イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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ストレイツォとの再会

 前世では炭酸飲料はあまり好きではなかった。

 しかし久しぶりに懐かしい物を飲めたので、気分は悪くない。

 

 ただし子狐サイズではあまり量は飲めないので、殆どはジョセフと黒人の少年にあげた。

 

 しかし一緒に逃げたものの、歳も近くて妙に馬が合うようだ。

 すぐに仲良くなって、これまであったことを話せて聞かせるなど、スモーキー少年とジョジョは親友になったのだった。

 

 

 

 それから身寄りのない黒人の少年、スモーキーはエリナに事情を話す。

 召使いとして雇われることになって、身なりの良い服を買ったあとはジョジョがタクシーを捕まえて、三人と一匹は車に乗り込んで目的地まで移動する。

 

 相変わらずエリナは、ジョナサンのことを愛していることがよくわかった。

 ニューヨークに呼び出したスピードワゴンとの仲を疑ったジョセフを、傘で殴りつけているのだ。

 余程腹に据えかねたのだろう。

 

 

 

 そして飲食店でスモーキーのことを侮辱されたときも、ジョセフが大男を打ちのめすことを堂々と許可した。

 やはりエリナは歳をとっても苛烈ではあるけれど、優しい人だと再確認するのだった。

 

 

 

 まあそんな妾は子狐なので、流石に店内に入れない。

 外でちょこんと座ってお留守番なのだが感覚を研ぎ澄ませば、店内の様子を知ることぐらい造作もなかった。

 

 しかしこの辺りを仕切っているマフィアの親玉が口にした、スピードワゴンが殺されたという情報は、そんなまさかと動揺する。

 

 おまけに殺ったのは、チベットから来た修行僧のストレイツォらしい。

 何処まで本当のことかはわからないが、一体どうしてそんなことをと頭を抱えてしまう。

 

 エリナは石仮面とディオが関わる何かだと考えている。

 遺跡調査中の事件なので、その可能性が高いかもと納得できる。

 

 とにかくストレイツォを見つけ出して、敵を討たないと駄目だ。

 あとはスピードワゴンや調査隊を殺した理由も聞き出さないとだし、また面倒なことになってきたなと溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 やがて季節は秋から冬になる。

 ジョセフとスモーキーは喫茶店の中だが、妾は子狐なので外で待機だ。

 やむを得ない場合は法律を破るが、今はそうではない。

 

 白い息が出るほど気温が低下しているけれど、この程度の寒さなら何ともなかった。

 妾にとっては退屈が一番の敵で、こんな場所で丸くなって眠っていたら凍死だと勘違いされて騒ぎになってしまう。

 

 それに、冬場にじっとしてるの不審がられそうだ。

 なので取りあえず暇だし、店の周りを一周してくることにした。

 

 

 

 子狐なので、のんびり歩けばそれなりの時間がかかる。

 この程度の距離なら騒ぎが起きればすぐにわかるし、飼い主の匂いを追跡すれば追いつくのも容易いことだ。

 

 

 

 なので、散歩のつもりで一周して喫茶店に戻って来る。

 すると見覚えのある人物とジョセフが向かい合い、店の外で話していることに気づく。

 

(んっ? あの男は……もしや!)

 

 幸いなことに、まだ騒ぎにはなっていない。

 だからこそ気づくのに遅れたとも言えるが、すぐにジョセフの元に駆けつけようと走り出した。

 

「町中だろうと構わん! ジョジョ……お前の命をもらう!

 才能が目覚めんうちにな!」

 

 ストレイツォは。まだ妾には気づいていない。

 それはともかく、彼がまともに喋れたのはそこまでだった。

 

「ほう! そうかい!」

 

 何処に隠して持っていたのか、ジョセフはトンプソン機関銃を取り出した。

 

 そして、至近距離から叫びながら発砲する。

 たちまちストレイツォの全身は穴だらけになり、ガラス窓を突き破って店内に吹き飛ばした。

 

 やがて残弾が尽きたようで、ジョセフは勇ましい台詞を泣きながら告げる。

 

「ストレイツォ! 来るのを待ってたぜ! この程度で貴様が死ぬとは思わねえが!

 スピードワゴン爺さんの仇! 宣戦布告だぜ!」

 

 どうやら彼にとってのスピードワゴンは、本当にかけがえのない存在だったようだ。

 だがそれは自分も同じで、ようやく追いついた妾にも気づかず、ジョセフはボロボロに破壊された店内から視線をそらない。

 

「ストレイツォ! テメーの頭を一瞬のうちにぶっ飛ばすか! 太陽の光か! 波紋か!

 その三通りがテメーを消す方法だそうだな!」

 

 今のジョセフは、完全にブチ切れているのは間違いない。

 店内に足を踏み入れて、周囲の人に殺人鬼扱いされても全く気にする様子はなかった。

 

「スモーキー! 外へ避難してな!」

 

 人を撃ったことを指摘するスモーキーに避難を促す。

 だが床に飛び散っている弾丸が、妙な形に捻じ曲がっている。

 

 恐らくストレイツォはノーダメージか、怪我をしていても軽症な可能性が高い。

 ジョセフもそのことに気づいたようで、冷や汗をかきながら大声を出す。

 

「俺はむしろ! 奴が人間であって欲しいぜ!

 人間なら、俺が殺人罪でムショに行きゃあ、済むこったからなあ!」

 

 いつもマイペースなジョセフも、流石に動揺しているようだ。

 そして店内の客が恐怖で錯乱する中で、全身が穴だらけになって倒れていたストレイツォが、何事もなかったかのようにゆっくりを起きあがる。

 

 さらに体を一回転させると、体内の銃弾が全て床に落ちた。

 まだまだ健在なことが良くわかり、自信たっぷりに口を開く。

 

「ディオの失敗は、自分の能力を楽しんだことだ!

 奴は実験し、能力の限界を知りたがっている!

 そこに隙が生まれ、ジョナサンたちに敗北した!」

 

 どうやら彼はディオの反省を活かして、さらに先に進むつもりのようだ。

 

「だが、このストレイツォは違う!

 能力の限界なんぞ、石仮面を知る者たちを始末したあと、ゆっくりと試していけばいい!

 ストレイツォ! 容赦せん!」

 

 向こうは滅茶滅茶やる気だ。

 ストレイツォのことは嫌いだが、確かに彼の今の言葉には一理ある。

 

 妾は納得したがゆえに呼吸を整えて、弾切れで焦るジョセフの横を高速で横切った。

 

 そして目の前の敵しか見てなかったストレイツォの死角から、ドリルのように回転を加えた強烈な頭突きを勢い良く叩き込む。

 

「のじゃあっ!!!」

「ぐはああっ!!?」

 

 もちろん、波紋をたっぷりと込めている。

 おまけに完全に油断していたので、防御も間に合わない。

 

「流石はシショー! 助かったぜ!」

 

 彼は腹部に大穴が開いて、勢い良く壁に吹き飛ぶ。

 

「いっ、イナリ!? 貴様かああああっ!!?

 まっまさか! これ程の力を!? こんな! 子狐が!?」

 

 ストレイツォも子狐の戦いぶりは知っている。

 しかし仲間と合流してからは、わざわざ妾が前に出る必要もなかった。

 なのでせいぜい、波紋が使える珍しい動物程度の認識でしかなかったようだ。

 

「そっ、そんな! 馬鹿な!?」

 

 波紋を散らすマフラーを身につけていたが、あいにくストレイツォの予想した出力以上を瞬間的に流し込まれた。

 さらに腹部を抉り取るほどの威力なので、マフラーがアースの役目を果たしても無駄なことだ。

 

 ストレイツォは全身から血を流して、焼け焦げながら壁からずり落ちる。

 

 しかし妾も勢いが強すぎて貫通してしまい、急ぎ波紋で吸着して強制的にブレーキをかけた。

 

 

 

 そのあとは普通にトコトコ歩いて、器用にジャンプしてドアノブを回して扉を開ける。

 何食わぬ顔で、元の部屋に帰って来た。

 

 そこには全身が焼け爛れ、もうすぐ頭部も灰になるストレイツォを見下ろしている、不機嫌そうな顔をしているジョセフがいた。

 

「一つだけ聞きたい! 何故わざわざ! スピードワゴンの遺体を川へ捨てた!

 どうもスッキリしねえぜ!」

 

 確かに全員まとめて始末したなら、そのまま放置するなら隠蔽すれば良い。

 わざわざ自分の犯行だとバラすような真似をするのは、何か裏があると考えるのが普通だ。

 

 戻ってきた妾は近くに寄って、ストレイツォの答えに耳を傾ける。

 

「ジョセフ。やはりお前はジョナサンの血統を受け継ぐ男。

 表面上の態度はまるで違うが、やはり謎や冒険に首を突っ込む性格。

 そしてその性分ゆえに、もはや逃れられない運命に、今踏み込んだことを告げておこう」

 

 思わせぶりなことばかりで、子狐よりは賢くしてもあまり頭が良くない妾には、何が何だかさっぱりだ。

 

「何の……ことだ!」

「今にわかる! 柱の男のことを! 今に出会う! 柱の男に!」

「テメー! わけのわからんことを! 振るんじゃねえ!」

 

 柱の男とはなんぞやで、ジョセフと同じ気持ちだった。

 

「死体を川へ捨てたのは、柱の男のせいだ!

 柱が、遺体どもから流れ出る血を吸い始めたのだ!

 植物が養分を吸収するかのように、不気味だった! だから外へ運んで捨てたのだ!」

 

 つまり柱の男とは、ストレイツォも良くわかっていない謎の存在ということだ。

 だが、石仮面と繋がりがあるのは間違いない。

 

 因縁があるジョースター家とは、否が応でも関わる運命だと言いたいのだろう。

 

「だがもうすぐ! きっと目覚めるだろう!

 ヤツの二千年の眠りからな!」

 

 そう言ったストレイツォは、何故か波紋の呼吸を行う。

 

「ジョセフ、近いうち、きっと彼に会うだろう!

 きっとわかるだろう! 柱の男の正体と、生物進化の意味が!

 神が定めた運命のように!」

 

 なお運命に関しては、妾には当てはまらないようだ。

 ツェペリ男爵の件を見る限り、神の管轄範囲外というところだろう。

 

「私は後悔していない!

 醜く老いさらばえるよりも、一時でも若返ったこの充実感を持って、地獄へ行きたい!」

 

 それで殺された者は溜まったものではない。

 かと言って、彼に生きていられても扱いに困る。

 

「若返ったことは! 我にとって至上の幸福だったぞ!」

 

 ストレイツォは全身から光を放って崩壊し、灰になって崩れ落ちていく。

 

「ストレイツォ! 待て! 話はまだ!」

「さらばだ! ジョジョーッ!!!」

 

 まだ聞きたいことがあったジョセフは、とても悔しそうだ。

 しかしこれ以上粘っても、口を割らずに時間切れになっていただろう。

 

 妾が土手っ腹をぶち抜いたときに全身に波紋が行き渡っていたし、遅かれ早かれ死んでしまうのだ。

 

 

 

 あとは友人のスモーキーが、あまりの取り乱しっぷりに声をかけにくそうにしている。

 けれど、一先ずはスピードワゴンの敵討ちができたのだ。

 柱の男も気になるが、今はそれで良しとしておくのだった。

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