イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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J・ガイル

 途中で何度か船を乗り継ぎ、妾たちはやがてインドのカルカッタに到着した。

 非常にエネルギッシュな街で、大勢の人たちに囲まれて狐耳と尻尾にベタベタ触れる。

 

 ゆえに一時的に承太郎の背中にくっついて、緊急避難させてもらう。

 

 

 

 それはそれとして途中で飲食店で食事をしていると、トイレに行っていたポルナレフが慌てて戻って来る。

 どうやらJ・ガイルを見つけて、妹の仇を探すために別行動を取るようだ。

 

 そして復讐のために行動を共にしているだけだと主張し、彼の身を案じて集団で動くようにと反論するアブドゥルと大いに揉める。

 

 色んな事情があるだろうが、どうにも折り合いがつかずにポルナレフと別れる。

 そして妾たちなりに、J・ガイルを追うのだった。

 

 

 

 しかし馬鹿正直に情報を集めて追跡しても、敵の幽波紋(スタンド)使いと会えるとは限らない。

 こういう場合は直感に従ったほうが良いと、長年の経験でそう判断する。

 

 単独行動には慣れているし、戦闘になっても能力はわかっていて対処もできるため、ちょっと散歩して来ると言ってホテルの外に出ていく。

 

 

 

 J・ガイルを探して、雨上がりで濡れている道をのんびり歩く。

 すると彼ではないが、カウボーイ姿の妙な男を見つけた。

 

(んっ? あの男は、……もしや)

 

 裏稼業では有名な幽波紋(スタンド)使いで、名前は何だっけと首を傾げる。

 

 妾は人生経験が豊富すぎて、引き出しがとても多い。

 しばらく会わないと、思い出すのに時間がかかるのは良くあるのだ。

 

 彼は少し離れた場所に居る狐っ娘には気づかずに、何やら大声で話している。

 

「銃は剣よりも強し! んんー! 名言だな! これは!」

 

 誰と会話しているのかと視線を追うと、どうやらポルナレフのようだ。

 

「ホル・ホース! 俺の名前だぜ!

 エンペラーのカードを暗示する、幽波紋(スタンド)使いってわけよ!」

 

 それを聞いて思い出す。

 銃の幽波紋(スタンド)を使う男だ。

 

「アンタらを始末してこいって、ディオ様に金で雇わってわけさ」

 

 しかしポルナレフは、目的のJ・ガイルではなくガッカリしたようだ

 

「おい、田舎者。テメーの自己紹介は必要ないぜ。

 両右手の男を知っているのか?」

「勝手な野郎だ。アンタが聞いたから答えたんだ。

 ……まあいい。奴とは一緒に来た。近くに居るぜ」

 

 聞き逃がせない発言だ。

 つまり今この場には、敵の幽波紋(スタンド)使いが二人いる。

 

「何っ!? どいつだ!」

 

 妾なら相手が複数でも問題はないが、ポルナレフには少々厳しい。

 J・ガイルの幽波紋(スタンド)能力を知っていても、対処できるかは全く別だからだ。

 

 ポルナレフは、慌てて周囲の人たちを探し出した。

 妾はつい条件反射で、物陰に隠れてしまう。

 

「それこそ言う必要がねえことだぜ。

 このホル・ホースが、あんさんを始末するからなあ」

「ふん、おめえのようなカスは、皆そう言うぜ。

 そしていつも逆にやられる」

 

 しかしホル・ホースは、ポルナレフの発言に怒るのではなく笑いだす。

 逆に煽ってくるので、ただでさえ妹の仇が近くにいるのだ。

 態度には出さないが、冷静さを欠いているのは間違いない。

 

「このホル・ホースのエンペラーはあんさんより強いから、俺の幽波紋(スタンド)の能力を、戦う前に教えといてやるぜ。

 銃は剣よりも強し! んんー! 名言だな! これは!」

 

 さっきもそんなことを言ってたが、その言葉が相当気に入っているようだ。

 物陰に隠れながら、妾はそう思った。

 

 しばらく二人で煽って笑い合っていたが、やがて唐突に戦いが始まる。

 

「「テメー! ぶっ殺す!」」

 

 先に仕掛けたのはホル・ホースだった。

 銃の幽波紋(スタンド)を呼び出し、素早く発射する。

 

「甘く見たな! ポルナレフ! やはりテメーの負けだ!」

 

 ポルナレフも銀の戦車(シルバーチャリオッツ)の甲冑を脱ぎ捨てて身軽になる。

 弾丸を弾こうとするが、軌道が途中で曲がって剣を避けて直進する。

 

 このままだと頭部に当たるのは間違いないが、妾はあえて隠れたまま動かなかった。

 

「ポルナレフ!」

 

 アブドゥルが近づいてきているのはわかっていた。

 彼は咄嗟にポルナレフを突き飛ばして、危ないところで弾丸を躱す。

 

「なっ!? アブドゥル!」

「心配してきてみりゃ! 言ったことじゃあない!

 驕りが強すぎるぞ! ポルナレフ!」

「しっ、心配だと!?」

 

 二人は慌てて立ち上がり、なおも言い争いを続ける。

 

「この野郎! まだ説教するつもりか!」

「相手はお前を知り尽くしているんだぞ!

 お前は一人で生きてきたと言ったが!

 これからは、お前一人では勝てんぞ!」

 

 幽波紋(スタンド)は初見殺しが多い。

 今のもアブドゥルが助けに入らなければやられていた。

 彼が言っていることはもっともだ。

 

 まあ能力が知られても関係なく強いタイプもいるが、考えると妙に小っ恥ずかしくなってくる。

 

 妾は彼らの会話に集中する。

 弾丸が空中で軌道を変えて戻って来ているので、油断大敵だ。

 

 さらに言えば敵はホル・ホースだけでなく、もう一人いる。

 妾は周囲を注意深く観察する。

 

 すると水たまりに潜んで、アブドゥルを背中から刺そうとしている幽波紋(スタンド)を見つけた。

 

嵐の狐(ストーム・フォックス)!」

 

 妾は風を起こして、近くの店にあった大きな布を吹き飛ばす。

 アブドゥルが映っている水溜りの上に落とした。

 

 幽波紋(スタンド)が突然出現し、それが見える人たちの目を引く。

 やっぱり特に意味はないため、一連の演出をしたあとに勝手に消滅する。

 

 そして反射しなくなって閉じ込められる前に、慌てて出てきた幽波紋(スタンド)を、待ち構えていた妾が勢い良くぶん殴った。

 

「のじゃのじゃのじゃのじゃぁッ!!!」

 

 ポルナレフは敵討ちに拘っているようだが、妾はそんなの知ったこっちゃない。

 光の速度で移動できるようだが、直線にしか動けないので待ち伏せるのは簡単だ。

 

 ただし、それに当てるのは並大抵のことではない。

 自分には可能なので問題はなかった。

 

 突然出てきた狐っ娘が、ハングドマンの幽波紋(スタンド)をボコボコにする。

 さらに力強く、トドメの一撃を放つ。

 

「のじゃああああっ!!!」

「ぶべらああぁ!!?」

 

 地面に叩きつけられる寸前に消滅したので、もはや再び呼び出すのは不可能だ。

 

 そしてあまりの急展開に、アブドゥルの迎撃も止まった。

 ホル・ホースも冷や汗をかいて幽波紋(スタンド)のコントロールが乱れたので、弾丸は外れ、足元の地面にめり込んで消える。

 

 さらには敵スタンドを再起不能にしたということは、当然のように本体も無事では済まない。

 近くに隠れていたJ・ガイルが悲鳴をあげて倒れ、這いずりながらもこの場から逃げようとしている。

 

 

 

 それを見つけたポルナレフが追いつき、立ち塞がった。

 銀の戦車(シルバーチャリオッツ)を呼び出す。

 

「ひいーっ!? ひいいいいっ!?」

「これからテメーは、泣き喚きながら地獄に落ちるわけだが、一つだけ地獄の番人には任せられんことがある」

 

 だが往生際が悪いJ・ガイルは、最後の力を振り絞って立ち上がる。

 ポルナレフに背を向けて、ヨタヨタ歩きで必死に逃げようとしていた。

 

「それは! 針串刺しの刑だーッ!!!」

 

 積年の恨みを晴らすように、凄まじい速度で切り刻まれていく。

 ポルナレフの幽波紋(スタンド)は、今もっともパワーが高まっているようだ。

 

「この時を長年待ったぜ!」

 

 最後に鋭い突きを放ち、Jガイルは勢い良く吹き飛んだ。

 そして偶然近くにあった鉄柵に逆さ吊りの形で引っかかって、完全に死亡する。

 彼はポルナレフの妹以外にも数多くの人々を殺めてきた余罪があり、可哀想だが残当なのだ。

 

 

 

 なお、その間にホル・ホースが何をしていたかと言うと、いつの間にか姿を消していた。

 過去に何度かやり合ったことがあるが、奴は妾を見るとすぐに逃げるのだ。

 

 どう足掻いても勝ち目がないとわかっているのか、その思い切りの良さや逃げ足の速さは、感心せざるを得ない。

 

 ついでに、彼のことを愛している女の人が妨害してくる。

 ホル・ホースは行く先々で無駄にモテるという、どうでも良いことを思い出すのだった。

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