Grand Theft Archive:Kivotos 作:火焔茸
ハーメルンが復旧してくれて良かった…いや本当に。
「ほい先生、柴関ラーメン大盛り・チャーシュー増しお待ち!」
「"Fooo!コイツを待ってたぜ大将!"」
カイザーにビデオレターを送り付けた日の午後、俺達はまた柴関ラーメンを訪れていた。
俺はフォークを取り、目の前に置かれた丼に鎮座する厚切りの肉を掬い上げる。
食欲のまま犬歯を突き立てれば、肉汁の旨味とタレの香ばしい香りが口内に広がっていった。
「"これだよ、この味…たまんねえな。"」
ヤクやってない味覚って素晴らしいな、生徒には手出させないようにしねえと…
「アビドスのお嬢ちゃんたちもそうだが、美味そうに食うねえ。料理人冥利に尽きるってもんだ…」
そう、今日は先の戦闘の労いと便利屋への親睦を兼ねて生徒たちにラーメンを奢ったワケだ。
まぁシャーレの基本給だけじゃなく、T.P.エンタープライズの収益があるから懐には多少の余裕もある。
ならば生徒たちのために使ってやるのも先生として正しい事のはずだ。
それに何時シャーレの任務で生徒を頼るか分からない以上、互いを知っておくに越したことはない。
チャーシュー齧ってる間に生徒達の話も盛り上がって来ていた、年頃の女子ってコミュ力高ぇよな…まだ決着して数時間だってのに。
「じゃあ、アルは最高のアウトローになるのが目標なんだ。」
「ええ、その通りよ。キヴォトスの裏社会に名を轟かせるような…そんな存在になってやるわ!」
「"なるほど、俺の専門だな。"」
「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」
「"…言ってなかったか?"」
そこから対策委員会と便利屋、総勢9人がかりの質問攻めに遭った。
ロスサントスの事、マイケルやフランクリンのこと、連邦保管庫のこと…裏切られて死んだ事は、街を出るハメになったと言ってぼかしておいた。
人を食った話*1だとかヤク絡みのあれこれも、教育に悪いので伏せておいた。
「流石先生ね、そんな事まで経験していたなんて!でも待ってなさい、いつかその背中に追いつくんだから!」
「"…そうか"」(話してて思ったがお前アウトロー向いてねえって…言えねえよなぁ)
「先生、いつか一緒に銀行強盗しよう。絶対」
「"おいやめろシロコ、強盗に誘うんじゃない。後ろで見てるホシノとノノミの笑顔が怖いから…"」
本当に連邦生徒会長とやらは何を考えてたんだろうな…?
余談だが一通り語ってたらラーメンが伸びちまってた、クソが。
「"大将、ごちそうさん。会計頼む"」
「あいよ、全部先生持ちでいいのかい?」
「"ああ、全部だ。"」
「そいじゃ柴関ラーメン並9杯、大盛りチャーシュー増し1杯で5800円だぜ。」
俺は大人のカードを取り出そうとして、そこで気づいた。
「"待て待て、それじゃ足りねえだろ。"」
「ん~?いや合ってるぜ?」
「"引っかからねえぞ、それだと580円の並10杯の計算じゃねえか。俺の大盛りとチャーシュー代はどこ行ったんだよ?"」
「…先生って、妙に鋭いところあるよな。」
そんな大将の言葉に、対策委員会からも同意の声が飛ぶ
「わかる~、おじさんもちょっと怖いときあるんだよねぇ。」
「暗算もそうですが作戦立案も早いですよね、元々の地頭が良いんでしょうか?」
「でもプロの強盗なら勘が鋭いのも納得。」
「"…ともかく大将、俺にはちゃんと払わせてくれ。仕事には正当な対価が必要だ、大人として…な。"」
「先生アンタ…いや、分かった。そんじゃえっと…大盛り100円チャーシュー増し150円で、6050円だ。」
俺は大人のカードを端末にかざす。
すぐに軽快な電子音が響いて、それからレシートを受け取った。
「"また来るぜ、大将。"」
「ああ、いつでも歓迎だ。」
そんな約束をして扉を開ける。
だが俺はトラブルに好かれる運命なのか、つかの間の日常はまた修羅場に変わっちまった。
「…何の音でしょう?」
ひゅるるる…と高く細い音がどこからともなく響いてくる。
生徒たちも音源を見つけようと辺りをキョロキョロ見回している。
だが俺には、その音に覚えがあった。
鉄が風を切る音。空軍所属時代に何度もキャノピー越しに聞いたそれが、今は落とされる側としてそこに響いていた。
「"伏せろ!"」
叫び終わると同時に爆音が響くが、痛みは無い。
ひとまず生き延びたか、だが…爆撃なら後詰めが来る、砲撃なら効力射が来る。
どっちにせよ移動しないとヤバい。
「"皆無事か!?"」
「な、何なのよ一体!?」
「ん、私は無事」
砂塵で視界が悪い中を見回す。
ホシノ、ノノミ、シロコ、アヤネ、セリカ、アル、ハルカ、ムツキ、カヨコ。
よし、全員立ってるな。目立った外傷もない。
「"…おい待て、大将はどうした!?"」
それを聞いて皆が辺りを見回すと、すぐにホシノが悲痛な声で俺を呼ぶ。
俺はすぐにそっちへ駆け寄った。
「先生!こっちに居た、けど…大将が!」
「"クソ…なんで、アンタみたいな良い奴から傷付いてくんだよ?"」
大将はお世辞にも無事とは言えなかった。
モフモフの毛皮はところどころ焦げて、頭を切ったのか額から流れた血が、隻眼の傷跡に沿って涙のように赤いラインを描いていた。
足にも砲弾の破片らしき金属がめり込んでいる、幸い動脈や神経は無事なようだが…大丈夫と断定できる負傷じゃない。
「"ノノミ、大将を病院まで運んでくれ。ホシノは護衛に付くんだ。"」
「分かった。けど…残りの子たちと先生はどうするのさ?」
「"攻撃してきた奴を特定して叩く。"」
「無茶だけはしないでくださいね?」
「"分かってる"」
そうして2人を見送った俺は、便利屋に予備のインカムを差し出す。
「"もう
「当然よ、相手には大将を傷つけた『お礼』をしなくっちゃね。」
「"…アウトローとして、か?"」
「人として、よ。」
「"…良い返事だ"」
俺はシッテムの箱を出し、アロナに声をかける
「"アロナ、砲撃元の位置は分かるか?"」
≪いま弾道と監視カメラ映像を解析中です…出ました!シッテムの画面に表示します!≫
思ったより近いな、大通りのど真ん中。
開けた地形に堂々と陣取るって事はそれなりの大部隊か、余程戦闘に自信のあるバカか…まぁ良い、やる事は決まってる。
砂塵も晴れかけてるし、そろそろ効果判定が終わるはず、そうなったら次は効力射が来る。流石にキヴォトス人でもヤバイだろうし俺なんか死にかねない。
「"移動するぞ、付いてこい!"」
「「はい!」」「ん!」「ええ!」「オッケー!」「「分かった」わ!」
統一感ねえ返事だな…いや生徒の個性が出てて良いと思うべきか。
数分前…
着弾予定地から200メートル、眼下に柴関ラーメンを見下ろすビルの屋上。
着弾と共に巻き上がる砂塵が晴れ、私は再び双眼鏡を覗き込んだ。
…居ない、着弾時には間違いなくそこにあった手配生徒の姿はおろか、先生とアビドス生の姿すら無い。
急いで無線機のPTTボタンを掴む。
「
≪探せゲイザー1-1、近くにいるはずだ。≫
「今やってます!」
だがいくら見回しても、私の目には崩壊したラーメン屋とその周囲が映るばかり。
あれだけ目立つ緋色のコートも影すら掴めなかった。
夢中になって眼下の街を眺めていると、また通信が入った。
≪ハンマーヘッドよりゲイザー1-1、
「ネガティブ!どこにも見えません!」
≪…ならば発見しだい報告し、ッ何だ!?≫
無線越しに爆音が聞こえてくる。
一瞬の間を置いて今度は遠くから、それも本隊の方角から。
「ハンマーヘッド、何があったんです?ハンマーヘッド!?…クソ、応答無しか」
私は急いで本隊の方へ向かった。
先生の先導で大通りに到着すると、予想外の部隊がそこに居た。
規模もそうだけど、彼女たちの制服には嫌というほど見覚えがあった。
「風紀委員会…なんでここにいるのよ!?」
「"なんだ、知ってる連中か?"」
「ええ、私たちがゲヘナ学園の所属だって事は言ったわよね?」
「"ああ、言ってたな"」
「あそこに居るのは風紀委員会。ゲヘナ学園の、治安維持組織よ。」
それを聞いた先生は呆れたような困ったような、なんとも微妙な顔を見せる。
「"他校の自治区に大部隊投入したあげくに民間の店に砲撃…キヴォトスじゃ珍しくねえのか?"」
「そんなワケないでしょ…」
カヨコの言う通りだ、暴挙もいいところである。
だがその直後、先生の表情は今現在の状況にはとても似つかわしくない形に歪んでいった。
…笑っている。こんな時に、心底楽しそうに笑っているのだ。
「"なるほど…そうかそうか…ソイツは良い。"」
私が憧れたアウトローとは似て非なる、あまりにも根源的な暴力性をひしひしと感じるその笑顔に私は寒気を覚えた。
「"言い訳を向こうから用意してくれるなんて、最高じゃねえか…遠慮なく叩き潰せる。"」
「―――ッ」
それから先生は、ポケットに突っ込んでいた何かを私たちに寄越した。
薄いそれを受け取ってみると、紋章の刺繍されたいわゆる部隊章。白地のワッペンに青いシャーレの
ご丁寧に安全ピンが付属している、
「"肩とか袖に着けとけ、お前らは今からシャーレ直下の臨時部隊になる。"」
「…何か考えがあるのね?」
「"ドンパチの事なら、いつでも考えてる。"」
「…っ」
その獰猛な笑みに、私は息を呑む。
生え際も後退して、深くシワの刻まれたその顔はお世辞にも爽やかとは言い難く。
かえってソレが生み出す渋みと、対照的に輝く瞳、なによりその奥に覗く『凄み』に魅入られてしまった。
ああ、この人こそが、私の探していた人物。
本物のアウトローだ。
俺はひとまずインカムを着けてシッテムとペアリングする。
それからインカムに搭載されたカメラで見えるように風紀委員の方へと視線を向ける。
「"アロナ、見える範囲で幹部クラスの人間は?"」
≪えーと…先頭でライフルを担いだ、銀髪にツインテールの生徒は分かりますか?≫
「"あの生脚出してる褐色のか?"」
≪彼女は銀鏡イオリ。ゲヘナ学園の2年生で、風紀委員会の切り込み隊長です。≫
切り込み隊長…か。よく見りゃ銃も
ボルトアクションのストックに近接戦闘用のアクセサリ、やけにチグハグな装備だが。
≪それから部隊の少し後方なのですが…≫
「"チナツじゃねぇか、そういやゲヘナ所属っつってたか。"」
≪はい、彼女は元・救急医学部でしたが、現在は風紀委員会の所属です。≫
面倒くせえ…ここに来て話せそうな相手が見つかるとは、すっかりドンパチの気分だってのに。
………まぁ仕方ねえ、生徒にお手本見せるのも大人の仕事って奴だ。まずは口先を回すか。
俺はスリングを掛け、一旦銃を背負う。そんで正面から堂々、風紀委員会の方に歩いていった。
「止まれ!何者だ?」
先ほどアロナと話題にあげた生脚の生徒―――イオリがこちらに銃を向けて呼びかける。
俺は片手を挙げ、もう片手でIDを示した。
「"連邦捜査部だ、お前らゲヘナ学園風紀委員会で間違いないな?"」
「連邦捜査部だと…?」
「イオリ、ストップです!銃を下ろしてください。」
こっちの声が聞こえてたのか、後方からチナツが前に出てきた。
「"よう、こんな所で会うとはな。ビルの奪還作戦以来か?"」
「はい、お久しぶりです。」
「チナツ、コイツのこと知ってるのか?」
イオリが横槍を入れてくる。
どうやら俺の事は知らんらしい、シャーレの知名度もまだ高くはないな…
「連邦生徒会長が設立した超法規機関、シャーレの先生ですよ。」
「…え?」
「"ご紹介にあずかった『先生』こと、トレバー・フィリップスだ。"」
「えっと…銀鏡イオリだ。」
イオリが銃を下ろす、敵意は無いと思ってくれたらしい。
…いかん順調すぎる、交渉で終わっちまいそうじゃねえか、誰か引っ掻き回しに来い。
俺はドンパチがしてえんだよ!大将の仇も討たせろ!
「ところで…先生はなぜここに?」
「"生徒とラーメン食ってたら砲撃されたから文句言いに来た。"」
「「え…?」」
2人が首を傾げる。
んでチナツは気まずそうな雰囲気で目を逸らし、イオリに至ってはこっちを睨んでやがる。
強気なのは結構だが、まだ状況が分かってねえらしいな…
「"お前らはなんでここに来た?"」
「ええと…ですね。」
ああクソ煮え切らねえ反応ばっかしやがって…こっちはお気に入りのラーメン屋が粉砕された上に大将までケガ負わされて気が立ってんだよ…!
「"分かってねえみてえだから、もっと具体的に言ってやろうか?他所の風紀委員が何の為に、砂と廃墟しかねえクソ田舎の限界集落まで出向いたか聞いてんだよ。"」
「な…っ、何なんだアンタ、急に偉そうにして!」
「"実際偉いんだよ!与えられた権限だけ見ればな!"」
「お、大人げないこと言いやがって!」
「"こっちも急に砲撃されてキレたいのを抑えて穏便に話してんだよ、質問に答えやがれ!"」
次第にヒートアップする俺たちだったが、突如割り込んできた声が質問に答えた。
≪それについては、私からお答えしましょう。≫
「"…誰だ?"」
≪初めまして先生。私は風紀委員の行政官を務めております、天雨アコと申します。≫
イオリとチナツの間に慇懃な笑みを浮かべた生徒が一人、ドローンから投影されたホログラフィック越しに立っていた。
「"連邦捜査部のトレバー・フィリップスだ…それで、さっきの砲撃はどういう事だ?"」
≪…我が学園で手配中の不良生徒を捕縛するためです。≫
「"不良生徒?"」
≪便利屋68です、先生もご存じでしょう?≫
あいつら手配中だったのかよ…まぁアウトロー目指してるとか言ってたし、あまり驚かんが。
「"…悪いがアイツらは今、俺の指揮下に入ってる。手を引いてもらおうか"」
≪あら、それは困りましたね。こちらとしても大部隊を動員して空手で帰るワケには行きませんし…≫
「"じゃあどうする?シャーレとやり合うか?"」
≪お…お言葉ですが、戦力差をお考えになった方がよろしいかと思いますよ?≫
「"俺は一向に構わねえけどな、的は多い方が楽しいだろ。"」
≪…いま、風紀委員たちを『的』とおっしゃいましたか?≫
「"それはお前らの決定次第だな、そっちが仕掛けてくるなら的になるぞ。"」
そろそろアコの堪忍袋も限界そうだな、顔色がホログラム越しでも分かるぐらい真っ赤になってやがる。
そのままキレて仕掛けてくれりゃ良いが…もう一押しかね。
「"そもそもお前、本当に風紀委員かよ?"」
≪…はい!?どういう意味ですか!?≫
「"その風紀の対義語みてえな服装は何だよ?何で誰もツッコまねえんだよ!?"」
≪はああああ!?いきなり何を言い出すんですか!?≫
「"まずスカートが短ぇ!そしてなぜ首輪を付けてんだ!?そのカウベルも意味が分からん!"」
≪先生!ちょっといい加減に…≫
「"あと横乳をしまえ!"」
≪〜〜〜ッ!!黙って聞いていれば!総員構え!≫
よしきた!行政官にしちゃチョロいな、助かるぜ。
俺はスリングを掴み、ショットガンを構え直す。
「"シャーレ各員、戦闘用意っ!"」
こうして風紀委員と俺達の戦端は開かれた。
大将を病院に届けた後、私はインカムから聞こえる戦闘音に冷や汗を流しながら皆のもとへ走ってきました。
途中で何か連絡を受けたホシノ先輩が離脱してしまいましたが、私一人でも居ないよりは良いはずです。
そうして辿り着いた先では―――
「痛い…いたいよ…」
「うう…た、委員長…たすけ…」
「きゅう・・・」
ボロボロの風体で転がる風紀委員たちと、その中心で戦闘を繰り広げる2人の姿でした。
一人はもはや見慣れた、ジーンズにくたびれた白Tシャツ姿の先生。
そして対峙するのは…ゲヘナの制服を纏った褐色の肌に銀髪が特徴的な生徒。
「"射撃のセンスは良いが、格闘はまだまだ甘いな!ストックの刃は飾りか!?"」
「言ってろ、この…ッ!」
一発貰えば実質負けという綱渡りだというのに、先生は楽しそうでした。
そんな光景を前に呆然としていたら、いつの間にか私の隣にアビドスの皆と便利屋さんたちが並んでいました。
「ん…おかえり、ノノミ先輩。」
「はい、ただいまです~…アレどうしましょうか?」
「ちょっと乱戦すぎて手が出せないのよね…」
「くふふふ…バイトちゃんの狙撃でも誤射しちゃいそうだもんね?」
「これが本物のアウトロー、地味にえげつない事してるわね…流石だわ。」
言われてみれば、乱戦の最中にも先生は巧妙な立ち回りを見せています。
倒れている風紀委員たちが射線に入るように移動して発砲を躊躇させたり、
接近されれば銃のボルトに砂をかけて不良排除の手間を強いたり、
「うわ…痛そう…」
髪の毛を掴まれて空中機動を乱された褐色の生徒が背中から地面に墜落すると、追い打ちとばかりにショットガンの銃身を持ってハンマーのようにお腹を…流石に先生を止めるべきか迷いますね。
一緒に見ていたカヨコさんもお腹を押さえていました。
「"ほら立てよ、さっきまでの威勢はどうした?"」
「アンタ…本当に先生なのかよ……」
「"生徒なら手加減してもらえると思ったか?生憎俺は男女平等主義でな。それに純粋な力だけなら俺より強いだろ、それに銃で死ぬ事もない…油断しすぎたな。"」
「……クソっ!」
あの子はそう吐き捨てて立ち上がろうとしましたが、限界が来たのか膝から崩れてしまいました。
先生は疲れたような、でもどこか満足そうな表情でショットガンを背負いました。
「"チナツ、ケリは付いた。手当てしてやってくれ。"」
「え、えっと…」
「"どうしたんだよ、お前もやるか?俺は構わねえぞ"」
「いえ、遠慮しておきます…」
ふぅ―――暴れた暴れた、さすがにハッチャケすぎたな。
イオリを筆頭に叩きのめした風紀委員たちをチナツに任せ、俺は再びアコに向き直った。
「"さて、自覚あるか分からねえから言っておこう。お前はシャーレに対して武力を行使したわけだ。だが…ここで手を引くなら不問としよう。どうだ?"」
«そ、そんな…後詰めまで全て、殲滅…なんて…»
「"おーい、アコ?"」
«2個大隊ですよ…?たった6人に、先生に至ってはヘイローも無いのに、どうして…»
その時、目の前の部隊ともアコとも違う声が横槍を入れてきた。
「風紀委員がアビドスに居ると聞いてみれば…この有様はなに?」
«…っ、委員長!?»
「"ほう…噂の委員長さんのお出ましか、こんな可愛らしいお嬢さんだったとはな。"」
想像してたより小さい、本当に子供のような見た目の彼女は…すっっっごい面倒くさそうなデカい溜め息をついた。
「…貴方が、先生?」
「あぁ、連邦捜査部のトレバー・フィリップスだ。」
「ゲヘナ風紀委員長の空崎ヒナ…よろしく、先生。」
「"こんな騒がしい出会いで悪いな"」
「全くね…それでアコ、この状況はどういうこと?」
ヒナはシナシナと擬音が聞こえてきそうなほど疲れ切った様子で肩を竦めたあと、カミソリじみた殺気を込めてアコを詰めにかかった。
«えっ…と…こ、これはですね…»
「"混乱してるなら俺が先に話してやろうか?"」
«いえ結構です!先生は黙っててください!»
負けた割には威勢のいい事で…いや八つ当たりか?
«わ…私は指名手配犯である便利屋68がこちらに居るとの情報を受けて、その確保のために兵力を動員したまでです。»
「なら先生とやり合ってるのは何故?」
«先生がよりによって便利屋に味方したんです!あげく私の服装を面と向かって!公然と!侮辱してきたんですよ!?»
「……」
ヒナが名状しがたい表情になってやがる。
そりゃ擁護の余地ねえよな…いくら部下だからって、あの服だもんな。
「"おい待て待て、シレッと大事な部分を省いてんじゃねえ。
確かに便利屋を狙ってたんだろうが、そのために俺のお気に入りのラーメン屋に無警告で砲撃ブチかまして、民間人まで巻き込んでんだろうが!脳みそに行くはずの栄養を横乳に奪われたのかテメエは?"」
«あなたまた…»
「ちょっと黙っててアコ…先生、それは本当?間違い無いのね?」
「"あぁ、柴関ラーメンって店だ。直前まで便利屋と俺と、そっちのアビドス高校の生徒が居てな…全員その場に居た。"」
「まさか、先生も砲撃に巻き込まれたの?」
「"まさかもクソも無え、死にかけたぜ"」
それを聞いたヒナの雰囲気が、圧力が急激に増していく。
ヘイローがヒビ割れて、紫色の光が鈍く零れ落ちる。
マジギレだ…多分アコに対してなんだろうけど、目の前でやられるとこっちも冷や汗モンだ。
「アコ…私がそっちに帰るまでに覚悟を決めておきなさい。」
«ひ…ッ!?»
「 返 事 は ? 」
«は、はい…ッ»
ひー怖え怖え…戦闘力だけの奴なんかキヴォトスならごまんと居るが、こういうカリスマも有る子が一番怖えな。
とか考えてたらヒナがこっちに向き直った、と言っても先程までの圧は影も無いが。
そして俺達の前まで歩み出ると、深々と頭を下げてきた。
「今回のアビドス自治区に対する無断兵力運用、先生への攻撃、そして民間施設への破壊行為について…ゲヘナ風紀委員長として正式に謝罪する。」
「"…分かった。シャーレからは不問としよう、部下の躾に苦労してんのは他人事じゃねえしな…アビドスは?"」
「ん…いま代表が不在だから何とも…」
そういやホシノが見当たらねえな。
「"ノノミ、ホシノは一緒に戻ってきてねえのか?"」
「えっと…何か電話を受けたあと、別行動になっちゃいまして…」
そんなやりとりをしていると、丁度ホシノが現れた。
死屍累々の戦場跡には不釣り合いな、いつもの緩い調子で。
「うへ~、こりゃまた凄い事になってるね。」
「小鳥遊、ホシノ…?」
「ん?おじさんの事知ってるの?」
ヒナがホシノの姿を見るなりそんな反応を示した。
「昔情報部にいたから、当時の要注意生徒は把握してる。」
「うへ、昔の話だよ…ちょっと照れるね。」
「…ずいぶん変わったようね。」
昔のホシノか…そういや事情ありげな感じはしてたな。
「総員撤収、引き上げる。」
「「「了解!」」」
ともかく、これで問題は落ち着いた…かな。
まぁ久しぶりに大暴れできたし良しとしよう、いや良くねえ、柴関の復旧どうすっか…とりあえず大将の見舞いに行くか。
「あと先生…最後に1つ。」
「"ん?"」
「カイザーはアビドス砂漠で何かを探している…それが何かは分からないけど、知っておいて損は無いと思う。」
「"…そうかい、情報どうも。"」
アコの衣装にツッコミを入れて怒らせる
☐昨日の友は今日の敵
トレバーの攻撃でチナツを倒す
☑命中率 71%
☑ミッション時間 04:08
余談ですが本当にドンパチが起きてイオリの前座とばかりにテントが消し飛ぶまで、ハンマーヘッドは先生が目の前にいる事を知りません。
ホログラム越しに無駄話してないでちゃんと情報処理しろよアコ