イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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杜王町

 杜王町に住み始めて時が流れて、うちの神社が国内でも有数の知名度になった。

 

 歴史は浅いのに無駄に立派で敷地も広大。

 それに連日参拝客が詰めかけて、従業員も大勢雇っている。

 

 あとは表立って公表はしていないが、巫女たちに波紋を教えていた。

 別に戦士として鍛える気はないけれど、うち独自の健康法ということにしている。

 

 過去に妾が助けた人が多く、恩を返したい系の巫女さんが多いからだ。

 色々聞かれるのも珍しくなく、それじゃあということで波紋を教える。

 

 山中にいくつか修行場を作り、波紋で滝を登ったりロープの上や湖の水面で模擬戦をしたりと色々だ。

 スポーツ選手が行うトレーニングだと考えれば納得できなくはないけれど、うちの神社だけで一般公開はしていない。

 

 せいぜい祭事や神事のときに、年に一度の演舞や催し物で少しだけ披露するぐらいだ。

 

 

 

 

 それはそれとして最近、ジョセフの浮気が発覚した。

 相手は同じ街の女教師、東方朋子(ひがしかたともこ)だ。

 

 うちの神社に何度か参拝に来たので、彼女の顔と名前を覚えている。

 

 ちなみに息子は東方仗助(ひがしかたじょうすけ)でまだ幼い。

 現在シングルマザーとして頑張って育てていて、巫女の中にも友人が数名居たりする。

 

 

 

 何故そうなったのかと言うと、妾に会いにジョセフが日本に来たときに東方朋子(ひがしかたともこ)と出会い、恋に落ちたようだ。

 

 

 

 気づいたのか彼女の息子が、妙に見覚えがある顔だと疑問に思ったときである。

 念のために国際電話をかけて確認すると、そこで浮気していたことが判明したのだ。

 

 さらにジョセフは、東方朋子(ひがしかたともこ)が出産して子供を育てていることを知らなかったらしい。

 初めてこの話をしたときには、二重の意味でとても驚いていた。

 

 これはもうどうにもならないと判断した妾は、渋い顔をしながらスージーQに謝ったほうが良いと告げる。

 

 しかし、東方朋子(ひがしかたともこ)は許されない恋だとわかっていても、諦めきれないようだ。

 一人で東方仗助(ひがしかたじょうすけ)を育てていることから、本気なのが良くわかる。

 

 

 

 これに関しては、ジョセフが悪いよージョセフがーとしか言いようがない。

 あと、火の粉が飛んできたらとても困る。

 

 そもそも自分は、スージーQとはそこまで親しいわけではない。

 どちらかと言うと神社に参拝に来てくれる東方朋子(ひがしかたともこ)のほうが、仲が良いと言える。

 露骨に味方する気はないが、あまり傷つけたくはなかった。

 

 幼い頃から妾をイナリ様と呼んで慕う、孫のような存在だ。

 まあ杜王町の住人には顔見知りが多く、血の繋がりはないが親しい間柄ばかりなのだが、それはそれなのだった。

 

 

 

 なお世界中で狐っ娘の目撃例があって、公表こそされていなくても、その殆どでアメコミヒーロー的な活躍をしている。

 

 同県のローカルテレビ局でも、今年で何歳になるイナリさんとテロップで良く流れていた。

 若さの秘訣はと聞かれることも多々あるので、うちの神社の健康体操だと誤魔化している。

 

 日課で仙道修行をしているとは答えられないが、ドイツ軍の上層部は妾のことは知っていた。

 国のトップで知らないほうが珍しいだろうし、ルドル・フォン・シュトロハイムとは今でも交流がある。

 国をあげて歓迎するのでぜひ遊びに来て欲しいと、たびたび手紙が送られてきていた。

 

 

 

 しかし、今はせいぜい都市伝説的な感じに落ち着いているが、もし妾の存在が世界に公式発表されたら大混乱だ。

 世論が、子狐殺すべしとなってもおかしくない。

 

 まあ妾もそう簡単に殺られる気はないし、敵に回したら人類の存続が危ぶまれる存在だ。

 

 おかげで見て見ぬ振りをしてくれるし隠蔽工作に積極的に協力して、スピードワゴン財団も後ろ盾になっている。

 調整役として非常に頼もしかった。

 

 今は狐耳や尻尾を出して歩き回ってもコスプレで押し通せるし、変装の必要がないのはとてもありがたいのだった。

 

 

 

 

 

 

 話を戻すが、浮気したジョセフが泣きついてきた。

 妾は溜息を吐きながら仕方なく重い腰をあげて、スージーQの元に直接出向いて頑張って説得し、何とか許してもらう。

 

 離婚だけは回避できたが、当然のように家族関係悪化した。

 けれど仗助の写真を見せれば機嫌がコロッと良くなるので、世の中わからないものだ。

 

 妾も結婚や出産を経験すれば理解できるかもだが、本体は子狐である。

 全くそんな気は起きないし、これでは相手が可哀想だ。

 

 とにかく以降は頻繁ではないが、スージーQとジョセフは来日するようになる。

 ホリィだけでなく東方朋子(ひがしかたともこ)にも会うことになるが、互いの関係は決して悪くはない。

 何やかんやで許してくれたので、スージーQの懐の深さに感謝なのだった。

 

 

 

 

 

 

 それから少し時が流れて、散歩中に殺されかけていた少年少女と犬を助ける。

 けれど残念ながら両親は間に合わずに、殺されてしまっていた。

 

 少女のほうの引き取り手が見つからず、児童養護施設に送るか妾が引き取るかの二択になる。

 何やかんやあって妾が育てることになったが、四歳ほどの少年のほうは家族が居るので大丈夫だ。

 

 しかし海外に行っている彼の親族が迎えに来るのは、今少し時間が必要である。

 おまけに殺害現場の隣の家が現住所という有様で、相当怖い目に遭ったようだ。

 

 一時的にうちの神社で保護してはいるが、二人揃ってガタガタ震えっぱなしだった。

 

 なので妾は子供を元気づけるために、皆には内緒だと微笑みかける。

 そしてこっそり境内に落ちている小石を拾って、軽く投げたあとに幽波紋(スタンド)能力で細切れにした。

 

 もしまた殺人鬼が襲ってきたら、今度は妾がやっつけてやると小さな胸を張る。

 だから怖がる必要はないのだと、自信満々に宣言したのだ。

 

 

 

 そのことが関係あるかはわからない。

 しかし、杉本鈴美(すぎもとれいみ)は妾の養子になることを選んだ。

 さらに岸辺露伴(きしべろはん)は、不可思議な超常現象に興味を持つようになる。

 

 まあそれはそれとして、杉本鈴美(すぎもとれいみ)は手のかからない子で助かっている。

 同じ神社の巫女たちと仲も良く、少し前に様子を見たら波紋法を教えてもらっていた。

 

 しかし時折、亡くなった家族や殺人鬼のことを思い出すようだ。

 一人ですすり泣いたり恐怖で体を震わせたりしていたので、その時は愛犬だけでなく妾も寄り添い、一緒に寝たり慰めることも良くあった。

 

 

 

 けれど、杜王町に潜んでいる殺人鬼は、隠れるのがとても上手いようだ。

 あの時は、杉本鈴美(すぎもとれいみ)が命に関わる大怪我を負っていた。

 なので波紋で治療するのに忙しく、犯人の追跡を断念したのだ。

 

 そして残念ながら、以降の手がかりは全く出ていない。

 運命力に任せて探索しても、何処も空振りに終わって見つからなかった。

 

 向こうも妾の存在に気づたのか、警戒を強めた可能性もある。

 

 

 

 しかし、そればかり構っている暇はない。

 スピードワゴン財団などからたびたび依頼が入るので、この件は警察に任せて捜査から身を引く。

 

 再び事件を目撃したり幽波紋(スタンド)が関わっていれば、重い腰を上げるのもやぶさかでないが、妾の本業は小さな神社の巫女だ。

 

 狐耳と尻尾のコスプレをしていて少女の姿のまま成長しないが、世間一般ではそのように通っているのだ。

 

 それに、警察も決して無能ではない。

 

 なので一先ず、手近な幽波紋(スタンド)使いや怪異絡みの事件や事故の解決に協力するのだった。

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