イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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エジプトへ

 花京院を波紋で治療した妾は、報酬の東京銘菓を一個ずつ取る。

 残りは杜王町のお土産と一緒に、皆に分け与えた。

 

 変身状態は見た目相応で八歳の食の細さなのに、ジョセフがあまりにも気前良く大量に買ってくるのだ。

 賞味期限が切れる前に食べるのは、絶対無理だと判断した。

 

 とにかく波紋で治療したとはいえ、念のために安静にしてもらう。

 花京院からディオについて尋ねるのは明日にするのだった。

 

 

 

 しかし屋敷に一泊して次の日の朝になって、ホリィに幽波紋(スタンド)が発現する。

 仗助と同じように上手く扱えずに高熱で倒れてしまい、このままでは日に日に体が衰弱してしまう。

 

 ジョセフが予想していた通りの最悪な事態になったが、ディオを倒せば呪縛が解ける。

 妾は最初から探し出して、ぶっ飛ばすつもりだ。

 

 だがあいにく所在がわからないため、そう簡単にはいなかった。

 

 けれど、ここで承太郎が天才的な閃きを見せる。

 ディオを撮影した暗闇の写真の中に、エジプトのナイル川流域のみにしか生息していないハエが紛れ込んでいることに気づいたのだ。

 

 

 

 不幸中の幸いで、あと50日ほど猶予がある。

 それでもホリィは自分の幽波紋(スタンド)に気づいていて、あえて心配をかけまいと気丈に振る舞っていた。 

 

 そんな彼女を見ているのは、とても辛い。

 仗助のこともあり、早急にディオを倒そうと決意を固める。

 

 花京院も怪我が完治したらしい。

 妾たちが今後の計画を立てていると、部屋に入ってきて口を開く。

 

「やはりエジプトか」

 

 彼も肉の芽を埋め込まれたのもエジプトらしく、改めて決意表明をする。

 

「いつ出発する? 私も同行する」

 

 何故同行する気になったのかを尋ねると、本人もはっきりした理由はわかっていないようだ。

 しかし、一言だけ堂々と発言する。

 

「貴女のおかげで目が覚めた。ただ、それだけです」

 

 まだ傷が治ったばかりの額をトントンと叩いて、花京院はそのように答えた。

 そして彼はホリィさんのような女性がタイプだと判明したが、その辺りは正直どうでもいい。

 

 

 

 だが皆が彼女を助けるために、ディオを倒そうという気になったのは良いことだ。

 妾だけでもぶっ飛ばすのに支障はないが、それでは目標が見つからなかったり逃げられて、間に合わない場合がある。

 

 

 

 早ければ早いほうがいいので、のんびりしている暇はない。

 さらに協力者も多ければ多いほど見つけやすいし、敵が幽波紋(スタンド)使いならなおさらだ。

 

「じゃが、それはそれとして、今のままではちと不安じゃのう」

「もとより危険は覚悟の上です」

「妾も出鼻を挫くようなことは、言いたくはないのじゃが」

 

 アブドゥルや他の皆に向けて、申し訳なさそうな表情で頭をかいて続きを話していく。

 

「これだけの幽波紋(スタンド)使いがおれば、ディオを倒せるじゃろう。

 じゃがそれでも、何人か死ぬやもしれん。

 向こうも罠を張って待ち構えておるじゃろうしな」

 

 ディオは念写で見られていることに気づいていた。

 自身が狙われていることも予想していて当然なので、花京院に肉の芽を埋め込んで刺客として差し向けてきたのだ。

 

 

 

 そして、それは敵地に近づけば近づくほど敵が増える。苛烈な戦いになることを意味していた。

 

「じゃあ、どうしろって言うんだ。

 俺たちには時間はねえんだぜ」

 

 承太郎が苛立ちを隠そうともせず妾に詰め寄ってきたので、こっちも真面目な顔をして、寧に説明していく。

 

「お前たちは幽波紋(スタンド)に目覚めたばかりじゃ。

 それに比べて、ディオの手下はベテラン揃いじゃろうな」

「このガキ。言ってくれるじゃあねえか」

 

 承太郎は妾が幽波紋(スタンド)を使えることは知っている。

 しかし、見た目通りの八歳だと勘違いしているだろう。

 

 まずはそれを正すために、一時的に変身を解除して子狐に戻った。

 

「なっ!?」

「テメエ!?」

「狐だったのか!?」

 

 三者三様の反応を見せるが、この状態ではコンコンとしか喋れない。

 なので再び嵐の狐(ストーム・フォックス)を呼び出して、幽波紋(スタンド)の口から説明させる。

 

「姿を変える幽波紋(スタンド)もおるのじゃ。

 もしお前たちがそのことを知らずにエジプトに行けば、全員騙し討ちで殺されておるやも知れぬな」

 

 まあこの場合、知っていても防ぐのは難しい。

 けれど予め心構えをしておくことで、致命傷をギリギリで避けることぐらいはできるかも知れない。

 

 

 

 何にせよ幽波紋(スタンド)能力は多種多様で、どれだけ準備しても十分ということはない。

 

「妾は幽波紋(スタンド)使いになって長く、戦闘経験も積んでおる」

 

 そう言って嵐の狐(ストーム・フォックス)と合体して、また狐っ娘に変身する。

 続けて不安要素を解消するためのプランを、彼らに伝えていく。

 

「ゆえに妾は、お前たちの幽波紋(スタンド)を鍛えることにした。

 ディオと相対する前に、再起不能にならぬようにな」

 

 さらに波紋の呼吸を整えて、右腕に生命エネルギーを巡らせて光らせる。

 その状態で不敵な笑みを浮かべる。

 

深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)で全回復させれば、連日の修行にも耐えられよう」

 

 このイナリ、容赦せんと言わんばかりに、彼らを視線で射抜く。

 

 しかし皆、負けてばかりではいられないようで、やる気のようだ。

 望むところだぜと承太郎も言っているし、他の二人も良い顔をしている。

 

「もちろんジョセフ。お前もじゃぞ」

 

 ただしジョセフは除くため、あらかじめ伝えておく。

 

「オーノー! シショー! 儂はもういい歳で、実は腰がそろそろ!」

「波紋で若さを保っておるのに、よう言うわい」

 

 ジト目でジョセフを見ると、彼を露骨に視線を逸らす。

 相変わらず修行が大嫌いで、何かとサボろうとする癖は直っていないようだ。

 

 一発で見抜かれたことで冷や汗をかいているが、少しでも生存率を上げたい。

 例外はないので甘んじて受けるようにと、はっきり言い切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 スピードワゴン財団には、闇の一族であるワムウとサンタナが居る。

 だが今回、彼らはお留守番だ。

 

 夜間しか活動できないので時間に余裕があるときなら良いが、先を急ぐ旅では日中は戦闘や移動に制限がかかるからである。

 

 戦力としては非常に頼りになり、読書好きなサンタナはともかく武人気質のワムウは、吸血鬼の幽波紋(スタンド)使いディオと戦いたがるだろう。

 それでも50日という期限があって、保護者同伴でないと昼間は危なくて外に出せないため、駄目なものは駄目だ。

 

 世界中に悪の幽波紋(スタンド)使いは大勢居ても、スピードワゴン財団に所属していて正義の味方をしてくれる人は極僅かである。

 日雇いバイト的な者が多いけど、いつでも連絡が取れて仕事を受けてくれるとは限らない。

 

 基本的に幽波紋(スタンド)使いは非常にプライドが高かったり、気難しい者が多い。

 

 幽波紋(スタンド)は法律では裁けず、一般人には見えない。

 使い方次第で大犯罪を容易で成し遂げられて、決して捕まらないのだ。

 そんな強大な力が自在に扱えるなら、誰だって好き放題に使いたくなる。

 

 ゆえに大抵の幽波紋(スタンド)使いは、善悪の天秤が勝手に悪に傾いていく定めなのだ。

 

 妾も別に黄金の精神を持っているわけではないが、大抵のことはママエアロと流せるし、仲間と協力したり力こそパワーなのでわからせて指揮を取れる。

 

 とにかく悪に染まらず、善を貫ける幽波紋(スタンド)使いは殆どいない。

 その中でもトップクラスとなれば重宝されて当然であり、今回のエジプトの旅のように駆り出されるのも、珍しくはないのだった。

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