イナリの奇妙な冒険 作:狐っ娘の幽波紋使い
ホリィのことはスピードワゴン財団の医師たちに任せて、妾たちは急ぎエジプトに向かう。
ちなみに仗助の事情も知っているため、そちらにも医師団を派遣しているが、スージーQには心配をかけたくないので内緒にしていた。
とにかく出発する際に男四人と狐っ娘幼女一人が、かなり近い距離でババーンとなる。
百合の間に挟まれる男は粛清されると聞くけれど、逆パターンも別の意味でヤバい。誰得だよという気になってしまう。
しかし必ずディオを倒してホリィと仗助も助けるという決意表明でもある。
それで皆の気合が入るならと、甘んじて変なポーズを取って羞恥心で顔を真っ赤にするのだった。
その日のうちに飛行機に乗り、何度か乗り換えながらエジプト目指す。
途中でディオに念写でもされたのか、見られている感覚を覚える。
敵の
だがここでふと、妙な気配を感じて目を覚ます。
そちらに視線を向けると、何やらクワガタムシの
自分がのんびり寝ている間に、四人がそれを捕まえようとしているようだ。
しかし、承太郎の
あっさり避けられている。
弾丸を捕まえるほど素早く正確な動きなのに、敵はそれ以上に高速で動けるようだ。
おまけにクワガタが口に取り付けられている角のようなモノを、高速で伸ばしてきたので妾は無造作に手を伸ばす。
「ふあぁ~、……よっと」
アクビをしながら敵の角っぽいモノを、素手でむんずと掴んだ。
「何いいいーッ!!?」
「あっさり捕まえた!?」
四人が思いっきり驚いている。
しかし敵の
角の部分を持つ手に、少しだけ力を入れる。
情け容赦なく速攻で握り潰すと、骨が砕けるような音が聞こえた。
狐っ娘は鉄の扉を蹴破れるし、自動車を持ち上げられるぐらいパワーがある。
この程度は造作もなかった。
それはそれとして、
遠隔自動操縦型でなければ、本体も影響を受けるのは避けられない。
「ぎゃびいいいいっ!!?」
突然舌を押さえて、老人がのたうち回り始める。
それを見た妾は、やれやれと呟いて座席から立ち上がった。
「本体は任せる。妾は他にやることがあるゆえな。
それと、ジョセフも同行してくれぬか」
そう言って、他の仲間に本体の処理を任せる。
妾は飛行機の前方を目指し、迷いなく歩き出す。
「それは構わんが、シショー。一体何処に?」
いきなり良くわからないことを言い出した妾に、四人は戸惑っていたので、歩きながらはっきり口に出す。
「奴の目的は妾たちを殺すことじゃ。そして、飛行機内で仕掛けてきたのじゃぞ」
あとは言わなくてもわかるだろうと思っていると、ジョセフが冷や汗をかきながら口を開く。
「まっ、まさか!?」
妾は少し早く歩きながら頷いて、心配そうな表情になる。
「パイロットが、まだ生きておると良いのじゃが」
これを聞いて、全員の顔つきが一瞬で変わる。
舌から血を流す本体を速攻で叩きのめし、妾よりも先に前方部にある操縦室を目指す。
そして先頭を歩いているジョセフが、入る前に客室乗務員に呼び止められる。
「お客様、どちらへ?
この先はコックピットで、立入禁止です」
「知っている!」
「あっ! お客様!」
ジョセフは無視して先に進み、妾たちがあとに続く。
すぐに扉を開けて中に入るが、どうやら間に合わなかったようだ。
「おおっ! なんてこった! してやられた!」
「舌を抜かれている! あのクワガタ野郎!
既にパイロットたちを殺していたのか!」
用意周到なようで、パイロットたちにトドメを刺してから妾たちを殺しに来たようだ。
それに、自動操縦装置も破壊されている。
このままでは間違いなく墜落してしまうと頭を抱えていると、後ろから声が聞こえてきた。
「儂は! 旅の中止を暗示する! 塔のカードの
あれだけボコボコにされたのに、コックピットまで辿り着いたのだ。
見上げた根性だと感心はするが、流石にクワガタは呼び出せないようだ。
「お前らは、ディオ様のところには行けん!
たとえ、この機の墜落から助かったとて! エジプトまでは一万キロ!
その間、ディオ様に忠誠を誓った者共が四六時中、貴様らを付け狙うのだ!
世界中には、お前らの知らん想像を超えた
妾も世界中を見て回ったし、色んな
そんな自分でさえ、全てを知っているとはとても思えない。
確かに想像を超えた存在がひしめいているのは間違いない。
「ディオ様は!
ディオ様は──」
延々と喋り続けられると煩いし時間の無駄なので、妾は素手で一発殴って叫び続ける男を強制的に黙らせる。
「のじゃあっ!」
「ぶべらっ!?」
続いて反論があったので、堂々と告げる。
「ディオの
海底の棺桶で百年も寝ておった吸血鬼が、生意気を言うでないわ!」
ただそれだけで勝てるほど甘くはないし、相性もある。
それが最悪なら負ける可能性もあるけれど、自慢ばかりベラベラ垂れ流されるのは腹が立つ。
妾たちは誰が何と言おうとエジプトに行って、ディオを倒すのは決定事項だ。
今さら変更できるかと内心で少しだけ苛立ちながら、ジョセフに大声で呼びかける。
「妾が
操縦と不時着は任せたぞ!」
彼はこういう機械弄りが得意だったはずだ。
なのでここは、ジョセフに任せるしかないと判断した。
「うーん、プロペラ機なら経験はあるんじゃがのう」
腕を組みながらそう口にするジョセフに、やっぱり駄目かも知れないと妾は冷や汗をかく。
人生で三回も飛行機で墜落する目の前の老人のことを考えると、物凄く不安になってくる。
自分が日本に居る間にも、ジョセフはハイジャック事件に巻き込まれたり、
それを思い出した妾は、慌てて彼を押し退けて操縦席に座る。
「ああもう! わかった! 妾が操縦する!」
「シショーは昔から、操縦が得意じゃったからのう」
「いくら得意でも、マルチタスクはやりとうないわ!」
妾は前世で人型巨大ロボットのアーマメントバルガを、初見で完全に乗りこなせるぐらい機械操作が得意だ。
ただし装備が邪魔で操縦できない乗り物も多い。
まあ今は関係ないし、飛行機ぐらいチョロいもんである。
しかし、
なので妾がメインパイロットを務めるのは良いが、ジョセフにも副操縦士としてサポートしてもらう。
「飛行機を操縦する! 気流も操る!
両方やらなくてはいかんのが、正義の
覚悟は全くできてないので、ヤケクソ気味に叫ぶ。
それでも自身の仕事や、乗客乗員の安全を放棄する理由にはならないのだった。
妾は結局、プロのエースパイロットも顔負けな操縦技術で機体を保ち、
おかげで香港空港の滑走路に着陸するときも、殆ど揺れずに完全に止まることができた。
だが自身は脳筋で大雑把な性格ゆえに、いくら強力な
いつ何処で加減を見誤って墜落するかわからないし、パイロットも亡くなっている。
近場の空港に向かうのが当たり前で、エジプトまでは飛んでいけない。
それに、肉体はともかく精神的にかなり疲れた。
主に乗員乗客の命がかかっていて、常に繊細なコントロールを要求される気苦労という意味でだ。
距離が遠いと効果も範囲も完全に妾のイメージ次第になるので、調整が非常に難しい。
今回は人命がかかっていたからか、特に問題は起きずに何とか着陸できたのは良い。
だが致命的ではない範囲でトラブルが発生する可能性があって、全く気を抜けなかった。
ゆえに香港空港からは、ジョセフがスピードワゴン財団に協力を頼む。
現地で新しい乗り物をチャーターするのだが、取りあえず飛行機はもう懲り懲りだ。
別な移動手段とルートでエジプトを目指すのが、もっとも成功率の高いプランなのだった。