イナリの奇妙な冒険 作:狐っ娘の幽波紋使い
岸辺露伴が
しばらく経って、音石明が自白した。
そして承太郎から、狩りに行くので一緒に来て欲しいと頼まれる。
さらに保険として回復担当の仗助も加わり、念のために御神体のアヌビスも持って杜王町の郊外に向かった。
なお赤ん坊の
それはそれとして、探すのは
農業用の水路付近で矢で射ったらしく、まずはそこから探索する。
「この場所なら恐らく、ドブネズミだろう」
「確かにネズミの臭いはするが、数が多いのう。
この中から
承太郎の推測に妾が溜息を吐きながら答える。
どのネズミが
ドブネズミの詳しい生態を聞きながら水路を歩き、五感を研ぎ澄ませる。
やがて足跡を見つけて、水路に続いているのが明らかになった。
だがそちらに向かう前に、妾は妙な匂いを感知する。
あまり気は進まないが草むらをかき分けて探索すると、大量のネズミの死体が煮込んだ魚の煮こごりのように固まっていた。
試しに木の棒で突くと、穴から血が流れ落ちてくる。
そこに多くのハエが集っていて、グロすぎるのであまり直視したくはない。
恐らく、ドブネズミの
取りあえず水路から出た場所に、罠とカメラを仕掛けて妾たちは探索を再開する。
用水路の周りは畑が広がっていて、遠くには一軒の家が見える。
水路はあそこに繋がっていると考えられるので、念のために調査に向かうことになった。
様々な情報を検証した結果、
妾は心の中で、もう殺処分しかないなと諦めの溜息を吐く。
動物の
とにかく一軒家に近づくと、扉は開いていた。
そこで三人で慎重に入って、警戒しながら調べていく。
「ネズミは俺たちを、ある距離まで近づかせる。
人間ごときノロマには捕まらないと、自信たっぷりにな。
我々がベアリングを飛ばすとは思っていない。
そこを確実に、近づいて一発で仕留めるんだ」
妾に関しては今さらなので、ちらりと視線を向けるだけで済ませられる。
承太郎が最後の確認をしているのは、まだ新人である仗助だ。
しかし敵が何をしてくるかは、承太郎でも読みきれない。
その辺りは、自主性に任せるようだ。
取りあえず足跡を探して、クンクンと匂いを嗅ぐ。
家の中を探索していると、ネズミの糞はすぐに見つかる。
さらに台所のほうから、嫌な匂いがしてきた。
あまり直視したくはないが、二人に伝えておく。
「台所の冷蔵庫。そこに一匹おるぞ。
あとは、この家の住人だったモノな」
電気はついていない暗闇だが、妾は昼間と変わらずに見通せる。
久しぶりにアヌビスの柄に手をかけ、静かに息を吐く。
さらに足を一歩踏み出して、居合の構えを取る。
まだ距離が遠い。
冷蔵の中に顔を突っ込んで食事に夢中なドブネズミは、気にする程でもないと無視を決め込んでいるようだ。
人間など大した脅威ではないと判断し、油断しているのだろう。
だがそこは妾の距離であり、チャンスには違いない。
わざわざ見逃す気はなかった。
「妾が仕留める。……一撃でな」
「ああ、任せよう。イナリなら、俺たちがやるより確実だ」
「そうっすね。イナリさんに頼みます」
二人に下がってもらって一呼吸置いて、アヌビスを目にも留まらぬ速さで引き抜いた。
風の刃は障害物をすり抜けて本体であるドブネズミに接触し、首だけを的確に切断する。
刀を静かに鞘に戻すと、チリンという音が鳴った。
すぐあとに敵の頭が床に落下し、胴体が崩れ落ちて血が流れ出る。
きっと自分に何が起きたのかもわからないまま、死んだのだろう。
「やれやれだぜ。相変わらず、初見殺しにも程がある」
「イナリさんに狙われたら、避けようがないっすもんね」
「避けられぬように斬っておるからのう」
取りあえず一匹は倒せた。
肩の力を抜いて大きく息を吐く。
だが二人には残念だが、はっきりと告げる。
「ちなみに、ドブネズミはもう一匹おるぞ。
何故家の中に二匹おるかは知らぬが、
夫婦か兄弟かは知らないが、
決めつけによる油断でピンチになることは多々あり、ドブネズミには悪いが念のために殺処分しておく。
「まだ逃げてはおらぬが、遅かれ早かれ仲間の死を察知するじゃろう。
場所はわかっておるし、もう一匹も仕留めるぞ」
先程は音もなく倒したので気づかなかっただろう。
しかし、家に入ってきた妾たちの存在には気づいている。
なので奴が次の行動に出る前に、妾は再びアヌビスを引き抜いた。
次に、天井目がけて勢い良く斬りつけた。
「びぎいいいーーッ!!?」
天井は透過して傷一つない。
しかし、本体であるドブネズミの絶叫が響き渡る。
「近くを通りかかって、隙だらけだったので斬らせてもらった」
対象は小さくて一瞬だったので、見える範囲で刀身に血は付着していない。
だがアヌビスの思念は、鞘に戻すのを露骨に嫌がっている。
「わかったわかった。
血糊を落としてから鞘に戻し、神社に帰ったら念入りに手入れをしよう。
それで良いな?」
彼はそれなら良いと、納得してくれたようだ。
最近は斬る対象を選り好みするようになり、
さらにいつ何時強敵が現れて自分の力が必要になるかもわからないため、斬れ味は常に最高にしておけとも主張するのだ。
最初とは打って変わって、何とも贅沢な刀になった。
それはともかく、二階のドブネズミも頭と胴体が泣き別れしている。
もはやピクリとも動いておらず、完全に絶命したようだ。
家の中には、もう他の気配は感じない。
念のために承太郎と仗助にもう少し探索してもらい、その間に妾はアヌビスの手入れを済ませることにする。
住民には悪いが、治療を行うのは安全が確保されてからだ。
何にせよ、これで一件落着だと思って大きく息を吐く。
妾はアヌビスを持ち歩く際には手放させなくなった刀の手入れ用具を、懐から取り出すのだった。