Grand Theft Archive:Kivotos 作:火焔茸
トレバー節の再現度はまだまだです。
リンの話を聞くに、どうやらキヴォトスの中でも規模のデカい学園から来た生徒だったらしい。
そんな事よりも脳天にブチ込んだはずのユウカと、フルオートでハチの巣にしたハスミが起き上がってきた時はゾンビかと思ってぶったまげた。
キヴォトスの住民は銃で撃たれたり、それこそ爆弾で吹っ飛ばされても気絶で済むらしい。
殺しちまったかと思ってたから安心したが、よく考えなくても異常すぎる。
とはいえ、勘違いで手を上げたのは事実なので二人に謝罪はしておく。
「"すまん!"」
「いえ…その、先生もまだここの常識には慣れてないでしょうし…」
「"だとしても、ぶっ放したのは事実だ。いつか埋め合わせはさせてくれ。"」
「でしたら後日パフェ…いえ、その話は後にしましょう。」
パフェ?その程度でいいなら安いもんだが…本当に気にしてねえのか。
しかし頑丈ってレベルじゃねえな、キヴォトスでは銃が大して珍しくねえのも納得だ。
とにかく、逸れた話題を本筋に戻すべくリンが口を挟む。
「…まずは現状をお伝えしなくてはなりません。」
「"このお嬢さん方は、キヴォトスで起きてる混乱とやらの責任を問い詰めるために来たんだったな?"」
「そうよ!リンは連邦生徒会の首席行政官なんでしょ!
数千の学園自治区が混乱に陥っているのよ!?この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました。」
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています。」
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」
思ったよりひでえな…しかも話のスケールがデカい。
コイツらは『学園』とか『生徒会』とか言ってるが、やってる事はまるっきり『国家』と『政府』だ。
「"おいおいおい、次から次へとトンデモねえ情報が聞こえるな。
特に最後はすげえな、2000%増…つまり平常時の21倍の違法武器流通だろ?"」
「ええと…はい、そうなります。」
「こんな状況で、連邦生徒会長は何をしてるの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」
「…連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと行方不明になりました。」
「「「「「…!」」」」」
「結論から言うと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。
認証を迂回できる方法を探していましたが…先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした。」
「"じゃあ今はあるんだな?"」
「はい…先生、貴方こそがフィクサーになって頂けるはずです。」
「"俺が?"」
「…先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。」
俺は知らねえぞそんな話、人を呼んでおいて失踪とかふざけてんのか会長さんよ?
「連邦捜査部『シャーレ』…
単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすら可能で…」
小難しい言い回しすんのやめてくれ…レスターとか
「各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です。」
「"マジかよ最高だな!!"」
前言撤回、最高だ!
「…コホン、なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかはわかりませんが…。
シャーレの部室はここから約30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます。」
「"つまり連邦生徒会長とやらの置き土産を取りに行けばいいわけだな?"」
「はい、先生をそこにお連れしなければなりません。」
そこまで話したリンはポケットからスマホを取り出し、誰かに連絡を取る。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど…」
≪シャーレの部室?ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?≫
すげえ、なんだその映画でしか見ねえようなホログラムは。
ピンクの髪を二つ結びにした娘の姿が浮かび上がる端末を見ながら、俺は通信の内容を聞き続ける。
「大騒ぎ?」
≪矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの、そこは今戦場になってるよ。
連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?≫
色々と事情が繋がって来たな。
まず連邦生徒会長が失踪して、そのせいでキヴォトスは大混乱。
闇市場に激増した違法兵器が不良…要はギャングに回って治安が悪化したうえに、部室とやらを襲ってる連中にも渡ってんだろうな。巡航戦車の出所も多分ソレだ。
≪それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事な物でもあるみたいな動きだけど?
まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な…あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!≫
通信が切れた。まぁ食事は大事だからな、邪魔するのも失礼だろ。
…いや、リンがキレかけてんな。笑顔だが俺には分かる、怒ってる時のママと同じ笑い方だ。
「"大丈夫だよ…お、俺はちゃんと協力するから…"」
「ええ…そうですね…ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです。」
リンは顔を上げると、さっきまで詰め寄ってきてた4人をキッと見据えた。
そんで急に飛び火を喰らったユウカが素っ頓狂な声を上げた。
「…えっ?」
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう。」
「ちょっと待って!ど、どこに行くのよ!?」
七神リン についていけ。
銃声と硝煙の匂い、そして爆発音。
あれから私たちは、戦場の真っただ中にいました。
不良生徒 を倒しながら 目的地 へ向かえ。
「どうして私たちが不良と戦わなきゃならないのよ!」
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから…」
「それは聞いたけど…!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私が…!」
チナツさんは冷静に不良生徒へ応戦していましたが、ユウカさんはこの状況に納得がいっていない様子で、ずっとピリピリした空気を纏っていました。
彼女の愛銃『ロジック&リーズン』をフルオートで掃射しながら、毒づくユウカさんに先生が呼びかけます。
「"ユウカ、一つ教えてやる。"」
「え?な、なんですか?」
「"人の上に立つなら、人がついてくる奴になれ。ナマケモノに部下はつかねえぞ"」
「先生…」
先生は不思議な人で、口は悪いですが物事の核心を突いた事を言ってくるタイプに見えました。
ですが銃撃戦の最中に人柄を探る余裕などある筈も無く、ユウカさんの全身に弾丸が殺到してきました。
「いっ、痛っ!痛いってば!!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」
「"痛いで済むなら良いじゃねえか!俺が喰らったらケガしちまうぞ!"」
「だったら何故一緒に前線に出てきてるのですか!?というかそのショットガンはどこから!?」
全くです、拳銃一発ですら当たり所次第では死にかねないとも聞いていたので驚きました。
ハスミさんが呆れるのも分かります。
「"さっきお前が撃ち抜いたスケバンのだな!それよりハスミは狙撃に天性のセンスがあるな、良い腕だ"」
「あ、ありがとうございます…」
しかも銃の出どころは追い剥ぎでした。
本当に信用して大丈夫なんでしょうか…
あれから数分間、ずっと不良たちを蹴散らしながら進軍してきましたが、先生の戦闘能力は驚くべきものでした。
「"
置き去りになっていた工事車両を拝借して不良の固まっている所へ突進した挙句に、追い打ちとばかりにその車を爆破したり。
「"
口汚く叫びながらも、正確に次々と頭を打ち抜いていったり。
「"
掴みかかってきた不良に頭突きをお見舞いして、そのままミニガンを奪ったり…
どこかで軍事訓練を受けたか、数えきれないほどの実戦経験が無ければ説明が付かないレベルの暴れっぷりでした。
「"スズミ、右の路地に閃光弾をブチ込め!"」
「はい!」
「ふ、フラッシュバン!」
「早く隠れ、ぎゃんっ!?」
「"カバーに必死で牽制もできねえか?背中がガラ空きだぞ素人め!"」
しかも戦闘中に出してくる指示は的確なもので、先生の指示通りに行った攻撃は確実に効果を挙げていました。
いつもより戦闘がやりやすかった気がします。
本当に、不思議な人です。
「もうシャーレの部室は目の前よ!」
俺たちは戦闘を潜り抜け、無事に目的の建物へと辿り着いた。
と、そこへリンから通信が入る。
≪今、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました。≫
「"仕事が早いなリン、聞かせろ。"」
≪ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。
似たような前科がいくつもある危険人物なので、気を付けてください。≫
「"だったら逃げられるような所に入れとくんじゃねえよ"」
≪…ええ、ごもっともです。≫
矯正局を含め、色々と問題のある体制なのが察せられるな…リンに関してはここで下手な言い訳をしないだけ良しとするか。
さっさと地下に置いてあるっていうブツを回収しねえとな。
「うーん…これが一体なんなのか、まったく分かりませんね。これでは壊そうにも…あら?」
地下室に到着すると、仮面で顔を隠した女が部屋を漁っていた。
「"ようお嬢さん、アンタも生徒か?"」
「あら、あららら…あ、あぁ…」
「"あら、あららら…何だよ、ア行とラ行しか喋れねえのか?"」
「し、し…」
「"サ行も使えるのか、良いぞ。その調子で喋ってみろ!"」
「失礼いたしましたーーーー!!」
「"グッジョブ!完璧だ!!!"」
…どっか行っちまったな。
と、入れ違いでリンが合流してきた。
「お待たせしました…何かありましたか?」
「"いや、大した事じゃねえ。"」
「そうですか。ここに、連邦生徒会長が遺したものが保管されています。
…幸い、傷一つなく無事ですね。」
そう言ってリンは、タブレット端末のような物を俺に手渡してくる。
「"コイツが会長さんの…置き土産ってか"」
「はい、連邦生徒会長が先生に遺したもの…『シッテムの箱』です。」
どっか聞いたような名前だな…どこで聞いたか思い出せねえが。
「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からないものです。
製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みの全てが不明。」
要人から託された、謎に包まれた機械か。
ロンかレスターあたりが聞いたらアホみてえな面で食い付きそうだな。
「連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生のもので、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。
私たちでは起動すらできなかった物ですが、先生なら起動させられるのでしょうか、それとも…。」
「"……。"」
…
Connecting ToCrate of Shittem…
システム接続パスワードをご入力ください。
パスワードだと?知るわけねえだろうが。
…と思ったが、何故か脳裏に言葉が浮かぶ。
こういう直感は従うべきだな、そのまま入力してやる。
……。
接続パスワード承認。
現在の接続者は Trevor Philips 、確認できました。
『シッテムの箱』へようこそ、
生体認証および認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.A.に変換します。
本当に合ってるとは思わなかったぞ…
切り替わった画面には、半壊した教室が映っていた。
それと机に突っ伏して居眠りぶっこいてる幼女。
…呑気に寝言吐いてんな、カステラにミルクだと?甘いもんにはコーヒーだろ。
とりあえず頬をタップしてみる。
≪うへ…ひへ!?≫
起きたか、メインOSにしては間抜けな声だな。
≪んにゃ…んもう…ありゃ?……せ、先生!?≫
「"そうだな、そういう事になってる。"」
≪この空間に入って来たということは…トレバー先生!?≫
「"そうだって言ってんだろうが、お前は誰だよ?"」
≪あ、そうですね!まずは自己紹介から…≫
幼女はコホン、と咳払いをしてから改まった調子で口を開く。
≪私はアロナ、この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!≫
≪やっと会う事ができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!≫
「"なるほど、夢の中でカステラ食いながら待ってたんだな。"」
≪あ、あうう…も、もちろんたまに居眠りしたこともあるけど…≫
「"良い、良いんだ。また居眠りしてたら起きるまでカステラを口に詰め込んでやる。"」
≪えぇ!?それは…ちょっと…≫
「"遠慮すんなよ、ずっと待っててくれたお礼さ。"」
≪普通に起こして欲しいです…≫
「"HAHAHA…まぁよろしく頼む。"」
≪はい!よろしくお願いします。≫
≪まだ体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが…≫
≪これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね!≫
無邪気な笑顔で健気に手伝おうとしてくるのは、昔のトレイシーを見てる感覚だ。
≪そうだ!ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います。≫
≪うぅ…少し恥ずかしいですが、手続きだから仕方ないんです。こちらの方に来てください。≫
≪さぁ、この私の指に、先生の指を当ててください。≫
そう言って差し出された人差し指に、俺の人差し指を合わせる。
≪うふふ、まるで指切りして約束するみたいでしょう?≫
「"昔ダチが見せてくれた映画に、こんなシーンがあった気がすんな"」
≪実は、これで生体認証の指紋を確認するんです!≫
≪画面に残った指紋を目視で確認するのですが…すぐ終わります!こう見えて目はいいので!≫
そう言ってアロナは画面を凝視し始める。
が、すぐに眉間にシワが寄って、目付きが悪くなってやがる。
≪はい、確認終わりました!≫
「"ちゃんと見えてんだろうな…?"」
≪え、はい…!ちゃんと登録できましたよ。≫
「"だったら、仕事にかかろうぜ。"」
≪了解しました!現在の状況を教えてください。≫
「"ああ、まず連邦生徒会長とやらが―――
―――なるほど、先生の事情は大体わかりました。≫
「"そもそも、会長ってのが何者なのかも知らねえけどな"」
≪うーん…私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが、連邦生徒会長についてはほとんど知りません。≫
≪彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも…お役に立てずすみません。≫
「"気にすんな、そうアッサリ見つかる気もしねえからな"」
≪…ですが、サンクトゥムタワーの問題は私がなんとかできそうです!≫
「"素晴らしいね。やってくれ、アロナ!"」
≪はい!サンクトゥムタワーのアクセス権限を修復します、少々お待ちください!≫
お、電気が点いたな。
≪Admin権限を取得完了…先生、サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました!≫
「"よくやったアロナ、これで一安心だな。"」
≪あとは先生が承認さえしてくだされば、制御権を連邦生徒会に移管できます。≫
≪でも…大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても…≫
「"やらせとけ、政治とかシステム屋なんて俺のガラじゃねえ"」
≪分かりました、これより権限を連邦生徒会に移管します!≫
これで俺の仕事は終わりだな。
背後でリンが内線の受話器を置いたのが聞こえる。
「サンクトゥムタワーの制御権確保が確認できました。
これからは、連邦生徒会長が居た頃と同じように、行政管理を進められますね。
お疲れ様でした先生、キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会長を代表して感謝いたします。」
「"ああ…お疲れさん"」
「ここを攻撃した不良たちと、停学中の生徒たちについては、これから追跡して討伐いたしますのでご心配なく。」
「"討伐ね…ドンパチなら俺も誘ってくれよ"」
「え?…まぁ、はい、シャーレのお力を借りることもあるかと思います。」
「"そうだ…いつでも来い"」
「それでは『シッテムの箱』も渡しましたし、私の役目は終わったようですね。
…あ、もう一つありました。連邦捜査部『シャーレ』をご紹介いたします。」
「"そうか…カステラあるか?"」
「え?ああ、おそらく一階のコンビニなら…」
Tと初めて遭ったソラちゃん、クッソ震えてそうですね(他人事)
2024/6/8追記
誤字報告いただいた部分を修正しました。
情報提供ありがとうございます。