーと、隠密工作と戦術担当の参謀。
社長のアルがどこに居るのか分からねえのが嫌だな…あいつ確かスナイパーだったよな。
まさか社長が真っ先に死にに行くワケもねえ、4人とも無事な線が濃厚か。
考えても仕方ねえか、向こうは戦闘中だし救援に向かわんと。
「"よし、ブラボーチームの救援に向かうぞ。"」
「「了解」」
「"あとアヤネに通信入れてくれ、アルの居場所を掴んでおきたいから、ドローンのカメラで周辺を捜索してくれって。"」
「はいほ~い、聞こえてたねアヤネちゃん?…あらら、そりゃ傑作だね!」
「"どうした?"」
「んふふ…いま先生の端末に映像送るってさ…」
さっきから半笑いのホシノに首を傾げながら、シッテムの箱を取り出す。
アロナがこっちに映像を出してくれた。
≪お話は聞いてました、こちらのファイルですね!≫
「"…HAHAHA!マジかよ!"」
黒焦げのSUVだったナニカを背景に、白目を剥いて驚愕の表情を貼り付けたアルが倒れている。
身体が僅かに上下してるから息はあるんだろうが、ヘイローが消えてるし気絶したか。
しかし一番危険であろうポジションに突っ込むとは無茶しやがる、だが嫌いなタイプじゃねえ。
「"俺はそこで伸びてるのを拘束しておく、先にブラボーに合流しろ"」
「「了解!」」
結局、俺が着く頃には決着が付いていた。
お互い万全でぶつかったならともかく4対2じゃ分が悪かったらしい、2人とも後ろ手に縛り上げられていた。
まず俺は黒パーカーのハンドガン使い、カヨコに話しかけた。
「"どうやって地雷に気づいた?"」
「…勘、かな。」
「"まぁ言いたくねえなら無理には聞かねえけどよ"」
するとカヨコは驚いたように少しだけ目を見開いた。
「問い詰めたりしないんだ。」
「"俺は先生だからな、生徒には優しくしねえと。"」
「…変な人」
「"そこは素直に褒めやがれ"」
そんな会話が面白かったのか、隣から笑い声がした。
俺はその笑い声の主、ムツキにも声をかける。
「く…っフフフ…」
「"なんだ、負けた割に余裕じゃねえか"」
「いや~面白い事言う人だと思ってさ」
「"そりゃどーも…"」
「ところでアルちゃんとハルカちゃんは?」
「"ん?ああ、制圧してそのまま縛ってあるな。殺しちゃいねえから安心しろ"」
「ころ…ッ、そりゃそうでしょ、怖い事言わないでよ~」
「"気絶してるだけだ、心配しなくてもすぐに会える。"」
それから制圧した便利屋たちを校舎に連行し、アルとハルカが目覚めるのを待った。
「な、何よこれ——————!?」
「あ、アル様ぁあああああああ!?!?」
「どうなってるのよ、なんで私縛られてるの!?」
「すみませんすみませんすみません!!私が非力なばっかりにこの程度の縄すら千切れないせいで助けることもできず…!」
うるせえなオイ、目覚めて早々に元気な事で。
アルはガッツリ白目剥いて年頃の女子がしちゃダメな顔になってらっしゃるし、ハルカは良く聞くとすげえ卑屈な思考してやがる。
大丈夫なのかコイツら…
「"カヨコ、ちょっと宥めてもらって良いか?"」
「いいけど…縄解いてくれる?」
「"…抵抗しないなら構わんが"」
「分かった、もう勝負はついちゃったしね。」
制圧したついでに話したい事があったのだが、落ち着いたのは結局それから30分後ぐらいだった。
神秘の守護なき身で戦車砲を撃つ
☑キヴォトスじゃ体罰にもなりません
便利屋メンバーを1人以上、近接攻撃で倒す
☑命中率 100%
☐ミッション時間 06:08
お久しぶりです。
リアルが忙しくなってきたのもあり、遅筆と相まって更新が滞っておりますが…
プロット自体はもう少し先まで完成しているので、気長にお待ちください。