Grand Theft Archive:Kivotos 作:火焔茸
確かにゲヘナは治安が悪いとは聞いていたが…
「"コイツはどういう事だクソッタレ!?"」
道中の腹ごしらえで立ち寄ったバーガーショップが爆破されるのはいくらなんでも予想外だった。
もちろん俺の注文したチキンバーガーとポテトもオシャカになった。
「これでまた、食を冒涜する不届きものを減らせましたわね。」
「"なるほどテメエの仕業かクソガキ!俺のチキンバーガーが消し飛んだだろうが!"」
立ち込める土煙をかき分け、瓦礫を乗り越え、なんとか店の残骸から這い出た俺は、満足げなツラで爆弾らしきスイッチを持つ銀髪の生徒にキレ散らかす。ついでに足元に一発発砲しておく。
だが当の本人は悪びれもせず、さも自分が正義ですと言わんばかりの態度を崩さねえ。
「あら、貴方…この店で食事を済ませようとしていたのですか?」
「"じゃなきゃ店の残骸から出てこねえだろうが!?"」
「しかし店員の態度も最悪でしたし、致し方ない措置かと思いますよ?」
「そうそう!パンもパサパサで、肉もソースも味気なかったよ!?」
「まぁ、食べる直前で吹っ飛ばされたのはお気の毒だけどね…」
それどころか、俺がここでメシを食おうとしていた事が異常とでも言いたそうな態度ですらあった。
何時の間にか集まって来た生徒たちもコイツに同調していやがる、約1名ほど同情されてるがもはや誤差だ―――そこまで考えて、ふとポドストロマの助言を思い出した。
「"もしやお前らか…美食研究会ってのは"」
「あら、私たちをご存じで?」
「"ある筋から聞いた話だがな、ゲヘナで活動してると"」
商品やサービスの質が悪いと見るや否や、見境なく爆破するテロリストとも聞いてるがな!
「"なぁお前ら…気に食わねえ店を消し飛ばすのは構わねえが、他の客が逃げる時間ぐらい残したらどうなんだ?ええ?"」
「逃げる時間…ですか?」
銀髪の生徒は俺の発言が意外だったような、そんなツラで聞き返す。
「"そうだ…お前らがこれから騒ぎを起こすと分かってりゃ、俺もバーガー掴んで逃げられただろうが。"」
「ですが…「"それに、だ"」……まだありますの?」
「"俺はキヴォトス人と違って頑丈じゃねえんだ、運が悪けりゃ死んでたかもな?"」
「……え?死んで、た…?殺し…?そんな…」
それを聞いた銀髪は、急に青ざめていく。
「"自覚なかったか?生身の人を爆破したら普通は死ぬんだよ。"」
「そんなまさか…もしかして貴方は…」
「"あぁ、まだ名乗ってねえもんな。知らなくて当然か"」
俺はポケットからIDを取り出し、目の前の生徒たちに見えるように掲げた。
「"連邦捜査部のトレバー・フィリップスだ、知ってる奴からは先生と呼ばれてるが"」
「も、申し訳ございませんわ!そうとは知らず…!」
「ちょっとハルナ!?これ結構ヤバいんじゃないの!?」
「そうですね…先生を爆発に巻き込んでしまったとなると…」
思ったより効き目がありすぎたな…この手のアウトローには、肩書きに物を言わせた脅しなんぞジャブ程度だと思ってたんだが。
いや、連邦生徒会と風紀委員の両方をまとめて敵に回すのが怖いだけか?
「"そう怯えんなって、俺もガキの悪戯に本気でキレるほど『先生』の肩書を軽視してねえから。
俺のチキンバーガーの分、埋め合わせる努力を見せるなら連邦生徒会には黙っとくぞ?"」
もちろん反省の色が無ければボコボコにするだけだが…果たしてどう出るかな?
「そう、ですわね…」
少し考え込む素振りを見せた後、彼女はこう提案してきた。
「私が自信を持ってオススメできるお店を紹介いたします、お詫びの印にお代もこちらが持ちますわ。」
「"なるほど…悪くねえな"」
「お気に召したようで何よりですわ…」
「"だが代金は気にすんな、ガキに奢られる立場じゃねえ"」
「…分かりましたわ。」
そんなわけで、ゲヘナ屈指のテロリストと急遽グルメツアーに出発。
事態も落ち着いたところで、美食研の生徒たちに改めて自己紹介してもらう流れになった。
「私は黒舘ハルナと申します、美食研究会の会長でもありますわ。」
「鰐渕アカリです。よろしくお願いしますね、先生?」
「獅子堂イズミだよ!よろしくね~」
「赤司ジュンコよ…さっきは悪かったわね。」
なんともまぁ…ついさっきまでのテロリストぶりが嘘みてえな、上品なお嬢さんたちだ。
ハルナの案内でたどり着いたのは、都市部と郊外のちょうど境ほどにあるレストランだった。
ゲヘナらしい頑丈な石造りの建物に、看板が下がっている。
「"中々雰囲気の良い店じゃねえか"」
「ふふ、そう言って頂けて光栄ですわ。」
まぁ正直言って落ち着かねえけどな…こういう雰囲気の店はいつになっても慣れねえ。
ハルナたちに続いて店に入ると、スタッフがすぐに現れる。
「いらっしゃいませ、5名様でよろしいでしょうか?上着やお荷物はこちらでお預かりできますが…」
「ではコートをお願いしますわ。」
「先生はいいの?」
「"銃以外に手荷物も無いからな"」
「それではお席へご案内致します。」
スタッフに通されたテーブルにつく。
用意されたメニュー表の装丁やカトラリーの仕上げからも高級感が伺える。
「"さて、何を頼もうか…"」
「お悩みでしたら、お勧めを聞いてみるのが定石ですわ。」
「"なるほど"」
ハルナの提案に乗って、スタッフを呼び止める。
「"少しいいか?"」
「はい、お伺いします。」
「"お勧めのメニューはあるか?」
「はい、本日は『ハーブ薫る牛挽肉のマウルタッシェ』がシェフのお勧めでございます。良質な肉が入りましたので、マウルタッシェに限らず肉料理全般お勧めできますよ。」
「"なるほどな…どうも"」
「ご注文が決まりましたら、またお呼びくださいませ。」
さて、無事にお勧めを聞けたところで…
「"…なぁハルナ、マウルタッシェって何だ?"」
「肉と野菜を小麦粉の生地で包んだものを、スープで煮たものですわ。」
「家庭料理からレストランまで、ゲヘナだと色んな所で食べられていますね。」
「アレンジもいっぱいあってね、隠し味に特別な食材を使っても美味しいんだよ!」
「イズミの『隠し味』は…まぁ、うん…今はいっか。」
―――なんか後半、特にイズミとジュンコあたりが不穏な感じだったが聞かなかったことにしよう。
ともかく、話を聞くにチャイニーズレストランとかで見かける水餃子に近い感じか。
とりあえずメインディッシュはそれにして…いや、前菜やらデザートやらも良く分からんので全部お勧めで注文しよう。
「"…うん、美味いな"」
「お口に合ったようで良かったですわ。」
注文から3分と経たずにサッと届いた前菜を味わう。
見た目には普通のサラダなんだが…シャキシャキとした食感からして鮮度の良いブツを使ってるんだろうか。
ドレッシングの塩分と油分が程よく、シンプルだが味気ない感じはしない。
流石は美食研オススメの店だな…これだけでもそこら辺の不良とは違う、一本筋の通った矜持を持っている爆弾魔だと分かる。
それからメインディッシュ、スープ、デザートと順番に提供される品々を夢中で食って行き、気づけば完食していた。
「"ごちそうさまでした…っと"」
「そういえば先生、ナイフやフォークの扱いに慣れてますのね?」
「"ん?あぁ…昔の仲間が映画のプロデューサーやっててな、会食なんかに付き合わされたことがあんだよ。"」
「えっ、そうなの?」
「もしや有名な方だったり…?」
「"いや、キヴォトスの外だからお前らは知らんだろう"」
そう言うと、ちょっと残念そうに4人は肩を落とした。
そんな雑談もそこそこに俺たちは店を出た、美食研はまだ行く所があるらしい。
…ちなみに会計はそこそこの額だった、雰囲気に違わんランクの店だな。
「"じゃあなお前ら、次爆破する時は吹っ飛ばしたらマズいブツが無えかどうか見てからやれよ。"」
「分かっていますわ、先生もお元気で。」
予定とは随分違う展開になったが、こうして美食研の皆と知り合った俺は本来の目的に戻るべく中央区にある風紀委員会の本部へと向かった。
「だーかーら、委員長は忙しくて会えないって言ってるだろ!」
「"だったら伝言ぐらいしろよ!えぇ!?"」
「どのツラ下げて言ってるんだ!この前さんざんボコボコにした事忘れてないからな!?」
「"そりゃ良かった!もう一回同じ目に合わせてやろうか!?"」
「なんだとこの~~~~~ッ!」
「"さぁどうする?もう一回やるか?ドンパチなら俺はいつでも歓迎だぜ"」
そんな感じで怒鳴り合うこと30分。
この生意気褐色ツインテール、もとい銀鏡イオリは全く俺を通す気が無い事だけはよく分かった。
「"もういい、帰る"」
「…まぁ、足でも舐めるなら通してやってもいいけどな!」
「"………バカ言ってんじゃねえクソガキ"」
結局、ゲヘナの協力を得る事は難しそうだった。
お久しぶりです。
えー…はい、ゲヘナ編だけは次回に続きます。
舐めずに終わるワケねえだろ、ブルアカだぞ!?
【2024/10/05 追記】
いただいた誤字報告1件を確認・修正しました。
ありがとうございます!
オリキャラ「新井ロア」「ポドストロマ」とかの設定について
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