Grand Theft Archive:Kivotos 作:火焔茸
「オイオイオイオイ…マズい、コイツはマズいぞ…!」
俺は焦っていた。
いつもの展開が破られた事実、
彼の性格からして当然の返答を想定できなかった失態、
彼の選択結果が招く結末、
―――それら全てに。
「ポドストロマ、一回落ち着きなよ。ほらお茶でも飲んで。」
「あ、あぁ…すまん」
俺は友人の差し出したマグカップを受け取り、顔面に刺さったボルトを回してマスクを外す。
「ずっと思ってたんだけど、不便じゃない?それ。」
「もう慣れた、それに渡り方からして見た目は選べねえんだから仕方ねえだろ。」
俺のマスクを指さしながら問う友人に、俺はそれだけ答える。
そしてデスクに向き直って、またノートや資料と睨みあう。
…突然、友人がこんな事を言ってきた。
「僕が先生を説得してこようか?」
「…なんだって?」
「風紀委員の子たちに見せつけられれば良いんだろう?」
「そうだ、コイツは必須事項なんでな。」
そう聞いた友人は肩を竦める。
「…ほんと難儀な世界だね、キヴォトスは。」
「そう思うなら帰れば良いじゃねえか、俺のオカンかお前は?」
「放っといたらキミ大ポカやらかすでしょ、前回みたいに。」
「………それを言うのは反則だろ」
「とにかく、先生と話してくるよ。」
「あぁ、頼む」
シャーレに帰ってきた俺は、一旦現状を整理することにした。
デカい作戦になる予定だからT.P.I.各部門のトップを招集して、あと連邦生徒会からも何人か呼びつけて会議開いた方がいいな。
執務室の隣に向かい、今回は真面目に仕事をこなす猫耳に声をかける。
「"アイニ、急なんだが1つ仕事追加させてくれ。"」
「あ、社長~!空けてたの3日そこらだってのに、なんか久しぶりな気がしますねぇ。
私はいつでも大丈夫ですよ、それが仕事ですから!」
「"よし、T.P.I.全部門の主任と、連邦の財務・防衛室長、あと代行のリンも呼んで会議を開く。連絡とスケジュールの調整をしてくれ。"」
改めて思うが…コイツをT.P.I.で拾ってから、シャーレ直属の秘書にしちまって正解だった。
俺と当番生徒だけじゃ書類仕事に拘束されて動けない日がどんだけ有るか分かったもんじゃねえ…
「分かりやした!…にしても随分な豪華メンバーですね?何かあるんで?」
「"カイザーに殴り込む件だ"」
「なるほど!そりゃデカい案件に違いないっすね!」
「"日取りが決まったら教えてくれ"」
「かしこまりー!」
相変わらずな独特なアイニのトークに苦笑しながら部屋を後にし、執務室に戻ってコーラを開ける―――が、協力を取り付けた各校の戦力をリストアップすべくPCを立ち上げたあたりで、ドアの先に気配を感じた。
足音は無かった…となると生徒じゃねえな、また
…だが予想に反して、ドアの先にあった姿は見覚えのない野郎だった。
「初めまして、トレバー先生。」
「"…どちらさんで?"」
そこに立っていたのはポドストロマと似た雰囲気の、だが別の異形。
ところどころ粗削りで錆の浮いた銅像、薄暗い青に染められた着流しを纏ったそれは割れて
『作りかけのまま放り出された芸術品のなり損ない』とでも言うべき姿のソイツは、薄ら寒いアルカイックスマイルを崩さずに名乗った。
「僕は
「"世話してる覚えはねえな、俺がケツ持ってんのは生徒だけだ。"」
「そうだね。でも生徒たちの面倒を見てくれてるのが、彼としてはありがたいらしいよ?」
「"…で、本題は何だ?"」
「単刀直入だね…まぁいいけど。」
そう言って骸笑は肩を竦めた後、改めて話を切り出す。
「トレバー先生、昨日の事は覚えてるかい?イオリが君に言った事だけど…」
「"足舐めるなら通してやるって話か?"」
「そう、ソレだ。」
アホくせえ…もっと重要な話かと思ったのによ。
この時点で話を聞く気が失せてきたが…まぁ、さっき開けたコーラを飲み切るまでは待ってやろう。
「"誰がやるか、仮にも『先生』なんて大層なお名前貰っちまったんだぞ?
そんな男に生徒と足舐めプレイやれってか?"」
「…でも問題はないだろう?」
「"はぁ?問題しかねえだろ"」
「本人が要求したことだよ?無理やり手を出すのとは話が違う。それに…」
骸笑は一歩近づいて、俺の顔を覗き込んできた。
「生徒を救えるのなら、足を舐めるくらい安いものだろう?先生?」
「"………"」
騒ぎを聞きつけた私がエントランスに駆け付けた時、目に飛び込んできた光景は信じがたいものだった。
「ほ…っ、本気で舐めようとする奴があるか!このヘンタイ!」
「"テメエが言い出した事だろうが!守れねえ約束なら最初からすんじゃねえクソガキ!"」
片脚だけ脱がされた状態でジタバタと暴れるイオリと、
その生足を掴んでプロレスじみた乱闘を繰り広げるトレバー先生。
私の目は正気を疑い、私の脳は理解を拒み、それでも手だけが動いていた。
「…もしもしヴァルキューレ?」
このキヴォトスにおいてヴァルキューレが呼ばれる事態というのはそう多くない。
「うーん……事故ではないから、事件…かしらね?」
なんせ事件の大半…というよりほぼ全てが銃撃や暴力なのだから。
「その…シャーレの先生がね?生徒の足を舐めようとしてるのよ」
それならば各自治区の治安維持部隊が出れば済む話ということになる。
「イタズラじゃないわ、そりゃ信じられないかもしれないけど…」
では実際にヴァルキューレが担うのはどんな事案なのか。
「場所?風紀委員会本部の正面エントランスよ」
主に自治区をまたいだ遺失物関連、大規模な組織犯罪、迷子や迷惑行為などの生活安全事案、あるいは…
「通報者は空崎ヒナ…失礼ね、本人よ」
あと痴漢や盗撮といった性犯罪が主である。
場所は移って風紀委員会本部の応接間。
俺は無事に通してもらえたのだが…イオリのおかげで面倒事もセットになった。
「…つまり、イオリが言い出した事なのは間違いないのね?」
「"だからそうだって言ってんだろ…説明すんのコレで38回目だぞ"」
「だって、まさか本気にするなんて思わないだろぉ…」
俺は案内されたテーブルに掛けて、コーヒーを啜りながら何度もことの経緯を説明し、そしてイオリに同意を取るハメになった。
テーブルの対面には委員長のヒナと問題のイオリ、そして隣に…
「あ、じゃあえーと…状況の確認も取れましたし、その…お互いに立件するご意思も無いということなんで…本官はこれでお暇しますね?」
ちょうど今帰っていったヴァルキューレの生徒が座っていた、というワケだ。
「"あぁもう面倒くせえ…"」
「そうよね、ごめんなさい…早とちりで通報なんて…」
「"いや、アレは仕方ない…俺もちょっとどうかしてた…"」
溜息を吐く俺と、謝罪しつつ同意を示すヒナ。
前回は修羅場に突然の登場だったから強烈な威圧感と戦闘力にばかり目がいってたが、改めて話すとコイツからはなんとなく…苦労人のオーラを感じるな。
「"それより本題に入ろう"」
「そうね…前にも一度来ていたのよね?」
「"誰かさんに門前払いされたけどな"」
「う…」
事情聴取の時点で反省文30枚が確定しているイオリに軽く追い打ちをかけてから、俺は切り出す。
「"カイザーの強制立ち入り捜査をシャーレ主導で行うんだが、その為の協力をキヴォトスの有力校から募ってるところでな。"」
「…なるほど、話は分かったわ。」
「"良いね、理解の速い子は嫌いじゃない"」
「でも協力はできない。」
ヒナの答えは単刀直入だった。
「"そうか…なら仕方ねえ、今の戦力で作戦を練るか。"」
「驚かないのね。」
「"トリニティにも似たような事を言われた、あんまり騒ぎたくねえ理由があるんだろ?"」
「…ずいぶん詳しく知っているのね?」
「"難しい話じゃねえだろ。昔っから因縁のあった2つの組織があって、その片方は何やら取り込み中で荒事を渋ってる。
そんでもう片方に顔出してみりゃ、そっくり同じようなお返事ときた…ブッシュとゴルバチョフかお前らは?"」
「ぶ…ごる………何て?」
「"あー…いやこっちの話だ、気にすんな。"」
とりあえず、戦力を提供できる状態ではないらしい、ゲヘナの内部事情やらトリニティとの関連が少し分かっただけでも収穫としようか。
残ってたコーヒーを一気に飲み干し、俺は立ち上がる。
「"コーヒーごちそうさん、そろそろ行くぜ。"」
「ええ、お口に合ったのなら良いのだけど」
「"…俺はお世辞が苦手でな"」
ここに美食研が居なくて良かったぜ。
さて…シャーレに帰ったら作戦会議の日程をアイニと詰めなくちゃな。
「これで良かったの、ポドストロマ?」
「はははは!当然、パーフェクトだ!あぁクソ笑いすぎて腹いてえ…」
「もしもしお巡りさんのキヴォトス版だね、まさか本当に見る日が来るとは」
やっとイオリ回が書けた…予想以上に事案だった。
オリキャラ「新井ロア」「ポドストロマ」とかの設定について
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