イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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ンドゥール

 スピードワゴン財団から、必要な物資を受け取った。

 さらにホリィの容態を尋ねると、やはり容態は良くないようだ。保ってあと一ヶ月ほどらしい。

 

 それにディオの潜伏しているらしい建物に九人の男女が集まり、何処かに旅立ったようだ。

 

 間違いなく、敵の幽波紋(スタンド)使いだろう。

 これまでタロットカードの者たちを倒してきたのに、一難去ってまた一難で休む暇がない。

 

 

 

 物資や情報が手に入り、ヘリが飛び去っていくのを見送る。

 そして妾たちはこれからバギーに乗って砂漠を横断する予定なのだが、その前にやることがあった。

 

 視線こそ感じなくても、ずっと何者かの気配がまとわりついて離れないのだ。

 

「イギーも気づいておるな?」

「ワオン!」

 

 どうやら肯定のようで、何処に潜んでいるかは大体はわかっている。

 なので妾は崖に顔を向けて、大声で叫ぶ。

 

「そこの幽波紋(スタンド)使い! 居るのはわかっておるぞ!

 隠れても無駄じゃ! さっさと出てくるがいい!」

 

 もしコイツを放置したら、飛び去ったヘリを落とされるかも知れない。

 ディオの手下の幽波紋(スタンド)使いは、民間人であろうと殺すのを躊躇わないのだ。

 

 もし妾の直感が正しいのなら、今ここで再起不能にしておかなければいけない。

 他の面々も突飛な行動には慣れたもので、油断なく周囲に気を配る。

 いつでも幽波紋(スタンド)を呼び出せるように、無言で各々が構えた。

 

(直感は外れたことはないが、敵の姿が見えぬのはやりにくいのう)

 

 気配で大体の位置はわかるが、見えていないと大雑把な狙いしかつけられない。

 妾の幽波紋(スタンド)は強力だけど、もし外して崖を抉って崩落させたら非常に申し訳なかった。

 

 上には石造りの建物があるし、何らかの施設なのは間違いなく、無闇やたらと壊すわけにはいかないのだ。

 

 しかし、しばらく待っても姿を現すことはない。

 

 もしかしたら場所を変えたのかも知れないと考えていると、妾から半径3メートル以内の気流が微かに乱れた。

 

「水の幽波紋(スタンド)か!」

 

 この砂漠でとても信じられないが、何処からともなく水が染み出してきて手の形を取る。

 それが突然、妾に襲いかかってきたのだ。

 

 不意打ちは通用しないが、警戒したうえで背後を取られるとは想わなかった。

 意外だったので少しだけ驚いたが対応できるため、いつものように条件反射で殴りつける。

 

「のじゃあッ!」

 

 水の幽波紋(スタンド)だけあって、途中で変幻自在に軌道を変えてきた。

 しかし妾も周囲の気流を読めるため、射程内の行動は手に取るように把握できる。

 

 寸分違わずに拳を直撃させ、周囲に水飛沫が飛ぶ。

 

「ふむ、浅いか」

 

 敵の幽波紋(スタンド)を吹き飛ばして、水は足元の砂に吸い込まれた。

 しかし感覚的に、致命傷は与えられていなさそうだ。

 

 そして一体何処から攻撃しているかを調べるため、妾は感覚を研ぎ澄ませて周囲を探る。

 

「ふむ、こっちじゃな」

 

 先程もそうだったが、大体の位置や方角ならわかる。

 なのでそっちに歩いていけば、いつかは出会えるはずだ。

 

 妾が前に踏み出すと、イギーもトコトコと付いて来る。

 

「いや別に一人で、……まあ良かろう」

 

 イギーは自分の前を歩いている。

 姉御を守る舎弟の役目か、飼い主の護衛する忠犬といったところだろう。

 彼の心遣いを無下にするのも何だし、取りあえずこのまま進むことにする。

 

 しかしまあ、さらにワンコだけでなく他の面々もゾロゾロと付いてきたので、何とも大人数だ。

 

 

 

 その後は、特に語ることはない。

 音を感知して水で攻撃してくる幽波紋(スタンド)使いを、真っ直ぐ行って右ストレートでぶっ飛ばして倒した。

 

 至っていつも通りだが、自ら死を選んだので何も情報を喋る気はないようだ。

 

 いつもの自分なら深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)で蘇生するが、今回は彼を見捨てることにした。

 

 理由は、悪の救世主であるディオの存在が大きすぎたからだ。

 命を助けても情報を喋るぐらいならと、また自殺する可能性が高い。

 

 さらに彼は敵だが、妾たちに対して敬意を払っていた。

 

 そんな彼から九栄神の存在も告げらて、負けても悔いはなくこのまま逝きたいと願われたのだ。

 叶えてやろうと思い、誇り高いンドゥールが息絶えるのを静かに見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 砂漠を越えるためにバギーに乗って、妾たちは移動する。

 今はイギーが膝に乗っていて動くに動けない状態だ。

 彼にとっては自分は飼い主や母親よりも、姉御として認識されているらしい。

 

「ジョースターさん! 何とかしてくれよ!

 なんでこのクソッタレなワンコウがシートに座って!

 俺たちが、荷台に居なきゃならねえんだよお! 狭くって腰が痛えよ!」

 

 ポルナレフの言うことはもっともだが、そんなこと言われても困る。

 イギーは、残念ながら妾以外は心は許していないし気性も荒い。

 

 狐っ娘以外は、誰だろうと手を出すと火傷するぜ的な感じて牙を剥くのだ。

 

「イギーは妾にとっては忠犬じゃが、皆は違うからのう。

 コーヒーガムを噛み終わったら荷台に移動するゆえ、それまで我慢してくれぬか」

「いやいや! イナリさんのせいじゃねえから、気にしないでくれよ!」

 

 ポルナレフが気遣ってくれるが、やっぱり申し訳ない。

 それに妾は野生や子狐生活が長かったので、日向ぼっこができれば取りあえずはOKだ。

 

 なので、久しぶりに幽波紋(スタンド)を解除して本体に戻る。

 そして次の街に到着するまで荷台でイギーと二匹で重なるように丸まり、少々揺れるがのんびりお昼寝するのだった。

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