ARMORED FRIENDSーLAST BEASTー   作:場末のレイヴン

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ARMORED FRIENDSーLAST BEASTー #1

 

 

 

 

 

 

 

──────

 

「すっごーい!もう歩けるんだね!!」

 

(3歳くらいの子供が母親の陰に隠れる。

獣の耳がついた少女は膝をついて少年をまじまじと見つめる。

 

母親に促された男の子がおずおずと手を伸ばすと、彼女は優しく握り返す)

 

「ちっちゃい手だねー!どこから来たの?」

 

──────

 

 

 

 

 

 

FILE No ------

OPERATION NAME:Armored Friends

Unidentified Organisms CLIENT:None

Tactical Force OPPONENT:None

PLACE:Territory of NAVIS

WETHER:Fair Weather

MISSION START TIME:15:55

ESTIMATED SUCCESS RATE:--%

 

 

【第1話 せんじょう】

 

『・・・〈旧ナービス領〉に置ける情勢は依然混迷を極めています。

突如として飛来した謎の存在〈特攻兵器〉と仮称されるそれは、同地域を一瞬にして火の海に変えました。

 

以降、世界各地で特攻兵器による被害が散見しており、各〈レイヤード(地下都市)〉では所謂「鎖国」を強行し地上との断絶を目指す姿勢が日々強まっています』

 

『この事態を受け、ミラージュ クレスト キサラギの世界〈3大企業〉は共同出資で連合統治機構〈アライアンス〉を設立しました』

 

『アライアンスは3社の技術・インフラ・ノウハウを集結させ、事態の鎮静化を計ると公表。

さらに治安維持のためレイヴンを中心をした〈戦術部隊〉を組織しています』

 

『それと時を同じくとして、同地域に〈セルリアン〉と呼ばれる不明生物が発生し無差別に・・・』

 

 

??「チャンネル変えて・・・辛気臭い」

 

ヘリパイロット「ああ」

 

(逞しく若々しい中年のヘリパイロットがラジオのダイヤルを捻る)

 

 

『ズズz・・・ャータ♪♪褐色・・・人・・・いらくが、4時をお知らせします』

 

(ニュースに文句をつけた小柄な男はパイロットスーツ姿で後ろの座席に座っている。彼は膝に乗せたラップトップで何か文章を打ち込んでいる)

 

??「・・・」

 

(その隣に座っていた長身痩躯の男がノートPCの画面を覗き込む。

ヘリには計3人の男が乗っている)

 

オペレータ「さっきから黙りこくって何を書いてるんだい・・・?」

 

(長身の男はカタカタと打ち込まれる文章を目で追う)

 

『初めまして。

 

シコク・レイヤードから参りましたレイヴンのシュネーと申します。

 

この度はACガレージでの各業務に応募いただきありがとうございます。

慣れない土地での生活でいろいろとご不便をおかけするかもしれま・・・』

 

オペレータ「挨拶の原稿か・・・」

 

シュネー「律儀でしょ」

 

オペレータ「・・・律儀な人は当日に書かないと思うけど?」

 

シュネー「要領が良いと言ってくれたまえ」

 

ヘリパイ「まったく・・・お前は本当にものぐさだな」

 

 

シュネー「新しい人達とやるんだから、あんたもなんか挨拶してよ」

 

オペレータ「分かってるよ、あまりにも仕事が無くて田舎のガレージは引き払ってしまったからね・・・。

こっちでは生きていけるくらいには稼げるといいけど」

 

ヘリパイ「まあ、本物の空があるだけ地下よりも気分はいいか」

 

シュネー「おっちゃんはレイヤードでもいくらでも仕事あったろうに、悪いね」

 

ヘリパイ「そう思うならしっかり稼げ、危険手当も貰うからな」

 

シュネー「はいはいw」

 

(タンデムローターで力強く飛ぶヘリは、白いカラーリングの二脚ACを懐に抱えていた。

 

・・・しばらくして、ずっとその上空を飛んでいた砂漠は終わりを迎える。

砂漠の向こう、西日の照らす平原に3人の目的地 新たな〈ガレージ〉が見え始めた)

 

 

ーーーーーー

 

 

 

ー 旧ナービス領 レイヴンガレージ ー

〔 16:15 〕

 

 

(長旅を終え、ヘリポートの上空にたどり着いた輸送機はゆっくりと高度を下ろしていく。

・・・ある程度の低空に侵入した瞬間、白いACの眼が青く光る)

 

 

『メインシステム 通常モード起動します』

 

 

シュネー「切り離していいよ」

 

(すでに機体に搭乗していたレイヴンがコクピットでサムズアップを作る)

 

ヘリパイ「気をつけろ、連結解除」

 

(低空に放たれた白い巨体はそのまま着地し、二本の脚で新たな家の敷地を踏みしめる。

 

いかにも整備士の格好をした中年男性が既に付近に立っており、誘導灯で合図を送る。

ヘリポートから直ぐのハンガーに入れと手信号で誘導している)

 

シュネー「了解」

 

 

ー ハンガー ー

 

(整備士の仕事場である格納庫の門を潜る白いAC。

巨大を超えて広大ともいえる室内には、明らかにメカニックでは無い人員も立っておりレイヴンの来訪を歓迎する。

 

シュネーはACのカメラ越しにそれを確認すると、入り口から一番近いベッドにACを固定する。

先ほど誘導灯を振っていたおじさんが昇降機に乗り、コアの位置まで上昇する。

 

長旅でくたくたのレイヴンは首後ろのハッチを開き機外に出る)

 

整備員「大事に乗っているみたいだな」

 

シュネー「自慢の愛機です、どうかよく見てやってほしい」

 

整備員「ああもちろんだ」

 

 

(しかしお互いに自己紹介しようかと言うタイミングでコクピット内のスピーカーが振動する)

 

オペレータ『ようやく一息ってところで悪いんだけどヘリまで戻って来てくれるかい・・・?』

 

シュネー「あぁん!?」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー ナービス領 アバクス平原 上空 ー

〔 17:20 〕

 

(再びヘリに接続し空を飛ぶ白いAC。

西日がもう沈もうとする中、太陽を追いかけるヘリはガレージから西に広がる広大な平原を横切る。

 

・・・すでに臨戦態勢のレイヴンはコクピット内で膨れていた)

 

シュネー「折角挨拶準備したのに・・・」

 

オペレータ「まあまあ、終わってからすればいい。

最前線はやっぱり稼ぎ場だね、このままブリーフィングに入るよ」

 

 

(一般的なオペレータは基地施設から指示を出すものだが

ガレージはいまだ通信設備を設置する前だったため、輸送ヘリに同乗して現場に急行する)

 

オペレータ「依頼者はクレスト・インダストリアル、作戦エリアはこの平原に存在する燃料コンビナート。

さっきラジオで言ってたセルリアン?とか言うのがタンクにへばり付いてるらしい」

 

シュネー「ああ・・・まあどうにかなるでしょ、初任給で焼肉だ」

 

ヘリパイ「お前なあ・・・適当が過ぎるぞ」

 

オペレータ「ほんと状況わかってる?人類は未曽有の危機に・・・」

 

シュネー「肉を食わせてやるって言ってんの、いらないの?」

 

 

オペレータ「君の楽観主義はほんとに羨ましいよ・・・w

世間は絶望感漂ってるのに」

 

シュネー「うみみゃあ」

 

(ふざけた様子で一切緊張感のないレイヴン。

長い付き合いのオペ男は一つの結論に到達する)

 

オペレータ「・・・ああ、また夢のあの子に会えたんだね?」

 

シュネー「黙れ」

 

ヘリパイ「夢のあの子・・・?なんだそれは」

 

 

オペレータ「小学生くらいの頃よく言ってたよねw

物心付いたか付いてない頃、なんとかパークで猫耳の少女に会ったって。

たまに夢でその子に会えるってw」

 

ヘリパイ「お前・・・なんか悩みがあるなら言えよ」

 

シュネー「うるせー!!優男と既婚者に話す事なんか無いわ!!」

 

 

オペレータ「(図星か・・・w)でも、絶望に囚われるよりずっといいよ」

 

シュネー「知ったようなことを・・・じゃなくて、あれだな」

 

(ACのヘッドが見つめる先には白い燃料タンクの並ぶプラントがあった。

上空からはその不明生物がどのくらいの損害を与えているのかは図りようがなかった)

 

 

ヘリパイ「真上で降ろす、少し待て」

 

シュネー「被害分が報酬から天引きされるぞ!早く!」

 

ヘリパイ「だから待て、ACが走るよりもこっちが速い。

 

・・・・・・よしいいぞ」

 

(コンビナートの敷地内に到達したヘリは積み荷を手放す。

新品状態のACがシステムを起動し解き放たれる)

 

 

『メインシステム 戦闘モード起動します』

 

 

シュネー「ガスが持たないようなら置いてけ、俺を待つな!」

 

オペレータ「了解だ、君の事だから心配はしてないよ」

 

ヘリパイ「基地からはすぐ近くだ、すぐ戻る」

 

(ACの背よりも大きなタンクが並ぶプラントに降り立つ白いAC。

 

ここまで運んで来てくれたヘリは燃料補給に踵を返す。

シュネーはレーダーで索敵し生体反応が有ることを確認する)

 

シュネー「セルライト・・・ どこにいる?」

 

(燃焼材を燃やし空中に飛び上がる、ヘッドパーツを左右に振り回して現状を確認する・・・。

レーダーを参照し、タンクに連なるパイプの根元に水色の何かがへばりついているのを発見した)

 

 

シュネー「お前か・・・!」

 

(ブースターをポンピングし、蚊を叩く時の感覚でゆっくり空中から接近するとその水色を踏みつけ、踏み潰す。

一瞬水風船を踏むような感覚を覚える。次の瞬間水風船は虹色の立方体を吐き出し消失する)

 

シュネー「・・・これでいいのか?」

 

 

(あっさり過ぎる散り際に放心していると、ACの真後ろのタンクの下に潜んでいた敵が姿を現す。

 

うどん生地のように薄く引き延ばされた紫色が球体に姿を変え、ゲル状の体から細い腕を伸ばしACを殴りつける。

・・・しかし紫の拳は空を切る)

 

シュネー「上です」

 

(既にレーダーで存在を察知していたACは青い噴射炎を上げ空を舞っていた。

最速で振り向いた白い機体は左手のライフルで紫の球体を狙う。

 

密着する燃料タンクを巻き込まないように冷静に狙いを付けていると・・・)

 

シュネー「なっ!?」

 

(・・・と言うが早いか、ヒトガタの何かがタンクの隙間から現れセルリアンに肉薄し素手で殴りつける。

衝撃波が発生するレベルの打撃が球体に直撃し、真後ろの燃料タンクに押し付けられる。

 

ぶつかったタンクの壁面はセルリアンの形に変形しひしゃげる・・・だけなら良かったが直後爆炎を上げる。

セルリアンを殴った張本人もその爆発に巻き込まれてしまった)

 

 

シュネー「・・・」

 

(何も言えないレイヴン。

爆炎に巻き込まれないよう、燃えるタンクから少し離れた位置に着地しそれを見つめる。

 

自動消火装置が起動して消火剤が振り撒かれ、燃え上がる燃料が鎮火される。

やがて黒煙が白煙に代わり全貌が把握できるようになってきた所で、シュネーはそれに気づいた)

 

??「・・・」

 

シュネー「・・・!!」

 

(大規模な爆発に巻き込まれたはずのヒトガタは多少煤けていたが、依然そこに立っていた。

 

そしてその姿はどこか、シュネーが夢で見た少女に似ていた。

 

夢のあの子よりも遥かに大柄で衣装も違う、それでもその頭には動物のものに似た耳が確かに生えている。

黒いブレザーを着たそれは、まるで女子高生のような恰好だった。)

 

シュネー「君は・・・」

 

??「・・・」

 

(その耳付き少女は白いACをキッと睨むと、人間離れしたジャンプ力でコンビナートを離れていく。

放心するレイヴンはそれをただ眺めているしかできなかった)

 

ーーーーーー

 

 

 

ー レイヴンガレージ 通信室 ー

〔 18:10 〕

 

(特等席に座る優男はガレージに戻った相棒を労う。

任務遂行中に通信機材の設置は終わっているようだった)

 

オペレータ「お疲れ様、報酬はすでに振り込まれてるよ」

 

シュネー「・・・」

 

オペレータ「焼肉行くんじゃなかったのかい?w」

 

 

シュネー「・・・あの子がほんとにいたって言ったらどうせ馬鹿にするだろ」

 

オペレータ「はい・・・?」

 

(シュネーはコンビナートで見たものをそのまま説明する。

謎の存在が撃破対象を攻撃したこと、爆発に巻き込まれてもそれは生きていたこと、その頭には獣耳があったこと)

 

オペレータ「・・・冗談言ってる顔じゃないのはわかるけど・・・さすがに承服しかねるね」

 

シュネー「ああ、俺も自分の言ってることめちゃくちゃだとは思う」

 

 

オペレータ「ナービス領・・・この島がその なんとかパーク なら若しくは・・・」

 

シュネー「いや、いいよ。俺のごっこ遊びに付き合わなくて。長旅で疲れてたんだろうな」

 

オペレータ「ごめん・・・馬鹿にしてる訳じゃないんだ、それだけはわかってほしい」

 

 

シュネー「だからいいって」

 

オペレータ「まあそれが事実であろうがなかろうが、君は休んだほうがいい。

食堂があるらしいよ、行ってみる?」

 

シュネー「・・・そうだね」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー 旧ナービス領 東海岸 ー

 

(もうほとんど日が沈み月が光を帯びつつある海岸に、全身が煤けたヒトガタがやってくる。

この海岸には大量の瓦礫が漂着しており、岸までたどり着かなかった瓦礫は水底で小さな岩礁を作っている)

 

??「・・・」

 

(燃料タンクの爆発で酸化し黒く変色した着衣を清めることもなく、彼女は瓦礫の隙間に寝転がる。

ここはとても人間型の生物が休むには相応しくない場所。

 

しかし彼女はここで目覚めた。

気が付いた時に眠っていた場所がここだったから、彼女が一日の最後に帰るのはここだった)

 

??「・・・・・・」

 

(押しては返す波の音だけがこの場所を支配している。

彼女は目をつむる・・・日没と同時に現世と夢が交代する・・・)

 

ーーーーーー

ー ?? ー

 

??「・・・」

 

(彼女はいつもと同じ夢を見る。

内容は単純明快。

 

殴る、ただひたすら殴る。

選んで殴るわけで無く無差別に殴る。

 

セルリアンを、機械を、そして自分と同じヒトガタを)

 

??「ん・・・・・・」

 

(彼女も自分の過去を追体験していると言うことだけは理解していた。

しかし、当時ただ殴っていた時の自分とは違い今は様々な物に意識が行く。

 

殴る対象の周りの景色は平原だったり森の中だったり、過去の自分はいろいろな場所を巡っていたらしい。

しかし、彼女はその言葉こそ知らないものの、それが現実逃避だということはわかっていた。

 

罪悪感、それが起きている間の彼女の体を動かしていた)

 

??「・・・」

 

(白い犬を殴る感触が右手に蘇る・・・)

 

ーーーーーー

 

 

 

ー レイヴンガレージ 食堂 ー

〔 18:30 〕

 

(通信室のすぐ近くに飯屋はあった。

大人数が食事できるように学食のような構造の食事スペースと大きな厨房で構成されているようだった。

 

初日ということで中央に纏められた長テーブルの上に様々な料理が並べられていた)

 

シュネー「おお・・・!こう言うの初体験・・・!!」

 

??「子供が入り込んでんじゃないよ!!」

 

シュネー「うぇっ!!」

 

 

(白髪交じりのおばちゃんがシュネーを怒鳴る)

 

おばちゃん(白)「隣町から来たのかい問題児だねえ!!」

 

オペレータ「いやいやおばちゃん、彼がこのガレージの主だからね」

 

おばちゃん(白)「はぁー!?世も末とはこのことかい!」

 

シュネー「な、なんかもんくあっか・・・ありますか(小声)」

 

 

(声がでかいおばちゃんは機関銃のような勢いでレイヴンを攻める。

そこへ緑がかった黒髪のおばちゃんが間に入る)

 

おばちゃん(緑)「まあまあ、お腹空いてるやろうしそこらへんにせんね」

 

おばちゃん(白)「汚く食い荒らすんじゃあないよ!!」

 

シュネー「うぅぅ・・・ひどい・・・」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー ガレージ上空 ー

〔 翌日 8:20 〕

 

(白いACが接続された輸送ヘリが高度を上げて東に回頭する。

設備を設置し終えた通信室は、やっとこさ無線での双方向通信が可能になっていた)

 

オペレータ『ブリーフィングを開始する。

東海岸に向かうハイウェイを走行中の車列が、例のセルリアンに追われているらしい』

 

シュネー「うわぁそれは悍ましい・・・」

 

オペレータ『彼らは旧ナービス社の関係者、事実上壊滅した同社職員は本社のある〈ベイロードシティ〉から脱出し、この島を出る予定だったらしい』

 

ヘリパイ「世知辛いな・・・俺らとは逆か」

 

 

(ヘリパイロットは方位を確認し、進路をENEに合わせ機体を前進させる)

 

シュネー「ベイロードシティってうちのガレージからも近いんだったよな」

 

オペレータ『ああ、約8キロの距離だね。完全密閉型の街で特攻兵器の最初の襲来からも生き残っている。

便利な場所だから多分アライアンスが再開発するんじゃないかな』

 

シュネー「・・・ええやん」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー ベイロードシティ郊外 ー

〔 8:37 〕

 

(ゴロゴロ転がる青色の球体が互いにぶつかりながらハイウェイを疾走している。

輸送トラックやハンヴィー車がその数100m先を走っており、異常事態な絵面がコクピットのモニタに映る)

 

シュネー「おっちゃん、早く降ろして!」

 

ヘリパイ「まあ待て、今のうちに装備を確認しろ」

 

(FCSが各武装にリンクしており、ホールドオン状態になっていることを確認する。

シュネーのAC〈オーディナリー〉の武装は

 

 右手:重ショットガン 左手:軽ライフル 左肩:中型ミサイル EX:連動ミサイル

 

と言う構成であり汎用性を重視したスタイルを取っている)

 

 

ヘリパイ「・・・いいぞ、行ってこい」

 

シュネー「OK、迎えを呼ぶまで休んでてくれ」

 

(輸送ヘリは車列とセルリアン達の間に積み荷を降ろす)

 

 

『メインシステム 戦闘モード起動します』

 

 

(コクピット内のすべての警告表示が一瞬点灯し、必要なもの以外は消灯する。

ロックオンサイトが武器に合った形に広がり、転がってくる球体をロックオンする)

 

シュネー「粉々の果汁グミにしてやるよ」

 

(レイヴンは軽く啖呵を切るとコントロールスティックの中指トリガーで武器を切り替え頭上のトグルでエクステンションをオンにする。

 

背中のミサイルランチャーが縦に割れ、肩に接続した連動ミサイルがハッチを開く。

そして向かってくる球体マラソン選手のトップランナーをロックオンする)

 

 

シュネー「ん拒否するぅ」

 

(ペダルを踏みこみ軽くジャンプするAC。

機体を低空で滞空させ、右人差し指のトリガーを引くと合計6発のミサイルが放たれる。

 

上から撃ち下ろす軌道で飛翔するミサイルは、回避されることもなく青色の球体に直撃する。

弾頭の被覆がぐにゃりとセルリアンの体に突き刺さり接触信管が起爆する。

 

装甲を破壊するための爆薬は簡単にゲル状の体を焼き尽くし、虹色の立方体に置き換える。

同時に発射された連動ミサイルはターゲットを見失い、地面を焦がして広範囲を爆破燃焼する。

 

後ろに続く3、4体のセルリアンも同様に爆死する。

しかし物量に優れる球体は仲間の死体を乗り越え尚も走る)

 

 

シュネー「だから無理だって」

 

(既に狙いをつけていたACは両手の銃を向けてサイティングする。

お気に入りの重ショとAA緑ライフルのダブルトリガーで撃ち漏らしを撃ち殺す。

 

6発の強力な散弾を浴びせられた球体は体がグズグズになって崩壊する。

散弾銃のマガジンリロード時間をライフルがカバーし、ACの下をすり抜けようとするセルリアンを射撃する。

 

ライフル弾1発では殺せないものの2、3発も撃ち込めば十分殺害可能のようだった。

楽な仕事に頬が緩むレイヴン)

 

 

シュネー(これ・・・意外と金になるかもな)

 

(シュネーはバスガイド気分で低空をバック飛行する。

ゆっくり後ろに飛びながら、ACについてくるセルリアンを射殺していく。

 

弾切れまでには終わるだろうと高を括っていたら、ハイウェイの景色が少し変わる。

ACの数10m後ろに高速道路を横切る歩道橋が掛かっていた。

引っかかる寸前でそれに気づいたシュネーは高度を落としてアーチを潜る。

 

・・・その時だった。

 

球体セルリアンの一体がアーチの欄干に触手を伸ばす、その先端のカギ爪が歩道橋をしっかり掴むと

スリングショットの要領で自分の体を打ち出した)

 

シュネー「な・・・ん・・・」

 

(レーダー上を高速で移動する赤い光点に驚愕する。

一瞬で気を取り直したシュネーだったがかなりの距離を先に行かれてしまった。

 

見た目よりも随分賢いそれは前方の車列に迫ろうとしている)

 

シュネー「ヤバい抜けられた・・・!」

 

(機体を着地させて旋回し前方に向き直ると全力で地上を走る。

・・・が、低空飛行でコンデンサを消費していたACは全力を出し切れない。

しかも天才セルリアンをマネする凡才セルリアンは次々にパチンコ走法を実行しだした。

 

残り10体程度の生き残りはACの真後ろまで肉薄する。

ぼよんと着地し地面を跳ねるセルリアンはその勢いのまま触手を伸ばす。

 

自分を守るためにACは急旋回し仕方なく後ろに振り返る。

コアに装備された迎撃機銃が火を噴き触手を破壊する、が全ては破壊できず

2、3本の触手がACの装甲に食らいつく)

 

 

シュネー「触るな!!」

 

(接触している個体をショットガンで撃ち殺しながらヘッドパーツを旋回させ車列の安否を確認する。

天才セルリアンは車列最後尾のトラックを踏みつけようとしていた・・・)

 

 

シュネー(・・・守り切れない!)

 

(・・・全車両防衛を諦めかけたその時、天才は賽の目に光輝く。

命が燃え尽きたそれはバラバラになり空中に拡散していく)

 

??「・・・」

 

シュネー「あ・・・?」

 

(死んだセルリアンの向こう側に立っていたのは昨日見た耳付きの大柄な少女だった。)

 

シュネー「っ!! ・・・じゃない、離せコラぁ!」

 

(ペダルをベタ踏みし、回復したコンデンサでブースターを吹かして急速後退する。

耐荷重を超えた触手を引きちぎると白いACは左手のライフルを投げ捨てる。

 

コアに格納されていたレーザーブレードを左手に装備し、逃げ出し始めたセルリアンに向き直った)

 

シュネー「覚悟しろ」

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

(ACが残りのセルリアンを殲滅する頃には、例の彼女はすっかり姿を消していた。

それでもシュネーは彼女の姿を探して平原を眺め続けた。

 

気づかない内に迎えのヘリが接続し家路に就く段になっても、彼はそれをやめようとはしなかった)

 

 

ーーーーーー

 

 

 

ー レイヴンガレージ 搬入口 ー

〔 9:55 〕

 

(帰宅したレイヴンはゲートから敷地外に出て、先ほどまで戦っていたハイウェイの方角を眺めている)

 

シュネー(・・・夢でも妄想でも無かった。あれは、あの子は・・・)

 

オペレータ「ここにいたんだ」

 

シュネー「・・・」

 

オペレータ「丁寧なお礼メールが届いてたよ。それから損害0の追加報酬も」

 

シュネー「・・・」

 

 

(心ここにあらずといった顔で遠くを眺める。

間近まで近づいてきた幼馴染にここでようやく気付く)

 

シュネー「・・・あ?」

 

オペレータ「だから、全員無事に目的地に到着したってさ。

君の完璧な仕事にボーナスが・・・」

 

シュネー「・・・完璧じゃない、俺一人じゃ守り切れなかった」

 

オペレータ「なんだって?」

 

(放心状態から解放されたレイヴンは改めてデブリーフィングをする。

意外にセルリアンが手強かったこと、そして昨日の猫耳少女が車列を守り助けてくれたことを共有した)

 

オペレータ「そんなまさか・・・」

 

シュネー「信じなくてもいいよ、別に。俺の頭がおかしくなったのかも知らん」

 

オペレータ「いや、君は正常だと思う。酔ってる時より断然」

 

シュネー「悪かったな!」

 

 

オペレータ「・・・ふふw、また会えるといいね」

 

ーーーーーー

 

 

 

──────

 

 

 

【BGM ♪動物紹介】

 

なーびすちほー じょうほうや エド・ワイズ おにいさん

 

「レイヴンとは何かだと?地上最強の機動兵器〈アーマード・コア〉を駆り戦場を支配する傭兵だ」

 

「一般的にレイヴンは、ガメつく 暴力的で 性格が悪いと言われている」

 

「うっかり依頼主が報酬の増額をチラつかせようモノなら、血眼になって全ての防衛対象を守ったり

何時間でも生体兵器を破壊し続けたり、隅から隅まで嘗め回すように施設を探索したりする」

 

「まあ戦場でなければごく稀に良い奴もいるかもしれないが・・・基本的には近づかないほうがいい存在だ」

 

「アライアンスは敵対的なレイヴンに対し懸賞金を掛けることを検討しているようだ。

金が欲しければ暗殺でも狙ってみたらどうだ?」

 

 

──────

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

ー ハンガー ー

〔 16:33 〕

 

整備員「まずクレーンで上半身を持ち上げろ!それから脚部を交換する、可能な限り急げ!」

 

(忙しなく他のメカニックに指示を出す中年整備員。

その手腕はかなり手馴れており、年季を感じさせる。

 

白いACの上半身にハーネスが取り付けられ、二脚脚部が連結解除される。

その代わりに急ぎでレンタルした最高級フロート脚部が装着される。

 

ベテラン整備員は、整備の様子をぼーっと見ていたレイヴンに問いかける)

 

 

整備員「武器はどうする、このままでいいのか?」

 

シュネー「右手を36砂に、あと格納を両方ポリハンにしといて」

 

整備員「型番で言え!そんな通称知る訳がないだろう!」

 

シュネー「右手を一番普通のスナイパーライフルに、格納にハンドガンのCR-W69Hを二つ入れといて」

 

整備員「了解、フロート脚部は水に浮くが安定性が低い事に留意しろ」

 

シュネー「わかっとるます」

 

 

オペレータ「疲れてないかい?」

 

シュネー「任せろ、この島の平和は俺が守る」

 

オペレータ「大げさなw」

 

シュネー「あっはw」

 

 

整備員「装備の交換はすぐに終わるぞ、搭乗準備しておけ!」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー 旧ナービス領 ガラブ砂漠 上空 ー

〔 17:20 〕

 

(レイヴンはこの島に来て3件目のミッションを受領し現場に向かう。

浮遊機構を持ったACはヘリにより海岸線へ運ばれていた)

 

オペレータ『ミラージュの輸送機が何者かによって撃墜された。

積み荷が海に浮いてるから回収して欲しいってさ』

 

シュネー「さっきも聞いたよ」

 

ヘリパイ「・・・物騒になってきたな、このヘリも他人事じゃない」

 

シュネー「いつまでも飛んでんじゃないよ、俺を降ろしたらすぐ帰って」

 

 

オペレータ『・・・大企業は金払いがいい、昨日今日でもう先月分の収入を上回ってるね』

 

シュネー「どんだけ儲かってなかったんだよww」

 

ヘリパイ「それだけ危険が伴うって事だ。

お前は特にものぐさだからな、ちゃんと着陸地点の安全を確保してから呼べ」

 

 

オペレータ『あんまり沖に出ると通信途絶するから気を付けて。

あとフロート脚に地引網を繋げてあるからそれに積み荷を引っ掛けてね』

 

シュネー「・・・それは聞いてなかったわw」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー 東海岸 ー

〔 17:35 〕

 

ヘリパイ「夕飯時だろうが呼んでいいからな」

 

シュネー「俺がそこまでおっちゃんに配慮すると思う?w」

 

ヘリパイ「お前はものぐさだが気ぃ使いだからな」

 

(目的地に到着。

西日が照らすオレンジ色の海岸は、とても絵になる風景だった。

 

海岸線に無数に漂着しているコンクリの瓦礫は海苔か何かで覆われており

人工物が自然に溶け込む様は何とも言えない哀愁を醸し出している。

 

ヘリとの連結を解除したACは、海岸線に音もなく優しく着地する。

それを確認した輸送ヘリは大きく旋回し踵を返した)

 

 

シュネー「MAP更新、早く終わらせて食堂でご飯食べようかね」

 

(瓦礫まみれの砂浜を進み美しい海に入水する白いAC。

ヘッドパーツのカメラが大海原を眺める。

夕方でも目立つ白いカプセルがいくつか海の上に浮かんでいる)

 

シュネー「・・・」

 

(一言独り言を漏らした後は無言で真面目に仕事をこなすレイヴン。

異常に器用な機体制御で漁業用網を振り回しカプセル回収業務に取り組む)

 

シュネー「・・・ああん!!」

 

(巻き込もうとしたカプセルが波に揺れて回収を失敗する。

真剣に取り組んでいたからこそ声が漏れる。

 

真面目レイヴンはカプセルから少し離れて旋回し、再度トライする)

 

シュネー「・・・」

 

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

 

(回収していく度に網使いが上手くなっていくシュネー。

最後のカプセルを回収する頃には、今日以外に活用することのないスキル経験値が最大になっていた。

 

・・・すべてのターゲットを回収した)

 

シュネー(漁師になれるかもな・・・)

 

(任務を完了したACが海岸に戻る。

最高性能のフロート脚は恐ろしい速度で海上を走り一瞬で海岸に到達する・・・)

 

 

シュネー「・・・んんっ!!」

 

(しかしその時ぐわんと揺れるコクピット。

カプセルを回収した地引網が岩礁に引っかかってしまったらしく、ACは急停止する)

 

シュネー「あーあ・・・根掛かりかい・・・!」

 

(何度か機体を前後させ網を岩礁から外そうとするが深く引っかかってしまったのか取れることはない。

 

それどころか・・・)

 

 

シュネー「・・・嘘だろ?」

 

(海岸線に沿って茂っている林から球体型のセルリアンが湧き出してくる。

しかも1、2体ではなく大群ともいえる群れを構成していた。

 

・・・カプセルを横取りしようとする簒奪者を撃墜するために装備してきた狙撃銃でそれを狙い撃つ。

1匹1射で撃破していくが、芋砂はいずれ袋叩きされる定めだと知っているシュネーは脂汗を流す)

 

シュネー「クッソ・・・36発しかないのに・・・!!」

 

(〇番道路に大量発生するP〇KEM〇Nの如く群がるセルリアンに徐々に追い詰められていくAC。

少しでも数を減らせるように確実にスナイパーを当てていくが、雪崩のような球体の群れは容赦なく海岸のACに迫っていく。

 

両手の銃を打ち切り捨てると、連射性能に優れた拳銃を懐から取り出す。

1マガジンに12発弾丸が入っているそれでセルリアンの群れをハチの巣にする。

 

しかし単機では物量に負けてしまう、弾幕を掻い潜った一体のセルリアンは触手を伸ばしてコアに取りつく)

 

シュネー「触るな!!」

 

(啖呵を切るが身動きが取れない。

昼間に遭遇した天才個体の要領でパチンコのように体当たりを繰り返すセルリアン。

 

ACの装甲に小さくないダメージを与えていく)

 

シュネー「クソが・・・!」

 

 

(体勢を崩され、続くセルリアンもACに触手を取りつかせようとする、その瞬間。

飛び掛かる触手が根元から弾けて空中に拡散する)

 

 

??「・・・」

 

(昨日と今日、2度相まみえた彼女がセルリアンを殴りつけていた。

その姿は明らかにACに加勢しているように見えた)

 

シュネー「助けて・・・くれるの・・・か?」

 

??「・・・」

 

(無言を貫くが、身動きの取れないACを守るように位置取りする謎の少女。

二人は言葉なしに役割分担してセルリアンをせん滅していく・・・)

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

(レーダー上から一つを除き生体反応が消える。

ACを助けた謎の存在は無言でその場を立ち去ろうとする)

 

シュネー「待って!!待ってくれ!!」

 

??「・・・」

 

(海岸線に座り込むACがハッチが開く、シュネーは死に物狂いで愛機から飛び出し浅瀬に飛び込む。

立ち止まった大柄な少女は下を向くが何も答えない。

 

海岸線で尻餅を打ったレイヴンは無理やり立ち上がり彼女に駆け寄る)

 

シュネー「・・・ありがとう・・・二度も助けてくれて」

 

??「・・・」

 

 

シュネー「俺はレイヴンのシュネー、君は?」

 

??「・・・・・・」

 

(しかし彼女は何も答えない。

だが彼を無視してどこかに消えるようなことはしない。

 

視線を泳がせどう反応すればいいかわからないようだった)

 

シュネー「君は・・・口が聞けないのか? お話しできない?」

 

??「・・・」

 

(彼女は彼に向き直るが目を合わせることはしない。

辛抱強く言葉を待つ彼のために何とか発音しようとする)

 

??「・・・・・・・・・わタシ びーすと」

 

シュネー「ビースト・・・?」

 

(俄然彼女興味が湧くシュネー。

あまり怖がらせないようにさらに質問する)

 

シュネー「君はここに住んでいるの?」

 

??「・・・」

 

(小さく頷く、声では何も補足はしない。

しかしこの時間が嫌と言うわけではないのか、その場を離れる様な素振りは見せない。

 

シュネーの質問が終わるまでは付き合ってくれそうな雰囲気だった)

 

 

シュネー「君はどうしてセルリアンと戦うの・・・?」

 

??「わるイこと シた から」

 

シュネー「・・・ごめんなさいって、そう言うため?」

 

??「・・・」

 

(気まずそうに頷く。

確かに、そう言う彼女の両手には囚人を捕えておくための分厚い手枷がはめられていた。)

 

 

シュネー「・・・(贖罪のため、か・・・)」

 

(シュネーはヘルメットを取る。黒髪から大粒の汗が流れ落ちる。

背の高い少女はそれを不思議に見つめていた。

 

露わになったレイヴンの黒い瞳がまっすぐ彼女を捉える。

そしてさっきからずっと思っていたことを口に出した)

 

 

シュネー「・・・一緒に地引網引いてくれない?」

 

??「・・・」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー 東海岸 ヘリポート? ー

〔 18:10 〕

 

(葉っぱの様な形のフロート脚部は四枚の葉をしおらせて駐機状態で佇んでいる。

引っかかっていた地引網は無事救出され海岸線に横たわっていた。

 

海岸線にはどこかのビルのヘリポートが丸ごと漂着している。

ランディングポイントにするにはこれ以上無いほど相応しいこの場所で、レイヴンは迎えのヘリを呼んだ。

 

西日が傾き海に沈む・・・目に光のない白いACが真っ赤に染まっている)

 

シュネー「・・・なあ」

 

??「・・・」

 

(紅色の機体の足元で大柄な少女が行儀よく座っている。

レイヴンはヘルメットを被りなおし、彼女の隣に立っていた)

 

 

シュネー「俺達、昨日と今日で3回も会ったよな」

 

??「・・・」

 

シュネー「・・・縁があるのかも知れないね」

 

??「えん?」

 

シュネー「んー・・・説明が難しいなw 息ぴったり、みたいな?」

 

??「・・・」

 

 

(物静かな少女は穏やかな顔で海岸線を眺めている。

 

しかしサイドステップで彼女の視野に素早く入り込むレイヴン。

そして素っ頓狂な声で呼びかける)

 

シュネー「一緒に行かないか?」

 

??「ドこ に・・・」

 

シュネー「俺の家だよ、これからも一緒に戦おう!!」

 

 

(彼女は少し考える素振りを見せた後、静かに首を横に振った。

 

いきなりそんなこと言っても断られることなど織り込み済みのシュネーは営業を開始する)

 

シュネー「あったか布団で眠れるんだぞ!? 3食昼寝付き!!」

 

シュネー「マタタビ自生してるよ!!」

 

 

(しかし首を縦には振らない)

 

シュネー「そうだよな・・・無理言って悪かった」

 

シュネー「ありがとう。

君が生きててくれただけで俺は救われた、夢のあの子が嘘じゃないってわかったから」

 

??「・・・」

 

(彼女はとても寂しげな表情を作る。

何か言いたげでもあるが、うまく言語化できないのだろう。

 

そして説得タイムは時間切れを迎える、迎えのヘリのローター音が徐々に近づいてきた。

・・・大きな猫耳がぴくっと反応する)

 

 

??「・・・・・・あれ でカエる ?」

 

シュネー「ああ、そうだけど・・・?」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー ガラブ砂漠 上空 ー

〔 18:35 〕

 

(少女は輸送ヘリで運ばれているACの背中に乗っている。

彼女の視線の先、さっきまで二人が立っていたヘリポートのHの文字がとても小さく見える。

 

未体験の乗り物にとても興奮した様子で流れる風景を見つめている)

 

??「しゅご!しごい!!」

 

シュネー(こんなのでよかったのか・・・俺の説得は・・・うごごご)

 

 

ヘリパイ「まさかお前の言っていることが事実だったとはな・・・」

 

シュネー「いや俺も生きてるうちに会えるとは思ってなかったよw」

 

(コアが後ろにスライドし、コクピットハッチが開く。

シュネーはACの首の後ろ、機体の出入り口から胸から上を出して両肘を置く)

 

 

シュネー「なあ、ビースト・・・さん?」

 

??「ナに・・・?しゅん」

 

シュネー「俺はしゅんじゃなくて・・・まあいいや。

・・・強いね、君は」

 

??「・・・」

 

(その誉め言葉はあまり好ましくないのか彼女は微妙な顔をする)

 

 

シュネー「ああw 女の子にかける言葉じゃないか?w」

 

??「・・・」

 

(しかし機嫌を損ねたわけではないらしく首を横に振る。

それを見たシュネーは右手を高く上げてACの背中に座る彼女に手を伸ばす)

 

シュネー「だったら強い奴同士手を組もう、文字通り」

 

??「・・・」

 

(彼女はなかなか慎重な性質らしくそれでも少し躊躇する)

 

 

シュネー「セルリアン以外とは戦わなくていいから、それならいいだろ?」

 

??「・・・うん」

 

(パイロットスーツのグローブとトラ柄の模様の入った大きな腕がしっかりと繋がれる。

ハンドシェイクの名の通り、シュネーは連結した手を振り回す。

 

ひとしきり揺らした後コクピットから這い出てACの後ろ襟首に座る)

 

 

シュネー「今まで瓦礫の上で寝てたの?」

 

??「うん」

 

シュネー「背中痛いだろ・・・」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー レイヴンガレージ ハンガー ー

〔 19:30 〕

 

(帰宅したACはすぐにヘリから降り、ふわふわと格納庫に侵入して固定用ベッドに降着する。

天井から伸びてきたハーネス上の固定具がコアに取り付けられ機体が固定される。

 

昇降機でコアまで上昇してきた整備のおじさんと、背中に座っている猫耳少女の目が合う)

 

整備員「なっ・・・!誰だ!?」

 

シュネー「新しい仲間だよ」

 

(コクピットから這い出てきたレイヴンは簡単すぎる説明をする。

そして背中の彼女に昇降機に乗るよう手で合図するも、彼女はACの背中から飛び降りた。

 

見事なスーパーヒーロー着地で格納庫に衝撃が走る。

・・・周辺で待機していた数名の整備クルーは騒然とする)

 

 

??「・・・」

 

整備員「なん・・・」

 

シュネー「やべぇな」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー 休憩所 ー

 

オペレータ「・・・・・・」

 

シュネー「ほら、言ったとおりだったろ?」

 

(大柄の少女はコンクリの床に座り、カップに入った体にピースな白い液体をちびちび飲んでいる。

長身の男は幽霊でも見たかのような表情でそれを見つめていた)

 

オペレータ「・・・・・・・・・それで?」

 

シュネー「一緒に戦えばいいじゃない」

 

オペレータ「そう言うとは思ったけど・・・」

 

 

??「・・・」

 

(大きな体のそれは家猫のようにおとなしい。

レイヴンの副官は彼女の衣装や髪の毛に入った柄に注目する)

 

オペレータ「猫と言うよりは虎って感じだね」

 

シュネー「デカいしな」

 

 

(オペレータは話しながらもじっと観察していたが、猛獣とよく似た要素を持つ彼女は特に凶暴な素振りを見せることもない)

 

オペレータ「・・・わかった、君が彼女とコミニュケーションが取れるって言うなら好きにしてくれ」

 

シュネー「おうよ」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー シュネー自宅 ー

〔 20:10 〕

 

シュネー「どうぞ、お入りください・・・じゃないなw

おかえり、今日からここがあんたの家だ」

 

??「おお・・・!」

 

(しっかりした住宅に入るのは初めての彼女は新鮮な景色に目を輝かせる。

このガレージは居ぬきであり、もともと別のレイヴンが使用していた基地だった。

 

元の主が死亡したか行方不明かで売りに出されていたのを買ったのがシュネーで

この住宅も元の住人が寝泊まりするのに使っていたものだった)

 

 

シュネー「煤だらけだな・・・w まずは風呂入ったら?」

 

??「?」

 

シュネー「こっちこっち」

 

(レイヴンは新たな家族をあったかお風呂でもてなす為に手招きし、一般的な大きさの風呂場に案内する)

 

 

ー 風呂場 ー

 

(スライド式のドアを開き、湯気の立ち込める浴室に入る。

壁のスイッチで点灯した暖色の照明が優しく二人を照らしている)

 

シュネー「こっちひねるとお湯、こっちは水ね」

 

??「おおお・・・しゅご・・・」

 

(シャワーの使い方をレクチャーする。

ついでに風呂場のアメニティの使い方を教えるシュネー)

 

シュネー「こっちが髪洗う方、こっちが体洗う方、わかった?」

 

??「・・・」

 

(彼女は教わった通りに体を洗う方を数滴手に取る。

そしてブレザーごと胸にこすり付けようとする)

 

シュネー「ちょっと!!」

 

??「・・・?」

 

シュネー「服を脱いでから!!体が洗えないでしょうが!!」

 

(ジェスチャーで服を脱ぐように教える。

彼女は一瞬不思議そうな顔をした後、その場で黒い着衣を脱ごうとする)

 

シュネー「ばっ/// ここで脱ぐな!!そこの脱衣所で脱ぐの!!」

 

 

ー 居間 ー

 

オペレータ「やあ、なんだか大変そうだね・・・w」

 

シュネー「やっと湯船に浸かるとこまでいったぞ・・・」

 

(居間のダイニングテーブルに座る優男。

彼はタブレット端末で何かを調べているようだった)

 

オペレータ「彼女の髪の毛の柄が気になって調べてたんだけど、この動物にすごく似てないかい?」

 

(そう言って某サファリパークの動物紹介ページを拡大して大写しにする。

そこには確かに、彼女の前髪の柄によく似た斑点を持つ猛獣が写っていた。

 

同じ画角内にその猛獣の名を記したプレートが写っている)

 

シュネー「アムール・・・トラ」

 

オペレータ「かっこいいね、名前も」

 

 

シュネー「愛、アムール・・・ ミヒャエル・ハネケだったか?」

 

オペレータ「君ってたまに無駄に高尚なこと言うよね・・・」

 

シュネー「別に高尚じゃない、エンタメに上品も下品もない」

 

(話していると浴室のほうから声がする。

今日できたばかりの相棒がレイヴンを呼んでいた)

 

アムールトラ「しゅん・・・?」

 

 

オペレータ「彼女呼んでるよ? 僕はここらで失礼しようかなw」

 

シュネー「もう・・・今度は何?」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー 空き部屋 ー

 

(たくさんある空き部屋の一室に布団が敷かれている)

 

シュネー「自分の服なんだから自分で着られるようになってね」

 

アムールトラ「うん・・・」

 

(女子高生の如き衣服を、酔っ払いリーマンの如くめちゃくちゃに着ていた彼女は

相棒の手伝いでようやく風呂に入る前の状態に戻っていた。

 

煤けていた制服はお急ぎコースで煤を落とされ乾燥までされており、着ているトラの子を温かく包んでいる)

 

シュネー「ここがあなたの部屋ね。その隣が俺の部屋」

 

アムールトラ「うん」

 

 

シュネー「それとあなたはビーストじゃない、アムールトラだってさ」

 

アムールトラ「・・・あむ」

 

シュネー「これからはそう名乗るように!!」

 

アムールトラ「・・・」

 

(名前を与えられ、体を清められ、衣服を奇麗にされてばっちり完璧に整備された自分の姿。

初めて体験する自分の状態に、彼女は高揚感のようなものを憶えていた)

 

シュネー「じゃあ、おやすみ。アムールトラ」

 

アムールトラ「うん」

 

ーーーーーー

 

 

 

ー 次回予告 ー

 

オペレータ「すごいな、さすが最前線・・・早速次の仕事の依頼が来てるよ」

 

シュネー「なんだって?」

 

オペレータ「天然温泉を利用した発電施設に例のが沸いてるらしいよ」

 

シュネー「水力発電所ってこと?」

 

オペレータ「いや、ダムや河川があるわけじゃないらしい。まあ現地で確認してくれ」

 

シュネー「了解」

 

 

オペレータ「・・・で、本当に連れてくのかい?」

 

シュネー「あったりまえでしょ。 次回 ゆきやま 」

 

ーーーーーー

 

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