イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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杉本鈴美

杉本鈴美(すぎもとれいみ)

 私の名前は杉本鈴美(すぎもとれいみ)。15年ほど前に両親を吉良吉影に殺され、新しい母さんに引き取られて育てられた。

 復讐を果たすために波紋戦士の修業を受けて、やがて幽波紋(スタンド)に目覚める。

 

 最近になってようやく因縁をつけられて肩の荷が下りたけど、まだ杜王町から危機が去ったわけではない。

 吉良吉影の父親が逃げ延びて、何処かに潜んでいるのだ。

 特殊な矢の力を使い、悪の幽波紋(スタンド)使いを増やして母さんを殺そうとしている。

 

 

 

 しかし、その程度で母さんを何とかできると考えているなら甘すぎる。

 

 私としては、掠り傷一つでもつけられたら手放しで称賛するほど、はっきり言って格が違うと本能的に理解していた。

 

 一緒に生活して修行をつけてもらうようになり、幽波紋(スタンド)に目覚めて強さの物差しを手に入れたのだ。

 すると余計に、母さんと私の間にある圧倒的な差を感じ取れてしまう。

 

 例え大勢の幽波紋(スタンド)使いに奇襲を受けようと、難なく切り抜けてしまうだろう。

 むしろ一般人に被害が出ないように守ったり、敵を殺さないように手加減するほうに苦心していた。

 

 正義の幽波紋(スタンド)使いは守る者が多くて大変だが、もう15年も一緒に暮らしているのだ。

 

 実力がついて、母さんの仕事も最近はようやく手伝えるようになる。

 しかし未だに、彼女が本気で戦ったところを見たことがなかった。

 

 

 

 ちなみに私の母さんは、見た目通り人間ではない。

 本体は子狐で八歳ほどの狐っ娘は仮の姿で、他にも謎がとても多いのだ。

 

 それでも、自分の母であることには違いはない。

 殺人鬼から助けてもらったり、親を失った自分を慈しみ育ててくれたりと、今は恩が多すぎてとても返しきれない。

 

 何より本物の娘のように愛情をかけているのだ。

 私も同じように、新しい母として彼女に憧れや尊敬をしている。

 

 将来は母さんのような立派な正義の幽波紋(スタンド)使いになるのが夢だ。

 うちに勤めている巫女たちも、自分とは違っても複雑な感情を抱いていた。

 崇拝や忠誠、憧れや絶対服従など、極力表には出さない実際にはかなりドロドロとしていて重い。

 

 そしてそのことに気づいた母さんが、内心でドン引きしている光景は良く見かける。

 私が負担をかけないように統率しているのだけど、今のところは上手く管理運営できている。

 

 ただ、神社が波紋戦士養成所になりつつあった。

 何処の僧兵だと言わんばかりの武闘派が増える一方で、全く減ることがないのは如何なものかだ。

 

 だがまあ母さんの仕事柄、助けたり救われた人は星の数ほど居る。

 同時に、悪人から恨みを買いやすい。

 

 暗殺は不可能でもワンチャンスに賭けるため、神社に幽波紋(スタンド)使いやヒットマンを送り込んでくることがたまにある。

 

 そして、いちいち母さんが対処していたら時間がどれだけあっても足りない。

 その場合は、私たちが速やかに処理するのだ。

 

 救われた恩を返すために、そして正義は悪には決して屈しないという黄金の精神を持ち、立ち塞がる敵を打倒していく。

 

 難点は神社の敷地内なら大抵のことは揉み消せるが、杜王町まで出てしまうと波紋や幽波紋(スタンド)を誤魔化すのが大変になる。

 スピードワゴン財団にお願いして、骨を折ってもらう必要が出てくるのだ。

 

 

 

 しかし、もし母さんからの要請があれば、いつでも応じる準備はできている。

 そして今回は、友人の広瀬康一君に危害を加えた新手の幽波紋(スタンド)を見つけ出して倒すために、私は露伴ちゃんの家に向かっていた。

 

 敵の幽波紋(スタンド)使いと戦うときに、一対一は非常に危険だ。

 相性次第でストレート負けをするのも珍しくはなく、特に能力がわからない敵に挑むのは命知らずにも程があった。

 

 なので何かあればサポートできるように、最低でも二人以上で組んで戦うのがセオリーらしい。

 

 なお露伴ちゃんの交友関係は狭く、他人に協力を求めることほぼない。

 だから幼い頃から知っていて仲の良い私が向かうのだが、幸い彼は広瀬康一君のことを気に入っている。

 

 捜索に協力してくれることを期待したい。

 そんなことを考えている間に玄関の前まで来たので、躊躇うことなくインターホンを押す。

 

「開いてるよ。入ってくれ」

 

 事前に連絡を入れたので家に居ることはわかっているし、私が向かうことも伝えている。

 それに露伴ちゃんとは良く会っているため、緊張することなく気軽に扉を開けて入らせてもらう。

 

「露伴ちゃん。何処に──」

「こっちだよ。鈴美(れいみ)さん」

 

 声が聞こえた方に顔を向けると、露伴ちゃんが壁の隅にうずくまっていた。

 普段なら絶対にしない異常な行動に、私は戸惑いながら尋ねる。

 

「露伴ちゃん! どうしたの!? 電話では、何の説明もなかったわよ!」

「キミの助けが欲しいんだ! 敵幽波紋(スタンド)に攻撃されている!」

 

 それは由々しき事態だ。

 慌てて警戒を強めて周囲を観察するが、残念ながら敵幽波紋(スタンド)の姿は影も形もない。

 

幽波紋(スタンド)!? 何処! 何処にいるの!」

「背中なんだ! 僕の背中に取り憑いている!」

 

 またもや衝撃的なことを言われた私は、露伴ちゃんをじっと観察する。

 しかし彼は背中を壁に押し当てて隠し、決して見せようとはしない。

 

「背中? ……ええと、背中を攻撃されているのよね?」

「そうだ! かなりヤバい幽波紋(スタンド)なんだ! どうしていいかわからん!」

 

 露伴ちゃんは壁に背中をくっつけた状態で、私は近づくとゆっくり離れている。

 敵幽波紋(スタンド)の攻撃を受けているのに、彼はそれを隠して見せようとはしない。

 

 もしかして全て嘘で、私を騙そうとしているのではという考えが脳裏に浮かんだが、すぐに首を横に振って否定する。

 

「いえ、母さんなら間違いなく信じるわね」

 

 きっと疑うことなく露伴ちゃんの言うことを信じて、何か背中を見せられない理由があると判断するはずだ。

 母さんは戦いにおいて未来が見えているかのように、すぐに敵の幽波紋(スタンド)能力を見破り、最適な攻撃を叩き込む。

 

 私があの領域に到達するのは、一体あとどれだけ戦闘経験を積めば至るのかと、母の偉大さを改めて実感する。

 

 それはそれとして、母さんがいざという時に備えて持っていくようにと言われ、背中に担いできた神剣を床に下ろして、覆い隠していた布を解いていく。

 

「そっ、その刀はまさか!?」

「ええ、そうよ。うちの神社の御神体。

 本当は母さんがエジプトから持ってきた、刀の幽波紋(スタンド)なんだけど」

 

 だが今はそんなことはどうでも良く、私はアヌビス……今は草薙の剣の柄を強く握り、鞘から勢い良く引き抜いた。

 彼の思念が流れ込んでくるが、体を乗っ取るような不快な感じではない。

 

「よろしく頼むわね。アヌビス。そして狛犬(ガーディアン・ドッグ)

 

 私は頼りになる相棒に挨拶をし、呼び出した狛犬(ガーディアン・ドッグ)の制御を任せる。

 

「おっ、おい、鈴美(れいみ)さん! まさかとは思うが!

 そいつで、僕ごと斬るつもりじゃあないだろうな!」

「その通りよ。良くわかってるじゃない」

 

 正確には違うが、露伴ちゃんを斬りつけることには違いはない。

 しかし動かれると狙いがズレるので、じっとしていて欲しいのだが、彼は冷や汗をかいて少しずつ距離を取っている。

 

鈴美(れいみ)さん! 幽波紋(スタンド)の能力は知ってはいるが! 何か他に手はないのか!?

 もし失敗したら、シャレにならないぞ!」

 

 確かに成功する保証はないけれど、他に手を言われて少し考える。

 しかし結局、今ここで処理するのが一番手っ取り早いとう結論に至った。

 アヌビスに思念を送る。

 

「そうね。露伴ちゃんの言う通りかも」

「そうだろう? もっと安全で確実な方法があるはずさ」

 

 私はにっこりと微笑みながら彼に近づき、狛犬(ガーディアン・ドッグ)を解除し、務めを果たしたアヌビスを丁寧に鞘に戻していく。

 

「でも露伴ちゃん。もう終わったわよ」

「えっ?」

 

 私の視線を追って気づいたようで、露伴ちゃんは自分の足元を見る。

 

 そこには、ズタズタに切り裂かれた胎児のような幽波紋(スタンド)が、断末魔をあげることさえできずに、虚空に溶けるように消えていく。

 

「露伴ちゃんを透過して、敵幽波紋(スタンド)だけを斬ったけど。

 どうやら上手くいったようね」

「あっ、ああ、おかげで助かったよ。……でも、全く見えなかったな」

 

 アヌビスは母さんの相棒で激戦を潜り抜けて、物凄く成長している。

 もはや肉眼で捉えられる斬撃ではなくなっており、余裕を持って対処できるのは本当の主ぐらいだ。

 

 それに幽波紋(スタンド)能力を強制解除する狛犬(ガーディアン・ドッグ)と組み合わせると、露伴ちゃんに取り憑いている敵を、引っ剥がしたうえで直接攻撃できる。

 

 まあ無断で能力を行使したのは悪いとは思うが、成功したんだから良しとしておく。

 

 取りあえず露伴ちゃんには一息ついてからで構わないので、広瀬康一君を探すために協力してもらうのだった。

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