イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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記録的な大雪

 時は流れて季節は冬になり、妾は自室のコタツに入ってのんびりぬくぬくしていた。

 

 何やかんやで杜王町の有名な観光スポットで、国内どころか世界的にも有名な神社である。

 敷地面積も無駄に広いが、本当にどうしてこうなったやらだ。

 

 未だに、ここで働かせてくださいと飛び入りで来る者は良くいる。

 あとは、いつの間にか杉本鈴美(すぎもとれいみ)が巫女の代表を務めるようになった。

 

 彼女と他数名が面接して、大抵の場合はお帰りしてもらっている。

 素質があったら採用されるらしいが、それは仕事の才能なのか波紋や幽波紋(スタンド)なのか、もしくは両方かも知れない。

 

 海外出張も多いので神社の経営管理を娘や職員に任せて一線を退いた妾は、ふと疑問に思ったのだった。

 

 

 

 それはそれとして、今日の杜王町は記録的な猛吹雪らしい。

 皆が家に籠もっているからか、参拝客も殆ど訪れない。

 

 娘の鈴美(れいみ)も住み込みの職員以外は、全員休みと事前に伝えている。

 

 しかし熱心な参拝客は、こんな日でもお参りに来るのだ。

 参道に立て看板は出して雪道の警告を促してはいるが、神社の門は開けたままにしている。

 

 

 

 そして杉本鈴美(すぎもとれいみ)は、妾と同じような紅白の装束を着用していた。

 他の巫女と一緒に波紋の修行をしながら、業務を行っている。

 そういう戦闘や治療技術は、一般的な神社仏閣の関係者には全く必要ない。

 

 だが彼女たちが目標としているのは妾らしく、いつまた危機が迫るかもわからないので、恐怖に打ち勝つ修行とのことだ。

 

 娘の鈴美(れいみ)だけではなく、正義の幽波紋(スタンド)使いは悪人の恨みを買いやすく、神社に鉄砲玉が送り込まれてくるのも極稀にある。

 

 なので、そういう人を撃退したり恐怖を克服しなければいけない。

 警備員も雇ってはいるけれど、念のために護身術として覚えておいて損はないのだ。

 

 そして他の巫女と同じように、娘にも才能がある。

 波紋の呼吸法を心がけるようになってからは、容姿は全く変わっていない。

 

 

 

 妾のような正義の幽波紋(スタンド)使いになって、両親の復讐を果たすことが目標らしい。

 それが終わったら、悪人を懲らしめて苦しむ人々を救いたい。

 

 なので、妾の海外出張にも同行を希望していた。

 

 娘が茨の道に進もうとしているので、母親役としてはマジで危険だから止めて欲しい。

 大いに頭を抱えるが、頑固な性格というか黄金の精神でも持っているのか、全然聞いてくれない。

 

 神社の巫女たちも大概だけど、彼女たちはあくまで自衛のためだ。

 わざわざ危険に飛び込もうとはしないので、まだマシなのだった。

 

 けどまあ今はそうでも、大人になればそのうち考えも変わるはずだ。

 娘の進路については成るように成ると開き直り、あとは時間が解決してくれことを願うのだった。

 

 

 

 

 

 

 それはそれとして、今日の妾はコタツに入ってぬくぬくしている。

 風を起こしてコタツの上のミカンを手元に引き寄せつつ、ちまちまと皮を剥いていく。

 

 灯油ストーブも近くに置いてあり、ヤカンは沸騰して湯気が出ていた。

 

 なお狐っ娘は見た目相応の八歳児で、食が細いのであまり多くは食べられない。

 あとで、みかんピールにするので皮は捨てずに取っておく。

 

 『お母さんは若く見えるけど、そういうところはちょっとお婆ちゃんぽいね。私は好きだけど』と、義理の娘である杉本鈴美(すぎもとれいみ)に言われたことを思い出す。

 

 しかし妾はまだまだ若いつもりだし、ただの生活の知恵なんだけどなと内心で溜息を吐いていると、自室に居るもう一人のほうから声がかかる。

 

「イナリさん、僕にも取ってよ」

「しょうがないのう」

 

 殺人鬼から助けて以降、何故か妾とも交流ができてたまに遊びに来る少年だ。

 岸辺露伴も一緒にコタツに入っていて、ゴロ寝しながら漫画を読んでいた。

 

 彼はサブカルチャーが好きなようで、妾と趣味が合う。

 娘の杉本鈴美(すぎもとれいみ)とも親しいので、特別に住居区画への立ち入りを許可している。

 

 取りあえず風で露伴の元にミカンを引き寄せると、ちゃんとありがとうとお礼を言ってくれた。

 

「漫画を汚すでないぞ」

「わかってるさ」

 

 前世ではあまり時間がなかったが、サブカルチャーが大好きだった。

 なのでうちの倉庫には、古今東西のゲームや漫画が大切に保存されている。

 

 何やかんやで今でも危険な仕事の依頼を受けて世界中を飛び回り、法律で裁けない極悪人を叩きのめして刑務所にぶち込み、不可思議な超常現象を脳筋ゴリ押しで解決しているのだ。

 

 アメコミヒーローのような八面六臂の大活躍をしているので、無駄にお金だけは持っていた。

 しかし割と多忙なので、使う機会が全然ない。

 

 だからこそ一仕事終えて日本に帰国し、自宅である神社に戻ってくるのは、妾にとっては休日のようなものだ。

 

 どうせ引き籠もっていて、神事や祭事のときしか出てこないのである。

 今は大勢の従業員が居て経営管理に関わらなくても回っていくため、いつの間にかそうなっていた。

 

 

 

 とにかく平穏な日常というのは、やはり良いものだ。

 今はテレビゲームで遊ぶのがマイブームで、アニメや漫画も良いが最近はそういう気分である。

 

 ゆえにコタツに入ってミカンも食べたし、意気揚々とスイッチを入れてコントローラーを持つ。

 準備完了というやつで、ここであることを思い出して声をかける。

 

「露伴もやるか?」

「……漫画が一区切りしたら、やろうかな」

 

 彼はあとで参戦予定らしい。

 今日はレースゲームの自己ベストを更新したいなと考えていると、新しく買い替えたばかりのプッシュ式の電話が鳴り始める。

 

「はて、何じゃろうか?」

 

 コタツから出るのが億劫なので、幽波紋(スタンド)で風を操って受話器を引き寄せる。

 

 ちなみにスピードワゴン財団に依頼して特注で作ってもらったので、人間サイズではない。

 狐耳に合わせて普通よりも長くなっていた。

 

 もしもしと告げると鈴美が出る。

 どうやら東方朋子(ひがしかたともこ)から緊急の要件が入っているようで、相当切羽詰まっているようだ。

 

 すぐに変わってもらうと、東方仗助(ひがしかたじょうすけ)が突然高熱を出して、今から病院に連れて行くらしい。

 

 

 

 普通は妾に連絡を入れる必要はないが、吹雪のせいで救急車も来られないのだ。

 車を出しても途中で立ち往生する可能性が高く、藁にもすがる思いとのことである。

 

「あいわかった。今すぐ行くから、しばし待て」

 

 わざわざ面倒が危険に飛び込む気はないが、だからと言って困っている人は放っておけない。

 彼女とは付き合いが長く、息子も含めて子供の頃から知っている。

 

 あのジョセフも関わっているし、やはり万が一に備えて同行すべきだと判断した。

 

 受話器を元の位置に飛ばして溜息を吐いたあと、出たくはないがコタツからのっそり這い出る。

 

「何処か行くの?」

「うむ、人助けにな」

 

 とにかく今は東方仗助(ひがしかたじょうすけ)を病院に連れて行くのが先決だ。

 妾は羽織っていたドテラを脱ぎ捨てて、いつもの巫女服になる。

 

 玄関から出て社務所に寄って、波紋の呼吸を維持しながら業務をしている杉本鈴美(すぎもとれいみ)に、しばらく出かけるので露伴の面倒を頼んでおく。

 

 

 

 用が済んだら建物の外に出て、風を操る。

 吹雪は気流を操れば避けられるので、文字通り空を飛んで東方朋子(ひがしかたともこ)に直行する。

 

 今日の杜王町は、過去に例のない大雪の日だ。

 視界が遮られて、誰にも見られる心配はない。

 

 そして妾にとっては、熱さ寒さなど気分の問題だ。

 絶対にやったりしないけれど、その気になれば素っ裸で吹雪の中を散歩できるのだった。

 

 

 

 

 

 

 結論を言えば、東方仗助(ひがしかたじょうすけ)は無事に病院に送り届けられた。

 

 途中で雪にタイヤが沈んで立ち往生したが、流石に幽波紋(スタンド)で解決するわけにはいかない。

 

 なので妾が外に出て、車を少しだけ持ち上げて先に進ませる。

 あまりも吹雪が激しかったせいで、一時的に髪型が乱れて顔が隠れてしまった。

 

 まあそれは良いのだ。大した問題ではない。

 しかし、高熱で朦朧としている仗助のほうが心配だ。

 きっと車で起きた出来事は、殆ど覚えていないだろう。

 

 しかし絶対という保証はなく、母親も含めて幽波紋(スタンド)能力で超常現象を起こすのは、止めたほうが無難だ。

 杜王町の住民にとっては狐っ娘のやらかしは暗黙の了解的なことがあるが、それでも隠せることなら隠したいのが心情なのだった。

 

 

 

 

 

 

 それにはそれとして、仗助はただの病気ではなかった。

 アレは、幽波紋(スタンド)が目覚めかけている状態だ。

 

 だが覚醒には、心身の成長が不可欠である。

 彼はまだ未熟で、体が耐えられずに高熱を出したのかも知れない。

 

 これまでの経験則から推測したが、絶対に正しいという保証はない。

 

 なので一仕事終えて自宅に帰ったあと、そのことに詳しそうな昔馴染みに久しぶりに連絡を取ってみるのだった。

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