イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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ポルナレフ

 ジョセフは船を手配して、海のシルクロードを行ってエジプトを目指す。

 確かに大勢の乗客乗員を巻き込む飛行機にはもう乗りたくないし、妾も賛成である。

 

 そんなことをレストランで話し合っていると、角刈りのフランス人が困った顔をして近づいてくる。

 どうやらメニューが読めないから助けて欲しいらしいが、ジョセフは中途半端にしか理解していないのに、馴染みがない料理ばかり頼もうとしている。

 

 なので無駄に人生経験と食のこだわりが強い妾が、簡単に説明する。

 そちらも美味しいけれど、香港に来たばかりの人は抵抗あるだろう。

 比較的無難な物に変更し、改めて注文しておいた。

 

 やがて、少し待って頼んだ料理が届く。

 妾は小皿に取りながら角刈り男に話しかける。

 

「それでディオの刺客が、妾たちに何の用じゃ」

 

 隠してはいるが微かな殺気と、半径3メートルの気流が乱れている。

 頃合いを見計らっていることに、気づいていた。

 

 だが今は食事中で、彼も幽波紋(スタンド)を出していない。

 自分も腹が減っているので食べ終わってからで良いと判断し、戦いよりも食欲優先である。

 

 ゆえに視線を合わせることなく、マイペースで尋ねる。

 

 謎のフランス人の男はギョッとした顔でこちらを見て、今の発言で他の仲間も気づいたようで空気が一気に重くなる。

 

「新手の幽波紋(スタンド)使いか!」

 

 誰が叫んだのかはわからないが、次の瞬間にはテーブルの下から銀色のレイピアが突き破ってきた。

 

 妾はそれを無造作に掴んで、強引に止める。

 

「馬鹿な! 俺の銀の戦車(シルバーチャリオッツ)を素手で!?

 これがディオ様に並ぶ最強の幽波紋(スタンド)使い! イナリか!」

 

 何か知らないうちに、ディオと同格にされていた。

 妾としては不服ではあるが、奴が脅威に感じているのは自分とジョースター家だ。これではっきりとした。

 

「ここでは店に迷惑がかかる。

 やるなら食事が終わってから、外でじゃ。

 お前が今すぐ再起不能になりたいのならば、相手になるがのう」

 

 壊した分は彼から取り立てるつもりだ。

 しかし、そう言えば名前を聞いていないことに気づく。

 

 すると妾たちから距離を取り、幽波紋(スタンド)も一旦解除して堂々と答える。

 

「ポルナレフ! 名乗らせていただこう!

 ジャン・ピエール・ポルナレフ!」

 

 妾も自己紹介をしたほうが良いかなと考えたが、既に知っているし必要ないだろう。

 

「流石は風を意のままに操る幽波紋(スタンド)! 嵐の狐(ストーム・フォックス)

 しかし、この私も自惚れではない!

 この私の剣さばきは! 断じて自惚れではない!!!」

 

 ポルナレフが懐からコインを数枚取り出し、それを空中に放り投げた。

 そして重なり合った瞬間に、銀の戦車(シルバーチャリオッツ)を出して剣で一突きし、五枚を串刺しにする。

 

「私の幽波紋(スタンド)、チャリオッツのカードが持つ暗示は、侵略と勝利!

 こんな狭っ苦しい場所で始末してやってもいいが、イナリ!

 お前の風の能力は、広い場所のほうが真価を発揮するだろう!

 そこを叩きのめすのが、私の幽波紋(スタンド)に相応しい! 勝利!」

 

 コイツほんまもん馬鹿だと思って呆れてしまう。

 しかし結局は、全員表に出てポルナレフと戦うことは変わらない。

 妾たちは場所を変えて、改めて彼と決闘することになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 タイガーバームガーデンに移動した妾だったが、ディオの手下なのに騎士道精神を厳守するポルナレフを見て、少しだけ考えを変える。

 

「さてと、出番じゃぞ。アブドゥル」

 

 急に指名されたアブドゥルだけでなく、このまま妾と戦うはずだったポルナレフも驚く。

 

「わっ、私ですか!?」

「お前じゃないのかよ!?」

 

 しかしこれには理由があり、そのことを簡単に説明していく。

 

幽波紋(スタンド)使いは、戦うことで成長していく。

 そして妾が見たところ、アブドゥルとポルナレフの実力は近い」

 

 このまま自分がぶん殴って速攻で終わらせては、経験を積む機会を失うことになる。

 特に最短ルートでディオの元に向かう以上、仲間のレベルアップに使ったほうが良いと判断した。

 

「もしアブドゥルや他の者が断れば、無理にとは言わぬ。

 妾が一撃で仕留めてやろう。

 ……じゃが!」

 

 ここで妾は仲間たちを真っ直ぐに見つめて、はっきりと告げた。

 

「ディオはポルナレフより強いぞ」

 

 妾よりは弱いとは言わなかった。

 

 しかしディオの幽波紋(スタンド)能力は未知数で、初見殺しの何かを持っていたら自分でも不覚を取る可能性はある。用心するに越したことはない。

 

 それに高レベルの自分が雑魚敵を倒すより、低レベルの仲間に経験値を分配したほうが、パーティーの総合能力は高くなる。

 

「もしポルナレフに勝つ自信がなければ、妾が代わろう。

 危うくなれば加勢するゆえ、安心して戦うといい」

 

 せっかくの成長する機会を逃すのは、やはり勿体なかった。

 どうするとアブドゥルに告げると、決意した表情で前に出る。

 何も言わなくてもわかるが、ポルナレフにも言っておく。

 

「聞こえておるじゃろうが、妾と戦いたければ、まずはアブドゥルを倒すことじゃ」

「ふんっ、誰が相手だろうと銀の戦車(シルバーチャリオッツ)の敵ではない!」

 

 何か切り札があるのは間違いなさそうだ。

 だがポルナレフが、ディオよりも弱いのも事実である。

 ここで負けるようでは、どうせ先には進めない。

 

 なので取りあえず危ないときは手助けすることを決めて、後方腕組み師匠のようなポジションで二人の対決を見守るのだった。

 

 

 

 

 

 

 勝負の結果は予想通り、アブドゥルの勝ちだった。

 プロテクターを脱ぎ捨てて身軽になった銀の戦車(シルバーチャリオッツ)は、なかなかのスピードだった。

 それでも妾よりは遅いが、普通の幽波紋(スタンド)使いなら目で追うのも困難だろう。

 

 とにかく勝負がついて火達磨になっても騎士道精神を貫き、ポルナレフは邪悪な性格ではないことが証明された。

 そんな彼に感銘を受けたのか、肉の芽を消滅させてディオの洗脳を解く。

 

 

 

 あとは好きにすれば良いのだが、次の日にスピードワゴン財団がチャーターした船を目指して港に向かう。

 

 すると昨日倒したポルナレフが目の前に現れた。

 別に戦いに来たわけではなく、何か話があるようだ。

 

「まだ、ディオの呪縛を解いてもらった礼を言ってない」

 

 何とも律儀な人だなと思いつつも、悪い気はしない。

 だが誰も彼の礼を受け取る人はいないようで、もう一つの用が本題のようだ。

 

「マダム・イナリ。物凄く奇妙な質問をさせていただきたい」

「奇妙な質問じゃと?」

 

 妾は何だろうと首を傾げながら、彼の質問を待つ。

 

「妹を襲った男を探している。顔はわからない。

 だが、そいつの腕は両腕とも右腕なんだ」

 

 確かに奇妙な質問だと思ったが、何かが引っかかる。

 腕を組んでウムムと考えている間に、ポルナレフが自分ことを語ってくれた。

 

 何とも壮絶な過去だ。

 辱めを受けた妹の敵討ちを誓うのも無理もない話で、そこをディオに付け込まれたのだろう。

 

 しかし犯人の男が幽波紋(スタンド)使いと聞いて、妾はようやく思い出す。

 

「それは恐らく、J・ガイルじゃな」

「知っているのか!?」

「うむ、知っておる」

 

 物凄い食いつきで距離を詰めてくるポルナレフに若干引きながら、続きを話していく。

 

「財団の依頼で、妾はある事件の調査しておったのじゃ。

 そこでJ・ガイルを知ったのじゃが、確かに両方が右腕の男じゃった」

 

 相変わらずポルナレフとの距離が近く、情報を全部話すまで離れてくれそうにない。

 

 一般人には混乱を避けるために秘匿するが、彼なら別に隠すようなことではないので、落ち着いて説明を続ける。

 

「じゃがJ・ガイルは妾が邪魔だったのか、攻撃を仕掛けてきた」

 

 奴は鏡のように反射して、光速で移動する幽波紋(スタンド)能力だった。

 しかし妾がいくら負ける気はなくても、場所が都会では否応なしに民間人を巻き込む。

 

 形勢不利を理解したあとは全力で逃げ出したので、残念ながら仕留められなかった。

 

「ううむ、シショーから逃げきるとは」

「重症の民間人を放っておくわけにはいかぬ。

 それに事件に幽波紋(スタンド)使いが関わっているかの調査が、目的じゃったしな」

 

 おかげで怪我はしても、犠牲者は一人も出さずに済んだ。

 犯人にはまんまと逃げられてしまったが、敵の幽波紋(スタンド)能力も明らかになり、一応仕事はした。

 

「だがその民間人は、シショーが居て良かったのう」

 

 ジョセフたちがホッとした表情で口を開くので、妾は静かに頷く。

 

「事件を未然に防ぐことはできなんだが、命は助けられたからのう」

 

 本当に危ないところだった。

 もう少し治療が遅ければ死んでいただろうし、彼女と友人の二人は助かったのだ。

 捜査が一歩前進したのも含めて、とにかくヨシと思っている。

 

「そう言えば民間人の名は、シェリー・ポルナレフじゃったな」

 

 ふと誰かに似ている気がしたので、思い出したことをそのまま口にする。

 

「俺の妹じゃねえか!?」

 

 目の前の彼の叫びに、あらホントとばかりに妾は呑気に驚く。

 だがポルナレフは鼻息荒く興奮しており、しかも何だかやけに距離が近い。

 

「マダム・イナリ! このジャン・ピエール・ポルナレフ!

 妹の命を救ってくれたことを、改めて感謝するぜ!」

「当然のことをしたまでじゃし、気にせんでもええぞ」

 

 困っている人は助けているし、悪人は懲らしめるのが妾である。

 なのにいちいち感謝されていては、小っ恥ずかしくて堪らなくない。

 羞恥のあまり表を歩けなくなってしまう。

 

 今も照れて頬をかいてしまい、この微妙な空気を早く何とかしたいと話題をそらす。

 

「何にせよディオは、J・ガイルを仲間にしておるじゃろう」

 

 奴は悪の幽波紋(スタンド)使いだ。

 能力も強力なのもあって、仲間にして守らせている。

 

 エジプトへの旅の道中でも、きっと彼のような強敵たちに何度も襲われることになるだろう。

 

 そしてポルナレフは、ビシッと身なりを正す。

 

「俺はアンタたちと共に、エジプトに行くことに決めたぜ!

 ディオを目指していけば、きっと妹の仇に出会える!」

 

 ポルナレフの言葉は、きっと正しい。

 J・ガイルがディオの仲間になって忠誠を誓っている可能性は高く、妾たちを素通りさせるという選択肢はないからだ。

 

 何処で襲ってくるかは不明でも、頼りになる幽波紋(スタンド)使いがまた一人仲間になる。

 

 彼の申し出はありがたく、戦力的にもプラスだ。

 妾たちで反対する者はいなかったのだった。

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