イナリの奇妙な冒険 作:狐っ娘の幽波紋使い
仗助たちと別れた妾は、友人の承太郎を杜王町のグランドホテルに案内した。
その道中に写真の男、片桐安十郎について詳しく聞かされる。
見かけたらよろしく頼むということで、杜王町に潜んでいるのはほぼ確定らしい。
何とも面倒なことになった。
だが放っておくこともできないし、取りあえず娘の
しかし、神社を出たのは久しぶりだ。
すぐには帰らず自由気ままに散策し、昼は適当な飲食店で済ませてのんびり歩く。
やがて通りかかったコンビニの前に、多くの人が集まっていることに気づく。
「危険だから! 下がって! 下がって!」
警察の車も停まっている。
お巡りさんが近づかないようにと、大勢の野次馬を押し留めていた。
「コンビニ強盗が女子店員を人質にとって、立て籠もってるんだってよ!」
それは何とも大変なことが起きたものだ。
学校が終わったのか、仗助と康一君も騒ぎを聞きつけてやって来たらしい。
コンビニのほうを見ていて、妾の存在には気づいていない。
「見ろ! 出てきたぞ!」
誰かの声で、妾もそちらに顔を向ける。
屈強な一人の男が女子店員にナイフを突きつけ、脅しながら自動ドアを開けて外に出てきた。
「動くな! ナイフを捨てろ!」
警察官が犯人を説得するが、あまり効果はなさそうだ。
「女を離せ!」
「うるせえ! 下がれコラァ!」
完全にブチ切れていて、誰の目にも男が正気を失っているのは明らかだった。
「そこの野次馬ども! どけえッ!
車に乗んだからよォ!」
さらに仗助たちは車の前に居たので、犯人の目に留まったようだ。
髪型を馬鹿にされて逆上し、周囲の忠告を無視して犯人に向かって歩いていく。
そして
何とも豪快なやり方だ。
けれど元通りに修復できるので、仗助にしかできない倒し方といえる。
やがてアーミーナイフを腹に埋め込まれた犯人が、ショックで気絶して地面に倒れた。
だがそこで強面の男の口から、何かが飛び出てくる。
「こんなところに! 俺の他に
この男に取り憑いて気分良く強盗をしてたのに! よくも邪魔してくれたな!」
「こっ、コイツ! あの写真の!?」
口から出てきた
そのまま排水溝の吸い込み口に入っていった。
「これからは! おめえを見てることにするぜ!
俺はいつだって何処からか、おめえを見てるからな!」
だがそうは問屋が卸さないと、妾は素早く近づく。
「悪いが、そいつは無理というものじゃ!」
排水口をぶっ壊してでも、小さな手を強引に突っ込む。
そして逃げようとしていた敵
「ぐええっ!? まっ、まさかおめえは!?」
「ほう、妾を知っておるのか。……まあ、どうでも良いが」
そう言って目の前にぶら下げた
「まっ、待──」
「待たぬ! のじゃのじゃのじゃのじゃあッ!!!」
「ぎゃびいいいいいーーッ!!?」
一瞬のうちに全身をズタボロにされた
近くでも同じような悲鳴があがったので、妾は今度はそちらに向かう。
なお、仗助は警察官に取り押さえられた。
いつもお疲れ様ですと労われる妾とは、真逆である。
しかし超常現象や怪異など、人知を超えた何かに対処するのが狐っ娘なのだ。
決して公表はしていないし、表立って活動もしていない。
だが杜王町の住人には暗黙の了解的に薄々察していたので、仗助のことも犯人逮捕に協力するように頼んでおいたと誤魔化し、何とか許してもらうのだった。
片桐安十郎を再起不能にして、スピードワゴン財団に引き渡した。
杜王町の脅威はこれで終わりなら良かったのだが、承太郎はまだ何かが潜んでいると感じ取っている。
安十郎から引き出した情報によると、意図的に
しかし妾の周囲は、平穏そのものである。
今日起きた事件以外は、特に変わったことはない。
何も起きないに越したことはないけれど、危機が迫っているのに放ってはおけないため、念のために神社に引き籠もることを減らす。
事態が収拾できるかはわからないが、パトロール的に街な意味で杜王町の散策を増やすことに決めるのだった。
どうやら
妾はある日、立入禁止の物件の門の前で同校の学生の首を絞めている、仗助を見つける。
「まさか人を絞め殺そうとするほど、追い詰められておったとはのう」
「ちっ、違うっすよ! イナリさん! これには理由が!」
慌てて気絶している男子学生の首から手を離し、妾に言い訳をする。
しかしすぐに何かを思い出して、慌てて門の向こうに顔を向けた。
「そうだ! 康一!」
「康一君が、どうかしたのか?」
妾ははてと首を傾げるが、仗助はそれどころではないようだ。
質問に答える余裕もないのか、誰かの血痕が続いている屋敷の中に入っていく。
ここまで関わっておいて、放置はできない。
仕方なく彼のあとに続いて踏み入ると、暗闇から誰かの声が聞こえてくる。
「この矢は、大切な物で一本しかない。
俺の大切な目的だ。回収しないとな」
承太郎から写真を見せてもらったが、康一君の喉に刺さっている矢は
「康一君! まさか! その矢は!」
無関係な者が犠牲になることは良くある。
だが彼は妾の知り合いで、怒りを感じるには十分だった。
「矢を抜くでない! 出血が激しくなる!」
康一君を殺させるわけにはいかない。
妾は大声で叫んだ。
「弟が間抜けだから、貴様らをこの俺がバラさなきゃならなくなった。
となると、この矢に何かあったらヤバいだろ?
近所のオバサンに見られたり、取られたりしたら大変だ」
コイツは何を言ってるんだと困惑しつつも、下手に手を出して康一君に何かされたら不味い。
今は黙って話を聞くことにする。
「几帳面な性格でね。ちゃあんと矢を抜いて、きちんと仕舞っておきたいんだ。
お前らは一枚のCDを聞き終わったら、きちっとケースに仕舞ってから、次のCDを聞くだろう?
誰だってそうする。……俺もそうする!」
そう言って彼は躊躇うことなく、康一君の喉に刺さった矢を勢い良く引き抜いた。
当然のように血が大量に溢れ出て、次の瞬間に妾は口を開くより前にブチ切れて飛びかかる。
「ほほうっ、この屋敷に──」
「のじゃあッ!!!」
天井の闇の中に、大勢の小さな気配があるのは気がづいていた。
だが妾は基本的に脳筋だし多少の攻撃は無視してでも、本体をぶっ飛ばせば問題はない。
「はっ、速いッ!?
彼は慌てて命令を出すが、銃弾よりも速くで突っ込んでくる狐っ娘には対処しきれない。
一瞬遅れ、無数の弾丸が通過し家の床を穴だらけにする。
さらに妾の拳が、敵の顔面にクリーンヒットした。
「げふううッ!!?」
彼の正体はわかっておらず、どうして自分が戦っているかも定かではない。
しかし知り合いの少年が、今まさに殺されようとしているのだ。
危険に飛び込んでも助けようとする理由には、十分すぎた。
青年が壁を破壊して外に吹き飛び、妾もすぐに後を追って穴に飛び込む。
続けて空中でラッシュを繰り出す。
「のじゃのじゃのじゃのじゃあッ!!!」
「ぐべばびいいいーーッ!!?」
背後から、先程のように無数の弾丸が飛んでくる。
だが射程範囲にさえ入っていれば、いちいち振り向かなくても気流の乱れで感知できた。風の盾を展開し、強引に軌道を逸らす。
そして今のが最後の攻撃だったようだ。
彼は全身複雑骨折で完全に再起不能になり、敵の