Grand Theft Archive:Kivotos 作:火焔茸
来たる強盗決行の日。
砂塵舞うアビドス高校、その一室に6人のアウトローが集結した。
「"さぁ…お嬢さん方、準備は良いな?"」
俺は愛用のショットガンを片手に問う。
服装も普段のジーパンとシャツではなく、どこにでもいる市民のような目立たないブラックスーツの装い。
その下にはソフトアーマーも着込んである、散弾や拳銃弾ぐらいなら致命傷にもならねえ。
「当然でしょ!カイザーの奴ら、目に物みせてやるわ!」
「オペレートと後方支援はお任せください。」
「ふふ、楽しくなってきましたね~!」
「おじさんも頑張るよ~」
「あはは…」
各々、自分なりに覚悟を決めた様子だな。
俺とホシノは事前に用意した2台の車に分乗してブラックマーケットへと向かった。
目的地 へ向かえ。
走りながら、インカムでホシノに呼びかける。
「"今のうちに無線の最終テストだ、聞こえるかホシノ?"」
≪うへ、バッチリだよ。 先生はどう?≫
「"良く聞こえるぜ。"」
≪それで、襲撃地点に付いたら覆面被って待機だっけ?≫
「"そうだ、それとブラックマーケット内ではお互いコードネームで呼び合うのを忘れんなよ。"」
無線の傍受や目撃者の証言から身元が割れるのを防ぐために偽名やイニシャルで呼び合うのは犯罪の常識だ、だが今回は対策委員会の要望で
映画かぶれの
車を走らせる事2時間、ブラックマーケットでも特に居住者の少ない地区にたどり着いた。
カイザーPMCの巡回ルートから目の届く廃屋の1つに目星を付けると、俺は犬の着ぐるみを被った。
アビドスの倉庫に眠っていた文化祭資材だったが地味に完成度が高く、遠目には完全に獣人市民だ。
「"さて…一芝居と行こうぜ。"」
その一声を合図に俺の率いる「
メンバーは俺、アヤネ、セリカ、ファウストの4名。
残りはホシノをリーダーとした「
予定通りなら、コッチはもうすぐカイザーが来る頃だな。
この仕事は楽で良い。
半ば廃墟と化したブラックマーケットの一角を歩きながら、ぼんやりと周囲を見渡す。
「今日も異常なし…か、退屈なもんだな。」
「俺だって銃の腕買われてPMC入ったのによぉ、これじゃ窓際族と変わんないぜ。」
「楽で良いじゃねえか、散歩してりゃ金が出るんだ。」
不満げな同僚たちを適当に宥めながら歩いていると、廃屋の1つに人影が見えた。
「…おい、あそこ見てみろ。」
「こんな所に市民だと?」
「怪しいねぇ…」
「はぁ…マニュアル通りいくぞ、まずは声かけだ。」
近づいてきた足音に気づいたのか、その犬市民が振り返る。その手には小包があった。
ただの小包ではない、透明なラップにくるまれた白い粉末…一種の確信をもって、銃を向けながら問う。
「おい貴様、ここで何してる!?」
銃口を突きつけられているにも関わらず、犬はピクリとも表情を動かさない。
当然だが更に警戒を強めた、だがそのせいで、背後から忍び寄る殺気に気づくのが遅れた。
「ぅぐ…ッ」
「が…ぁ!?」
後頭部に衝撃が走る、同時に隣からもう1人の悲鳴が聞こえた。
「なっ…あぎゃ!」
残った一人が振り返り銃を向けるが、今度は犬市民が取り出したショットガンで背後から殴られた。
倒れ伏し意識を失う間際、犬市民は
「"よくやった『
ホシノにスイッチしろ。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・
≪"こちらTチーム、ドレスコードはバッチリだ。"≫
「ん、こっちは待機中。到達予定時刻まで180」
「うへ、おじさんたちも仕事にかかろうか。」
「静かに終わらせよう。」
そう言ってシロコちゃんがいつもの銃にサプレッサーを取り付ける。
普段使っているサプ風のフラッシュハイダーではなく、ちゃんと機能する減音器だ。
私もショットガン用のサプレッサーを取り出し、他の銃に比べて大ぶりなそれを銃口に装着する。
「では作戦通り、私が囮として立ちますね~、お二人は隠れててください。」
「ん。」
「おけ~」
ノノミちゃんにサプレッサーを入れてきたケースを預ける。
こんな路地裏に金属ケースを持った生徒が1人、文句なしの不審者だ。
「ふんふんふ~ん♪待ち伏せに~丁度いい場所はどこかな~?」
「楽しそうだね、『
「そういう『
「…銀行を襲うのは夢だったから。」
「うへ~、将来が心配だよぉ…」
軽口を叩きながら腕時計を確認する、もう間もなくターゲットが到着する時間だ。
「おっと、そろそろ来る時間だね…気を引き締めよう。」
それから1分経たないうちに足音が聞こえてきた。
聞いた感じ3人、『
「おい、そこのお前!ここで何してる?」
「あら~どちら様でしょう?」
そして狙い通り、ノコノコと『
訓練を受けたPMCだというのに、全員が同じ人物に注目して背後がガラ空き…なんともお粗末な連中だ。
私は『ブルー』とアイコンタクトを交わし、音を立てないように物陰から這い寄る。
L3でステルスモード
左に立った奴の無防備な後頭部へまず一撃、同時に右側の奴に『ブルー』も発砲。
「ん!?な、なんだ貴様らは「えいっ♧」ふべらッ!」
残った1人も素っ頓狂な断末魔を上げて崩れ落ちる。
どこで拾ったのか、クリスティーナの手には建築などに用いられるスレッジハンマーが握られていた。
「うへ~『クリスティーナ』、それは流石におっかないよ…」
「ん、でも確実に仕留められる良い選択。」
「『ブルー』も『トリシャ』から良くない影響受けてないかな~?この作戦が終わったらお説教だねぇ。」
なんて冗談も言い合いながら、私たちは和気藹々と追い剥ぎに興じるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・
ブラックマーケット最大の規模を誇るカイザーグループ、その直系金融機関たるカイザーバンクの前に6人の兵士の姿があった。
黒塗りのバンから降りて物々しい雰囲気でバンクの裏口へと向かい、先頭を歩く俺が守衛に声をかける。
「"オクトパス7 到着した。"」
「予定は5分後だぞ、早すぎるんじゃないか。」
「"道が空いてたモンでな、荷物の準備ができてねえなら待つぞ?"」
「…こっちだ、付いてこい。」
守衛のロボ市民はゲートを開き、兵士たちを案内する。
…なんの疑問を抱くこともなく、それはもう面白いほどにすんなりと。
正直に言うと、PMCの装備がフルフェイスじゃなかったら俺のニヤケ面でバレる所だった。
「コイツが荷物だ。」
「"…確かに受け取った。"」
他のメンバーが差し出された現金満載のジュラルミンケースを受け取る間、俺は目録に目を通す。
間違いない、アビドスからの入金とヘルメット団への資金援助、ざっと見た感じだと他にも色々とヤバそうな取引が載っているのが分かる。
車 に乗れ。
「"…全員乗ったな、行くぞ。"」
目的地 へ向かえ。
「オクトパス7、到着した。」
「…あ?お前らさっき来たじゃねえか、忘れモンか?」
「何を言ってる?荷物はどうした?」
「だからさっき渡しただろうが!」
「おい、ふざけてるのか!?俺達は今着いたばかりだぞ!」
「いや…待てよ、まさか…!」
車を走らせること数分、俺たちは無事にT.P.I.の検問に辿り着いた。
助手席のウィンドウを開け、『ファウスト』が応対する
「検問です、すみませんが車の中を調べさせて頂きます。」
「えー?こんな所で検問なんて、急だなぁー」
「"ブフォっ"」
すげえ棒読みすぎて笑っちまった。
いくら茶番だからってお前…
「おい、これはなんだー?」
「しまったー、それは強盗の…あっ」
「いま強盗って言ったなー?タイホだー!」
「わーにげろー!」
「"ぶはっ!お前ら……ちょっといい加減に…"」
ユルい…ユルすぎる…!もう半分フザけてるだろ…
ともかく、作戦通りに検問担当の目の前に書類を落としてから車を急発進させる。
それから監視カメラや住民の目撃情報をあえて残すため、覆面も忘れずに被る。
「おまえら待てコラー!!」
無事にT.P.I.の車両も追って来た。
普段の訓練からは想像も付かないレベルでやる気のねえ射撃が飛んでくるのがミラー越しに見える。
≪…さーて、おじさん達は住民の眼につくように適当に撃ってればいいんだっけ?≫
「"そうだ、賑やかしだから適当でいいぞ。弾もある程度は温存しとけ"」
「ん、了解。」
車から身を乗り出して『ブルー』と『ファウスト』が射撃を開始。
『クリスティーナ』の銃はデカ過ぎるしとりあえず車内で待機だ。
もう一台は…『ランペル』と『ドリーマー』がぶっ放してんな、運転手の『ギーク』もちゃんと付いて来れてる。
このままブラックマーケットを抜けるまでドライブと行こうじゃねえか。
…なんて呑気に思ってたんだが、ここで横槍が入った。
「先生、何か来てる。」
「"何かって何だよ?"」
振り返ると、T.P.I.の追跡以外にもう何台か車が追ってきていた。
そんでボンネットに塗装されたロゴには嫌というほど見覚えがあった。
「"おいおい、カイザーPMCじゃねえか。嗅ぎつけるのが早すぎやしねえか!?"」
≪『トリシャ』、どうする?≫
「とりあえず車をオシャカにしてやるべき。」
「で、でも車両が相手じゃ私たちの銃は火力不足ですよ!」
「"落ち着け『ファウスト』、ハチの巣にできる奴がそこに居るだろが。"」
俺は運転しながら、ミラー越しに『クリスティーナ』を指さす。
「"テイルゲートを開けりゃ撃てるはずだ…落ちるんじゃねえぞ。"」
「なるほど…お任せください!」
そうして開け放たれたテイルゲートから7.62mmの雨がカイザーの車両に降り注ぐ。
鉛の弾頭が次々と車体に穴を空け、先頭車両がエンジンから黒煙を吹いて路肩に停止する。
なおも続く電動ノコギリにも似た銃声をBGMに、俺は運転を続ける。
「"よし良いぞ!そのまま全部ブっ潰せ!"」
「まだまだ行きますよ~♧」
そうして走る事数分、カイザーPMCの最後の一台だって時に『クリスティーナ』が弾切れになっちまった。
「"マズいな、俺が向こうの車に飛び移って全員やっちまうか!?"」
「ダメ、落ちたら危険すぎる」
「そ、そうですよ…先、じゃない『トリシャ』さんはキヴォトス人みたいに丈夫じゃないんですから!」
「"なら他に案でもあるのかよ!?"」
俺がそう言うと『ファウスト』が背負っていたバックパックから何かを取り出した。
「誰か車の窓を撃ち破ってください!これを投げ込みます!」
「"HAHAHA!!容赦ねえな!"」
「ん、最高のプレゼントだね。」
「まだ12月は先ですけどね♧」
それは手榴弾を芯にして、釘を混ぜ込んだ可塑性爆薬で固めた物体だった。
最後の車両が爆炎とともに分解し乗員を放り出すのを見届けた俺達は、作戦通り意図的に減速したT.P.I.を振り切って無事にブラックマーケットの郊外へと辿りついた。
橋を渡った先で一旦車を止め『ファウスト』に分け前を渡した後、残りの金をケースごと捨てた。
覆面を外し、
「"さて…後は自治区に帰るだけだな。"」
「うへ~お疲れぇ、みんな。」
「ん、楽しかった。」
「そうだっ、このあと打ち上げでもしませんか?」
「良いけど…お店どこにするのよ?」
「うーん…柴関ラーメンが無事なら良かったんですが…」
「あはは…それじゃ私はお暇しますね…」
「ん!ヒフミも仲間、だから来るべき!」
全く、気が早いな。
まぁ初めての強盗だ…達成感やら解放感やらは格別だろう。
と、そこでホシノが皆の輪を離れて俺に寄ってきた。
「これでカイザーに踏み込む口実ができたんだよね?」
「"ん?あぁそうだ。T.P.マーセナリーからのタレコミって体で連邦捜査部が動ける。"」
「それなら…頼みがあるんだ、先生。」
珍しく真面目な雰囲気のホシノだ、久々に見たな。
「"…言ってみな。"」
「踏み込み捜査のメンバーに対策委員会を入れて欲しい。」
最初からそのつもりではいたんだが…
「"理由は?"」
「先生のおかげでここまでこれた、でもこれは元々アビドスの問題。
…だから、始末をつける時は私もそこに居たい。」
なるほど、何か企んでんのかと思ったが杞憂だったな。
「"…ホシノもそういう顔できたんだな。"」
「…へ?」
「"俺はな…ロスサントスでは人を裏切るクソ野郎を何人も見てきた。
肝心な時に使えねえ半端な奴も、最初からどうしようもねえ生粋のクズも。"」
ホシノは黙って聞いていた。
「"それから…どんなに困難な仕事もやってのける本物のプロもな。"」
「…!」
ロスサントスで過ごしたあの頃の記憶。
何度も仕事に付き合ってくれた
愛すべきアウトロー共が脳裏に浮かんでは消えていく。
今回の強盗で実感した。
この世界も、多分本質は変わらねえんだな。
クソッタレなことに俺の本質も変わってねえが。
「”お前らは最初から連れて行く気だったぞ。"」
「そっか……ありがとう、先生。」
「"礼はいい、誇っとけ。"」
ホシノは照れ臭そうに笑って、結局いつもの気の抜けたツラに戻っちまった。
「うへへ…先生も打ち上げ来る?」
「"
誰にも怪しまれずに銀行から荷物を受け取る
☐地獄行きのお客様は乗り換えです
カイザーPMCの車両に飛び移ってそのまま奪う
☐命中率 21%
☑ミッション時間 21:48
はい、更新が随分と遅れてしまい申し訳ないです…が、作者は無事です。生きてます。
リアルの多忙がシャレにならないレベルなもので、もうしばらく更新頻度が落ちるものと思われますが気長にお待ちください。