イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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宇宙人

 殺人鬼の吉良吉影を倒したあと、証拠品などを押収するための家宅捜索が行われることになる。

 

 しかし、まだ他に協力者がいないとも限らない。

 念の為に悪の幽波紋(スタンド)使いを警戒して、ほぼフルメンバーで挑む。

 

 なお、戦闘能力が低下したジョセフやイギー、あとは戦闘向きではなかったり用事がある者は、残念だが外れる。

 

 けれど、百年以上も生きているがイナリは除くといういつも通りの例外もあった。

 それに関しては納得できたり、できなかったりするので複雑である。

 

 

 

 とにかく杜王駅から車で約15分の、別荘やリゾート地帯の外れに吉良吉影の家はあった。

 

 だが、妾は今回は辞退させてもらう。

 理由は赤ん坊の静が体調を崩したからだ。

 

 精神的なストレスで幽波紋(スタンド)能力が勝手に発動するため、下手な医者には任せられない。

 それに、透明のままでは詳しい診査ができない。

 

 常に詳細が把握できて手が空いている狐っ娘が看病したほうが良いと判断し、娘の鈴美(れいみ)と一緒に神社に残る。

 

 突入隊は、殆どフルメンバーだし大丈夫だろう。

 吉報は寝て待つわけではないが、彼らが戻って来る頃には静の体調も戻っているだろう。

 

 しかしスピードワゴン財団に医者を派遣してもらったり、付きっきりの看病が続く。

 肉体はともかく、精神的にはかなり疲れた。

 

 

 

 あとは最近は外出続きだったが、今日は神社に居るのだ。

 娘の鈴美(れいみ)に静の容態を伝えに行く途中、偶然参拝に訪れていた川尻浩作という成人男性に声をかけられる。

 

 いつもなら軽く流すのだが、家族関係が冷え切っているなど深刻な悩みを聞かされて、のらりくらりと避けるわけにはいかなかった。

 寡黙で誠実なサラリーマンの彼は、きっと妾に告げるのも勇気を振り絞ったに違いない。

 

 しょうがないと重い腰を上げる。

 脳筋の狐っ娘は、将を射んと欲すれば先ず馬を射よと教えた。

 息子の川尻早人に尊敬される父親になれば、きっと妻との関係も修復できる。

 

 実際にそうなるかは知らないが、やってみる価値ありますぜと波紋修行を勧めた。

 

 

 

 ちなみに規模が大きな寺院や神社では、座禅や精進料理などの様々な体験をやっていることがある。

 

 それがうちでは仙道なのだ。

 

 娘の鈴美(れいみ)や巫女たちが、せっかくなので特色を出したほうが良いのではと、あれこれ意見を出していった結果である。

 

 するといつの間にか、日本で唯一の仙道の修行が行える神社になった。

 別に大々的にアピールはしていないが、知る人ぞ知る名所だ。

 

 山中には修行場がいくつもあって、普通は滝に打たれて心頭滅却するが、うちでは波紋で吸着して頂上まで登っていく。

 

 さらに清らかな池の上にロープを張り、手で掴むのではなく二本の足で堂々と立つ。

 両者が向かい合って模擬戦をするなどと、激しい運動が多い。

 

 水場なので落ちても大丈夫だが、沈む前に水面に立てれば復帰できる。

 波紋の訓練も兼ねているので、明らかに特色が出すぎていた。

 

 おまけに神事や祭事も色々取り入れていて、そんなのうちの神社でしかやらねーよというレベルで、頭がおかしいイベントが目白押しだ。

 

 100年以上生きている狐っ娘以外にも、見どころ盛りだくさんである。

 おかげで宣伝は一切してないのに、世界的にもその手のマニアの間では超有名になってしまった。

 

 

 

 まあそれはそれとして、川尻浩作に波紋の才能は少しはあったようだ。

 しばらく続ければ、一般的なスポーツマンぐらいには心身が鍛えられるだろう。

 寡黙でも格好良い成人男性にも、努力次第でなれるはずだ。

 

 ついでに天邪鬼で人間不信気味の息子、川尻早人も鈴美(れいみ)に鍛えてもらうことに決める。

 口実は何でも良いので、一度神社に連れて来るようにと伝える。

 

 黄金の精神は別に望んではいないが、11歳という年相応の健全さは必要だ。

 父親と一緒に修行をし、頼りがいのある成人男性をアピールする狙いもある。

 

 そんなこんなで、静の看病をしたり家庭の悩みを聞いたりと色々していた。

 日が暮れる頃には、何だか精神的にかなり疲れてしまう。

 

 

 

 やがて探索を終えたのか、承太郎たちが戻ってきた。

 そこで吉良吉影の父親が、幽波紋(スタンド)使いを増やす矢を持って逃亡したと聞く。

 

 ただ彼は既に死んでいて、写真に入った状態だ。つまりは幽霊である。

 しかも息子の敵討ちで妾たちを敵だと決めつけ、特に狐っ娘を狙っているらしい。

 

 まあボコボコにしてぶっ殺した犯人なので、恨まれているのは当然と言えた。

 

 だが元々、正義の幽波紋(スタンド)使いとして活動しているのだ。

 悪人には殺したいほど憎まれるのは当たり前で、その辺りはもう慣れている。精神的な動揺は一切なかった。

 

 けれど、やりたい放題されるのも嫌だし、そのつもりもない。

 吉良吉影の父親は必ず倒して、弓と矢を回収しようと心に決めたのだった。

 

 

 

 野生の勇者である康一君が、週末の修行でアクト3に成長する。

 それはそれとして妾は、最近妙な子供に絡まれていた。

 

 ジャンケンが凄く好きなようで、街でバッタリ会うたびに勝負を申し込まれるのだ。

 自分も勝負や遊ぶのは嫌いじゃないし、毎回快く応じている。

 

 最初は新手の幽波紋(スタンド)使いかと思ったが、妾が連勝記録を更新するばかりで、特に何かが起きる気配はない。

 

 しかし念のために次に勝ったらジャンケンを悪事に使わないと、露伴のヘブンズ・ドアーで書き込んでもらう。

 これでもし彼が敵だとしても危害は加えられないだろうし、勝負を止める気はない。

 

 以降も普通にジャンケンしたがっているので応じているが、相変わらず何も起きなかった。

 

 

 

 平穏な日常は続くのは良いことだ。

 今日も杜王町をのんびり散策していると、季節は夏になって観光客が増えてきたように感じる。

 

 狐っ娘も目立って、外から来た人たちにも注目を浴びることになった。

 

 なので今日は、少し場所を変えてみることにした。

 町中ではなく郊外に行って、田園地帯を適当にぶらつく。

 

 その途中であるものを見つけ、思わずと感嘆の声を漏らす。

 

「ほほう、ミステリーサークルとは珍しいのう」

 

 けどまあ、結局は珍しいだけだ。

 人が作ったり風でできたりと様々なパターンがあるが、その殆どが科学的に証明されている。

 

 それでも宇宙人や超常現象だと主張したり、こっちの世界でも話題には事欠かない。

 

 そして妾は長生きしているが、割りと見た目相応だ。

 サブカルチャー的なことが大好きなのもあり、畑にできたミステリーサークルをワクワクしながら観察する。

 

 ふと中央に、不自然な膨らみがあることに気づく。

 

「こりゃいかん! 人が倒れておるぞ!」

 

 妾はなるべく畑を踏み荒らさないように気をつけて、風で飛んた。

 そのままミステリーサークルの中央に降り立ち、倒れている人にゆっくりと近づく。

 

 表面には草が被さっているので、良くわからない。

 しかし、ピクリとも動かないので心配である。

 

「ふむ、首の後ろに掠り傷がある。

 じゃが命に別状はないし、気を失っているだけのようじゃな」

 

 草を退かして確認すると、それ以外に外傷は見当たらなかった。

 脈もあってちゃんと生きているようで、ホッと息を吐いて体を軽く揺する。

 

「これ、しっかりせい。大丈夫か?」

 

 やがて。金髪ロン毛で変わった格好の学生らしき男性は目が覚めたようだ。

 

 重力を無視するような動きで、垂直に起き上がる。

 そして周囲をキョロキョロと見回して、妾の存在に気づく。

 

「ここは? ここは……何処ですか?」

 

 あとは耳も少し長い気がすると思いつつも、彼の質問に答えていく。

 

「杜王町のぶどうが丘の、畑の中じゃよ」

 

 本当にわかっていないのか、青年は額を手で押さえて困惑しながら口を開く。

 

「ここは、地球ですか?

 昨日の夕方、いきなり気分が悪くなって、ワタクシ、そのまま気を失ったようです。

 八時過ぎですから、13時間近く気を失っていたことになります」

 

 普通に考えれば、彼は自分でミステリーサークルを作った。

 そして宇宙人を演じ、13時間も誰かが来るのを待っていたのだろう。

 なかなか手の込んだイタズラだ。

 

 しかし妾の表情は平静を装っているが、内心では戸惑っていた。

 目の前の青年は、本物の宇宙人だと前世の経験が訴えている。

 

(どっちを信じるかなど聞くまでもないが、……信じたくはないのう)

 

 新手の幽波紋(スタンド)使いよりも、余程面倒な存在と遭遇してしまったようだ。

 

 下手をすれば、自分の対応次第で地球の明暗が決まると言っても過言ではない。

 いつもは呑気している狐っ娘も、ほんのちょっとだけビビった。

 

 この世界にはEDF(全地球防衛機構軍)は存在せず、頼りになる戦友もいない。

 敵戦力も不明で、場合によっては妾だけで相手をしないといけないのだ。

 

 しかしここは前世とは違うし、まだ戦いになるとは決まったわけではない。

 今はなるべく、慎重に対応することに決める。

 

「それは良いが、お前は何処から来たのじゃ?」

「私の星はマゼラン星雲にあります。でも、滅亡してしまいました。

 私はこの地球が住みやすいか、人々が親切かどうか、調べにきたのです」

 

 できれば、今すぐ誰かに変わってもらって家に帰りたい。

 けれど、こうして遭遇してしまったので、今さらなかったことにはできなかった。

 

 そして彼の話を聞いても、住所がさっぱりわからない。

 取りあえずそういうものだと納得しつつ、懐に手を入れてある物を取り出す。

 

「ポケットティッシュじゃ。これで血を拭くといい」

 

 だが彼はしばらくティッシュを見つめ、何を思ったのか口に入れた飲み込んでしまった。

 傷もいつの間にか治っているし、妾は困惑しっぱなしだ。

 

「ありがとう。とても美味しかったです」

「おっ、おう……なかなか豪快じゃのう。気に入ってくれなら良いのじゃ」

 

 一体どういう生態をしているのかは謎だ。

 

 けれどポケットティッシュを丸ごと体内に飲み込んで、分解吸収したらしい。

 見た目はともかく、地球人とは大きく異なるようだ。

 前世でも人工物を食べる蟻がいたし、別にそこまで不思議でもない。

 

「さて、では妾はこれで失礼する。

 大した怪我ではなくて、良かったのう」

 

 あとは誰か別の人に交渉を任せるとして、妾はこの場から離脱を図る。

 なるべく動揺を表に出さずに自然を装いつつ、宇宙人の青年から離れるべく杜王町に向かって歩き始めるのだった。

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