イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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柱の男

 ストレイツォを倒したことで、エリナの安全は確保された。

 だが問題は残っており、今度は柱の男を調べるためにジョセフと妾はメキシコに向かう。

 

 ジョセフはバイクに乗って移動し、子狐の妾は背負った鞄の中に入る。

 波紋で後ろのスペースに吸着しても良いのだが、それでは昼寝ができない。

 

 結構揺れるし騒音も酷いけれど、妾は日向ぼっこが三度の飯よりも好きだ。

 この程度なら問題はなかった。

 

 途中でストレイツォの情報を聞くために特殊部隊に襲撃されたが、ジョセフだけで何とかなりそうだと判断する。お昼寝続行だ。

 

 実際に倒して逆に情報を入手し、スピードワゴンが生きていることを知った。

 

 死体が行方不明なので生存の可能性もあったが、ここに来て確信に変わる。

 ジョセフはとても喜んでいるけれど、柱の男も運び込まれたのだ。厄介なことになるのは想像に難くない。

 

 それはそれとして、エリナを早く喜ばせるためにもドイツ軍の拠点に乗り込んで、スピードワゴンを必ず救い出すことに決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 メキシコのとある屋敷の地下20メートルに、警戒厳重な設備室がある。

 そこにスピードワゴンが囚われているらしい。

 

 どうやって潜り込むかだが、ジョセフが女装して通ろうとしたが無理だった。

 波紋で見張りを倒して強引に潜入することになったけれど、妾もどうせこうなると思っていたので、全く動揺はしない。

 

 それに子狐に任せて大人しく待ってるなんてことは、ジョセフにはできないだろう。

 なのでプランBでドイツの軍服に着替えて、一人と一匹で地下の施設に乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 兵士に変装したジョセフは、地下施設まで何とか潜入できた。

 そこで拘束具を着させられて車椅子に乗っているスピードワゴンを見つけ、一先ず無事だと知ってホッとする。

 

 しかし妾たちが到着した頃には、状況はかなり悪くなっているようだ。

 柱の男であるサンタナの封印が解かれたうえに、関節や骨格をバラバラにして空気供給管に潜り込まれた。

 

 目的はここに居る、シュトロハイム少佐だと予想される。

 恐らく、もう間もなくやって来るだろう。

 

 

 

 妾はジョセフの軍服のポケットからひょっこり顔を出し、こっそりと飛び降りて床に着地して物陰に隠れる

 クンクンと匂いを嗅いで敵の位置を探ると、かなり近くまで来ていることに気づく。

 

(不味いのう! もう一刻も猶予がないぞ!)

 

 ちょうど兵士の一人が、銃を持ちながら空気供給管を覗き込んでいた。

 なので妾は形振り構わずに突進して、真横から勢い良く蹴っ飛ばす。

 

「のじゃあッ!」

「ぎゃふんっ!?」

 

 当然のように兵士は吹き飛ばされて、床の上を転がっていく。

 あまりの衝撃に気を失ったが、生きはている。

 

「なっ、何者だあああっ!?」

 

 そして妾を見つけたシュトロハイムが大声で叫ぶのと、空気供給管が破壊されて柱の男が飛び出てくるのは、ほぼ同時だった。

 

(ちいっ! 次は妾が避けないと!)

 

 柱の男は生物を取り込むことができるようだ。

 小狐など丸呑みだろうから、妾は吹き飛ばされた空気供給管の金属カバーを柱の男に向けて蹴り飛ばす。

 

 彼は平然と避けたが、時間的な猶予ができたので何とか敵から距離を取った。

 

「イナリ! 助けに来てくれたのか!」

「イナリだと!? コイツがそうなのか!」

 

 スピードワゴンが嬉しそうな声をあげる。

 そしてシュトロハイムや他の人間たちは、皆驚いていた。

 

 ちらりとジョセフを見ると、ちゃっかり車椅子のすぐ後ろまで近づいている。

 これでいざという時は彼を抱えて逃げられるので、一安心だ。

 

 

 

 しかしそれはそれとして、地面に落ちた肉の塊が人の形を取り始める。

 すぐに映像で見たサンタナという人物そっくりに変わった。

 

「構わん! 殺せ! サンタナを撃って撃って! 撃ちまくれええええっ!!!」

 

 シュトロハイムも軍人として優秀なようだ。

 妾の存在も脅威ではあるが、一番に排除すべき対象をサンタナだと判断した。

 部下たちもそれに従って一斉に銃を構え、引き金を引く。

 

 銃弾の雨あられがサンタナに叩き込まれて、瞬く間に全身が蜂の巣になった。

 とても耐えきれるはずもなく、あっさり地面に倒れる。

 

 けれどダメージを受けているようには思えず、たったの数秒で何事もなく起きあがってくる。

 

「ひいいいいっ!? やっぱり生きてるうううっ!!!」

「予想通りだあああっ! マシンガンなんかで撃っても死なない!?」

「なっ、なんて奴だ!?」

 

 皆が冷や汗をかいて恐怖で震える中、サンタナは今度は右手の人差し指を兵士に向ける。

 

「何だぁ! あの指の形は!」

「何を意味するんだ!」

 

 兵士たちが恐怖で叫んでいると、シュトロハイムは何かを思いついたようだ。

 

「まっ、待て! ピストルのつもりなんじゃあないか!

 俺たちの、真似をしているんじゃあないのか!」

 

 そう言って楽観視するが、妾は猛烈に嫌な予感がした。

 

「さっ、さっきも喋ったのは! 俺の名だけだ!

 奴は真似をしているんだ!

 いっ意味などない! ただの猿真似! ひょっ、ひょっとすると! 奴の知能は低いぞ!」

 

 シュトロハイムはこの期に及んで、まだサンタナを利用しようとしている。

 だが、もうその段階はとっくに過ぎているように思えた。

 

 それとも恐怖のあまり、僅かな希望に縋りたい心境なのかも知れない。

 

「……貴様らか。俺の眠りを邪魔したのは」

 

 そしてサンタナは想定を上回る速度で成長しており、あっさり喋って見せる。

 

「喋ったぁ!?」

「知能が低いどころじゃない!

 奴は高度な知能を持っている!」

 

 スピードワゴンが嘘偽りのない事実を、シュトロハイムにはっきりと告げる。

 

「この短い時間で! 我々の言葉を学習してしまったんだ!」

 

 そして奴は、いよいよ行動に出た。

 ドイツ軍人が撃ち込んだ弾丸を指先に集めて、逆に撃ち返してきたのだ。

 

「死ね!」

「のじゃぁ!」

 

 しかし、こっちも黙って殺られるつもりはない。

 妾は近くの水道管を破壊し、ドイツ軍人たちとサンタナの中間辺りにシャワーを浴びせる。

 

「むっ?」

 

 波紋カッターほどの威力はないが、硬質化した水で弾丸の軌道を変えるぐらいはできる。

 そしてジョセフのほうもヤバいと思ったのか、後ろからスピードワゴンに声をかけた。

 

「おい! 爺さんあぶねえ! こっちに来て身を隠せ!

 奴は指先から! さっきの弾丸を全て撃ち返すぞ!」

 

 だが避難するように促しても、ドイツ軍人に変装しているので彼だとわからないようだ。

 断固拒否する様子に、嬉しいやら悲しいやらである。

 

 やがて埒が明かないと思ったのか、シュトロハイム少佐に向かって歩いて行って強引に髪の毛をむしり取った。

 

 そこまでやって、スピードワゴンはようやく気がついたようだ。

 

「その性格は! まさか!」

「人呼んで! 波紋ヘアーアターック!!!」

 

 シュトロハイムの髪の毛に波紋を込めて硬化させる。

 妾もその間に危険地帯から動けない人たちの足を払い、時間にしてほんの一瞬の間にほぼ全員を転倒させた。

 

「お前は! お前は! ジョセフ・ジョースター!!!」

 

 スピードワゴンが叫ぶと同時に、サンタナが銃弾を残らず吐き出してきた。

 だがジョセフが髪の毛を放り投げて壁のように広げ、さらに妾の水をの膜がバリアになって間一髪で間に合う。

 

「バリアーだぜ!」

 

 放たれた弾丸が、次々と弾かれては地面に落ちる。

 波紋をたっぷり流し込んだので何とか防ぎきり、全員が転倒して射線上から逃れた。

 

 頭を強く打ったり怪我はしても死ぬことだけは辛うじて回避できて、ホッと息を吐く。

 しかし誰かが異常に気づいて水を止めたのか安全装置が働いたのか、水の供給が停止して、防壁の役目を果たした波紋の膜が消えてしまうのだった。

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