イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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磁力

 アヌビスの幽波紋(スタンド)を仲間にした妾は、移動中の暇な時は刀の手入れをするようになった。

 

 普段は殴ってばかりだが武器の扱いは得意だし、メンテナンスも慣れたものだ。

 人生経験もあるのだろうが、こっちの機械全般も意外と何とかなる。

 理屈ではなく直感で、ええいこのボタンだという感じだけど、問題なく動いてるので良しとしておく。

 

 ちなみにアヌビスから神が消えて、呼び捨てだ。

 彼を振るって一対多数の模擬戦を行い、常に優位に立ち回り続けた。

 実力を認めたのか、一気に距離が近くなる。

 

 今ではすっかり相棒ポジになった気か、俺たちって相性ピッタリのズッ友ですよね。一生付いて行きやす姉御的な思念を、結構頻繁に送ってくるようになる。

 妾としては仕事をしてくれるのは嬉しいが、そこまで友情を深めたつもりはない。

 

 こっちはまだ知り合って日も浅いのに、そんなにグイグイ来られてもという気分だ。

 

 けど何だかんだで面倒見が良いのか、イギーに続く第二の舎弟であるアヌビスの刀身や鞘を、細かい所まで丁寧に磨いていく。

 

 

 

 しかし彼は幽波紋(スタンド)で切れ味は鋭いが、五百年も昔の刀剣だ。博物館の倉庫に保管され続けていたとはいえ、年代物には違いない。

 

 今後も実戦で使っていくには、現代の刀鍛冶職人に鍛え直してもらう必要があるだろう。

 

 あとは巫女服を着た狐っ娘が、エジプトの刀を振るうのは柄的にどうなのかと思う。

 

 ついでにうちの神社に付喪神として祀ると約束したけれど、神道は日本の土着信仰ではあるが、他国の神と混ざっている場合も多い。

 

 結構ガバガバ判定でも、参拝客にアヌビス神だと説明するわけにはいかない。

 打ち直すなら日本刀の付喪神だと誤魔化すべきだろうし、見た目もそれっぽく変えておくべきだろう。

 まあその辺りは帰国後に彼と相談して、好みの鞘や柄などを選んでもらうことになる。

 

 

 

 それはそれとして、妾たちはようやく次の街に到着した。

 入る前に一旦ジョセフが公衆トイレに行き、しばらく待つ。

 

 すると悲鳴が聞こえてきたので慌てて様子見に行くと、痺れて地面にひっくり返っているジョセフを見つける。

 

「ふうー、しかしびっくりしたわい。

 電気が通っているとは、地中に電線が通っていたのかな」

 

 起き上がりながら首を傾げるジョセフに、妾はそういうこともあるかも知れないと思った。

 

 しかし彼に近づいたときに、何かが妙だと気づく。

 すぐにあることを思いついて、はっきり告げる。

 

「ジョセフ。いつの間に磁力を帯びたのじゃ?」

「えっ?」

 

 布を巻いて隠しているが腰に差したアヌビス神の刀が、ジョセフにくっついている。

 引っ張って離しても、またすぐにくっつくのだ。

 なので、磁力を帯びているのは間違いない。

 

「心当たりは?」

「心当たりと言われても、……もしや!?」

 

 そう言ってジョセフが目の前の岩を見たが、そこには何もない。

 

「ない! 岩にあったソケットが消えておる!?」

「ふむ、恐らく敵の幽波紋(スタンド)使いの仕業じゃな」

 

 ここは街の近くで、周囲には人が多い。

 五感を研ぎ澄ませても、今から見つけるのは難しいだろう。

 

 妾はどうしたものかと考えるが、良い案は出てこない。

 

 直感で進む方向を決めれば、運命力でいつかは見つかる。

 しかしジョセフの磁気が時間経過で強まるタイプだったら、あまり悠長にはしていられない。

 

「目の前に出てきてくれれば楽なのじゃが。……そうじゃ!」

 

 妾は少し考えて、あることを思いついて手を叩く。

 

「ジョセフ! 隠者の紫(ハーミットパープル)じゃ!」

「そっ、そうか! 敵の幽波紋(スタンド)使いは、まだ近くに居るはず!

 隠者の紫(ハーミットパープル)で念写すれば!」

 

 ちょうど念写用のカメラを持っていたので、すぐに幽波紋(スタンド)能力を発動させた。

 

 顔写真が出てきたので、他の仲間たちと情報共有する。

 とにかくこの女性を探して捕まえるか、もし逃げたり攻撃されたら再起不能も仕方ないと決めた。

 

 とにかく事態は一刻を争うため、急いで捜索を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 早いところ敵の幽波紋(スタンド)使いを見つけて、倒さないといけない。

 なので少々危険だが、二人一組で捜索する。

 

 ジョセフとアブドゥル、承太郎と花京院、ポルナレフとイギー、そして妾はアヌビスと組むので殆ど一人のようなものだ。

 

 けれどパーティーメンバーの中で最高戦力だし、単独行動でも問題はない。

 幽波紋(スタンド)も遠近両方に対応できるため、もし襲撃されても何とかなるだろう。

 

「しかし、見つからんのう」

 

 ジョセフの隠者の紫(ハーミットパープル)で、新手の幽波紋(スタンド)使いの顔はわかった。

 

 しかし、この広い町の一体何処に居るやらだ。

 いつかは見つかるにしても、どれだけ先になるかは不明である。

 

「敵が一人とは限らぬしのう」

 

 妾はもしもの可能性を考えていると、どうやら幽波紋(スタンド)使い同士は引かれ合うようだ。

 

 曲がり角で問題の女性とバッタリ出会ってしまった。

 

「「あっ」」

 

 同時に声が出た。

 さらに彼女から少し離れた所に、ジョセフとアブドゥルを見つける。

 どうやら二人共磁気を帯びているようで、ピッタリくっついて四苦八苦して目標の人物を追跡していた。

 

「お前はイナリ!?」

「そう言うお前は……まあ、誰でもいいか」

 

 今は町中で、周囲には人の目がある。

 アヌビスを使うわけにはいかないので、妾はいつも通りに右ストレートでぶん殴る。

 

「のじゃあッ!」

「ぎゃひいいっ!?」

 

 幽波紋(スタンド)は戦闘向きではないようで、身体能力も見た目相応のようだ。

 妾にぶん殴られた彼女は、色んな物を引きずっているジョセフとアブドゥルのほうに吹っ飛んでいき、足元に転がった。

 

「シショー! ナイスタイミングじゃ!」

「助かりました! イナリさん!」

「やれやれ、間に合って良かったわい」

 

 ジョセフが隠者の紫(ハーミットパープル)で、倒れている彼女の首を絞める。

 ジワジワと絞め落としていくが、どうやら脱出できないようだ。

 

 やがて口から泡を吹いて白目を剥き、完全に気を失う。

 

 幽波紋(スタンド)も解除されたのか磁力も消えて、少々呆気ない幕切れだが敵をやっつけたので良しとするのだった。

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