イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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 妾が鋼田一豊大(かねだいちとよひろ)と遭遇した頃、康一君が新手の幽波紋(スタンド)使いの攻撃を受けている可能性が出てきた。

 

 急ぎ情報を共有して杜王町中を探すのだが、家にも学校にも何処にも居ない。

 

 敵がどんな能力かは不明なため、念の為に露伴のところには鈴美(れいみ)に行ってもらう。

 絶対に単独行動は避けるようにと念押ししておく。

 

 だが幸いなのは、妾は康一君ことを知っていることだ。

 友人として何度も会っており、追跡は十分に可能である。

 

 おかげでしばらくすると、茂みの奥に落ちていた康一君の鞄を発見した。

 しかしそれと同時に、妾の後ろに立っている男からも、同じ匂いがしていることに気づく。

 

「そこのお前、一体何者じゃ?」

 

 恐らく新手の幽波紋(スタンド)使いだろうし、十分に警戒しつつ真っ直ぐに白髪の男に近づいていく。

 

 すると彼は逃げようとしたので捕まえようと肩に手を置くと、何故か一瞬のうちに東方朋子(ひがしかたともこ)へと姿が変わる。

 

「なるほど、それがお前の幽波紋(スタンド)能力じゃな?

 人や物を収納して任意に取り出す!

 妾を舐めるでないぞ! この青二才が!」

 

 たかがつい最近幽波紋(スタンド)能力に目覚めた者が、いつの間にか最強の称号を得ていた妾を出し抜こうというのだ。

 

 今は表情こそ穏やかだが、静かにブチ切れている。

 友人に手を出した報いを受けさせるため、一分一秒でも早く奴をぶん殴りたかった。

 

「ふむ、この紙から匂いがするな。コソコソと隠れおって」

 

 妾は気を失っている東方朋子(ひがしかたともこ)の服のポケットに、躊躇いなく手を入れる。

 そして無造作に紙切れを掴んで取り出し、目の前で開いてみせた。

 

 当然のように、敵の罠だったようで銃弾が飛んでくる。

 しかし全く問題はなく、風の盾に阻まれて空中で動きが止まった。

 

 それはやがて、勢いをなくして地面に落ちる。

 

「先程から妾の意表を突こうと必死じゃな!

 幽波紋(スタンド)能力を発現するための、引き金になっておるのは間違いなかろう!

 例えば、恐怖か驚きといったところか!」

 

 紙から一瞬手を離した隙に、それは独りでに飛んでいく。

 やがて少し離れたところで実体化し、先程の男に変わった。

 

「何故ッ! 僕の幽波紋(スタンド)能力を!?」

「妾を舐めるなと言っておろうが!

 お前程度の幽波紋(スタンド)使いなど、掃いて捨てるほど倒してきたわ!」

 

 そう言って不敵に笑う。

 最初は余裕たっぷりだった男の顔が、明らかに歪んだ。

 

「ふふふ、確かに僕の幽波紋(スタンド)は、チンケな能力かもな」

 

 だが、まだ勝利を諦めていないようだ。

 そしてポケットから、一枚の紙を取り出した。

 

「しかしあえて能力の説明をすると、色んな物をこうやって紙にしてファイルしておく能力は抜群なんだ」

 

 彼が目の前で紙を破り捨てると、粉々に破壊された料理が地面に撒き散らされる。

 

「ふふふっ、そしてこの紙が、広瀬康一さ。

 もちろん生きている。僕の幽波紋(スタンド)はチンケな能力だからね。

 人殺すパワーや能力はない。もっとも、今のように誰かが破いてしまえば別だがね」

「……言いたいことはそれだけか」

 

 次の瞬間、妾は目にも留まらぬ速さで奴の顔面をぶん殴る。

 

「のじゃあッ!」

「げふうッ!?」

 

 幽波紋(スタンド)を出して、防御したり能力を使う時間など与えない。

 人間が認識できる速度を遥かに超越したせいで突風が起きたが、そこは自分の力で強引に被害を抑え込む。

 

 そしてギリギリ殺さないように加減して、ぶん殴ったのだ。

 当然のように彼は吹き飛んで、地面を転がる。

 

 広瀬康一と書かれた紙から手を離したため、風で引き寄せて回収した。

 罠の可能性もあるし今すぐ開くのは危険だと判断し、懐に閉まっておく。

 

「ばっ、馬鹿か!? お前は! 僕は広瀬康一を人質にしてたんだぞ!?

 もし自分が破っていたら!」

 

 鼻から血を流して狼狽えている。

 だが妾は、そんな彼にゆっくりと歩み寄っていく。

 

「お前は破いたりはせんよ」

「なっ、何故ッ!?」

 

 どうやら理由を知りたいらしい。

 面倒だと思いつつも説明するのは、今の彼はタネは割れたし完全に心も折れている。

 普段なら問答無用で再起不能にしているけど、奴は妾の友人に手を出したのだ。

 

 何処かの孫悟飯のように、もっと痛めつけたやらないという気持ちになったのかも知れない。

 しかし舐めプをする気はなく、妨害が入らないように警戒しつつ口を開く。

 

「人質を手放した瞬間、お前の敗北が確定するからじゃ。

 ゆえに偽物である可能性が高く、まあ本物でも妾なら容易に取り返せるがな」

 

 ただし、それは妾が相手だったからだ。

 一般的な幽波紋(スタンド)使いにとっては、厄介この上ない能力だろう。

 

「何より妾は、人質を取って脅迫してくる輩は嫌いでのう」

「まっ、待ってくれ! 僕は他人が怖がるのを観察するのが、好きなだけなんだ!

 幽波紋(スタンド)を身につけたばかりで、つい図に乗ってしまったんだ!

 反省するよ! 悪かったと思ってるんだよお!」

 

 恐怖に顔を歪めて命乞いをする。

 妾は、やれやれと肩をすくめた。

 

「ほっ、ほらっ! 広瀬康一は、この通り無事だ! ちゃんと返すからさあ!」

 

 彼は震えながら懐から一枚の紙を取り出す。

 受け取って開いてみると、康一君が実体化して紙の中から出てきた。

 

 どうやら人質を返すから、この場は見逃してくれということらしい。

 

 確かに戻ってきて良かったと安堵するが、それとこれとは話は別だ。

 

「お前を見ていて、一つ気づいたことがある」

「……へっ?」

「お前、怖がるとき、片目を瞑る癖があるじゃろう?」

 

 今もガタガタと震えて片目を瞑っているため、非常にわかりやすい特徴だ。

 妾はゆっくりと前進して、拳が届く射程距離に十分に近づいた。

 

「じゃが! もっと怖いときは両目を瞑る!」

「……あっあっあっ! うわああああ!!?」

 

 もはや容赦はしない。両目を瞑った彼を殺さない程度に手加減しつつも、いつものように強烈なラッシュを叩き込む。

 見逃してやるなどとは、一言も口にしていないのだ。

 

「のじゃのじゃのじゃのじゃあッ!!!」

「ぎゃああああああっ!!?」

 

 あっという間に全身が複雑骨折し、再起不能になる。

 最後にとてつもなく重い一撃を叩き込んで、勢い良く吹き飛ばすのだった。

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