Grand Theft Archive:Kivotos   作:火焔茸

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作戦会議の回想と決行当日が入り混じりながらの展開となります。
ブランク空き過ぎて作風変わっちゃってるので、ちょっと読みづらいかもしれないです…


カイザー襲撃作戦 Side:A

相も変わらず砂嵐の吹き荒れるアビドス砂漠。

誰も彼もが見捨てた不毛の地に(そび)える威容、あるいは異様と言うべき施設がある。

自治区の土地という土地を買い占めてまで()()を探し続ける、カイザーの前線基地である。

 

「…この辺りかな」

 

言うまでもないが、基地周辺はPMCを筆頭に監視網が敷かれた厳戒態勢だ。

外周をヘスコ防壁(バリア)*1に囲われていると言えど、それが途切れるゲート周辺はことさら厳しい警戒が為されている。

そんな場所へたった一人で近づく人物があれば、まして彼らが現在進行形で抵抗を受けている学園(アビドス)の生徒であればどのような対応を受けるかは火を見るより明らかだろう。

 

「…っ!?侵入者だ!」

「待って、今の私はアビドスじゃなくてシャーレの…」

「そこを動くな!」

 

もし彼女が目的も正当性もない単なる侵入者であれば、彼らの行動は正しかった。

 

「分隊からHQ!2番ゲートにてアビドス生の侵入を確認した、応援を要請する!」

「まず話を聞いて」

 

そう言ってシロコは上着の懐に右手を入れた。直後、彼女に銃を構えていたPMCから銃撃が飛ぶ。

放たれた銃弾は照準通りにシロコの腕へと吸い込まれ、その手に持った物を撃ち抜いた。

 

「ん…やっちゃったね。」

 

先生(トレバー)代行(リン)直筆のサインが添えられた、捜索差押許可状を。

すぐさまシロコは路上に設置されていたコンクリートバリアの陰に飛び込みインカムを通して指示を出す。

 

「想定通りだった―――ファウスト、やって。」

≪は、はい!≫

 

言うが早いか、遥か遠方の砂丘に隠れた陣地から砲声が轟き、観測射が撃ち上がった。

こうしてシャーレの強制立ち入り捜査…もといカイザーとの開戦の狼煙が上げられたのである。

 


 

時は遡り3日前…D.U.外郭地区、連邦捜査部S.C.H.A.L.E.本部ビル。

普段からこのビルで過ごすトレバーでさえ滅多に立ち入ることのない大会議室にて。

埃を被っていた机たちは丁寧に拭き上げられ、席には学園の重鎮と呼ぶべき面々が居並ぶ、何とも物々しい現場となっていた。

セミナーや便利屋68など多忙あるいは諸事情ゆえに直接出向くことが難しい者はリモート参加の形をとっており、専用のモニタが席に据え付けられている。

トレバーの横に控えた猫耳の生徒『泰松アイニ』は腕時計を一瞥し、マイクのスイッチを入れた。

 

「さてさて…皆々様お揃いで!リモート参加のお(あねぇ)さん方も、聞こえは良ござんすか?」

 

丁寧ながら珍奇な口調は相も変わらず、しかし参加者に会議始めの時分を伝えることはできたようだった。

リモート参加者たちは各々返答を返してくれる。

 

「こちらセミナー代表の早瀬です、ちゃんと聞こえます。」

「便利屋も問題ないわ!」

「ユウカ先輩~!なんで私だけ反省室から参加させられてるんですか!?」

「それは今回の議題に関係ないわよコユキ、大人しく聞いてなさい。」

「うぁああユウカ先輩の鬼!悪魔!ふともも妖怪!」

 

…若干1名ほど不満の声は上がっているが、無事に黙殺された。刑期が延長されない事を祈るばかりである。

ともかく、会議が始まれば()は長ったらしい挨拶や口上を述べるタイプではない。

礼もそこそこに、早速本題を切り出すのだった。

 

「"お集まりいただき感謝するぜ…早速だが本題に入ろう。"」

 

トレバーが手元のシッテムの箱をタップすると、モニターに地図や防衛設備の諸元といった資料を次々に映し出す。

それらが示すのは当然―――

 

「"カイザーコーポレーション本社、およびアビドス砂漠のPMC基地。

連邦捜査部S.C.H.A.L.E.はコイツらに強制立ち入り捜査を行う。"」

 

ブリーフィングに入った瞬間、普段の荒っぽい口調・態度とは少し違った軍人じみた雰囲気で、トレバーは事の次第を説明していく。

 

「"先日のブラックマーケットにおける強盗事件に対処した民間警備会社『T.P.マーセナリーズ』より提供された押収品から、カイザーが無学籍生徒を中心とするギャング『ズタズタヘルメット団』に対して資金提供を行っている疑いがある。

このズタズタヘルメット団以外にも、既に解散した『カタカタヘルメット団』の元メンバーから同様の行為に関する証言が得られた。"」

 

そしてアイニも適宜、補足を加える。

 

「『ズタズタ』と『カタカタ』に共通する点として、カイザーコーポレーション傘下企業『カイザーローン』の債務者であるアビドス高等学校に対して武力攻撃、あるいはその準備行為を行っている点が挙げられやす。

これを受けてシャーレは担保を目的とした債務者に対する組織的妨害の可能性を視野に入れて大規模な捜査を行う…ってのが今回のお話ですわ。

既に連邦生徒会から捜索差押許可は取ってありますんで、後はなにとぞ皆様をシャーレ指揮下に置かせていただきたく!」

 

当然だが、事前に話を通してあるため誰からも異論は無かった。

トレバーは予定通り、具体的な作戦会議に入っていく。

 

「"コイツは強t…じゃねえ、普通の作戦とはワケが違う。

踏み込む先の見取り図はねえし、事前の下見なんてもっての外だ…そこで、捜査を手段ではなく目的にしてやろうと思う。"」

 

…当然この説明で理解できる訳がなく、全員が首を傾げる。

 

「…先生先生、それじゃ皆さんに通じやせんって。」

「"ちゃんと説明するっての。

…あー、まぁ要するにだ。情報機器とか武器兵器を片っ端から押収して、ついでに本社ビルの見取り図も作っちまおうって話だな。ついでにサーバーとか社内の基幹システムも把握しておきたい。

そうすりゃ武力でいつでもカイザーを潰せるようになるし、そもそも資産を巻き上げられたらアビドスにかまけてる余裕は無くなる。"」

 

そう、作戦の最終目的は地位や影響力、安泰な生活をいつでも消し去れる…そのトリガーを握ることで無理を通せる力関係を築くこと。

FIBが汚れ仕事をマイケルに押し付けた時と同じやり口である。

だが、そこで便利屋68の参謀カヨコが口を挟む。

 

「でも先生、カイザーがそこまで素直に従うとは思えないけど?」

「"当然だな、むしろそこが本題だ。"」

 

トレバーは地図をズームアウトし、カイザー本社ビルとPMC基地の周辺までが移るようにモニターを調整する。

―――そして、議事録用に用意しておいたレコーダーの電源を切った。

 

「"当然カイザーは抵抗してくるだろう。

武力行使も『部下の暴走』と言っておけば対外的な言い訳が付くんだから、自分らが勝てば済む話って事になる…

つまり俺たちの本当の任務は踏み込み捜査じゃねえ、抗争(ドンパチ)だ!"」

 

トレバーは腕を広げて笑う。

当然、会議に参加していた面々はざわめき立った。

 

「思いっきりぶっちゃけたわね…」

「ふふふ、でも先生らしいです。」

「にはははっ!せっかく反省室から出れるんですから、そのぐらい面白くないと!」

 

「…だと思った。」

「ふっ、最後は鉛弾で解決…アウトローらしいじゃない。」

「その割には背中が汗びっちょりだよ~アルちゃん?もしかしてビビってない?」

「よ、余計な事言わなくていいのよ!」

「だ、大丈夫です!頑張って全員消し飛ばします!!」

 

「ん、火力は説得力と同義。」

「うへ~、シロコちゃん過激ぃ~♪」

「いや呑気に言ってる場合ですか!?カイザーと真っ向からやりあうんですよ!?」

 

「………………あはは」

 

そんな現場をよそに、トレバーは現在協力を申し出た戦力を示すアイコンを地図上に配置していく。

アビドス基地には対策委員会、便利屋68、そしてファウスト率いる砲兵隊。

ブラックマーケットの本社ビルにはトレバーとC&C、T.P.マーセナリーズを配置した。

 

「"アビドス砂漠の前線基地に向かう部隊をチームA、ブラックマーケットの本社に向かう部隊をチームBと呼称する。"」

「先生、私たちは?」

「"チヒロ、お前らヴェリタスとコユキはチームCだ、チームA,Bを電子戦で後方支援しろ。

…と言っても俺はハッキングなんぞ専門外だからな、シャーレに残るか現地に来るかは任せる。"」

「ならチームAに付いてくかな…先生の方はシッテムの箱を経由すれば電子戦もイケると思うから。オーパーツみたいな性能のAI積んでるって話でしょ?」

「"ああ、なるほどな…分かった。向こうは頼んだぞ。"」

 

ハッカー達の配置も決まったところで、トレバーは再び盤面に向き直る。

 

「"まずはアビドス基地の作戦から説明しよう。

まず初めにコイツが捜査である事を伝えて貰う…じゃないと抗争の正当性が無くなるんでな。

この役目はシロコ、お前に任せる。"」

「ん、了解。注意点は?」

「"できる限りコソコソしてるように見せろ、お前も含めて全員にシャーレの部隊章を渡すが、付けてる事を悟られるな。"」

 


 

「ごブへぁ!?」

「砲撃か!?掩蔽壕だ、掩蔽壕に行け!」

「いててて…偵察ドローンも要請しろ!砲撃陣地を特定するんだ、急げ!」

 

時は戻ってアビドス基地。

観測射がゲートへ着弾したのを目前で確認したシロコは、再び通信を飛ばす。

 

「目標変更、東北東に350メートル。無風だから修正してそのまま効力射お願い。」

≪分かりました!えぇと…弾道計算ってどうするんだっけ?≫

「…大丈夫かな」

 

微妙に不安な返答の後、しばし睨み合いが続く。

そしてシロコが一向に動かないのを訝しんだPMCの1人が遮蔽から顔を覗かせる。

だが彼らの想像とは真逆、6時の方向から響いた。

 

「…おい、冗談だろ!?」

「ほ、本部に直接…!」

 

そう、彼らの背後に控える本部基地を中心にある程度ばら撒くように照準をずらしての砲撃が降り注いだのである。

しかも先ほどの観測射と異なり、今回は全門斉射である。

さらに問題なのは………

 


 

「砲弾の供与…ですか?」

「"そうだ、T.P.I.で試作しているブツがあってな。ファウストにはそれを試して欲しい。"」

「それは分かりましたが…どんな物なんですか?」

「それは私から説明しよう。」

 

と、横から別の生徒が顔を出した。

セミロング程度の長さにしてはモフモフとボリュームのある金髪が目を引く生徒だ、連邦生徒会を含めたどの学園とも異なる錆赤色(オキサイド・レッド)を基調とした制服に長身を包んだ彼女は、より鮮やかな赤色の双眸でファウストを一瞥し、そして一礼。

 

獅子頭(ししがしら)サナだ、T.P.I.兵器生産部門の主任を務めている。どうぞよろしく。」

「あ、はい!あじt…ファウストです、よろしくお願いします…?」

「さて、試作弾頭の話だったな。

あれは私が設計から生産まで全てを主導した虎の子でな、口径は105mmだからトリニティで採用している砲にも合うはずだ。

肝心の中身だが…『サーモバリック榴散弾』という代物だ。空中で炸裂して複数のサーモバリック弾と榴弾を広範囲に降り注がせるものだが…攻撃範囲に特化させすぎて、対人だとオーバーキル気味なのが問題か。」

「それはまた、なんとも…」

 


 

サナの目論見通り、砲撃が齎した鉄火の嵐は先ほどまで健在だった施設の大半を瓦礫の山に変え、ひときわ高い司令塔も土台を抉られ倒れていくところであった。

 

「ん、これで指揮系統は壊せたはず。」

 

シロコは愛銃『ホワイトファング465』のコッキングハンドルを引く。

そして作戦は第二段階へと突入した。

 

アルにスイッチしろ

 


 

「いよいよ出番ね…!」

 

砲撃の着弾を見届けたアルは、担いでいた『ワインレッド・アドマイアー』を握りなおす。

 


 

「"便利屋には別動隊として戦ってもらう。"」

「え?普通に全員で押し通った方が良いんじゃないの?戦力は分散しない方が良いって聞くけれど。」

「"それは間違いじゃねえがな…相手は大所帯だ、つまり連携されると厄介になる。

それなら二正面作戦で場を混乱させた方がいい。"」

 

アビドス基地の地図を見ながら、トレバーは便利屋のコマを対策委員会とは反対側のゲートに置く。

その指示を聞いたアルは疑問を呈するが、返答を聞いて納得した様子を見せたのはカヨコだった。流石参謀と言うべきか。

 

「なるほど、砲撃で最初に司令部を吹っ飛ばすのも指揮系統を破壊する為だね。」

「"そうだ、それにお前らはヒナ抜きなら風紀の大部隊ともやり合えるのは、この前の一件で知ってるしな。いくらPMCとはいえ前線に詰めてる程度の数には押し負けないだろ?

そうやって戦場が真逆に2か所出てきたら、増援に来れる連中はどうする?"」

「どっちに行くべきか司令部に命令を乞うよね。」

 

ここまで話が進んで、ようやくアルも全てが繋がったという様子で手を打った。

 

「…そっか、その時には命令するはずの司令部がメチャクチャになってるから、どっちに行ったら良いか分からずに合流が遅れるのね!」

「"そしたら戦力は分散して前線から司令部まで順番に各個撃破…ってわけだ。"」

「先生は凄腕のアウトローなだけじゃなくて、戦略にも詳しいのね…」

「"前にも言ったと思うが、元空軍だからな。基礎的な教育は受けてるんだ。"」

 

結局会議が終わるまで、キラキラした目で見つめるアルであった。

 


 

「行くわよ皆、突撃用意!」

「「「了解!!!」」」

 

PMC司令部に向かえ

 


 

便利屋・対策委員会の両部隊は、基地の中央部で崩れていくビルを目指して進撃を続けていた。

道中もカイザーPMCとの遭遇戦が途切れることは殆ど無く、それが作戦通りに分散した戦力を貫くように進んでいる証左であった。

一方その舞台裏では、彼女らの居ないエリアにも精密な砲撃が降り注ぎ、着実に戦力を削っていた。

 

「…命中、我ながら素晴らしい精度だよ。」

「まぁ観測ドローンだけじゃなくて、チーちゃん先輩の『ADOM(エドム)』あっての事だけどね。」

 

砲兵直接指揮モジュール(Artillary Direct Operation Module)―――略称ADOMとは、T.P.I.(サナ)が構想しヴェリタス(チヒロ)によって実装された、高精度かつ高効率の砲撃を実現するツールである。

前線に配備した目標指示装置―――今回はハレの操縦するドローン―――から送信された着弾地点情報を基に、専用の弾道計算コンピュータが砲の方角・仰角を自動的に決定している。

最終的には砲の操作までも自動化し、前線からの直接指示で砲撃を加える『完全自動の無人砲』を実現する構想であったが、今回は実証実験として砲の角度をトリニティ砲兵隊のメンバーに伝える形での運用となった。

 

「プロトタイプだって言うのに、恐ろしい火力だね。」

「指示したらすぐに撃てるからね…」

 

ハレとチヒロがシステムに張り付いてる間、コタマとマキは砲兵への指示伝達を担当していた。

初撃は司令塔の破壊を失敗するわけに行かないという理由から従来の方法で砲撃し、いざ戦端が開かれて以降もサーバーや電子ロックが見つからない以上はハッキングする対象が特に無いため、こうして好き勝手に実験に興じられるのであった。

 

「よし、もっと撃ち込んでみよう。ログは取ってるからじゃんじゃん行くよ!」

「「「はーい」」」

 

もはやPMCというよりヴェリタスの玩具(オモチャ)と言った方が相応しい有様である、哀れカイザー。

 


 

対策委員会と便利屋が司令部にたどり着いたのは、ほぼ同時であった。

そして砲撃を受けてなお奇跡的に残った、廃墟の足元にあるガレージの扉を開く。

そこにあったのは幹部や役員を送迎する際に使うのであろう黒く塗り上げられたセダンと、壁にもたれ掛かって肩で息をする大柄なオートマタであった。

 

「貴様ら…何をしているか分かってないようだな!ついに自棄になったか!?」

「ん、貴方には見覚えがある。カイザーPMCの理事…そうでしょ?」

「はっ、ここまで暴れてようやく気付いたか!私に手を出せばどうなるか…」

「貴方がカイザーの責任者ならそれで良い。」

 

砲撃の際に傷を負ったのか、バチバチとショートする腕を押さえながらオートマタは凄む。

だがそんな威圧などどこ吹く風といった態度のシロコ、彼女は懐から一枚の封筒―――撃ち抜かれた捜索差押許可状―――を取り出し、宣告した。

 

「何をしてるか分かってないのは貴方のほう、貴方を捜査妨害およびシャーレ人員に対する組織的暴力の主犯として拘束する。」

*1
キヴォトス外の企業が開発・販売する軍事用建材。耐火素材の布袋を金網で補強したもので、中に土砂を詰めるだけで簡単に防弾性を備えたブロック材になる

オリキャラ「新井ロア」「ポドストロマ」とかの設定について

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